デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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少し遅れたが投稿です。
やっと、話が進めました、1~3話くらいで終わりかな?


Sが求めたもの/精霊は傷ついて

「うあ……はぁ……」

空にきらめく太陽が容赦なく、ペドーを焼く。

太陽に照らされ、ぶつぶつと何かを言いながら砂場の砂を集め続ける。

 

「と!」

 

「ハッ!」

 

「ソォイ!!」

そんなペドーの目の前では八舞の2人と折紙、十香のコンビが2チームに分かれてビーチバレーを楽しむ。

 

「くッそ……!」

 

バシィ!

 

「やったぞ、夕弦!!」

 

「肯定。今のは我々の実力の勝利です」

 

「あー、はいはい。今のは八舞チームに点ね」

4人の視線を受けたペドーが、ジャッジを下す。

なんというか、非常におざなりな言い方だった。

 

 

 

「古代の神々は……土から人を作ったという……

俺にも、俺にもできるハズだ!!砂から、幼女を!!」

血走った眼をした、ペドーが砂で1分の1サイズの幼女土人形を作る!!

 

令音の計画に乗り、精霊八舞を攻略するためにプライベートビーチを借りそこで遊んで仲を深める計画だった。

だが!!ペドーはコレが()()()()()()を攻略する計画だったことを念頭に居れていなかった!!

その結果、八舞はペドーを攻略しようと、策を仕掛けてきた。

その一つが……

 

「ペドーよ。我体に、邪悪の衣を纏わす任を其方に与える。

闇に身を置く我には太陽の聖なる日差しは、ちと答えるのだ」

 

「請願。ペドー、私に日焼け止めを塗ってください」

八舞が、日焼け止めを塗る様に頼んできたのだ。

水着のトップを脱ぎ、こちらにジェル状の日焼け止めを渡す。

美人の二人だ、普通の男なら喜んで行うだろう。そう、()()()()()()

 

「……はぁ」

海よりも深い!!ため息をついて、ペドーが適当に日焼け止めをぶっかけて終わらせた。

なんとも言えないペドーの表情に、八舞が顔を見合わせる。

 

「び、ビーチバレーをしないか?」

耶倶矢が持って来ていた、ボールを見せる。

 

「賛成。ペドー、二人で耶倶矢を倒しましょう」

 

「はぁ!?ペドーと組むのは私だし!!」

勝負事という事で、火が付いたのか二人の間に火花が散る。

そんな中――

 

「ん?アレは?」

耶倶矢が、海の向こうからこちらに来る何者かの姿が見えた。

 

ザバァン!!

 

「おお、ここに居たのかペドー」

 

「十香ぁ!?」

なぜか現れた十香にペドーが驚く。

海岸は三日月状に成っている為、距離を置いた反対側にもビーチが有るが……

 

「うむ、ペドーの姿が見えたからやって来たぞ」

 

「うっそだろ……」

数キロ先から、こちらを目視して泳いできたというのだ。

控えめに言っても――異様だった。

 

「さすが、元精霊か……人間には不可能――」

 

ザバァ!!

 

「ペドー、見つけた。」

十香より少し遅れて、今度は折紙が海から姿を見せた。

 

「人間の可能性すげー!!」

人の可能性にペドーが戦慄した!!

 

 

 

「くそ!お前がサポートしないせいだぞ」

 

「違う。あなたが無能なだけ」

お互いを褒める八舞の二人とは対照的に、十香折紙の二人はお互いを罵り合う。

 

「ま、八舞の二人が仲が良いのは当たり前なんだけど……な」

尚も砂をいじりながら、ペドーがつぶやいた。

昨日の晩、シェリと触れ合ってから早12時間以上――

12時間、半日以上幼女と触れ合っていないペドーは限界が近かった!!

 

「枯れる……ロリコニウムが、枯渇してしまう……」

まだ見ぬ幼女を妄想しながら、地面に砂の幼女を描き続ける!!

 

「ふひ!ふひひ!!等価交換……等価交換で、幼女を人体錬成してやる……」

怪しい目をしたペドー!!

真理の門に自制心を「持っていかれた」ような危険な姿!!

 

「さぁ!立ち上がれ!!幼女を!!幼女を!!幼女を!!

オール・フォー・幼女!!ワン・フォー・幼女!!すべてを幼女に――」

ペドーが空に向かって謎の儀式をしている時に――

ガス!!

 

「ああ!?」

ビーチボールが砂で出来た幼女を破壊した!!

 

「ウッソだろ!?」

唯一のロリコニウムの供給源を絶たれペドーが音もなく静かに気絶した。

 

 

 

 

 

「大丈夫か、シン?」

令音の膝の上で目を覚ましたペドー、なんとか意識は戻った様だ。

のろのろと力なく立ち上がった。

 

「ちょっと、トイレで顔を洗ってくる」

どうにも調子が悪く、真水で顔を洗う事にしてトイレに向かう。

 

「はぁー……なんだかなぁ……」

2、3度顔を冷やすと大分思考もすっきりしてきた。

 

「なんか用か?」

視界の端、こちらを見ている精霊の片割れ、八舞 耶倶矢が顔をのぞかせた。

 

「くくく、なぁに。少し話が有るだけだ」

 

「そのしゃべり方疲れないか?俺はもう、疲れているんだが……」

げんなりしたペドーの言葉に、耶倶矢が必死になって否定する。

「んな!?精霊って偉大な存在だから、キャラ付けが必要なのよ!!」

 

「あーあ、ついにキャラ付けって言っちゃったよ……」

 

「い、言うなし!!突いて楽しいにゃか!!」

指摘されたくなかったのか、顔を真っ赤にして否定する耶倶矢。

さらに慌てたのか、言葉まで噛んでしまっている!!

 

「はぁ、で?要件は?」

 

「うぐ……」

ペドーに促され、ゆっくりと耶倶矢が口を開いた。

 

「はぁ、な~んか乗せられてるってか、自身を危険に置かない的な感じのアンタに追うのはシャクだけど……ま、いいか。

今私と夕弦はあんたをめぐってバトルしてるじゃない?

その結果を出すのはアンタ、でさ、頼みたい事あるんだよね」

耶倶矢の言葉に、ペドーが「おかしなことになったな」と思う。

だが、思ったのとは違う言葉が耶倶矢の喉から出た。

 

「明日のジャッジ、夕弦を選んでほしいの。

別にいいでしょ?あの子、ボーッとしてるけど従順で胸大きいし、男の夢が詰まったような超萌えキャラでしょ?」

 

「賞味期限は切れてるけどな」

 

「この、ロリ野郎……」

ペドーの言葉に、耶倶矢が歯ぎしりをする。

どんな高級食材も腐ってしまえば、興味はないのだ。

腐っても鯛ではな、腐ったらゴミなのだ。

 

「良いのか?俺が夕弦を選んだら……消滅するのは――」

 

「私だね。けどそれでいいんだ、私より夕弦の方が生き残る価値はあるから……

あの子にはさ、もっと世界を見て楽しんでほしいのよね」

まるで自身の消滅の運命を受け入れたような――いや、もはや実際受け入れているのだろう。

彼女は――夕弦の為に自身の死を恐れていない。

 

「本当は邪魔されなかったら、すぐに決着ついてたのよ?

私が100戦目でやられて終わり、ね?簡単でしょ?」

 

「…………」

あっけらかんという言葉に、ペドーが拳を握る。

 

「じゃ、私はもう行くから――あんたが、夕弦選ばなかったらこの島、私の力で吹っ飛ばしちゃうからね!」

脅すような言葉をかけ、周囲に突風が吹く。

そして、気が付いた時には遥か彼方に行ってしまっていた。

 

『ふむ、困ったね――これでは二人同時は不可能に近いか?』

話を聞いていたのか、インカム越しの令音の声が聞こえた。

 

「質問。耶倶矢と何を話していたのですか?」

 

「ッ!?」

突如後ろから姿を見せた、夕弦にペドーが驚く。

 

「推測――大方明日、自分を選ぶように言ってきたんでしょう」

眠そうな目で、夕弦が言う。

正確には全く逆なのだが……

 

「請願。そんなことよりお願いが有ります」

耶倶矢の続き、夕弦の頼み。

ペドーは何処となくその内容を予測できた。

 

「請願。明日は私ではなく、耶倶矢を選んでください」

 

(ああ、やっぱりか――)

そう、お願いの時点で言う事はもうわかっていたのかもしれない。

 

「説明。耶倶矢の方が夕弦よりはるかに優れています。

多少めんどくさい性格ですが、勝気な所は心をへし折って従順に調教する楽しみがありますし、一途で面倒見がいい為、結局何が起きてもあなたから離れられずに、ずるずるとだんだん大きくなる要求を受け入れ続け最終的にはもう身も心も完全に屈服させ、貴方だけの玩具に――」

 

「お前、メッチャ心歪んでんな!!?」

久しぶりの別の意味で精霊に戦慄させられたペドー!!

しかし容赦なく夕弦は言葉をつづける。

 

「念押。明日は必ず、耶倶矢を選んでください。

でなければあなたの周囲の人に不幸が訪れる事になります」

夕弦までもが、耶倶矢のような脅しを付けて去っていった。

 

「はぁー、どうしようもない二人だな……」

ペドーのため息を聞くものはいなかった。

 

 

 

 

 

『執行部長あの……』

エレンのインカムに、オペレーターの声が聞こえてくる。

 

「ハっ…………だ、大丈夫です。本命は夜ですし、何も問題はありません!ちゃんと捕まえます!!」

焦ったようなエレンの言葉がオペレーターを黙らせる。

 

「エレンさん?何か?」

 

「い、いいえ!大丈夫よ。殿町君」

心配そうにこちらを見る殿町にエレンが笑って帰す。

 

 

 

ミッションを開始した寸前、エレンは亜衣麻衣美衣の3人に捕まり砂場に埋められてしまった。

SMの女王様風に盛られた体の足元に埋まっていたのが殿町 宏人だった。

3人は誘いに来たマインとか言う外国人風の男に連れていかれ、エレンと殿町を放置した。

しかし、殿町は穴から自力で這い出して――

 

「お困りの様ですね、お嬢さん」

エレンを穴から掘りだし、恭しく手を伸ばしてきた。

その瞬間、エレンの胸が大きく跳ねた気がした。

 

「良かったら、僕とこの後遊びませんか?」

任務が有る、何より自分にはうぇすちゃまがいる。

ソレなのに――

 

「はい、殿町君……」

気が付いたら、殿町の手を握っていた。

心の底から、楽しいと思える時間が過ぎ、気が付けば夜近くに成っていた。

 

「そろそろ、行かなきゃ……エレンさん、ありがとうございました……」

殿町が宿に帰ろうとする、後ろを向き小さく手を振る。

その瞬間、エレンの胸に激しい痛みが走った!!

 

終わる――この時間が、殿町君との時間が――終わる。

 

「ま、まっ――」

待ってと言おうとして、エレンが口を紡ぐ。

ダメだ――自分には赤ちゃんプレイ野郎(ウェスコット)がいる。

だが、本当に自分は彼の恋人なのか?いや、違う自分は、違う。

なら、なんなのだろうか?

逡巡のあと、目の前に居たのは殿町の困ったような顔だった。

 

「どうしたんですか、エレンさん?何か困ったことが?」

2つの輝く瞳が、こちらを見る――ウェスコットとは違う、優しそうな瞳だ。

 

「いいえ、何でもないの、何でもないわ」

 

「嘘だ。少しの間だけでもわかります。あなたはもっと自由に笑えるハズでしょ?

何があなたの笑顔を曇らせるんですか?」

何も出来なハズの殿町が、心強く感じた。

年下の少年なのに――

 

「え、エレンさん!?」

突如抱き着いてきたエレンに、殿町が驚く。

 

「少しだけでいいから……もう少し、このまま……」

 

「分かりました……俺、これ位しか、出来なから」

殿町が優しくエレンを抱き返す。

そしてゆっくり背中を撫でる。

 

 

 

どれ位、撫でていたのか。空には月が昇り始め、辺りに人は消えてた。

ゆっくりと、エレンが殿町から離れる。

 

「ごめんね、殿町君……びっくりしちゃったでしょ?」

 

「良いんです、エレンさん。エレンさん、可愛いし美人だしむしろ役得ですよ。

エレンさんさえ良ければ――むぐ!?」

エレンが殿町の唇を指でふさぐ。

 

「エレンって……呼んでくれないかな?殿町君……」

 

「じゃ、俺の事も宏人って呼んでくれますか?」

その後は誰も知らない。エレンはインカムを捨てていたし、殿町は頑として語らない。

ただ、ペドーだけが見ていた。

 

「うわぁお……公共の場所でよくやるな……」

↑散歩に来ていたペドー

 

 

 

 

 

 

「明日、ステージか……」

砂浜に作られた仮設ステージでシェリが、夜の海を見る。

明日のゲドーの為に作られたステージ。

暇な時間DVDで、過去のゲドーのステージを見たことが有る。

何時ものキャラとは違うゲドーがステージで踊って笑って歌って、他のレギュラーやゲストをメタクソに貶していた。

あの顔が芸能人「倉科 蒼空」としての顔なのだろ。

ほとんどの客が楽しそうにしていたのが、ひどく印象的だ。

 

「ただの人間のくせに……」

シェリが自身の虫眼鏡を強く握る。これは殺しの道具だ。

この仮説ステージ位なら簡単に全焼させる力が有る。

無論、来た人間も全焼させれる――だが。

 

「この人数を笑顔には出来ないか……」

この世界に殺しは不要、不要な事は出来ても、本当に大切なことは何一つできない!!

 

「なんで、なんでだよ……

ゲドーみたいな奴、いい加減でひどい奴なのに、ボクより弱いくせに!!

なんで、人気なんだよ……なんで、なんでボクは何にも出来なんだよ!!」

シェリがひそかに涙する。

100人だろうと、1000人だろうと殺せる自分の天使。

だけど、たったの一人も笑顔にすることは出来ないのだ。

殺し、奪う為だけの力――他者の血を吸い続けた、忌むべき力――

だが、この力はなく成らない。自身の命が無くならなかった様に――

 

「なんで、ボクは生きてる?なんでボクは――」

優しさを知らなければ、こんなことにはならなかった。

自身は冷酷な準精霊で居れたはずなのに――

やさしさに触れ、笑顔をむけられ、かわいがられ――愛を知ってしまった。

愛を知った瞬間、シェリは自分の過去の罪を背負う意味をはじめて知った。

血、痙攣、怒号、悲鳴、零れた臓物、輝きを失う瞳、涙、見慣れた死――

 

自分は罪を重ねすぎた。

 

もう戻れない。戻れない状況で、愛を知り進むことも戻る事も出来なくなった。

 

ザっ――

 

「!? いるんだろ……出て来いよ、ペド野郎!!」

 

「あれ?ばれちゃんた?」

エレンと殿町から、姿を隠したペドーが柱の陰から舌を出しながら、姿をあらわす。




殿町を幸せにしてぇ……
NTRじゃないよ?多分……
アウトじゃないよね?
詳しい人教えてくれ……

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