デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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今回で、狂三編は終わりです。
次回以降は、別の章が始まります。
*4月27日一部、変更及び加筆修正。


決戦!!最悪の精霊VSガチロリコン

「クヒ、クヒヒヒ……!!」

学校の屋上、その場所で()()の時崎 狂三と向き合うペドー。

足元は真っ黒な影に覆われ、学校を包んでいる。

この影からは、他者の生命を奪う力があるらしい。

その証拠に、現在ペドーは力が抜けるような感覚を味わっている。

 

「さぁて、ペドーさん?私の要求は――」

狂三が何か、要求を出そうとした瞬間ペドーが走り出す!!

有ろうことか、屋上のフェンスの向こうへ――虚空に向かって飛び出した!!

 

「アーイ、キャーン!フラーイ!!」

 

「はぁ!?」

あまりの事態に、待機していたロリ狂三、通称くるみが素っ頓狂な声をだして同じく飛び出す!!

 

「我魂はー幼女と共にー!!」

落下するペドーをくるみが何とかつかみ、校舎の壁を歩く様にして屋上まで連れ戻す。

 

「ちょっと、一体何をしてるんですの!?私が助けなきゃ、一体どうなっていたか」

高校生の方の狂三が困り顔で怒鳴る。

しかしペドーはしれっとした顔で言い放つ!!

 

「ふっふっふ、お前の目的は俺だろ!?つまり俺には死なれちゃ困るわけだ?

そうだろ!?」

まるで探偵漫画の主人公になり切ったかのような雰囲気で狂三に指を突き付ける!!

因みにくるみに助けられたままの姿、いわゆる幼女にお暇様抱っこをされた姿なのでカッコよさは全くない!!

 

「はぁ!?なら、私も別の人を人質にするだけですわ!!」

 

『うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ☆』

パチンと指を鳴らすと空間震警報が鳴り響く。

その瞬間狂三の顔が嗜虐的にゆがむ。

 

「どうです?わたくしは自由に空間震を起こせるのですわ。

あなたは助かっても、校舎の中の気絶した皆さんは――」

自慢げに語る狂三の端に、フェンスに向かうペドーが入った!!

まさか、また?――そんなことを考える前に――

 

「お空を飛んでるみたいー」

ペドーは説明が終わる前にまさかのセカンドフライ!!

 

「ちょっとぉぉぉおぉぉおぉ!?」

せっかくの悪人顔も捨て、再びペドーを走って抱き上げ、屋上に戻ってくる!!!

 

「あ、あなた!?一体何を考えてますの!?校舎のみんながどうなってもいいんですの!?」

慌てて救い出した、狂三がペドーに激しく詰め寄る!!

 

「ロリ以外逝って良し!!」

 

「外道ですわ!?」

 

「うるせー、邪魔すんな!!俺は屋上から飛び降りて、剣と魔法と幼女のいるファンタジー世界に転生するんだい!!」

 

「げ、現実を見なさい!!飛び降りても死ぬだけですわ!!」

 

「うふふ……俺、女の子の成長が10~14歳で止まる世界に行くんだ~

もちろん10歳で結婚しても、子供作っても合法で、しかも一夫多妻制の――」

 

「げ、現実がつらいのは分かりましたから!!けど、みんな折り合いをつけて生きてますのよ!?あと少しだけ、頑張ってくださいまし!!」

 

「ぺどーさん、しなないくでださいまし!!わたしさすがにそれはかなしいですわ」

なおも、フェンスに向かって走ろうとするペドーを背中から、狂三とくるみの二人がかりで必死に止める!!

 

 

 

数分後――

ペドーの要求を飲んで、影を回収した狂三とくるみが正座でペドーの前に座る。

 

「はぁはぁはぁ……仕方ない、今日はこれくらいにしてやる。

けど、もし今度へんな事したら、容赦なく全裸になって小学校に侵入して目についた子に片っ端から、練乳をぶかっけて回るからな!!社会的に死んでやるからな!!」

 

「マジでなんなんですの?」

 

「ろりこんっていうらしいですわ、いろいろとまっきですけど……」

二人の狂三が顔を見合わせる。

ペドーの全くうそのない本能のみで動く姿をみて、二人して小さく噴き出す。

 

「はぁ、ペドーさんにはかないませんわね」

 

「そうですわね」

その姿を見て、ペドーが小さく笑う。

 

ぴちゃ……

 

「え?」

その瞬間、ペドーの顔に何かがかかる。

ハッとすると、目の前で狂三が頭から血を流して前のめりに倒れる。

狂三の後ろにまた別の狂三が立っていた。

 

「はぁ、なに情に絆されてますの?ほんっとに使えませんわね」

わずかに動いた倒れた狂三に、容赦なくもう一人の狂三が銃弾を撃ち込む。

びくびくと数度動き、今度こそ倒れた狂三が完全に動かなくなった。

 

「え、え?」

状況の呑み込めないペドー。

()()()()()()()()()

 

「飛び降りられては困りますわね、まぁ、死なない程度に――」

無情の銃口を、今度はペドーに向ける狂三。

 

(銃口、狂三、死んだ、避けなきゃ、どうして、倒れた、まだ助かる)

思考がばらばらで、体が動かない。

 

パァン!パァン!!パァン!!!――――――――ドサッ

 

あまりにも、あまりにもあっけない音を立て、目の前にくるみが倒れた。

抱きつく様に、ペドーにのしかかる。

 

「くる、み?おい?」

なにが起きたのか、結局ペドーには分からなかった。

その次の狂三の言葉で、やっと理解し始めた。

 

「なに勝手な事してますの?『盾になれ』なんて言ってませんわよ?」

反射的にくるみの背中を抱く、ぬるりとした暖かい感触。

赤い、紅い、朱い――命の液体。

 

「あ、あああ……あああ……」

 

「ぺどー、さん、ぶじ、のようです、わね……」

無理して笑顔を作るくるみ。しかしなおも、命は零れ落ち続ける。

 

 

「ペドー!!助けに来たぞ!!」

限定的な、霊装をした十香が走ってくる。

 

「ペドー、無事?」

ワイヤリングスーツを着た、折紙が現れる。

 

「出やがったですね!!ナイトメア!!」

さらに真那までもが現れ、戦闘を始める。

狂三は影から、無数の自分を生み出し対処に当たる。

 

「た、助けて、くれ――」

真那のブレードが、狂三の腕を切り落とす。

狂三が時計型の天使を召喚して、自身の腕をくっつける。

 

「だれか、くるみを――」

真那が狂三の銃弾に倒れる。

狂ったように笑う狂三。

 

「な、なぁ!!」

折紙、十香が他の狂三と戦う。

 

「誰でもいい!!くるみを助けてくれ!!」

慟哭するようなペドーの声は、十香の振う剣の擦過音に、折紙の銃声に、狂三の笑い声にかき消されていった。

 

「なん、で、ないてますの?」

弱り切ったくるみが、小さく声を出す。

 

「しってる、でしょ?わたくしは、かこの、きょぞうですわ……

それが、きえるだえけ……」

 

「消えるんじゃない!!死ぬんだよ!!!死ぬのをさんざん止めたくせに、自分だけ死ぬなよ!!まだ、デートだって、いっぱい!!」

 

「あは、ばかなひと……わたしね、あのでーと、だいきらいでしたの。

へんなことばかりするし、わけがわからないし、ちっともたのしくなかったですわ!

わたし、ぺどーさんなんてだいきらいでしたの……ほんとうに、きらい……

だから、さいごに、こまらせてあげます……

ねぇ、キスしてくださいまし……」

だんだんと体温のなくなる体、そして足先からくるみが消えていく。

ペドーはそれがくるみの最期の願いだと理解した。

 

「ああ、いいぜ。なんどだって――」

覆いかぶさり、くるみ小さな唇に自身の唇を当てる。

やわらかい感覚には確かな『生』を感じた。

暖かい何かが、ペドーの中に流れ込んでくる。

そして、その『何か』が流れてくるたび、くるみの体が冷たくなっていく。

まるで、自身のすべてをペドーの中に流し込む様に。

 

しばらくして、くるみは完全に消え去った。

そこには何も残っていなかった。

まるで最初からいなかった様に――

 

「なんだよ、『大嫌い』なんて言って……嘘つくんじゃねーよ……」

以前令音が言っていた、精霊を封印するにはある程度の好感度が必要だと。

くるみの力が流れてきたという事は――

 

「クヒ!!無様ですわねぇ?」

ペドーの目の前、折紙、十香を抑えつけた狂三が歩いてくる。

 

「まったく、手間がかかりましたわね」

ペドーの眉間に、銃口を突き付ける狂三。

その顔は、捕食者の瞳。

 

「なぁ、お前の天使……時間を操れるんだよな?」

 

「?……そうですわよ、命乞いかしら?」

 

「そっか、なら、最後に一つ聞かせてくれ。その天使の名前は?」

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉ですわ。そんなの聞いて一体なにを?時間稼ぎなら無意味でしてよ?」

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉か、名前がわかんないと困るからな。

そして、俺はもうすでに未来をつかんでいる」

 

「は?――ッ!?」

ペドーがそう言った瞬間、狂三が後ろに飛びのく!!

気が付くと、ペドーの手に有るのは一つの短銃!!

 

「あ――し」

瞬時に狂三が理解する。失敗した。

この距離で回避を選んではいけなかった。

相手の目的は攻撃ではない!!

 

だが、時すでに遅し。

ペドーが自身のこめかみに、銃を突きつけ――

 

「おやめなさい!!」

 

「悪いな!幼女以外の頼みは聞かないことにしてるんだ」

 

パァン!!

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くるみの力は時を超え――ペドーを少しだけ、過去の時間へ送つける!!

 

 

 

「飛び降りられては困りますわね、まぁ、死なない程度に――」

無情の銃口を、今度はペドーに向ける狂三。

 

(銃口、狂三、死んだ、避けなきゃ、どうして、倒れた、まだ助かる)

思考がばらばらで、体が動かない。

 

パァン!パァン!!パァン!!!――――――――ドサッ

 

「な!?」

 

「ええ!?」

狂三とペドー両人が、同時に驚く。

片方には、盾となった幼女を抱きかかえる現在のペドー。

そして、その目の前には剣を掲げ、銃弾を薙ぎ払った未来からきたペドー!!

 

「ま、まさか!?わたくしの――」

 

「お、俺!?一体どうなって――」

 

「おい、俺。ちょっと、こっち来い。やることは分かるな?」

未来からきたペドーが、現在のペドーに話しかける。

それに、現在のペドーが頷く。

なんとなく、本人二人の考えが一致した。

 

「「今こそ!!」」

「過去と」

「未来が」

「「一つに!!」」

二人のペドーがタイムパラドックスによって一人のペドーに重なる!!

 

「な、なにが起きてますの!?」

完全に理解不能な、状況に狂三が混乱する!!

 

「未来と現在の俺の記憶が一つになった!!

狂三ぃ!!たとえ過去の自分でも幼女を傷つけるとはゆ”る”せ”ん”!!

制裁決定だ!!」

ペドーの手に十香の鏖殺皇(サンダルフォン)が召喚され、そこに精霊の力がまとわりつく!!

タイムパラドックスなしにはあり得ない、全く同じ力が融合し爆発的な力を生む!!

 

「わ、わたくしたちぃ!!」

無数の影から生み出された分身を盾に、狂三が自らを守る!!

突如現れた理解できない危険な存在、狂三は恐怖を感じていた。

 

全身を打つかのような衝撃が狂三を捉える!!

すさまじい衝撃の後に立っていたのはペドーだけだった。

 

「逃がしたか……」

剣を下ろしながら、ペドーがつぶやく。

そう、あの狂三が死ぬわけないと思った。

体から力が抜け始める。

首を横にすると、くるみが呆然と立っていた。

 

「ここで、狂三を倒したからくるみが無事になった。

くるみが無事だから、時を超える必要はなくなって――」

ペドーは自身の体から、未来から来た自分が消えるのを感じた。

どうやら、自分の時代に帰ったようだ。

 

「また、会おうぜ。俺」

そう呟て、無事なくるみを優しく抱き上げた。

 

 

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「はっ!」

気が付くと、ペドーは学校の屋上に立っていた。

狂三はいない。くるみが鳴きながらペドーに抱き着いている。

 

「くっ!?」

ペドーに頭痛が襲い来る。

記憶が流れてくるのだ。

 

自分は、未来に自分に助けられた。

狂三は逃げ、無事だったくるみに今、抱き着かれている。

 

(なるほど、矛盾をつぶしたのね)

そんなことを考えていると――

 

突然、空が紅に染まる!!

熱い!!炎にあぶられるような熱気がして、空を見上げると――

 

「ペドー。少しの間返してもらうわ――あれ?」

そこにいたのは炎をまとった琴里がいた。

その姿はまるで精霊で――

 

「あー、カッコつけてるトコ悪いけど……もう、おわったよ?」

 

「えー……うそ……私の出番は?」

 

「くそ!!スカートの中が見えそうで見えない!!鉄壁か!?

ねぇ、どんな気持ち?どんな気持ち?カッコつけて出てきたら終わってたってどんな気持ち?」

 

「うっさい!!――――焦がせ!!〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!!」

顔を真っ赤にして、琴里が炎をこっちに向けてきた!!

 

「やべ!?逃げるぞ、くるみ!!」

 

「は、はい!!」

ペドーがくるみを抱き上げ、自身の時間を加速させ高速で逃げていった!!




今回の話は、爆死用BGMを聴きながら読むとそれっぽくなります。

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