ああ、彼らの日常をチマチマと書いて行きたいルークよ幸せになれ……
では、どうぞ。
ルークとガイとイオンによる話し合いの結果、やはりイオンはレプリカを作ることにしたようだった。不治の病であるイオンは、絶対に死んでしまうのだという。
人の救い方はさまざまであることは知っていた。
私はそれが戦うことだっただけだ。
医者には医者の救い方がある。
ルークは、シンクを救いたいと言った。多分あの子だな、とイオンが言っていたので、おそらく会ったことはあったのだろう。令呪を持つ3人は記憶がある。そこでイオンが恐るべきことを言った。
「ところで、火山に突き落とした僕のレプリカたちなんですが、音素乖離を起こしていたのは1体もいませんでした」
後に私はこの言葉の意味を知ることになるのだが、私は火山に突き落としたというフレーズの方で固まってしまった。何と非情なことか、と。だが、うなずける話である。彼はレプリカのことを“出来損ない”と呼んだのだから。
「これだけ預言にいないメンツがいるので、今回はいろいろと皆さんのサポートをして、できる限り7番目に引き継ぎたいと思います」
「……うん」
「……」
ガイが子ギルを見ていた。確かに、【
ガイに令呪を消費してもらうことになるかもしれないが、まあ、子ギルが探せばいいんじゃないのかこれ。
「イオン、君は自分の死が預言に詠まれていると言っていたな」
「うん。預言によれば僕は12歳の時に死ぬ。3年後だよ。“前回”もその時に死んじゃったし」
「……他人の死に方にいろいろと言えるほど私はよい死に方をしたわけではないが、そっくりさんがいる状態で勘違いさせて死んでいくのはいかがなものかね」
「……アンリにも言われたよ、それ」
思考回路が似たのはどこかの分霊の記録で知っている。アンリマユも碌な死に方はしていなかったと思うのだが、まあいい。死なせなければいいのだ。
そこでふと、ルークの記憶にあるイオンとの会話を思い出した。
「ふむ、大体、居場所を奪われるの何のと言うのなら、最初から別の名前を付けてしまえばよかったものを」
「え?」
「シンク、フローリアン、イオンの3人がいたのだろう? そのイオンに別の名前を付けてしまえばよかったのだ。そうすればアリエッタはちゃんと受け入れただろうし、きっとレプリカイオンのイオンの方ももっとよく笑っていたかもしれない」
ルークの中にあるイオンの表情はいつもどこか困ったようなもの。もっと本当は別の表情をしていたのかもしれないが、これはおそらく自分をレプリカと知っているものの顔だったのだ。
「うーん……生まれてくることが分かっているのだから、全員名前考えておこうかな」
「それがよかろう」
アンリマユに目配せをする。アンリマユはガイとギルガメッシュを見て、うなずいた。
「アンリ、僕と彼らの間を取り持ってくれるかい」
「通信役ね、了解」
「3年後、ザレッホ火山へ向かって。きっとそこに皆いるはずだから」
「ああ」
イオンの立ち去る間際、イオンが我々にこう言った。
「エミヤ、ギル、ルーク、そしてガイ。君たちには、これからも会える気がする。僕のことは、イオンって呼んでいいよ」
こうして公式の場以外のところではイオンと呼ぶことを許可されたのだった。逆行しているとしても、年齢的にはまだ21歳くらいだろうか。
私は今日のために用意していたが残ってしまったお茶請けを袋に包んでアリエッタに持たせ、イオンや家族たちと食べるように言った。
残ったアンリマユをインゴベルト陛下に紹介し、イオンがルークとガイと同じようなものであったことを伝えると、アンリマユもカモフラージュのために公爵家の使用人に扮することになった。ちなみにアンリマユ曰く、人間を殺さない精神構造に最適化されて編まれたらしく、我々と同じく、特によくわからないが魔力で編まれたのではない、ということだけが分かっている状態となった。アンリマユによる人的被害は無くなったといっていいはずだ。
アンリマユは執事というよりもその辺で土いじりしてる方が性に合っている、とのことだったので、ペールにアンリマユを任せた。アンリマユは特に器用でもないからな、言ったら文句の一つでも言ってくるだろうか。
言ってこない気がするな。そのあたりが彼もぶっ壊れている気がする。真剣な表情でいろいろ言うのは、マスターがかかわった時だけだからな……主にバゼットか。
ペールとガイにご飯を作っているところを見たので、前言は撤回しておく。
ルークは帝王学等を学ぼうとはしない。意味がない、とルークは言っていた。
大爆発現象はどうしようもないと言われてしまった。
大爆発現象、つまりレプリカがオリジナルを補填し消えていく現象、と端的に表すそれは、7年後、アッシュと同調フォンスロットとやらを開くと急激に速度が上がっていくらしい。そのようなことしなければいいと進言してみたが、ルークはそちらの方が都合がいいので同調フォンスロットは開ける、とのことだった。閉めてやろう愚か者め。
まるで死にに行く準備を今からしているかのようだ、と呟いたら、子ギルが、そう思っているんでしょうね、と、悲しげな光を宿した目でルークを見て答えた。
あんな目はしてほしくないのだが、いかんせん専門知識まではサポートの範疇にないらしい。使えん聖杯だ。
だが、わかったことがある。
私の身体に解析をかけたところ、私の身体が音素のみで構成されていることが発覚した。
霊体化も問題なくできるため、やはり元素の構成を持つ肉体は持っていないようだ。
譜術で使用するのが音素だと言っていたので、魔力で構成している状態と変わらないのだろう。
しかし、驚きではある。
私たちはどうやら、レプリカとそう大差ないらしい。
まあ、これは仮物の肉体であることに変わりはないのでそんなものか、としか思わない。
このことは、そうだな。最後までレプリカであることを明かさなかったらしい7番目のイオンに倣って、しばらく隠しておくことにしよう。子ギルにも言い含めておいた。これでどちらかが離れていて“あの状態”を迎えても一人ではなくなるはずだ。
様々な要因が変化しているようなのでどこまで同じになるかはわからないが。
ほのぼのしたのを書きたい病です。
そしていよいよエミヤとアンリが誰こいつ状態になってきました。
誤字脱字、指摘、感想等、お待ちしています。