いろいろと非常に悩んでます。書き溜めはしたんですが。
話がぶっ飛びぶっ飛びになるかと思いますが、お付き合いください。
指摘を受けた分、修正しました。
結局大きい方の僕はエルキドゥをマルクトへ派遣した。エルキドゥが獣の言葉を理解できることをエミヤさんが言った途端、ルークさんが縋り付いてきたのだ。ソーサラーリングとかいうものを使うと、ちゃんと言葉が分かるらしいのだけれど、それでは間に合わない、と言っていた。
曰く、旅が始まるとライガクイーンとは話をして直後に戦闘になり、軍人のぶっ放した譜術で殺してしまうらしい。
それからエミヤがお菓子を作ったらルークが気に入ってしまったり、そのせいでお抱えコックが泣く羽目になったり、ナタリア姫が料理を教えろとエミヤさんに詰め寄ったり、ガイとマリィベルさんがいろいろとエミヤさんに教わっているのを見ていた。
「ガイ、ルークの記憶を見ていた限り、君の王族に対してのあるまじき態度はすべて矯正できたはずだ。これで、2年後、へまをしないことを祈るぞ。私は君を擁護したりしないからな」
「ああ、わかってる。もう大丈夫だ、むしろ今はティアとヴァンを見逃すことができるかどうか、あと、ジェイドの旦那も、アニスもな」
パーティに問題あり過ぎだろう。
それを助長してましたとガイは言っていたから、まあ、そもそも、復讐対象と考えていたのだろうから、まあ仕方なかったのだろう。
今日はルークから呼び出されている。
いったい何事かと思っていたのだけれど、どうやら、ダアトからイオンさんがバチカルへ来ているらしい。
イオンさんは謁見に来る。そのタイミングで僕たちとうまく仲良くする気らしい。
ということで、僕らは登城することになった。
「導師の予定をどうにか合わせられたらなぁ……」
などと言われてこっち見られたので、エミヤさんと一緒にインゴベルト陛下のところへ向かった。
エミヤさんの、予定を合わせるよりも、先に国王に話を通して、その場で手短に約束を取り付ける方が手っ取り早かろうという考えからだ。
結果的にはうまくいった。僕とエミヤさんが来たことでナタリア姫が事情を察してくれたのだ。レプリカイオンとの旅は彼女の夢にもあったらしい。
夢の話はガイ、オリジナルルークことアッシュ、ナタリアが僕も交えて王城で関係者に話を通している。夢で見た、とナタリア姫が言えば大体は通るようになっているのだ。いやあ、ここまで来るのに苦労しました。
「導師イオンとの会談の時間が欲しいのでしょう?」
「はい。夢でも見ておられるかと思いますが、すでに導師イオンは自身の預言を知っているはず。時間は、ありません」
リミットは、3年だ。
早く、会わなくちゃいけなかった。でも、ヴァンがルークを騙せていると感じるまでに、そこからルークに信頼されていることを確信するまでに、結構時間がかかった。
メイドたちにも、ガイたちにも、皆から少しよそよそしくされていて、ルークは疎外感を感じている、という演技を屋敷全体でやり続けたこの2年、本当に辛かった。
エミヤさんがそういう態度が得意なので(むしろ素だが)こちらは口調さえ変えて似たような態度をとればよかった。まあ、エミヤさんはきっちり叱るところは然り、わからんとルークが年相応に癇癪を起こせばしっかり手取り足取り教えるタイプなので問題はなかった。
ルーク曰く、「わからねー所をわからねーことを受け止めてくれるから皮肉は気にしない」だそうだ。“前回”がどれだけ辛かったかがわかるってものだ。家庭教師に対して、ルークは赤ん坊であり、夢で急によくわからない記憶を見ているということを伝え、一から教え始めてもらうのだった。
まあ、ルークはどちらかというと剣術と譜術と、そういったことの方を重点的にやっていた。理由を聞いた時エミヤさんがぶち切れてワーワー喚いて、ルークが泣いて、こんな重責は子供の背負うものじゃない、世界は、国は、何をやっていたんだとサーヴァントの力で地面に大穴を開けてしまったこともあったな。いや、
そうこうしていて、僕らは導師イオンの謁見の場に同席を許され、導師イオンとアリエッタなる少女を見ることになった。
王城内には連れてきていない、ということだけれど、フレスベルグとライガに乗っていたそうだ。
エルキドゥは何も言ってこないけれど、仕方ないとも思っている。
実は、どうやらギルガメッシュは英霊としての出力が巨大すぎて、うまくバックアップ・サポートを受けることができていないらしい。エルキドゥはギルガメッシュを介して呼んでいるとはいえ、長く現界しているのなら、どこかにマスターを得たと考えるべきだ。マルクト側にいるのだろうか。ともかく、ギルガメッシュに並ぶのだから、エルキドゥだってきちんとしたサポートは受けることができていないんだろう。
考え事をいろいろとしているうちに謁見は終わって、インゴベルト陛下の計らいでルークたちと導師イオン、アリエッタとのお茶会が開かれることになった。
導師イオンは首を傾げていた。
そして僕は見てしまった!
導師イオン――彼は笑顔でお茶会の誘いを受けた。
そして、現在。
♢
「改めて、初めまして。イオンです」
「ルーク・フォン・ファブレです。初めまして、導師イオン」
「ガイ・セシルと申します。お初にお目にかかります、導師イオン」
「アリエッタ、です……」
イオン、ちっちゃい。導師になって1年だから、9歳かな?
エミヤさんが紅茶を淹れてイオン、アリエッタ、ガイ、ルークに出す。
エミヤさんもちゃんと気付いてはいるようだった。
「……導師イオン。会って早々、このような話で申し訳ないのですが……」
「畏まらなくていいですよ。僕は今、初めてのことが多くて驚いています」
イオン側から話題を振ってきた。なんか、貫禄ある。何故だ。そんな目は9歳の子供がしていい目じゃない気がするんですが。
「そちらの名乗らなかった2人は?」
「……彼らは俺たちのサーヴァントです」
「……彼の話は本当だった、ということですね」
「彼?」
イオンの言葉にルークが問い返す。
「はい、アンリマユと名乗りました。あなたがたにも、令呪が?」
「あ、はい」
「はい」
イオンが手の甲を見せると、ルークとガイも慌てて手の甲の令呪を見せる。
間違いない、赤い痣のようなそれ。
なぜエクストラクラスまで。
いや、アンリマユなら来てもおかしくはないんでしょうけれど。聖杯だし。
「どっちもアーチャーなんですね」
「金髪の方がギルガメッシュ、白髪の方がエミヤです」
「エミヤ、もしかしてアンリの兄弟か何かですか? そっくりなんですけど」
「そのような事実はないが、アンリが私に似ていたということは、おそらく一番ましな状態で会ったということですね。彼は本来決まった姿を持たないが、いつかどこかのかつての私を器にした時の姿でしょう」
驚愕。
なぜアンリマユまで来ているのだろうか?
3人だけじゃなかったのか?
いや、エクストラクラスであるが故のことというのもあるかもしれないけれど。
でも、そっか、そうだよな、衛宮士郎を殻として被っているアンリマユと僕らの分霊は面識がある。一番分かりやすい、あくまでも、アンリマユの中で分かりやすいタイプ、ということ。
「アンリ曰く、あなた方は夢を見ている、と。未来のことを夢に見る、と」
「……夢、と言っていいのかはわかりませんが、これから起こることを俺たちは“知って”ます」
「じゃあ、僕があとどれくらい保つかも知っていますね?」
「……はい」
イオンとルークの会話にアリエッタも混じることができずにいる。アリエッタは記憶がなくてよかったかもしれない。問答無用でルークに飛び掛かっていたかもしれない。
ガイは静観している。
「これで分かったことがあります」
「なんですか?」
「令呪を持っている人は、“逆行状態”にある、ということです」
ルークはそう言って、儚い笑みを浮かべた。
「あなたに会えて、本当によかった」
「……ルーク?」
「俺は、ルークのレプリカなんです。“前回”はえらく嫌われてました」
「……」
イオンが静かになる。レプリカ。その言葉を聞いたとたんに表情から笑みが消えた。
アリエッタは首を傾げている。
「アリエッタ、すまないけれど、席をはずしてくれないか」
「? はい、です……」
護衛のことは気にしなくていいよ、と付け足してアリエッタを追い出したイオンは、ルークに問う。
「僕のレプリカたちはどうだった?」
「とても優しかった。7番目のレプリカイオンは、とても純粋な人だった。シンクはひねくれてた。自分は空っぽだって、価値なんて無いんだって、世界に復讐してやるって言って死んでいった。フローリアンは、預言のない世界に行けたみたい。ごめん、そこはもう、俺も死んでたからわからないや」
「!」
イオンは眉根を寄せた。
「預言は、無くなったんだ?」
「うん。ヴァンもモースも倒したよ」
多くの犠牲の上に彼らは立っていた。ガイがうつむいた。思い出しているのだろう。
「……僕のレプリカ、3人も残ってたんだね」
「うん……」
「出来損ない、っていう考えはまだ僕の中では変わってないんだけど、君も出来損ないだったの?」
「……うん。超振動の力はちょっと劣化してたみたいだから」
『むしろそっちの方がよかったんじゃねーの?』
「!?」
ああ、やっぱりいたのか。
いや、少し考えればわかることだ。
彼もまた、世界の中核に近いところにいる存在なのだから。
つまり、アサシンと真アサシン、アヴェンジャー、彼らも含めて本来は10人あの場にいなければならなかったんだ。エルキドゥがいるから、11人いた方が良かったのかもなあ。
「アンリ、こちらに来ていたんだな」
『まあなー』
「出てきて」
『はいよー』
ふわ、と、黒い肌に赤と黒の文様の刻まれた、黒い髪、金色の目の、赤いバンダナと外套のみの半裸少年が出現。
「
「魔力無駄じゃねえ?」
「半裸はだめだ」
アンリマユに適当なコートを投影して渡したエミヤさんは、ハッとなったようだった。
勢いで魔術を使ったのだ。
「譜術じゃねー……」
「それがお前らの言ってた魔術ってやつか。エミヤって魔術師だったんだな」
「い、いや、私は、その……出来損ないというか、魔術師には向かなかったというか」
ぽん、とアンリマユがエミヤさんの肩に手を置いた。
「そんだけ盛大に使っといて魔術師じゃないって、そりゃないでしょうよ」
――
アンタに言われたら相当だな、うん。
ブックマークが、増えている……だと。
ありがとうございます。