エミヤすら誰コレになってきたなあ。
やっとこエミヤ登場。
タグ修正しました。
この話はアクゼリュスまですっ飛ばしすっ飛ばしで行きます。そしていろいろ出張って来ます。
しばらく更新できそうにないので2話投稿します。
さて。
状況を整理しようと思う。
まず、俺の世話役にはガイが選ばれた。その補助としてマリィベルさん――今はマリーと名乗っているそうだ――がついた。
ギルはギルガメッシュといい、ガイの“サーヴァント”だそうである。本当は大きい方の姿だとか言っていたけれど、見せてもらったら昔の俺を思い出して泣きそうになった。うん。
誰か説明くれ。
何があって何がどうなってこうなった。
ローレライからの干渉はないし、ガイは宝剣ガルディオスまた飾ってあるところでよくマリーさんと一緒に礼してるし。ペールも一緒だったりする。
だから、ガイを呼び出した。
状況の説明が欲しいのだ。
「失礼します、ガイです」
「入れ」
ガイを室内に入れ、鍵を掛けさせた。
俺はなんとか会話は普通にできるようになった。歩けるし、走れる。もう剣を振っても大丈夫だけれど、流石にまだ、ちょっとね?
「ガイ……改めて聞くよ。ピオニー陛下のフルネーム、ペットは?」
「はっはっは。そう来たか。ピオニー・ウパラ・マルクト9世陛下、ペットはブウサギ、お気に入りはルークだ」
間違いない、ガイだ。俺の知ってるガイだった。
「ガイ~!」
「おーおー、どうしたんだよルーク」
「だって、なんか目ぇ覚めたらコーラル城だし、アッシュ変だしでもヴァン師匠変わってないし、母上変だしマリィベルさん生きてるし知らない奴いるしぃ」
矢継ぎ早に混乱した原因を話すと、ガイはにっと笑ってギル、と小さく彼の名を呼んだ。
「はい、来ましたよ」
「ルークに改めて状況の説明をしようと思う。手伝ってくれ」
「はい」
ギルはにっこりと笑って、椅子に座った。ガイが立ってるせいだけど。
「そうだな、ルーク、まず、何から聞きたい」
「……うーん、じゃあ、とりあえず、アッシュがおかしくなったのはなんでか知りたいな」
「そうだなー……」
ガイが説明してくれたのは、驚けばいいのか、喜べばいいのか、よくわからないことだった。
まず、ガイの状況説明からだった。
ガイは、俺がローレライを開放した後の世界を生きて、死んだのだそうだ。
子供や孫にも恵まれたとのことだった。ティアはさすがに独身のままとはいかず、子供は生まれたのだそうだ。
ちゃんとアッシュは帰ってきて、ナタリアと結婚したのだとか。子供にも恵まれたって。
アニスとかフローリアンとか、ジェイドとかミュウとか、皆各々の持ち場に戻って暮らしていたのだそうだが、子供が独り立ちするくらいになったころ、一番身軽になったガイがさっさと旅に出た。その後、皆ぞろぞろと集まったようだ。
アッシュの中にはやっぱり俺の記憶が残っていたようで、アッシュはずっと混乱していたようだ。すまなかったと思う。
ただ、皆で世界をまた巡って、旅が終わるころ、フローリアンが乖離した。兄弟たちのところで笑っていると良い、とアニスが言っていたようだ。
そののち、ガイとティアを残し、他のパーティメンバーはアッシュを含めて皆死んでしまったようだ。ちゃんと寿命だったんだぞ、アニス以外は、とガイが言った。
そして、ガイは、ガイ自身が死んだ、と思ったら、3歳の誕生日にまでぶっ飛んでいた、と。
おーけい理解した。
「ごめんガイ、俺のせいだそれ」
「やっぱローレライ絡みか?」
「うん、俺が、アッシュの横で、皆ともっと、生きてたいって願ったから」
「よし、ルークは生きていたいんだな?」
「うん」
生まれてすぐが生存本能が強いというけれど、まさしくそうだと思う。でも半分くらいはきっと、ガイがいるからだ。
たぶん、俺だけだったら、きっと、アッシュを死なせない、って考えて、孤独になる道を選んだ気がする。
結局、こちらに戻ってきたのは今のところガイだけで、でもアッシュやナタリアは何やら夢という形で“前回”のことが記憶にあるらしい。
理解できた。アッシュは俺とアッシュの記憶を混同してみているんだな。
「ところで、この令呪のサーヴァントは呼べるか?」
「どうやって呼ぶの?」
「アーチャー、と呼べば現界してくるはずです」
ギルの言葉に、俺はアーチャー、と呼んだ。赤い模様、令呪が光って、目の前に、色黒、白髪頭の、黒い鎧と赤い外套を身に着けた男が現れた。
「サーヴァントアーチャー、現界した」
おお、とガイが感嘆の声を漏らす。
アーチャー、は俺に問いかけた。
「君が私のマスターか?」
はい、と答えていた。
アーチャー、大きいなあ、ヴァン師匠くらいあるかも。
あれ、でもアーチャーって弓兵って意味じゃね。ギルガメッシュは名前なのにアーチャーはアーチャーなの?
「む……ギルガメッシュ、これは名を言った方が?」
「ええ、偽名は彼らにとって失礼にあたるでしょうね。そして、彼が我々の護衛対象の片割れですよ」
「うむ、了解した」
アーチャーはベッドに座っている俺に目線を合わせるために床に膝をついた。
「私は、エミヤという。エミヤシロウだ。エミヤと呼んでくれたまえ」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
恐らく、ローレライの言っていた、異なる世界の干渉者、なのだろう、彼らサーヴァント、とやらは。俺の手の甲にあるのと似たような模様が、ガイの手にもあった。これが令呪、サーヴァントへの強制命令権を持つモノで、3回しか使えない。
「エミヤ、俺はガイラルディア・ガラン・ガルディオス。今はガイ・セシルと名乗っている。マルクト人だ」
「ふむ……マルクトというと、この国の敵国ではないかね?」
「ああ、諸事情でこっちに親戚がいたから頼ってきたんだが、まあ。お取り潰しになっちゃったというか」
「ああ……貴族社会か」
何やらエミヤが遠い目をする。そして、ギルの方を見る。
「ランサーは?」
「わかりません。一番接近戦に向いているあの青いタイツのお兄さんにいてもらわないと困るのに」
なんだよそれ、青いタイツのお兄さんって。なんか急に会ってみたくなったぞ。しかも、この2人、どうやら中・後衛らしい。
「ルーク、今のランサーなんだがな、俺は、ピオニー陛下が怪しいと思う」
「え? ピオニー陛下? なんで?」
「実はな、俺たちがキムラスカへ行く、って時にちょっといろいろ手続きをしてきてるんだが、返信がブウサギの足型。たかが伯爵家の跡取り息子だった奴の手紙に対して」
「確かに、怪しい」
怪しすぎる。というか、その手紙よく届いたな。
「ランサーは占いも可能だろう、私たちが誰をマスターとするか占ってあらかじめ目星をつけ、それらの関わりのある事象があればその、ピオニー陛下、に報告するようにした、といったところではないだろうか」
「エミヤさんが仮定でモノを語るのは珍しいですね」
「あれと関わるとそれくらいせねば私ではついていけないのだよ」
まったくよくわからない俺に、エミヤさんは言った。
「マスター。本当は、私はランサーこそ君の許に来ると思っていたのだ。なのに、私が来てしまった」
「どうして……? なんでそんなこと、言うんだよ?」
「……私は、君が生まれて、この令呪が君に現れたその瞬間から、君の記憶を見ているのだ。そこで、君の力に私如きが成れるのか、そこに疑問すら抱いてしまった」
あ、この人卑屈だ。
類友になっちゃうのかな。
「エミヤさん、そりゃあそうかもしれませんけど、あなたまで卑屈にならないでください。こちらもこれから発揮されるであろうあなたのマスターの卑屈っぷりをガイの記憶から読み取って悶絶してるんですから」
「子ギルが悶絶だと……? なんでさ……」
エミヤさんは頭を抱えた。
「ルーク、とりあえず、俺たちのことをしっかり彼らに説明するぞ。彼らは俺たちのサーヴァント、基本的には裏切らずにいてくれるだろうからな」
「信用してください! 僕を! 大きい方が信用無いのはわかりますが!」
「子ギル、言うな。仕方がない、あの性格だ」
と、ふっと俺の意識の片隅に、“青いタイツのお兄さん”が出現した。
どうやら、この人か。
青い髪、赤い瞳。紅の槍を持って、すごく動きやすそうな姿。
憧れみたいな感覚もある。でも、その人は――
「マスター!」
「っ?」
「それ以上見るな、見ないでくれ」
エミヤさんが言った瞬間に、俺の中から青い髪、赤い瞳のその人は掻き消えた。何やらよろしくないことがあったらしい。
大きい方のギルだったら問答無用で話してくれたんだろうなあ。
やっと、やっとここまで来た……
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