Fate of the ABYSS   作:黄昏翠玉

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ヴァンのダアト日記はこの話のネタバレである。
すみません<(_ _)>

視点は
ルーク

エミヤ
です


ルーク誘拐編
邂逅


とうとうあの日ですよ。

栄光を掴む髭、ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデが今日は来ていた。たまーにシンクとかアリエッタ連れてきてくれたのは、エミヤが母上に、俺が同い年ぐらいの友達が欲しいのではないかと進言してくれたためだった。

 

いつの間にか俺の屋敷での認識が、“我がままひとつ言わない”ではなくて、“我がままひとつ言えない子”という風になっていた。そんなに我がままになれるかっての!

昔の自分を思い出して嫌になるんだから仕方ないだろ。

 

ガイが、もっといろんなこと言ってくれよ、って言っていた。ありがとうと返したけれど、でもほら。エミヤとギルに手伝ってもらって本をあさってジェイドとディストの論文を読んでみたけれど、難しいのと、それと、大爆発現象について、回避は不可能だという結論(あくまでも仮説のままらしいが)で締めくくられていたので、俺はどうしようもないなって思った。

 

ギルとエミヤがガイには言ってしまったらしくて、ガイがその日は暴れた。時間が欲しい、ディストのところに殴り込みに行ってやろうかと言い出してしまったので慌てて、シンクたちが来てくれた時にディストに大爆発を回避する方法を探してほしいとしたためた書状を渡してほしいと頼んでみた。

 

オリジナルイオンは無事に病気が完治したらしい。マリオンと名乗っているんだってね。シンクとフローリアン、どっちも令呪があって逆行していることが分かったのはよかったけれど、生きられたはずの兄弟が急に乖離してしまってシンクもフローリアンも混乱していたのだという。

 

ヴァンの冷たい視線に嫌でも気付いてしまって、俺はもうヴァンを師匠と呼べなくなってしまった。でもなんだかな、最近縋りつく子犬みたいな目をすることがあって、なんだろうかと思う節がある。

 

自分の部屋の窓から、青い空を見上げる。

今日、ここから、また、あの旅が始まるんだ。

 

――キィン……

 

来た。

ローレライ。

 

――我が愛し子よ。久方ぶりだな。

 

うん、久しぶり、ローレライ。

チャンスをくれて、ありがとう。

 

――ルーク。一つ、いいか。

 

え?

どうしたんだよ?

 

――アッシュが、最近私の声を聴いていないようなのだ。いやな予感がする。

 

……やっぱり、来ちゃったか。

エミヤとギルが言っていた。おそらく俺たちの記憶とは所々が変わってくるはずだ、って。

預言があるがゆえに、大筋は外れないけれど、預言に詠まれていること以外はころころ変わっていくはずだって。

シンクだってイオンだって預言からは外れているんだ、俺も外れているのだから、それでも存在しているのだから、他のことなどいくらでも変わればいいんだ。

 

そしてその変化は、目に見えないところで始まっているはずだとエミヤは言っていた。シンクには俺とガイからアッシュの対応が軟化しているはずだと伝えていたのだけれど、シンクが首を傾げていたから嫌な予感は俺だってしていたんだ。

 

――わかっているのならば、いい。気を付けて。

 

うん。行ってきます。

 

ローレライとの通信が切れた。

俺、体の音素の結合の強化をしてもらえた代わりに、武器とかそういう後付けの物は初期状態になってしまったんだ。それは別に構わない。

エミヤからは口を酸っぱくして、前衛の仕事をするなと言われてしまった。というのも、肉体を編み直してもらったせいで、戦闘慣れしていない状態になってしまったらしい。

ガイの動きについていけなくなったのがいい証拠だった。ガイにはすごく心配されたけれど、乖離を先延ばしにする手立てを行使してもらったらこうなってしまったと正直に伝えたら、戦うなってガイまで言い出した。

 

俺は記憶の通りに進む物事に苦笑をこぼしつつ、ガイが今回はあらかじめ窓から来て出ていく、というのをすることを皆に伝えていたので(どうかと思うが)ガイが来て、メイドが俺に声をかけていく流れはそのままだった。

 

「ルーク、何度も言ったが、絶対に前線に立つんじゃないぞ。今のお前は山歩きだって慣れてない状態だ。タタル渓谷は足場が悪い。すぐ迎えに行くからな」

「うん」

 

エミヤたちの方が来るのは早そうだけど、と言うと、それ言うなよ、と返ってきた。

そしてガイは窓から外へ、俺は応接間へ行き、精一杯の演技で(以前のようにはできなさそうだったので、リアクションをもっと大人しくした状態で精いっぱい残念そうに)ヴァンに縋ってみた。母上の目が怖い。

笑ってるけど目が笑ってない。

 

母上一体何があったんですか。

それとヴァンの目がなんだかすごく悲しそうなのはなんでだ。

 

ヴァンが先に行ってしまって、母上と父上のところへ行くと、俺は頭を撫でられた。全部伝えようと努力した結果、俺がレプリカであることはインゴベルト陛下まで知っている状態だ。メリル? そっちはそっちでもう解決したよ。ラルゴ宛ての手紙をナタリアに書かせてシンクに預けたの。家族写真送られてきたらしい。インゴベルト陛下と文通してるってアリエッタがラルゴの近況を語っていた。

 

「ルーク、そのリフレクター、これも重ねていきなさい」

 

父上がブレスレットを出してきた。俺はそれをつけてもらった。すでにブレスレットはつけているが、これは俺の心許無い動きの補助としてつけているアクセサリなのだ。売ってしまえば自衛のために逃げることすら難しくなる。だからと言ってティアの母親の形見を御者に渡してしまうのは嫌だ。

 

「これは売ってしまっても構わない」

「はい……」

 

父上から貰う物が、売るための物とか本当に悲しいんだけど。今度何かねだってみようかな。

 

俺は中庭に出て、記憶通りなぞって、ティアがやっぱりやってきて、ガイたちが動けなくなって、ヴァンを殺そうとして、俺はそれに割り込んで、一緒に飛ばされたのだった。

んじゃ、行ってきます。

 

 

 

 

「やれやれ……本当に庇わなくてもよかったのでは?」

「流石に賓客を守れなかったってなっちゃうんじゃ」

「それで王族が拉致られてたら話にならんではないか」

 

私とギルは譜歌の効きが悪かったので演技をする羽目になった。

ヴァンは真っ青になっていた。ふむ、セイバーオルタもかくやというべき肌の白さ。倒れるんじゃないか。

ガイがヴァンを問い詰め始めた。

 

「ヴァン謡将、今の女はいったい……?」

「……あれは、私の妹です」

 

身内であることを明かした瞬間にガイに捕まってたけど仕方ないだろうな。私だったら確認せずにとりあえず捕まえるだろう。ちなみにアンリマユだが、あの姉ちゃんメロンだったなあと言っていたので大人しく屋敷で待っていてもらうことにした。人相を覚えている、という意味でである。戦力外とかそういう意味ではない……たぶん。

 

ルークが帰ってきたらあの女性は裁かれることになるだろう。話によると16歳らしいから、ちょっと心が痛む。だが、王族の家に乗り込んできて攻撃を行ったのは目に余る罪ではなかろうか?

正義の味方目指してるからって罪人庇えるほど私はできてはいない。今彼女は私の中では切り捨てる方に入った。弁明のチャンスくらいはやっていいだろうと進言してみるつもりだが、これは公爵では話になるまい。シュザンヌ様に申し上げてみるか。

 

ヴァンを牢屋にぶち込んで早急にルークが飛ばされたであろうタタル渓谷、そこから最も近いマルクトのエンゲーブという村、そこからキムラスカへ向かう――カイツールかセントビナー。カイツール付近へ行くとガイがきっぱり言ったので旅券と薬品等その他の物を荷物にまとめて出発した。

 

馬車で行った方が早いからってガイに馬車が出された。金に糸目はつけない気らしい。

ルークは愛されている、うん。

多少過保護なところはあるが、まだかわいい範疇だろうと思う。

 

私と子ギルも馬車に乗せてもらった。私たちは音素の塊だ。ルークは第七音素の測定で引っかかってマルクト側の軍人に捕まったと言っていたので、霊体化はしない方が無難である。残念ながら私の構成要素がほとんど第七音素であるらしいのでな。

 

 

 

私たちがカイツール近くに来ていたタルタロスへ追いつくのは3日後のことだった。

 




ヴァン語りの話を飛ばしたらシリアスになり、入れて読むとギャグ化する( ´∀` )

読み方はお任せします。
ちゃんとギャグで終わるはず。

感想等お待ちしています。

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