短いので2話いきます。
ルークに稽古をつけているとき、いつもすぐ傍にはガイラルディア様と、あの白髪褐色肌の男がいる。彼の名はエミヤ。シロウ・エミヤ。彼の親戚にシロウという者がいるらしく、苗字で呼ばれる方がしっくりくるとのことで、私もまた彼を苗字で呼ばせてもらうことになった。
ルークはオリジナルと遜色ないしっかりした体ではあったが、怪我をすることは避けた方がいい、特に、深く身体が傷付くのはよろしくないとディストから教えられていた。
レプリカであるない以前の問題で、深くから傷がつくと、治癒するのに時間がかかってしまうのだという。また、何故かは不明だが、治癒譜術の掛かりが悪い。よって、必然的に実践は無しということになっていた。
アッシュもそこまで深い怪我をしたことはなかったからいくらでもごまかせるだろうが。
そんな中、刺青だらけの執事――アンリマユと名乗った彼は、その歪な双剣でもって、私に手合わせ願うと、そう言ってきた。
形状からして扱いにくそうな刃だった。
「すげー、師匠とアンリが手合わせするのか」
「俺自身がどこまで使えるかっていう、ね?」
アンリ殿、と呼ぶことにした。
彼の戦闘スタイルは、異常、その一言だった。
いや、服装の話だ。
何故半裸なんだ。
その姿で出てきたときにエミヤ殿が世話をやく母親よろしく何か言っていたがアンリ殿はそれを気にすることなくそのままこちらへ来て、そのまま対峙。先にエミヤ殿から、大事な剣は使うなと言われて、いつもの剣ではない方を使う。
「んじゃ、始めっ!」
ルークの声で手合わせが始まった。
アンリ殿は、隙が多いが、不気味である。懐に入り込めばわかりやすくぶった切れる気がするのだが、なんというか。
懐に入りたくない。
そう、何かがやばい。
リグレットやラルゴならば相性がよさそうな雰囲気だ。
「……」
ルークですら何も言わない。いや、言ってはいるのか。
「すげえな、師匠……」
「ああ、流石はヴァン謡将。アンリの懐に入ってぶった切ることの危険性に本能的に勘付いていると見える」
エミヤ殿の言葉に私はやはり、と思った。
おそらく、アンリ殿は、これだけギャラリーがあるから嫌な感じがするのだろう。仕掛けてみればどうということはない、そんな気がする。
私は試しに大きく踏み込んで斬りかかってみる。アンリ殿は横に避けた。回り込んで斬りかかって来ようとする。動きが素直でわかりやすい。横薙ぎに剣を払うと、それをしゃがんで避け、こちらの懐へ潜り込んできた。とっさにそれに命の危険を感じ、後退する。間に合わない。剣を前に滑り込ませる。
ガキン、
ガキィン
「「あ」」
「ああ、言わんこっちゃない」
私の剣が。
折れた。
いや、家に伝わっている方ではない、大丈夫だ、いや高い剣だったのだけれども。
「あー、やっちゃった。すんません」
唖然としているのは私だけ。周りの皆はこうなるのが分かっていたような目だった。ガイラルディア様とペール殿とルークの苦笑い。エミヤ殿と横にいる金髪赤目の少年の苦笑い。
そして目の前の、アンリ殿の苦笑い。
「いえ、ああ、こういうことだったのですね」
剣が壊れる、とは。
なかなか恐ろしいソードブレイカーがあったものだ。叩き付けて壊すならばこれはもはやソードブレイカーではないが。
「怪我は?」
「――無いようだ」
アンリ殿は小さく笑い、直後、私の視界から一瞬で消えた。
が、動きは分かりやすいもので、後ろに回り込まれたと分かった。
すぐに防御に入り、アンリ殿の蹴りを受け止め、私が吹っ飛んだ。
筋力がおかしいからな!?
もうちょっとでペール殿の花壇が半壊するところだった!!
ギャグってこういうことですか(´・ω・`)
これにて本編前は終了です。
次話から本編開始になります。