Fate of the ABYSS   作:黄昏翠玉

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お気に入りが90件……だと……

ありがとうございます。
浮気してる場合じゃないですね。

今回ので分かるんですが……かなり、サーヴァントが強いです。
FGO始めたから余計エミヤが恋しくなって……来ない、うちのカルデアにはオカンが来ません

では、どうぞ



ガイとアンリ

俺はこの日、全力でアンリと戦っていた。

 

「うわーんもうヤダー」

「ヤダとか言うなよ! つーかお前強いよ!?」

「最弱のサーヴァントアヴェンジャーでっす☆」

 

このノリだよこいつ。

アンリは最弱最弱と卑下しまくるが、それが嘘でないのは残念ながらルークと俺が1人で鍛錬しているエミヤを見て実感してしまったものだ。

 

アンリの武器はソードブレイカーであろういびつな双剣。初めて手合わせを願った時、俺が手持ちの剣でやろうとしたら、エミヤに止められた。

エミヤ曰く、アンリのあの双剣も“宝具”。よって、通常の武器では太刀打ちできるはずがないとのこと。

 

公爵がこれで試してみたら、と言って持ってきてくれた剣で皆でお試しを見ていた。アンリの剣が勝った、そう、それはもうあっさりと叩き折られた。

 

「う、わ」

「……エミヤ、これ、三流宝具なんですけど」

「ランクCでこれか……。それとアンリ、宝具の真命解放の性能については問題ではないと思うが」

 

宝具にはランクというものがあるらしい。エミヤは俺が使い慣れているであろう俺の剣を見せてくれ、と言ってきて、見せたら、

 

「――解析開始(トレース・オン)

 

全部トレース・オンって聞こえるんですけれども。

 

そして剣を、ね。

 

「――投影開始(トレース・オン)

 

青い光がほとばしり、俺の剣の、レプリカというべきものが、エミヤの手に。

 

「……すっげ……」

「フッ……私が唯一まともに扱うことのできる魔術だ。投影魔術という」

 

エミヤはそう言いつつ俺に剣を渡してきた。

 

「レプリカとどう違うんだろ……」

「ふむ……少々待て、解析開始」

 

少しその剣を見ていたエミヤは言った。

 

「魔力、というか、TPで構成しているようだな。音素ではない」

「エミヤ、先に調べとけよ、調べてない状態で【壊れた幻想(ブロークンファンタズム)】使っちまったのかよ?」

「ふむ、思慮が足りなかったな。まあ、これはもう以前通り使えるものと考えるべきだろうがな」

 

何をやらかしたのかと聞いたら、ブロークンファンタズムとやらは、宝具を破棄する際にその内に込められた魔力ことTPを爆散させるらしい。TP怖い。怖い。

 

そんなこんな、俺やルークは剣を持つ際はエミヤに投影してもらってやっているのだが、まあ、ルークはずっとヴァンの指導だけ、という風にしているため、体がなかなかついていかないようなのである。

 

その分俺が強くなるんだ、旅の間ルークを守るんだと意気込んだためなのか俺の方が生傷が絶えなくなってしまったが。

ペール?

ペールの方がアンリを吹っ飛ばすんだよ!!

 

「なんでペールは……!」

「ガイラルディア様の盾、ですので」

「エミヤあああああ、俺もうヤダああああ俺本当にサーヴァントなのかなああああああ??」

「案ずるなアンリ、お前の弱いのは今に始まったことではない。ペール殿はバゼットみたいな人なのだ」

「あー、うん、なんか納得」

 

アンリが微笑ましい。あいつの得意技はリンゴ剥きだ、飾り切りをやたらする、エミヤが手早くやってしまうので何かで勝とうとしてアンリが行きついたのが飾り切り……。なんだその妙な努力。ルーク喜ぶけど。俺の仕事マジでなくなった。護衛以外特にやってない。

 

エミヤが造る剣はすさまじい強度だ。

俺、宝剣ガルディオスと一緒になんか投影してもらって剣持って行こうかな。

 

おっと、考え事をしていたらいつまでたっても攻勢に転じることはできない。俺はアンリに集中した。

 

「あらら、思考の海から戻ってきちゃったか」

「アンリのおかげでだいぶ強くなってきた自覚あるんだぜ?」

「ま、こんな俺でも人間よりはパワーあるからさー、俺を吹っ飛ばせるならサイコー、みたいな?」

 

アンリと切り合う。俺はアンリよりもリーチは長い。

しかしアンリの双剣は大振りだ。

 

アンリとの勝負ではアンリが死んでしまわないようにということで(なんとも物騒な条件だ)アンリを傷つけた瞬間にアンリは宝具を使用するのだという。

それはペールを見てからのエミヤの判断だった。それだけペールって強いってことか。ちなみにファブレ公爵にも同じことが言い渡されたので、ぜひどっちが強いのか知りたいところだ。

 

切りつける際に弧を描くように振るのと、速度重視というのが大きいのか、アンリは防ぎきれずに俺の一太刀がガッツリ入った。

 

「あ」

 

その時にはもう俺は次のモーションに入っていた。

 

「アンリ!」

 

ルークが声を上げた。

 

「【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】」

 

次の瞬間、俺は。

腕が、動かなくなった。脚が、動かなくなった。動くのは左手だけだった。

 

「うお」

「あーくそ、深く入った」

 

ルークが口元を押さえる。

ああやばいな、と思った。アンリの身体から血が溢れだした。

 

「もー、タイミングが……あーもうマジクソッタレの三流宝具め」

 

見ていたメンバーが慌てて治癒術をアンリにかける。初めて俺、アンリの宝具を使わせた。

マジか、やった。

最弱とか本人は言ってたけど、それでも俺は、サーヴァントに、一撃。

 

「よっしゃあああああ!」

「俺痛いのに喜ぶのやめてくれよ~……」

「あ、悪い」

 

マジ動けねー、と言うと、当たり前だ、とエミヤが言う。ペールが俺を抱き起す。アンリはエミヤに抱えられる。血は即座にキラキラと輝く光として消えていった。

 

「うお、縁起でもない、はよ治せそれ」

「もうちょっと深かったら一撃だったわー」

「アンリ、そういうことを言うな。ガイがお前より強くないと、お前に前衛をさせることになるのだからこれくらいいい方だろう?」

「わかってるけどさぁ~」

 

俺の体の不自由はアンリの傷がほとんど治ると、ちゃんと動くようになった。ただ、もう少しだるい感じがした。

 

「ガイ、どうかね」

「まだちょっとだるいかな、」

「そうか。アンリ、ちょっと来い」

「あ、血ぃくれんの?」

「ああ、幸い私のマスターはすぐここにいるのでね、パスが寸断されている君よりも回復は早かろう」

 

エミヤとアンリが霊体化して姿を消し、俺たちはひとまず中庭の片付けをする。ルークはアンリの血を手で触れて、ぼんやりと眺めていた。

 

「音素乖離みたいだよな」

「ルーク」

「エミヤたちって、音素でできてるのかなあ?」

 

その可能性を考えなかったわけじゃない。肉体を持っているのなら、分解なんかできたらそれは生命体とは呼べない。だからと言ってサーヴァントが音素でできていると考えてしまったら、そこに類似点の多いレプリカは人間ではないのか?

 

まさに謎が謎を呼ぶ。

俺たちはすべて消えてしまうまでずっとアンリの血を眺めていた。

ちょっと素手で触ってみたアンリの血はすべて乖離したけれど、そこには確かに濡れている感覚があったので、やっぱりそこにあったことは変わらないのだと、そう、思った。

 

「ところで俺、もしかしてやっと前衛許可降りた?」

「だな。また頼むぜ、ガイ」

「お前は絶対戦うなよー」

「えー」

 

暗いことは考えるまい。

さあ、旅の始まりはもう、目の前だ。

 




アンリの宝具、ランクDなんですね。
FGOから持ってきてたのでCのままですが←

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