Fate of the ABYSS   作:黄昏翠玉

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2話目です。
最近もう一つのF/snとTOAのクロスネタにうつつ抜かしてます。
サーヴァントに救われるのもいい、正義の味方に救ってほしくもある。

はい!
ちゃんと書けって話ですね!
頑張ります!

では、どうぞ。


イオンとシンクと

贋作者(フェイカー)が解析結果を伝えてきたとき、レプリカと我たちの身体が何も変わらないことを知って、驚いた。そして同時に、納得もした。

我がただふんぞり返っているだけとでも思ったか?

図書室なる場所へ赴き、ジェイド・バルフォアなる者とサフィール・ワイヨン・ネイスなる者の本を調べてみたのだが、禁書扱いの物が多かった。マルクトから仕入れるのも大変だったのでは?

 

まあ、本を汚すかもしれんから寄越せと言われて贋作者(フェイカー)に渡したら投影しおった。我を馬鹿にしておるようだな。まあ、読めるものだったので問題はなかったが。

 

――持ち出し禁止の本だったことに気付かなかったから、エミヤさんが戻してきてくれたんでしょう、ちゃんと見なきゃダメじゃん。

 

黙っておれ。

 

それらのことから考えてみたが、やはりよくわからん。

ついでに、ルークとガイの記憶を頼りにワイヨン鏡窟とかいうところへ向かった。そこにフォニミンとかいうものがあったらしく、それを必要なのだとルークとガイが書状をしたためてダアトへ送り、どうぞと返ってきたので我と贋作者(フェイカー)で採りに行ったのだ。

ルーク曰く、“ローレライからの通信が入った”とのことで、フォニミンが必要なのだとか。

 

ちまちま採りに行っていた。

一気にやればどうかと問うたが、崩れたら元も子もない、のだという。最終的に崩しておきたいなら最初から崩せと言いたいところだったが、ルークが、“レプリカ1万人分”と言った瞬間に我も野暮だと判断した。

 

 

 

 

約束の3年後、我々はザレッホ火山へと向かった。

無論、先にオリジナルイオンの方を回るのだが、アリエッタが我たちを待っていた。

 

「こっち、です」

 

贋作者(フェイカー)とともにオリジナルイオンの許へ向かったのだが、なんということか!

 

「死人も同然ではないか」

「入って第一声がそれかい……?」

 

オリジナルイオンの様子に贋作者(フェイカー)が顔をしかめた。

ふむ。早めにやった方がよさそうである。

 

「イオン」

「なんだい……?」

「貴様にこれをくれてやろう」

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)】――そこから、神酒を取り出し、盃も貸してやる。贋作者(フェイカー)に注がせ、イオンに飲ませる。

 

「これ、は……?」

「不治の病なぞ吹き飛べばいい。それくらいの力、この酒は持っておるわ」

 

贋作者(フェイカー)は、ネクタルなのかとか口走っておった気がするが。

とにかく飲め、とイオンに飲ませた。

 

アリエッタがここにいるということは、死ぬということを伝えようとしていたのかもしれない。が、吹っ飛べ、全て。

こやつがキレイと雰囲気が似ていたからとかそういう理由で助けようとしたのではない。断じて違う。

 

と、思う。

 

いや、確かに一緒に愉悦したいなあとか思ったりはしたのだが!

 

贋作者(フェイカー)よその目を止めよ!!

 

酒を飲んだイオンは横になり、少しすると顔色がよくなっていった。

回復が小康状態よりもよくなったのが分かったのか、イオンが言った。

 

「今すぐ僕の弟たちを迎えに行ってください。ザレッホ火山の火口付近にいるはずだから」

「了解した」

「うむ」

 

そこからはガイとルークの記憶を頼りにサーヴァントとして全力でザレッホ火山へ向かった。時間勝負だと言われたからだ。イオンはアリエッタに任せた。

 

贋作者(フェイカー)は表情を険しくしていたが、我も前方を見れば――ふむ、なるほどな。

贋作者(フェイカー)は鷹の目などという大層なものまで持っている。早い段階で何かが見えたのだろう。

 

「間に合ったか!?」

「6人、話に聞いておったとおりだな」

 

全員生きてはいたが、既に乖離が始まっているのが4……いや、5か。

我は子供の姿へ転じた。

 

 

 

近付いていくと、鋭い眼光を宿した人がこちらを睨みつけて問いかけてきた。

 

「あんたら何者」

「……ルーク・フォン・ファブレの使いの者だ」

 

エミヤさんが答える。

 

「ルーク……?」

 

乖離が始まっている中では一番乖離が遅そうな人が問う。

 

「ルークの知り合いなの?」

「ああ、ルークは私のマスターだ。……子ギル、頼む」

「はい」

 

打ち合わせ通り、僕はガイに連絡を取るために音機関を起動させた。

ガイが音機関いじりが好きで助かった、と思う。無線みたいなものだ。

これを持っていたから霊体化して来るとかできなかったんですけどね。

 

「ガイ」

『お。きたきた。どうだ、ギル』

『おおー』

 

ルークの声もする。

 

「それが、なんか。6人いるにはいるんですが、全員乖離が始まってて」

『えっ? 全員!? 嘘だろおい、フローリアンもシンクも安定してたはずだぞ』

 

世界の整合性を保つためにどこかで勝手にバランスをとっていてもおかしくはない、というのがエミヤさんの意見だった。

僕らの身体が音素だけで構成されているということは、レプリカと変わらないということだ。

レプリカがその分、消える可能性は、考えてはいた。

 

そして分かったことがある。

おそらく、まだ、レプリカは、この子達と、ルークしかいないのだ。

だから、“前回”消えなかったレプリカイオンが消えそうになっているのだと、僕はそう思った。

 

そういうことか、とルークの言葉が聞こえた。

 

『ギル、ありがとう。これからこっちで超振動を使うから、2人を見ていてくれ』

「わかりました」

 

エミヤさんとシンクの会話が終わったらしい。あーあ、エミヤさん泣いてるし。涙脆くなりましたか、正義の味方のお兄さん。

 

「行くよ」

 

僕たちはシンクについてオリジナルイオンの部屋へと向かった。

 

 

 

 

「なんで生き生きしてんのさ」

「いやあ、僕もびっくりだよー?」

 

まあ、そうですよね。

僕はほっとした。オリジナルイオンにお酒が効いたということだ。霊薬はまだ探し中なんだけれどね。大きい方は一緒に探すの手伝ってくれないんだもん!!

エミヤさんと僕と、2人で探しているんだから……。

 

「……皆は?」

「……死んだよ。乖離した」

「……そっか。つまらないなあ。せっかく皆の名前、考えたのに」

 

イオンの言葉尻は震えていた。ルークが泣かせたんですよ。ルークが、アッシュに認められたことあんなに嬉しそうにイオンに言うから。イオンも自分が変われたんだってことを皆に知ってほしくて頑張ったのに。

 

それもきっと、僕らが来たせいで彼らは死んだのだ。

それを僕らは何となくわかっている。

イオンも、手元にサフィール・ワイヨン・ネイス博士がいるようだから、いろいろ調べたりはしてたかもしれない。

 

「……あんたが泣くの?」

「……しかた、無いじゃんかっ……本当は、7番目にも会いたかったのにっ……」

 

もう7番目は連れていかれてしまった。

イオンはこのまま死ぬ、ことになる、はずだった。どうやって、脱出しようというんだろうか――僕は一瞬そう考えて、エミヤさんが唐突に干将・莫耶を投影したことに気付いた。

 

「エミヤさん……?」

「我々がここに不法に入ったことは知れたことだ。ヴァンやらモースやらが死んだイオンに墓を作るだろう。どこぞの漫画と同じ手を使うぞ」

 

そう言って、エミヤさんはいったいいつそんなもの作ったのか、クローゼットから気色の悪いダミー人形を出してきた。というか、にこにこしているアリエッタがいた。アリエッタ、知ってたのか。

 

「これで、どうする気?」

「フッ。私はこれからこの部屋に大爆発を起こす。この人形が人形だったのか、本当の人間だったのか、わからなくなるくらいのな」

 

僕はふと、外に懐かしい気を感じた。

まさかこれは、エルキドゥ?

 

「エミヤさん、いつの間にエルキドゥを呼んだんですか?」

「何、アリエッタに直接エルキドゥを寄越してくれという書状をしたためてもらい、イオンがサインをすればよかっただけだ。仕事がおざなりだぞ、導師」

「いつそんなもの紛れ込ませたのかな」

「それはアリエッタに任せたから私は知らん」

 

エミヤさん、最初っから大きい方を利用する気だったらしい。まあ、ルークが先に泣き落としに入っちゃったからエミヤさんはパンケーキ作るだけですんだみたいだったけど。

 

「アリエッタ、頑張った、です」

「ああ、アリエッタ。私の戯言に耳を傾けてくれてありがとう。本当に、君のおかげで人形も準備できたことだしな」

 

エミヤさんたちは何かやり遂げた的な顔を既にしている。まあ、もうほとんどやり遂げたようなものだしね。

というか、剣なのに消し炭って何言ってんのって顔をしているシンクとイオンとフローリアンだけれど、僕は知っている。

 

「エミヤさん、建物はくれぐれも破壊しないでくださいね?」

「フッ、この周辺の壁はすでに強化済みだ。抜かりはない」

「強化魔術の無駄ですよ」

 

ほんと、なんか。いい方向にぶっ壊れてきたなあ、この人。

お兄さん、セイバー、あかいあくまさん。英霊エミヤはいい方向にぶっ壊れてきましたよ。お兄さんのお姉さんは喜ぶかな?

 

シンクとフローリアンは結局、ダアトに残ることにしたらしい。ルークが逆行してることが分かったからみたいです。エミヤさんはオリジナルイオンをエルキドゥの許へ連れていくことに。

アリエッタにはオリジナルイオンから7番目のレプリカイオンへの引き継ぎたい仕事の書類を任せてある。

 

「シンクはダアトに残るんだね」

「前回通りに進めるってルークたちには伝えてよ。僕、前回と一言一句違わずに台詞言える自信あるよ」

 

シンクはまた烈風のシンクを目指すそうだ。というか、今の時点で既に。

ちなみに、シンクとフローリアンにあった令呪はやはりと言うべきなのか、兄弟だからなのか、イオンのものと似ていた。

 

彼らには別にサーヴァントは居ないらしい。というか、仮説が正しかった場合、これ以上増えるのはまずい。

 

そこで、ルークとガイから通信が来た。

 

『ギル』

「ルーク?」

『シンクとフローリアンの様子は? 乖離、止まった?』

「……」

 

僕はフローリアンを見る。まあ、わかるわけない。

 

「エミヤさん、シンクとフローリアンの乖離は止まっていますか?」

「む」

 

エミヤさんが断りを入れてからシンクとフローリアンを解析する。問題なし、と返ってきた。

 

「大丈夫です。乖離は止まったようです」

『よかったぁ……』

『お疲れさま、ルーク』

「ガイ、ルークを休ませろ。超振動などその身で何度も使ってはならない。早めに休んで体調を整えろ。私たちもすぐに戻る」

『了解。さあルーク、もう眠いだろ、お休み』

『ガイ、やめて。御姫様抱っこは俺にするべきものじゃない』

『エミヤはいいのに俺はだめなのか!』

 

通信音機関の向こうで繰り広げられるルークとガイの漫才を聞きつつ僕はそこにいる全員に目配せをした。

準備は整った。

 

僕らがその場を出て解散し、イオンを外で待っていたエルキドゥに託す。目立つから大きい方には今度会わせてあげる、ごめんねと言うと、大丈夫だよ、まだ待てるもん、あと3年頑張ろうね、とエルキドゥが言った。エミヤさんはそんなエルキドゥに頭を下げて、そっちにいるであろうクランの猛犬に、2年後のことを任せたい、と伝えてほしい、と願い出た。もう向こうに彼がいること確定なんだね。

 

僕らが建物からそこそこ離れた時、エミヤさんは小さくボソッと呟くように言った。

 

「【壊れた幻想(ブロークンファンタズム)】」

 

 

 

 

この後のダアトの反応は簡単な話、オリジナルは死んだと見たらしい。でもアリエッタには7番目のイオンを見せてイオンは無事だと伝えたみたい。イオンにちゃんと仕事の引き継ぎをして、解任されてアリエッタは悲しそうな顔を精一杯頑張った、らしい。

手紙に書いてちゃ意味ない気がしますけどね、アリエッタ!

 




よくもまあゲームどっちもやってないのに書き始めたなあと思います、はい。
子ギルの皆への呼称知らないんですよね。わかるようにあかいあくま呼びにしましたけど。


誤字脱字、指摘、感想等お待ちしてます。

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