Fate of the ABYSS   作:黄昏翠玉

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はい、やらかしました。
Fateの面子ならルーク救えるんじゃねーかって思ってしまった結果です。どっちも好きなんですもん。
作者は基本的にFate/stay nightの原作をプレイしてません。劇場版UBWを見たのとハーメルンや他のサイトさん回ってただけです。アビスの方はアニメ見てサイトさん回っただけです。原作知識とかもうほとんどないです、オリジナル展開もあります。

亀更新に決まってるのでゆっくりお付き合いください。
では、どうぞ。


転換・逆行編
赤い弓兵たちの旅立ち


世界が呼ぶ声がする。

 

そんな馬鹿なことがあってたまるか、と否定しようとして、私は気が付いた。

既にここが自分の座ではないことを。

 

「――何故“オレ”なんだ、アラヤ」

 

第五次聖杯戦争と呼ばれる聖杯戦争に参加していた分霊の記憶をなぞらせた分霊をわざわざ仕込むなど、らしくないことをする、と。

答えを見つけたらしいこの分霊は、アラヤから見れば邪魔なはずだ。何故それをわざわざ編み直す。私の疑問にアラヤは答えない。当たり前だ。アラヤはいつだって答えなど直接的にはくれなかった。

 

不満はないと言えば嘘にはなるが、だからといって特段気にもしていない。

いつも私が眺めていた赤い空。それはもうどこにもない。

剣の丘も見えない。

見えるのは、私が場違いすぎると一瞬で理解できる、自然の溢れた、煌く、命溢れた緑と青の世界。

そして私は視界に青い長髪の男を見つけて、ここが誰の座であるのかに思い当たる。

 

「よぉ、アーチャー」

 

男がこちらを振り返る。あの動き易いタイツ姿ではなく、もっとゆったりとした服装。一見してキャスターの如き姿に、ああ、そう言えばこの男はキャスターとしても呼ばれる可能性があったのだったかと一人で納得した。

 

「ああ、ランサー……」

 

かつて私は弓兵だった。そして今の私は弓兵だった私をなぞるモノ。ならばこの男は如何。

 

「いや、クー・フーリン」

「へっ、やっぱそっちで呼ぶのか? 第五次の記憶があるんだろ?」

「やはり君もか」

 

私の物言いに大体の状況は理解できたらしい男――クー・フーリンは、静かに息を吐いた。するりとその手に紅の槍が出現して、男は私の胸をその槍でゆっくりと小突いた。攻撃の意思がないと感じたからこそ私は動かずにそれを受けた。

彼は、私の憧れた、絶大な力を持った英雄。

いや、私は彼のような英雄になりたかったんじゃない。ただ、正義の味方になりたかったのだ。

ああ、こんなことを考えるということは、やはり私はあの答えを得た私をなぞっているのだろう。あの答えはあの分霊の中だけのもの。

私自身の答えではないのに。

 

「エミヤ」

「?」

 

クー・フーリンに呼ばれて顔を上げる、いつの間にか俯いていた。

彼の指で示す方を見ると、見知った顔が並んでいた。

 

なんだ、普段着は普通なんだな――ギルガメッシュ。

魔眼を隠す必要がないらしい――メドゥーサ。

青い明るい色のキトンを身に纏った女――メディア。

バーサーカーの姿のままなのは何故だ――ヘラクレス。

そして、女性としての姿でありながら、王としての威厳を持った――アルトリア。

 

「……ここはケルトの座ではなかったのかね?」

「気付いたら皆ここに。ガイアが招集をかけてきた」

「ガイアが?」

 

まさか、と私は思った。アラヤがこのメンツを揃えるために私を?

凜たちに何かあったのだろうか。いやでも凜に何かある前にあそこにいる私自身が何かしでかしそうだが。

そんなことを想っていたが、ふいに流れ込んできた世界の意思とやらに、私たちは皆で驚愕に目を見開くことになった。

 

「はぁ!? そんなのありかよ!! 別の世界に渡れだと!?」

 

クー・フーリンの声。ギルガメッシュも眉間にしわを寄せている。見ているのは愉悦、しかし巻き込まれるのは気に食わんといったところだろう。

気持ちはわからなくもない。

 

どうやら聖杯戦争をするためではないらしいのである。そのため以外に呼ばれることなどまずほぼあり得ない。そもそも、魔術師でなければ英霊の力を維持できない。

ともかくとして、私たちはどうやら何者かを助けたいので助力してくれと請われて、ガイアとアラヤはそれを請け負ったらしい。

その何者かを助けるために最もバランスがいいのがこのサーヴァントの組み合わせだったらしい。こら、アサシンはどうした。佐々木小次郎は? ハサンは?

 

「なんでギルガメッシュがいるんだ?」

「贋作者、それはどういう意味だ?」

「なぜ例外であった貴様がいて、アサシンがいないのか、と。まあ、アーチャーが二人なのだから私が抜けても問題はなさそうなものだが」

 

そこまで言ったらアラヤに意識をちょっと掻っ攫われて叱られた。

 

お前がいたら面倒ごとがいろいろ減るんだよ。その間は守護者の任解いてやるからその子の守護者やってこい。

 

と。

 

「……贋作者、何があった」

「アラヤが、私に誰かさんを教育しろと言っている。その誰かさんは実に私の神経を逆撫でするようになっていくようなのでな、そうさせないために傍で支えるのが我々サーヴァントの役目となるようだ」

 

アラヤに漠然と伝えられた事項を掻い摘んで説明すると、皆は顔を見合わせた。

この中から最大三人までその人物を守るためのサーヴァントを選び、他はサポートに徹するように、とのことである。おそらくその人物が持つ魔力量などの問題なのだろうが。

 

「坊主の神経逆撫でっつーことはあれだな? こいつの同族嫌悪に近いであろう感情を刺激しかねないタイプだな? そしてつまるところそれは俺がぶん殴りたくなっちまうようなやつってことだな?」

「ちょっと待て。何故私をあの出来損ないと同じ呼び方をする!?」

「今のテメーはアーチャーっていうよりも坊主に近い。他人の在り方にテメーは口を出すような奴じゃない」

 

クー・フーリンはそう言ってアルトリアを見る。アルトリアはうなずいた。

 

「アーチャーは、第五次聖杯戦争の際、答えを得た、と言っていたと、凜が。何故私が知っているか理解しかねますが、おそらく一方的な救済要請ではなく、こちらからも救済対象を出して来いということになっているのではないでしょうか」

 

そして全員がこちらを見る。なんでさ。

 

「なぜ私を見るのだ?」

「救済対象ってお前以外に誰がいるんだよ?」

「だからなぜ私なんだ」

「シロウはもっと報われるべきなのです」

「ちょっと待て、」

「同感ですね」

「おい、」

「まったくだな! あの固有結界の中に立っている状況はなんとしても打破せねばなるまい。守護者からは引きずり下ろせずとも、己が何だったかすら忘れては英霊として立ってきたその背が無かったことになる。それはすなわち死だ」

 

ギルガメッシュの言葉に私はギルガメッシュを見た。なんだこの気味の悪い英雄王は。

それは皆も思ったらしく今度は一斉にギルガメッシュに視線が集まった、が、私は思い当たった。

 

そもそもギルガメッシュは英霊としても最大出力を持っているといっても過言ではないのである。それが一体なぜそこまでの力を持ったのかという話で。

大体、ギルガメッシュは慢心王のはずで、という前提がおかしいのである。彼は、あの子ギルの姿も持っているのである。ということは、足して割ったら丁度いいというか、少し子ギルに勝ってほしいなあと思ってしまうのは致し方のないことである。

 

王になる者は王の器を持っている。

それ自体はアルトリアも何か感じたらしく、私と目が合うとうなずいた。

 

「先ほどの三名ですが、私は、アーチャー、ランサー、ギルガメッシュを推薦します」

 

アルトリアはそう言った。その顔は既にあの日の――アーサー・ペンドラゴン、そう、セイバーとしての表情。

凜としたその表情、決意が見て取れる。何があるというのだろう、私は絶対に入れられる運命にあるのだとかランサーが口走ったがこの際無視する。何故この三名なのか、である。

私は置いておかねばならないらしい、私が最も外れるべきだと思うのだが。

 

まず、ギルガメッシュ。

その子、という表現から見て、おそらく対象は子供なのだろう。ならば確かに、ギルガメッシュは子供好きなところがあるし、ちょっと慢心し過ぎになるかもしれんが、守るという点においては絶対の信頼すらおける男である。担い手でないとはいえ、すべての宝具を持つ男である。

 

次に、ランサー。

守ると言ったら、生き残ると言ったらこの男だ。リアルラックは確かにどん底だが、それでも十分すぎるほどにこの男は強いのだ。

そして何より、支えるというよりも、背中を押すという立場の者がいるのはいいかもしれない。

 

なんだ、この記憶は――?

まさか、私は分霊ではなく本体丸ごとで行こうとしているのではないか?

それならばこの状況に辻褄が合う。だって分霊一体助けたくらいで何も本体の英霊に影響はない、すべてはただの記録になり本を読むがごとく我々は知るだけなのだから。

 

様々な分霊の記憶を持ち寄って、そうしなければ救えない者がいるということなのだろうか。それとも、そちらの方が都合かいいということなのだろうか。

私にはわからない。

ただ、これから行くところにいる人物を救うこと――それが、正義の味方を目指す私の――いや、オレのやるべきことなのだ。

 

「では私も。やはり、アーチャー、ランサー、ギルガメッシュですね」

「そうね」

『同感だな』

 

ギリシャ勢はアルトリア――セイバーと同じことを言いだした。

そもそもセイバーのラックはBだったはず。ああ、彼女が言った時点で皆答えは決まってた。そのメンツで行ってきやがれと言わんばかりの視線。

アサシンがいないため七名しかいないサーヴァント。

四名に指名を受け、私たち三名は、その異世界へと赴くこととなったのだった。

 




え、何も始まってない?
しかもギルガメッシュが誰コレですね。
すみません。子供好きとか、オリジナル全部持ってるアーチャー・ギルガメッシュと全部贋作のアーチャー・エミヤシロウとか、もうアッシュとルークに見せてやりたいって思ったらこうなってました。
アサシンがいないのは仕様です。
ガイは今回はエミヤの指導の下で子育てになるので(本人も教育されますが)ルークはちゃんと時間と余裕をもってしっかり学びたいこと学んでいきます。

作者はFate/Zeroで見せたギルガメッシュの王の器を表現したい。だが表現力が足りない(´;ω;`)ウッ…

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