やはり俺の夢の世界は間違っている。   作:コウT

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由比ヶ浜からの電話を頼りに千葉駅にきた比企谷だったがそこで
偶然にも一色と会ってしまう・・


一色いろははここに宣告する

 

 

 

まだ肌寒い気温で太陽も出ているが全然暖かくならない。

そんな中俺は千葉駅にいる。

相変わらずの活気で正直うっとおしい。

てか毎回みんな千葉駅集合ね!っていうけど

千葉に千葉駅っていったら京成千葉駅、西千葉、東千葉・・

いやもうこの辺りでやめておこう。

 

 

 

 

今日、俺がここに来たのは昨日の由比ヶ浜で電話からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・夢の中?」

 

 

 

「うん!夢の中」

 

 

 

はっきりとした口調でそう告げる由比ヶ浜だが

全く信じられん。いくらなんでもそうか!夢にいたのか!と俺の周りで信じられるやつ

は少なくとも・・・こいつしかいない。

 

 

 

「えーと・・つまりこれは全部夢だったということか、そうか」

 

 

「違うよ!本当に夢の中な」

と言いかけたところで急に大きなノイズ音が響く。

 

 

「ご・・め・・・ん、もうつなげ・・・ヒッ・・、千葉駅の・・・・ロッ・・」

 

ブツッ

 

 

由比ヶ浜が残した重要なメッセージ。

だがここで手に入れた手がかりはあいつが無事だということである。

そして手に入れた謎はあいつの発言である。

夢?・・夢の中にいるといったが現実そんなことできるのか?

夢の中に入る・・・うーんどういう状況かわからんが

それこそムンナを捕まえてみてもらうしか・・

 

 

そーいえば最後にあいつがいったメッセージ

 

千葉駅とロッ・・?いや・・ロッカーか。

由比ヶ浜があのひどいノイズ音の中必死に伝えてくれた手がかり。

 

 

千葉駅のロッカー。

とにかくそこにいくしか今はなさそうだ。

 

 

 

 

 

という状況だ。

てなわけで千葉駅についたがまず千葉駅の周りにはコインロッカーが複数ある。

これらを全て探すとなると面倒だ。

とりあえず一か所目の改札前のコインロッカーに着き、一つ一つは開けては閉めるを

繰り返している。

が何が辛いってこれ周りの人から不審な目で見られる。

いや確かに人と会うとき目が合うとすぐ避けられるよ!こんな濁った眼だし!

あとまあ色々ね!・・・・自分で言うと涙出てくるなこれ。

そんなやつがロッカーを開け閉めしているし何より改札前だから人たくさん通るし

そりゃあもう目につくこと。

 

 

とにかく早いところ終わらせないと警察やら駅員やら来られたら動けない。

と思った矢先、誰か近づいてくる。

おいおいまじかよ・・しかも見た感じ女の子じゃん・・あんな亜麻色の髪色で

ちょっとゆるふわっぽい感じでくりっとした瞳で。

なんだろこんな感じのやつを俺は見覚えがあるような気がする。

ていうかあの制服、うちの学校のじゃん・・・・うちの学校?

 

 

 

 

「不審者がいるって聞こえたから見に来てみたら・・先輩、とうとうそこまで

堕ちてしまいましたか・・」

 

 

まるでゴミを見るような目でため息をした一色いろはは俺の真後ろに立った。

 

「俺だって好きでこんなことしてるわけじゃない」

 

 

「じゃあなんでしてるんですか?」

 

 

「それはだな・・・」

 

 

 

まあ言えるはずもない。

一色も雪ノ下達の件は知っているが極力巻き込まないように

俺は配慮している。俺にもそんな優しさは持ち合わせているのだ、はは。

2P

 

 

「・・とりあえず」

といって一色は俺の右側のロッカーに行き空いているロッカーを開け始めた。

 

「お前何してるんだよ?」

 

「何って見てわかりません?先輩一人がそんなことしてたら時間かかるじゃないですか。

二人でやればすぐ終わるし周りの目も気にせずに済むでしょ?」

 

一色は会話をしながらも手を動くスピードは速くすでに7つめのロッカーだった。

 

「・・・こんなことをしている理由なんて大体予想はつきますけど

先輩一人でやったら通報されちゃうんでこういうとき私を頼ってください・・」

 

一色はしょぼんとした表情で今にも涙を流しそうに目をうるうるさせている。

 

「・・悪い」

 

「まあとりあえず私にこんなことさせるんですから

あとできちんとお話とあと何かおごってくださいね」

 

 

結局一色いろはは変わらなかった。

うん、まあわかってたけどね。

そうやって笑顔でニコッと作り笑顔するくらい表情を変えられるのは

あざとさとかではない気もするがまあ・・今回はね・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで結局一か所目のロッカーには何もなく二か所目もはずれ。

そして三か所目でもう残り3つというところまできていた。

 

 

 

「そろそろ何探してるか教えてくれてもいいじゃないですか・・」

 

一色は不満そうにつぶやく。

がそれには関しては俺も答えがわからない。探してる物がわかるなら

なんとなく予想はつくんだがうーん・・

なんせ千葉駅のロッカーというキーワードだけだ。

それで探すというのも困難なものだ。

 

 

「・・疲れたし休むか」

 

「ですね・・」

 

一色も少し疲れた顔をしている。

ずっと付き合わせてしまっているのだから申し訳ない。

 

「・・そろそろ教えてくれませんか?」

 

「・・何を?」

 

「とぼけないでください。雪ノ下先輩達のことですよ・・」

 

 

一色はちらっとこちらの様子を伺うように見つめてくる。

いつものあざとい様子とは違い少しためらいながらも

どこか不安げのある表情を隠せてない。

 

 

「・・・教えるも何も雪ノ下も由比ヶ浜もどこにいるかわからないし」

 

「じゃあなんでこんなことしてるんですか?

何か知っているからこんなことしてるんですよね?」

 

 

うーん・・

ここにきて俺の中で葛藤が始まっている。

ここで一色に昨日のことを話していいものかどうか。

一色を全く信頼してないわけではない、けど今ここで下手に情報を流すのは

得策ではないし万が一どこかに流れたらそれこそ面倒なことになる。

 

 

「・・いや・・だからこれは」

 

「どうして・・」

 

ふと一色を見ると目から溢れんばかりの涙を流しその声は涙の泣き声と混同している。

 

「どうしていつも・・私を頼ってくれないんですか・・?」

 

 

一色はそのままを涙を隠すかのように下を向いてしまう。しかし泣き声だけは

俺の心に静かに響いている。

 

 

 

思えばこいつはもう奉仕部の一員なんだ。

生徒会選挙がありクリスマスイベント、それ以外にもたくさんのイベントを

手伝い、いつしか奉仕部にも何度も顔を出し一色がいることが馴染みの風景にも

なっていた。

今回の件だってこいつなりに悲しんでくれていたし心配してくれていたのだろう。

 

3P

「一色・・・・すまん」

 

「謝るくらいには教えてくださいよ・・ばか」

 

 

 

どうしようもない空気がその場を包む。

ずっと泣いている一色、それを茫然と見つめることしかできない俺。

さっきからは通りすがる人が不思議そうにこっちを見る。

そりゃそうだ、周りからみれば俺みたいなやつが女の子を

泣かせているように見える、俺はどこまでいっても悪者にしかならない。

まあ今の状況は俺が泣かせているといっても間違いではない・・かな。

 

 

「えーと・・比企谷君?」

 

 

とりあえず何とかして一色を慰めて泣くのをやめてもらおう。

さすがにこれ以上晒し者にされるのはごめんだ。

 

「比企谷君?」

 

 

今は財布の懐がさびしいがここは一つどーんと奢ろう。

やだ、八幡太っ腹!・・・・・いや少し安いものにしてもらおう。

下手すれば今月残り3桁の所持金で過ごすことになる。

 

 

「比―企―谷―君!」

 

「うわっ!」

 

気付いたら後ろに人がいた。しかも女性!

ん?・・あれ、この人どこかでと思えば

 

相変わらずのピンで止めた前髪・・あ、ピンがちょっと可愛いのに変わっている

そんでおさげ頭にふわりとしたほんわか笑顔。

うん、完全にめぐ☆りんだね!、これ。

 

「もうさっきからずっと呼んでいるのに気づかないんだから・・」

 

とちょっと頬を膨らませているめぐりんこと城廻めぐり先輩。

大学生になって今日は黒のワンピースを見事に着こなしている、しかも

ちょっぴり肌の露出もあるので少しばかり大人なセクシーな感じが漂う。

 

がしかし、

「でも比企谷君に久しぶりに会えてよかった」

とニコっと笑うと相変わらずのめぐりん効果。ちなみに効果は

主にヒーリングとリラクゼー・・

 

「ところでどうして一色さん泣いてるの?」

 

俺が解説をしようとしたところでこの人はこの現場の痛いところをつく。

いやまあでもそりゃあ泣いてたら女の子なら心配するよね、うん。

ましてや元生徒会長ということもあり生徒会直属の後輩でもある。

ん?・・てことは俺、まずくないか?そんな後輩を泣かせた男を

懲らしめにめぐりん先輩はわざわざきたのか?え?

 

 

「ぐす・・先輩に傷物にされました」

 

「ちょっとー誤解しか生まないからやめろ」

 

めぐり先輩は何とも言えない感じであははと笑っている。

なんだろう、このやりきれない感じ。絶対誤解している。

 

「はは・・相変わらず仲いいね」

 

「いつも通りですよ・・てか先輩なんでここに?」

 

「あ、そうそう」

と鞄に手をやりごそごそと何かを探している様子。

 

「えーとえーと・・・あった」

と鞄から黒い袋を取り出す。え、先輩とうとうドラックに手を・・

 

「いやさっきそこでね、これをそこのロッカーの前にいる人に渡してほしいって

言われてそれで来てみたら比企谷君達がいたんだよね」

 

よかった!めぐり先輩がドラックに手を出して堕ちていくとか・・

なんか想像したらちょっと・・うん、悪くない。いやいや!違う違う!

決してそうなってほしいわけじゃないからね!うん!

 

ふと気づくと一色が泣きやんでおりへーと興味深そうに袋を見つめている。

 

「何入ってるんでしょうね?」

 

「さあ・・ていうか普通に考えてまともなもの入ってないだろ」

 

「とりあえず中見てみましょう、怪しいものじゃないかもしれませんし」

 

ひとまず先輩から袋を受け取り中身を取り出す。

 

「・・なんですかこれ?」

 

「いや俺に聞かれても・・」

 

一色もめぐり先輩も不思議そうに中に入ってた物を見つめる。

それはウォークマンくらいの大きさの薄い端末のようなものでイヤホンも刺さっている。

しかし特に操作するようなボタンがあるわけではなくただの端末のようなものとしか

言えない。

んでもって・・

 

「比企谷君・・・今なら間に合うからやめよう?」

 

めぐり先輩が袋から取り出したもう一つの物を見て今にも泣きそうな目で訴えてくる。

いや先輩、そんな顔しないでください、俺は違います。そんなドラックに頼らなきゃ

ならないくらい追い詰められてませんから。

 

そう、端末みたいなものともう一つ入っていたものは

小さく白いケースに入っておりキラリと先端を光らせて

数多くの子供を泣かせてきた凶器・・名を注射器と言う。

 

 

 

 

 

「先輩・・さすがにそれは私も止めざるを得ませんよ。今ならまだ間に合います

一緒に警察には行きますから」

 

「だから違うっての」

 

もはやドラックを頼んだやつに思われてしまい困惑している。

いやさすがに犯罪には手を染めないよ?

ちなみに日本では高校生のドラック所持で少年鑑別所送りとなる。

まあ所持しただけで俺の将来に傷がつく、うん。

ドラックダメ、ゼッタイ!

 

「てかこれ渡してきた人どういう人だったんですか?」

 

「あ・・なんか黒いスーツを着た男の人だったよ。

あ、そうそう。比企谷君宛てに手紙もあずかってる」

 

「手紙?」

 

そういってめぐり先輩はごそごそと鞄に手をやり白いメモみたいなのを

取り出す。

 

「はい、これ」

 

「どうも」

 

俺は受け取りつかさずペラっとめくる。

「「由比ヶ浜結衣様の代理人様

 

 

この度は当店の商品をお買い上げ頂き誠にありがとうございます。

本商品を使用する場合におきましていくつか注意事項がございます。

詳しくは注射器の入ったケースの中に同封しておりますので

ご確認ください。

またこの手紙はお読みになったら処分頂きますようお願い致します。

それではまた何かご利用の機会がございましたら

ぜひお願い致します」」

 

 

「先輩、やっぱり・・」

 

気付いたら隣で一色がじっと手紙を見つめている。

そして反対側にはめぐり先輩も。

いや近いですよ、君達・・いやそうではなくて。

 

「だから違うから・・大体こんなもん注文した覚えないし」

 

「確かに・・最初のほうに由比ヶ浜結衣様の代理人様って書いてあるから

これを最初に注文したのは由比ヶ浜さんかな?」

 

めぐり先輩が首をかしげながらつぶやく。

 

「・・先輩、もしかしてこれを探してたんですか?」

 

「え・・いや・・」

 

「はあ・・・ていうかもしかして先輩探してる物がこれだって

わからなかったんですか?」

 

一色がじーっとこちらを見つめる。

さっきの泣き顔はどこへやら。目の腫れも少し引いてるし

いろはす怖いよ・・

 

と一人だけ?マークを上に浮かべてるめぐり先輩。

何の話かわかっていないようだ。

 

「えーと・・」

 

何とか会話の切り込みをしようとするも、

「先輩、こういう危険物を一人で探してもし先輩が所持して

警察とかに声かけられたら間違いなく逮捕ですよ、逮捕」

 

「いやまだ俺、未成年だからせいぜい鑑別所行き・・」

 

「それでも!先輩一人でやるなんて危険すぎます!」

 

さっきと違って一色は結構怒っている。

うーん・・さっきの分のやつあたりのようなものも含めると

なかなか八幡へのダメージはでかい、

こうかはばつぐんだ!

 

「あの・・話が読めないんだけど・・」

 

ここでようやく会話の切り込みに成功しためぐり先輩に気づく。

一色はすぐにベラベラと説明し始めた。

まあなんていうかこれでまたあいつらを心配してくれる人が一人増えた。

それは正直言うなら悪いことだと考えている。

こういう問題は大事にせず極力広まらないうちに解決すべきなのだ。

ましてやめぐり先輩はすでに卒業している。無関係といってもいい。

 

「・・そっか・・雪ノ下さんと由比ヶ浜さんが・・」

 

事情を把握しためぐり先輩の表情が暗くなる。

まあそりゃあそうなるわな。

 

「比企谷君・・その・・大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ、俺は」

 

そう答えるしかできない。

結局のところ苦しんでいるのは雪ノ下と由比ヶ浜だ。

俺ではない。そんな二人の苦しみを理解することなど

到底できはしない。

 

 

 

 

あれからめぐり先輩と別れ俺は一色に探してくれたお礼に

いつぞやに行ったカフェまで連れてかれた。

まあこの子はとりあえず高そうなものを頼むことやら・・

 

「・・先輩」

 

「ん?」

 

「これから・・どうするんですか?」

 

「あー・・一応この袋の中身調べようかなと」

 

すると一色はスプーンを止めじっとこちらを見つめてきた。

 

「・・危ないことしませんよね?先輩までいなくなったりしません・・よね?」

 

ほら。またそういう顔になってる。

女の子がする寂しそうな顔に俺が弱いって知ってるだろ。

無視しようにもできないんだよ、俺は。

 

「・・大丈夫だから。そう簡単にいなくなったりしねぇよ」

 

と俺は一色の頭を撫でる。こういうことに関しては年下の妹がいる分

少しばかりは得意。一色も撫でられて嫌な表情はしてないし

ここは熟年のスキルが役立った、うむ。

 

「・・信じますよ?」

 

「信じろ。俺が今まで嘘ついたことあったか?」

 

「それは否定できるような・・」

 

うーん、そんなに俺一色に嘘ついたことあったか。

嘘と欺瞞が少しばかり得意だがあくまで人の不幸には

させてないはずだ。・・多分。

 

「それと先輩にもう一つ聞きたいことと言いたいことあるんですよ」

 

「一つじゃねえじゃん・・なんだ、まず聞きたいことを言ってみろ」

 

一色はちょっとためらったあとで何かを決意したかのように

目を見開いて、

「先輩、雪ノ下先輩と結衣先輩どっち選ぶんですか?」

 

「ぐっ・・」

 

やめてくれ、その攻撃は俺に効く。

神威も最初はサスケやイタチの万華鏡と比べてれば

ショボいと思ってたけど戦争中で一気に開花したよな、あれ。

やっぱ両目揃ってないと本来の力は発揮できないということか。

 

「余計なこと考えなくていいですから教えてください。どっち選ぶんですか?」

 

どうやら逃がす気はないようです。

ここはうまくかわさねば。

 

「選ぶも何も・・別に変わんねえよ。特に何か言われたわけじゃないだろうし」

 

「・・先輩まさか気づいてないとかは言いませんよね?」

 

 

そりゃあまあ・・・

由比ヶ浜にいたっては言葉にしないもののある程度は理解できた。

雪ノ下はまだわからないしここで俺が思い込むのも単なる自惚れに過ぎない。

「でも・・そういうのに期待して違った時のダメージはでかいだろ?」

 

「でも先輩はいずれどちらか選ぶ必要があるってことですよ。

それが先輩が望んだ本物というものですよね?」

 

「まあな・・・」

 

「正直2月後半からなんとなくぎこちない感じの空気が流れてたのは知ってましたし・・。

てかそうだ。そのことで私、雪ノ下先輩と結衣先輩に聞いたんですよね」

 

「え?」

 

「確か3月の始めだったかな・・部活終わりで

先輩が用事あって早く帰った日ですよ」

 

 

 

 

「今日はこの辺にしときましょうか」

 

「うん・・そうだね」

 

 

先輩達は帰る支度をしている・・

今、行くしかないよね・・。はあ・・。

 

ガラッ

 

 

「こんにちわーよかったーまだ先輩達残ってた」

 

「ちょうど今帰ろうとしたのだけれど・・」

 

雪ノ下先輩ははあと小さいため息をつく。まあいつも通りというかなんというか。

 

 

「どしたの?いろはちゃん」

 

「・・今日は・・先輩いませんよね?」

 

「ヒッキーなら家の用事があるって言ってお休みだよ」

 

「なら好都合です。お二人にお聞きしたいことあったので」

 

「聞きたいこと・・?」

 

結衣先輩は不思議そうに見つめてくる。

雪ノ下さんはすでに帰り支度を終えて鞄を抱えていた。

 

「・・手短に頼むわ」

 

「はい・・じゃあ単刀直入に聞きますけど先輩のことどう思ってますか?」

 

「「え?」」

 

先輩達の声が重なり響く。

まあ最初はこんなところですかね。

 

「知ってますよ、雪ノ下先輩と結衣先輩が先輩のこと好きなの。

でも本当に好きなのかなって思うくらい最近の奉仕部ってぎこちない感じ

じゃないですか?だから・・一応聞いときたくて」

 

雪ノ下先輩も結衣先輩も私に目を合わせようとせずそっぽを向いている。

がしかし先に口を開いたのは雪ノ下先輩だった。

 

「仮にそうだとして何故あなたに教える必要があるのかしら?」

 

「そ、そうだよ。これは奉仕部の問題なんだからいろはちゃんには関係ないでしょ・・」

 

 

雪ノ下先輩はともかく結衣先輩までそれ言っちゃうか・・

ちょっと傷つくなあ・・

 

 

 

 

 

 

 

まあ仕方ない、爆弾投下しますかね。

 

 

「いえ・・お二人が何もしないなら私が先輩もらおうかなって思ってたんで」

 

「え・・」

 

ここでようやく先輩達があたしのほうを向いてくれた。

やっと話をする気になってくれたかな。

 

「先輩は正直悩んでると思いますよ。雪ノ下先輩の問題を助けていいのかとか

結衣先輩の気持ちにどう答えようとか。

正直先輩苦しんでるように見えます・・もうそんな先輩を見たくないですし

救ってあげたいんです・・それに・・私だって先輩のこと好きですから!!」

 

 

あーあ言っちゃった・・

でもこれで先輩達に少しは近づいたかな。

嘘は言ってないし別にいいよね?

 

 

「そっか・・いろはちゃんもヒッキーのこと・・・

うん、そうだね。わたしも・・ヒッキーのこと好きだよ」

 

「・・あなたの気持ちはわかったわ。

それに・・・わたしも比企谷君のことが好きだから」

 

「やっと言ってくれましたね・・その一言聞けただけでも

打ち明けたかいはありましたよ」

 

少しは楽になった気分だ。

と思いきや結衣先輩がここで対抗してきた。

 

「わたしも・・いつも優しくて私達を助けてくれて・・

他の人には褒められたやり方はできないかもしれないけど

少しずつ変わっていってそれでもあたしたちを見てくれて・・

その中でもちゃんと答えを選ぼうとしているヒッキーが・・すき」

 

 

結衣先輩の顔は少し赤くなっていた。夕日も出てきたので少しわかりづらいけど

でも結衣先輩はちゃんと言葉にしてくれた。

 

「・・彼はいつだってそうだった。人に憎まれるようなやり方しかできず

時には対立したときもあった。でも少しずつ変わっていった。

私自身が変わることができない時彼は助けようとしてくれた。

私は・・・そんな彼のことが・・比企谷君が・・すき」

 

雪ノ下先輩も負けじと対抗してくる。

その顔には小さい笑みがありこちらをしっかりとみている。

雪ノ下先輩は付け加えるように会話を続けた。

 

「彼は確かに言った。私の問題は私自身が解決すべきと。その通りだと思うし

間違ってはいない。でも・・私は彼の存在に頼り切っていた。

私の中で彼がいることが当たり前になっていた。だから・・」

 

雪ノ下先輩からは笑みがきえた。そして鞄がぼすんと落ち

結衣先輩とあたしのことを見つめ告げた。

 

 

「・・比企谷君を・・・・誰にも渡したくない・・」

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「てなわけでこの話はここでおしまい」

 

そう言って一色は鞄をもって立ち上がり、

「先輩、必ず雪ノ下先輩と結衣先輩を見つけて一緒に戻ってきてくださいね。

抜け駆けはしませんからちゃんとお二人が戻ってきてから・・私も

先輩に伝えますから」

 

そう言って一色は出口に向かっていき去って行った。

その姿を俺はぽかーんと見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして家に無事帰宅し俺は袋の中を取り出す。

端末のようなものと注射器。

一体なんなのかさっぱり予想つかない。

ひとまず俺は注射器の入ったケースを開ける。

まず注射器入ってるケースをまじまじと見ると注射器が収められている小さい箱のようなものが取れるようになっているのでそれを取ると

白い紙がでてきた。

これが注意事項ね・・。

 

とりあえずざっくばらんに読むことにした。

正直書いていることは如何にもドラックの取り扱い注意みたいなものだったが

色々とヒントになりそうなことが書いてあった。

 

 

 

さてと・・改めてこれをどう使うか。

注意事項を読んでわかったことは一つある。

 

 

これを使えば夢の世界に行ける、つまり由比ヶ浜の元に行くことができる。

 

 

がしかしリスクも多い。

そのリスクを背負ってまだ二人を助けに行かねばなるまい。

もうこの時の俺に助けに行かないという選択肢はない。

 

 

けど・・

 

俺の頭の中で一色の言葉が思い浮かぶ。

もし帰ってこれなければ彼女は悲しむだろう。

彼女だけじゃない・・戸塚や小町や平塚先生やあと材木座とか・・悲しむかなあいつ。

あとあれだ・・川・・・・川なんとかさんとか。

あれそう思うとそんなに人がいない・・てか両親が最初に出てこない辺り

日頃どれだけ愛されてないかわかるな、うん。

 

 

まあとにかくだ。

今はこれに頼るしかない、けれど必ず帰ってくる保証はできない。

さてもう一度自分に自問自答始める。

 

 

 

俺は雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣を助けにいきたいか?

 

ああ

 

なぜ助けに行く?

 

大切な部員だから

 

雪ノ下に至っては友達ですらないのに?

 

それでもだ。俺はあいつがいない世界を認めたくない。

 

自分も目を覚まさなくなるかもしれない、それでもか?

 

ああ。今助けに行けるはおそらくおれしか・・

 

 

とここで俺の自問自答は止まる。

今助けに行けるのは俺しかいない・・本当にそうか?

 

 

 

 

違う。

一人いるはずだ。

 

 

 

「もしこれから先私がいなくなっても絶対に私のことを探さないで。

もし探してしまったらもっと被害がでるから」

 

 

あの時の陽乃さんの言葉・・

つまり陽乃さんはこれについて知っていて

あの人自身も夢の中に行こうとしたのはないのか・・?

そしてもっと被害がでる、それはつまり自分を探して

夢の世界にまた来たら帰れなくなる人が増える・・

 

 

 

 

 

 

相変わらずなんでも知っている人だよ・・

まああの人に怒られる覚悟はできてるけど

元々俺が人の言うことをはいそうですかと

聞くような人じゃないことも知っているはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず行くか。

 

 

 


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