やはり俺の夢の世界は間違っている。   作:コウT

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続きです。
色々あり更新遅れました。
pixivでは最新話を投稿しておりますので
よろしければそちらのほうもぜひご覧ください。


よろしくお願いいたします。


由比ヶ浜結衣の涙の理由とは

そんなこんなで一色に連れられてやってきたのは

先ほどの公園である。

いや別に他の場所がなかったとかいうわけじゃないと思うよ..多分。

公園に着くとすでに陽乃さんがいて俺達に気付くなり

手を振ってきた。いや状況わかってるんですかねえ…

しかも陽乃さんだけではない。

 

「…えーとなんで雪ノ下がここにいるんですか?」

 

「何でって普通に連れ出したんだよ?」

 

連れ出したって平気で言うがそもそも監禁させられてたんじゃなかったのか..

てかほんとに監禁だったのかすら怪しく思えてくる。

 

「そんなに引かないでよー

元々初めから雪乃ちゃんを連れ出すつもりだったんだから。

ただあの子が色々教えてくれるってことだから

話に乗ったふりをしてたってわけ」

 

「はあ..」

 

もはや唖然とすることしかできない。

しかし連れ出された雪ノ下本人は何やら元気がない。

いや元気がないというより様子がおかしい。

落ち込んでいるといういうよりかはその暗い表情は

絶望という言葉がふさわしいと言える。

 

「…雪ノ下?」

 

「….」

 

 

返事がない、ただの屍のようだ。

が残念なことに生きているんだよな…生きてるよね?

 

「その..雪ノ下はどうしたんですか?」

 

「あーその..さっきの海老名ちゃん?あの子の話を聞いて

ちょっと落ち込んでるの。自分がガハマちゃんを精神的に

追い詰めたことをひどく悔んでるみたい」

 

まあ確かに海老名さんの話が本当ならば

由比ヶ浜の夢の崩壊に関与してるのは間違いなく俺達だ。

それに対して責任を感じない雪ノ下ではない。

由比ヶ浜相手ならなおさらだろう。

 

「その..雪ノ下」

 

 

再度声をかけるが返答はない。

まあわかりきっていたけど

それでもこれから由比ヶ浜と

会うのならばある程度は

話をしとかなければ

実際に会った時にパニックになることも

ありえるかもしれん。

 

「色々と聞いて混乱してどうしていいか

わからないかもしれんけど聞いてほしいことが

あるんだ。だからちょっと話さないか?」

俺の問いに雪ノ下は小さく頷いた。

それを見た一色と陽乃さんは

じゃあ終わったら呼んでねとその場から

距離をとった。

 

こんな時に気を使わせることをするのは

癪だが今はありがたくこの好意を受け取ろう。

 

「まあ…その…悪いな」

 

「比企谷君…なんであなたが謝るの…?」

 

謝罪の言葉を聞いた雪ノ下はようやく俺の方を

見てくれた。彼女の声はひどく乾いていた。

 

「色々と隠してて。

簡単には信じてもらえないとは思ってたから

言わない方が色々と都合がよかったけど

聞いちまったからにはちゃんと話すしかねえか..」

 

黙って俺の話を聞く雪ノ下は

不安そうな表情を変えなかった。

なんでだろうな..そんな顔をさせちまったのも

全部俺のせいなんだよな..

 

 

「お前ももうある程度話を聞いたと思うし正直に言う。

俺はお前が知っている比企谷八幡じゃない。

だからお前が知っている俺がここで何をしたかは

他人の口から聞いたことしか俺は知らない。

でも…ここで俺がしたことは決して許されることじゃない」

 

 

馬鹿だよな。

俺がこんな風に誰かに話すなんて昔なら考えられなかった。

けど昔とは違う。俺は自分で欲するものを見つけ

そして守りたいものを見つけたはずだ。

それがどういうものかは正直言葉にするのも苦しい。

なぜなら俺は欲しい物が何もしないでも

手に入るものだといつの間にか勘違いしていたのだ。

結局現実でも夢でも俺は俺なのだ。

夢の自分がやったことだから関係ないはずがない。

今、目の前にいる雪ノ下が例え夢の中の人物で

俺が現実で会っている雪ノ下とは違う。

でもそれがなんだ。自分の知ってる雪ノ下じゃないから

どうなってもいいはずがない。

俺は由比ヶ浜を救うためにこの世界に来たはずだ。

 

でも由比ヶ浜を救えればそれで解決なはずがないんだ。

由比ヶ浜の夢の住人も助けなければ意味がないんだ。

それが俺の大切な人ならば尚更だ。

 

 

「….私には信じられないわ。

あなたが違う世界の比企谷君で

ここが由比ヶ浜さんの夢の中の世界ってことも。

けど…比企谷君も由比ヶ浜さんも私が知っている

二人ではないってことは….理解してたわ」

 

ようやく口を開いた雪ノ下の言葉は

今の状況を受け止める覚悟ができたと

見ていいだろう。

心なしか声も少しは戻ってきてる。

 

「…その..お前には正直ここから先は

関わってほしくないし危険な目に会わせたくない。

だから..」

 

「それ以上は言わなくて大丈夫よ。

わかってるから…」

 

「雪ノ下..」

 

 

俺の夢にいた雪ノ下雪乃。由比ヶ浜の夢の雪ノ下雪乃。

どれも同じ雪ノ下雪乃なのにこんなにも違うのかというくらい

目の前の雪ノ下雪乃は辛い表情をしていた。

 

自分だけが何も知らなかった。

彼女にとってそれが一番辛いことなのはわかってるけど

これ以上ここの雪ノ下を傷つけるわけにはいかない。

由比ヶ浜を助けた後も由比ヶ浜の夢の中には

いてほしいと俺はそう願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お話は終わったようね。

それじゃあ雪乃ちゃんはここでお別れだね。

一色ちゃんに頼んだしまあ大丈夫でしょ」

 

「それで?ここからどうするんですか?」

 

陽乃さんと再び合流し一色に雪ノ下の護衛?を

任せた後俺達はどことなく市街地を歩いていた。

先ほどのマンションの近くなので海老名さんや

その仲間達がいないか警戒もしている。

てか仲間ってあれだよね確か。黒服A、黒服Bみたいな。

けどいちいちアルファベットごとに分けるのめんどいし

もうロケット団の下っ端でいいよ、全員。

勝負をしかけてきたら一目散に逃げるけど。

あ、でも陽乃さんいるから戦ってもらって

勝ったらお金だけもらって、

 

「あんまり変なこと考えると怒るよー」

 

「すみません..」

 

なぜ正直に謝ってしまったのか。

自白したのも当然ではないか。

 

 

「とりあえず比企谷君には

ガハマちゃんに会ってもらいます」

 

「はあ..まあそれはわかってますが

具体的には?」

 

「さっきの監禁場所に戻って探す」

 

いやいやいや。

なぜ再び敵陣へ突っ込もうとしてんだ、この人。

どこぞのお兄様みたいに壊滅はできんぞ。

同じお兄様でも基本スペックが桁違い過ぎなんだよなぁ…

 

「まあ私が囮になって連中は引きつけるから

比企谷君がその隙に探しに行けばいいよ」

 

「うーん..それしかないですかね..」

 

「そ。たまにはかっこいいとこ見してよ」

と俺の背中をバンと叩く。うーん..

じっと陽乃さんのほうを見るが笑顔でこちらを見つめている。

まあつまりは拒否権はないということだ。

仕方ない。こうなりゃどうにでもなれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰もいませんね」

 

「うーん..まあそのうち出てくるでしょ」

 

というわけであっという間に先ほどの監禁場所です。

わかりやすくていいでしょ!

改めてみると監禁場所はビルで三階建てのようだった。

先ほど俺が監禁されてた場所は窓は見当たらないことも

考えると地下もあると考えられる。

まあ監禁場所というのはあれなのでロケット団のアジトっぽい

建物だしロケット団アジトと命名しよう。

そんなアジトだがてっきり警戒されてると思いきや

周りには誰もいない。

海老名さんも黒服スーツじゃなくて下っ端達も見当たらない。

建物内にいるのだろうか?

 

「んじゃあとは任せていい?」

 

「まあいいですけどどうするつもりなんですか?」

 

「んーととりあえず正面突破かな」

 

「へ?」

 

そう言って陽乃さんはいきなりアジトの入口というか

ビルのエントランスに入っていった。

 

正面突破ってそのまんまじゃん..

 

まあしかしこれで連中が陽乃さんに集中するかもしれん。

お得意のステルスヒッキーを発動してこそこそと俺は

ビルの周辺をぐるっと一周することにした。

まあこういうのは決まってどこかに隠し扉があるもの…

がビルをようやく一周し終えたところで気づく。

ただのビルだ、これ。

別に違法建築とかもしてない何も仕掛けもないただのビルだった..

 

「いや..もう少し何かあるだろ」

 

何もないためひとり言を言ってしまう。

誰も見てないからいいよね、教室とかじゃないし。

とひとり言を言い終えたところでふと思い出した。

一色とここを出るときに非常口から出たはず。

あそこからならもう一度入り直せるはず。

 

俺はもう一度ビルの周辺をぐるっと歩き出すと

非常口を見つけた。

鍵がかかっているか心配だったが先ほど出た時に

内側のドアノブから開けたのでそのままのようだった。

中に入っていくとそのまま地下に続くと思われる階段があり

先ほど出た時の記憶を頼りに進んでいく。

とりあえず無事地下室まで降りれたが誰もいない。

周辺を見渡すが会議室と書かれた部屋に

そのまま奥にまっすぐ進むと再び道が左右に分かれている。

右は恐らくだが先ほど俺が捕まってた監禁部屋だ。

てか普通のビルに監禁部屋って...。

うーんさすがに会議室には誰もいなさそうだし

そのまま奥に進み監禁部屋とは反対の左の方に

進むことにした。

 

すると先ほどとは別の階段を見つけた。

まあここが正規の階段だろう。

だってさっきの非常口だったから非常用階段だろうし。

とりあえず誰もいないことを確認し慎重に登っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、三階まで着きました。

まさか誰にも会わずに最上階につけるとは思いませんでした。

いくらなんでもこういうとこって誰かしら配置しとくものじゃ

ないんですかねぇ…

まあ好都合なのでこのまま階段を登り切り三階に到着。

 

先に目に入ったのは恐らく事務所スペースと呼ばれる場所だろう。

 

オフィスデスクが並んでおり他にも会議室やらシアタールーム…

ってこれただの会社の間取り紹介じゃねえか。

 

つか誰もいねえし。

 

とりあえず進んでみるが事務所スペースには誰もいないようで

続いて会議室の扉を開けてみるが…いない。

 

残るはシアタールーム。そろそろ誰かいてほしくなってきたが

会っても何もできないのでやっぱ出るな。

そう思いながら扉を開けると残念なことに誰もいない。

がシアタールームの長机に白い紙が置いてあるのが目に入った。

 

俺は中に入りその紙を取る。

 

「「ごめんね」」

 

その一言だけだったが誰が書いたかは検討がつく。

彼女に違いない。

しかしもう部屋には誰もいない。もうどこかへ行ってしまったようだ。

その紙を俺は手に取りじっと見つめた。

 

思えばいつからだっけ・・あいつのことをそういうふうに思ったの。

あの事故で初めて会ってそのあと奉仕部で会ってそれからもう

何か月も楽しい日々を共に過ごしてきた。

 

三人で様々なことしたり時にはぶつかったり、時には泣いたり・・

まあなんか語ってしんみりするのは合わないので先を急ごう。

とりあえずシアタールームを出て階段に戻り一階に向かうことにした。

 

もしかしたらすでに制圧して余裕の顔で

「あ、なんかしんないけど勝った」とか

言いそうだし。

 

がしかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

一階につくとそこには誰もいなかった。

陽乃さんだけじゃない。誰一人もいない。

つまりこのビルには誰もいない。

 

いやビルだけか…?

 

不安になった俺は一度外に出ることにした。

けれど特に変化はない。

一体何が起きてる?

 

と思った矢先急にビルの方から何かが鳴っている音が聞こえてきた。

ビルに戻ると応接用のテーブルの上に携帯電話がありそこから聞こえていた。

 

誰かの忘れ物かと思うが不自然すぎるので

俺は携帯電話に近づいてパカっと開ける。

そこには非通知電話と表示されていた。

出るかどうか悩むがここは出ておいた方がよさそうだ。

 

「もしもし?」

 

「あ、、、えーと..」

 

その声の主は一言聞いただけでわかった。

間違えようもない。

 

「…由比ヶ浜か?」

 

「..うん。ヒッキー無事だったんだ..よかった」

 

心配をかけていたようだった。

まあ正直こっちのほうがもっと心配でしたよ、ええ。

由比ヶ浜消えてからは色々と言われたりもして

俺にも謎の疑いかけられて…おっとこれ以上はやめとこう。

 

「お前今どこだ?」

 

「…」

 

「答えろ。どこにいる?」

 

「…来てほしくない」

 

 

うーん出ました。きてほしくない。

彼女と彼氏が仲直りするときに彼氏側から無理に会いに

家に行こうとした時に出るセリフ4位らしい。

(ヘブンなんとかという雑誌参照)

 

てか来てほしくないって言われたならはいそうですかで

引き下がればいいのではと

思うが何故男はそれでも無理に会おうとするのか…

が今回ばかりは無理にでも会ってもらわねば困る。

 

「その..勝手にお前の夢の中に来たことなら謝る。

だから会ってくれないか?」

 

「…今ヒッキーのいるビルから少し歩いたとこにある公園にきて」

 

その一言を発した後電話は切れプープーと空しい音が響く。

携帯電話を耳から離して閉じた後テーブルの上に置いた。

とりあえず次の策は決まったので行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルの周辺グルグルと探してようやく由比ヶ浜のいる公園を見つけた。

てか公園ありすぎだろ。何でこの周辺だけで3つもあるんだよ。

由比ヶ浜の夢の公園率高すぎて近頃問題視されている子供達の

遊ぶ場所がないとか公園の遊具問題等は解決だな。

由比ヶ浜の夢は大きな社会貢献になってるのかもしれん、夢だけど。

そして俺は3つ目の公園に着きブランコに乗りながら小さく揺れている

由比ヶ浜を見つけた。

 

 

一歩ずつ一歩ずつ慎重に近づく。慎重になる必要性はないのだけれども。

 

「…由比ヶ浜」

 

「…ははは、やっぱ私の知っているヒッキーだね。結衣って呼んでくれないもん」

 

結衣ねぇ..この世界の俺と由比ヶ浜は恋人関係ならば名前で呼び合うのは当たり前だし

 

俺の夢でもお互い名前で呼び合ってた。

けれどここにいるのは現実の俺と由比ヶ浜だ。

 

ならばいつも通りの呼び方が当たり前だ。

 

「..ごめんね。あたしのせいでヒッキーに迷惑かけて」

 

「ああ、全くだと言いたいが俺も夢に溺れかけたから

あんまり強く言えねえわ」

 

「…そうなんだ..よく私の夢の中にこれたね」

 

「俺だけじゃ来れなかった。陽乃さんや一色もここにきてる」

 

「そっか…」

 

 

いつもの由比ヶ浜結衣の元気な声は聞こえてこない。

原因なんか聞く必要はない。全てわかっているはずだ。

 

「ごめんねって…俺に謝ったのか?」

 

「あ、見たんだ…姫菜に捕まってからやることなくてさ..

けどもしヒッキーに手紙とか渡せるならと思ったんだけど

何書けばいいかわからなくて..ごめんって言葉しか浮かばなくてさ..」

悲しげな表情の彼女はもう精神的にきついのだろう。

一言一言がその寂しさを語っていた。

 

 

 

 

 

ふと思ってしまった。

これまでの全てが夢であってほしいと。

今までのこと、このあとのこと。何もかもが夢で

この世界も全部夢ならいいなと。

けれど世の中はうまくいかない。

 

目の前にいる由比ヶ浜は今にも泣きそうな表情でこっちをじっと見つめている。

その表情から顔を反らせばすべてが終わってしまう気しかしなくて

俺も彼女の顔を見つめ返す。

 

「..ヒッキーはどうやって助かったの?姫菜に捕まって監視されたたんじゃ..」

 

「それを言うならお前もだろ」

 

 

 

「私は...もうわからない。何が起きてるのかもどうしたらいいのかも。

 

ただもう何もかもが嫌で..そしたらいつのまにか姫菜がいなくなって

外に出ても誰にも会わなくてもうここにいるのはあたしだけかと思ってた」

 

彼女は言い終えると一歩一歩足を踏み出し少しずつ俺に近づいてきた。

その間に彼女は俺の顔を反らすことなく俺の前に立ち止まると

ニコっといつもの笑顔を見せた。

 

「ヒッキー。私は・・ヒッキーが好きだよ。

きっとこの世界にはもう私とヒッキーしかいないんだから

二人仲良く一緒に暮らそ?」

 

彼女の笑顔は正直な笑顔ではなくそれが無理矢理作っているものだと

すぐにわかった。嘘が本当に下手だな・・お前。

 

「..悪い。俺はお前とは暮らせない。

俺はお前を現実に戻すためにここにきたんだ」

 

「...そっか。ヒッキーはやっぱりそういうと思ってたよ」

 

「ああ」

 

「….どう?私の夢。酷いでしょ?」

 

笑顔で言うその問いに答えは出せなかった。

目の前の彼女との距離は近いのになぜか遠く感じる。

何を言えばいいのかわからない。

言葉で説得?何を言えばいいんだ。

どうやって俺はここにいる由比ヶ浜を現実に戻ろうとする気にさせられるのか。

 

 

 

 

 

 

「ゆきのんから電話来たときは驚いたよ。

今までどこに行ってたのかって聞いたら夢の中っていうからさ。

初めは驚いたけど実際に来てみるとほんとに夢の世界なんてあるんだなって。

でも思ってたのと全然違った。ここにいるヒッキーやゆきのん、他のみんなは

私の知っているみんなじゃなかった。ヒッキーと付き合えたのは嬉しかったよ。

ずっとそういうふうになりたいと思ってたから..

でもゆきのんと隼人君を学校から追い出すことになった時あたしは止めることが出来ず、むしろヒッキーに協力して追い出そうとしていた。

バカだよね・・ゆきのんを助けにきたのにゆきのんに酷いことして..」

 

言葉を発しながら彼女の目からぽろぽろと涙が流れていた。

俺も同じだとは言えなかった。俺は自分の夢に溺れそのまま夢の中に依存しようとしていたのだから。

本心がどうかはさておきどんないい形であれ夢は夢だ。

そこにあるのは全て偽物でしかない。だからこそ俺は夢がどういうものかを知っているつもりだ。

対して由比ヶ浜は最初からここが偽物だと気付いていた。だからこそ違和感に合わせようとして本来の自分を隠して俺の馬鹿な行動に加担させてしまった。

 

「だから罰があたったんだよ。

ここのヒッキーが私を捨ててゆきのんを選んだのもきっと正しい選択なんだよ。

私じゃ..ヒッキーの隣にいる資格はないよ」

 

「..それこそお前の勘違いだろ。

お前はここにいる俺が違うやつだと気付いてた。

だから..そのなんだ。お前が知っている俺じゃ」

 

「じゃあなんで!!なんでゆきのんを選んだの!?

本当は夢でも現実でもゆきのんのこと好きなんでしょ!?

私よりも大好きなんでしょ!!」

 

溜めていた爆弾が急に爆発したかのように彼女の言葉に衝撃を受けた。

誰かを好きになる。それは正直過去に捨てたことだ。

自分が傷つくことだけのことで何の意味ももたない。

ましてや奉仕部の二人は俺がこの一年近くで手に入れた

 

唯一の信頼できる二人だ。

だからこそ好きになることなんてありえないと思ってた。

ましてや向こうから好きになってくれるなんてもっての他だ。

 

「ねえどうして..?どうしてゆきのんのこと選んだの?

私じゃ..私じゃダメなの?ゆきのんより前から好きだったよ?

ゆきのんや他のみんなよりも...大好きだよ..なんで?」

 

「..すまん。

俺はその問いには答えられない。

 

雪ノ下のことが好きかどうかもお前のことが好きかどうかも

本心ではどっちが好きなのかもわからないんだ」

そういうと由比ヶ浜はそのまますがりつくかのように俺の服を掴み

なんで..なんで..と呟いていた。

 

それにしてもなんだ。嘘という言葉が今の俺にはあまりにも似合う。

本当はどっちかが消えるのが怖いから出せないだけだ。

雪ノ下も由比ヶ浜もどっちかと付き合えば

どっちかがいなくなってしまう。

それが怖いから答えを出したくないだけだ。

まったくいつまで経っても成長しないな..

 

「…姫菜が言ったけど夢って壊れたらもう二度と目が覚めないんだよね..」

 

泣いていた由比ヶ浜がふとつぶやいた。

 

その言葉が何を意味するのかはもう十分理解できる。

 

「..そんなことしても何も変わんねえよ」

 

「変わるよ..だってヒッキーと一緒にいられるもん。

ゆきのんに取られることもないし大好きなヒッキーと

ずっと暮らせるんだよ..」

 

彼女の切実な願いを叶える方法はある。

すでに壊れかけているこの夢は彼女の精神状態と同期しているとすれば

このまま負の感情が爆発すれば

すぐにでも夢は崩壊するだろう。

そうなれば由比ヶ浜も俺も永遠に閉じ込められたままだ。

 

「あ、そーだ。やり直せばいいんだよ。

私とヒッキーで奉仕部を作り直して

彩ちゃんやあと…メガネの人とか。

それでいて隼人君とか優美子とか

他にもとべっちや姫菜ともみんな仲良くして…

それにいろはちゃんや平塚先生とも協力して

依頼を解決して…」

 

「由比ヶ浜」

 

由比ヶ浜が語り続ける理想には

雪ノ下の名前がない。

雪ノ下雪乃を嫌悪している由比ヶ浜結衣。

そんなのはあってはならない。

そんなもの見たくもない。

由比ヶ浜が好きといって抱きしめ嫌々ながらも照れる雪ノ下。

その光景が当たり前なのだ。

 

「…雪ノ下を嫌いになったのか?」

 

「…なれれば楽だよ。ゆきのんのことを嫌いになれれば

すぐにでも消えてほしいと思えるよ!でも!…ゆきのんだよ…

無理に決まってるじゃん…」

 

再び顔を下に向けて涙を流し始めた。

本人もわかっている。わかってはいるけど言葉に出さないと

やり切れないと言ったところだろうか。

 

「ヒッキーは知ってる?私がこの世界を一度壊したって話」

 

「ああ、海老名さんに聞いた」

 

「…本当は一度じゃないんだ」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

「私ね…もうこの世界を味わうの六回目なんだ」

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜の言葉はその場の空気を一変させた。

六回?一回壊してるどころの話じゃないぞ。

てか夢って壊れたらすぐ再生すんの?

 

「もうヒッキーと付き合って隼人君とゆきのんを一緒に追い詰めて

ゆきのんにヒッキーを盗られて…いつの間にかまた一からやり直し」

顔をこちらに向けず由比ヶ浜は語り続ける。

俺はただただその言葉を聞くしかできなかった。

 

 

「そして六回目の今回。

現実の隼人君がこっちに来たのを知ったのは

隼人君が私に言いにきたんだ。

なんか現実では奉仕部が三人とも行方不明って

ことで大騒ぎになっててさ…隼人君は私を連れ帰った後はゆきのん、そしてヒッキーを助けるつもりだったんだけど

私はどうしていいかわからなくてさ..

隼人君に色々話しちゃって..

そしたら隼人君はゆきのんと私が接触することが

夢が壊れる原因って決めつけて姫菜にゆきのんを監禁するよう指示して…

私はゆきのんを助けようとしたんだけどなんか..助けたいのにどうしても

嫌な気持ちになっちゃって..ゆきのんが監禁されている部屋の前までいったのにドアの目の前でどうしても先に進めなくて..

そしたら姫菜に見つかってさ。

捕まっちゃった。姫菜に捕まってから今日になるまでずっと暇だったけど

姫菜が急に「見せたいものがあるんだ」と言って連れてこられたら

ヒッキーが部屋にいたからびっくりしたよ..」

 

涙ぐみながら話す由比ヶ浜が知る事実。

その一言一言が重すぎる。

由比ヶ浜がこんなにも辛いことを六回も経験していたことも驚きだし

葉山が現実からきて何とか解決しようとしたのも驚きだ。

最もあいつらしくないやり方をとったのは無理にでも由比ヶ浜を現実に

戻したかったのだろう。そう考えるのが妥当だ。

 

 

さてここで一度話を整理し直してみる。

由比ヶ浜は自分の夢に来てから俺と付き合って

付き合い始めた雪ノ下と葉山を

退学寸前にまで追い詰めたが俺が雪ノ下に告白され俺が由比ヶ浜を捨て

雪ノ下と付き合う。それが原因で夢が壊れる。そしてまた一から始まり

すでに六回目のループ状態というわけだ。

ただ六回目の今回は今までとは違い現実の葉山が来ていた。

由比ヶ浜から今まであったことを聞いた葉山は手段を選んでいる

余裕がなく雪ノ下を俺や由比ヶ浜に会わせないように監禁した。

そしてそれを救おうとした由比ヶ浜も海老名さんに見つかり監禁されていたと。

あとは知っての通りといったところか。

由比ヶ浜が葉山に言って葉山がそれを海老名さんに伝えた。

そうすれば色々とつじつまが合う部分が出てくる。

 

 

 

思った以上に由比ヶ浜の夢は酷すぎる。

由比ヶ浜が俺の事を好きだということが事実ならば

彼女にとってこれほど苦痛なことはないはずだ。

由比ヶ浜だって雪ノ下を救うために夢の世界にきたはずだ。

なのに何故こんなに辛い思いをしなければならないのだろう。

彼女が何か悪いことをしたのだろうか?

彼女がここまでの仕打ちを受けなければならない理由はなんだ?

少なくともその答えを俺には出すことが難しかった。

由比ヶ浜はさっき本心を言った。さっきまでの言葉が嘘だと証明するかのように思っていたことを全てぶつけてきた。

ではおれはどうする。もう逃げたりすることをやめるんじゃないのか?

彼女が直面した問題が重いから解決できないと?

この場を乗り切りたいが為にまた傲慢や嘘に逃げ出すのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて初めから答えは決まっている。

深く考えるだけでこんなの無駄だ。

一色にも言われたしな。

由比ヶ浜を救ってくれって。

 

 

「由比ヶ浜。そろそろ泣き止んだか?」

 

「…バカ。まだ泣いてるよ.てか顔ひどいから見ないで..」

 

「じゃあそのままでいいから聞いてくれ。

今年の二月さ..俺と雪ノ下と水族館に行ったこと覚えているか?」

 

「…うん。覚えてるよ」

 

「お前はあの時言ったよな。

全てもらうって…。

全部ほしいって言ったよな」

 

「..うん、言ったよ。今でもそう思ってるよ..」

 

由比ヶ浜が俺達にぶつけた本音。

そしてそれに対して三人は悩み続け

それでも答えを見つけるためにもがいた。

けれどいまだに答えは見つからない。

そんな現実に嫌気が指して雪ノ下は逃げた。

そして由比ヶ浜はそんな彼女を救おうとした。

いや違う。

彼女に自分自身の問題から逃げてほしくなかったのだ。

もしかすると由比ヶ浜が自分自身に依頼したのかもしれない。

奉仕部として雪ノ下を連れ戻したいと。

その気持ちを彼女は自分自身の夢で忘れようとしていた。

いや忘れるほどに苦しい思いをしていた。

ならば俺も自分自身に今依頼をしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜結衣を救いたい。

 

 

 

 

 

 

「お前の言ってることは具体的な言葉じゃなくて

正直..わからないこともあった。

でもわかることもあった。

だから俺達は自分自身の問題に対して向き合う覚悟を決めた。

俺達自身が奉仕部として自分の依頼を解決するって」

 

「…でも何も進んでないよ。

ヒッキーもゆきのんも…あたしだって..」

 

「ああ…でも本当は俺達わかってるんだろ。

わかってるけどそれをわかってしまえば

何かが壊れてしまうのではないかと不安だった。

だから答えを出すことをためらってきた」

 

思えば始めからそうだった。

雪ノ下の問題。

俺の依頼。

由比ヶ浜だって

奉仕部での例の勝負に勝ちたいと思っていた。

欲しい物を手に入れるために。

 

 

「だからこそ夢に逃げた雪ノ下を

お前はいち早く連れ戻したかったんじゃないのか?」

 

「…」

 

沈黙は肯定とみなすとはよく言ったものだ。

さああとはもう思ってることを

そのまま伝えるだけだ。

別に難しいことなんかじゃない。

ただ伝えるだけでいい。

 

 

「だから一緒に雪ノ下を救おう。

こんなわけわからん夢から抜け出して..

現実と向き合おう。

まあなんだ。俺がこういうこというのは

性に合わないってのはわかってるが..

やっぱ言葉にしなきゃ伝わらないものって

あるからな…」

 

そういえば由比ヶ浜だっけ。

いつの日か言わなきゃわからないことがあるって

言ってたの。

あの日だったよな..俺がお前達に本音を言ったのは。

てか今更思えばほんとに恥ずかしいけど

もうこの夢で十分恥ずかしいこと言ってる気しか

しないんでいいです、はい。

 

「でも..もし..もし」

 

「もしとかは言うな。

思うような結果にならないからこその人生だろ。

まあ..なるようになる」

 

 

 

 

由比ヶ浜がようやく顔をあげた。

 

もう泣いてはいないが頬と目の縁に泣いた痕跡がまだ残っているし

目も腫れている。

それでも俺の言葉に耳を傾けてくれたのだろう。

さっきとは違いすこし落ち着いて心配そうな顔でじっと俺の顔を

見つめている。

ちゃんと最後までいうからそんな顔すんなって。

 

 

「だからその…約束する。

ちゃんと..言うから。

考えて…答え言うから一緒に戻ろう?」

 

そう言って俺は由比ヶ浜に向けて手を差し伸べた。

由比ヶ浜を少しだけ微笑んで頷くとその手を掴んだ。

俺もほんの少しだけ微笑むと彼女は潤んだ瞳から再びぽろぽろと

涙がこぼれ両手を俺の肩に回してきた。俺はそのまま抱きしめると

彼女は再び泣き始めその泣き声は公園に大きく響いた。

自分の夢の中にいた由比ヶ浜とのデートで俺は思ってしまった。

本物がこういうものだと。

でも所詮夢なのだ。夢は結局夢でしかない。

それを現実にすることで本物が完成する。

それが多分俺が欲している本物なんじゃないかと

抱きしめる彼女の温かさと泣き声を聞きながら

俺は考えていた。

 

 

 

 

 

もう大丈夫か?」

 

「うん..ありがと」

 

ようやく泣き止んだ由比ヶ浜は俺から両手を離した。

顔をあげて笑顔を見せた由比ヶ浜はいつもの由比ヶ浜だ。

やれやれ..ようやく由比ヶ浜の夢もクリアといったところだ。

 

「でも..どうやってこの夢から

抜ければいいの?」

 

「え?お前知らないの?」

「えーと...説明書とか読んでなくて...」

 

 

おいおい取説は必ず読まないと。

契約書とかもちゃんと読まないといつ詐欺の罠があるかわからんぞ。

人のこと言えないけども。

てか由比ヶ浜も俺も夢の世界から抜け出す方法ないんじゃないの?

 

陽乃さん具体的な方法いってないよね?

何が長いからあとで教えるだよ。

肝心なことを後回しにしやがって....

 

 

 

「あ、ようやく終わった」

 

「先輩達ほんとにながーい」

 

聞き覚えのある声が公園の入口から聞こえてきたので

振り向くと陽乃さんと一色がこちらに向かって歩いてきていた。

 

「どこいってたんですか..」

 

「あーごめんごめん。いやさーいざビルに入ったら誰もいなくてー

比企谷君に伝えようと思ったんだけどなんか見つからなくて。

そしたら比企谷君が走ってどこかにいくの見つけたから

あとつけたらってわけ」

 

「はあ…」

 

要するに途中から面白半分ですよね、ええ。

呆れる通り越してもはや何も突っ込まんぞ。

 

「てなわけでガハマちゃん、おひさー」

 

「結衣先輩、お久しぶりです!」

 

「ひ、久しぶりです..」

 

気軽に挨拶する陽乃さんと

びしっと敬礼してあざとく挨拶する一色。

何か深い意味ありそうで怖い怖い..

牽制でもしてるんかね?

 

 

「あ、そうだ。それで陽乃さんに聞きたいんですけど」

 

「何々?お姉さんのことならなんでも答えちゃうよー」

 

「いえ、そういうことでは..」

 

と返すもいつの間にか目の前に立たれ頬をつつかれる。

ん?と笑顔で聞き返してくるがいつも通り手で払うと

えーと残念そうな顔みしてため息をつかれる。

なんで俺が悪いみたいになってんの..

 

「せーんーぱーい」

 

「ヒッキー..」

 

んで横を見たら一色が頬を膨らませながらこちらを見て

由比ヶ浜もあははと小さく笑うの心配そうに見ていた。

いや集団でいじめはよくないよ..

喧嘩は1対1って先生に教わったよね?

最もいじめと喧嘩って根本的な問題からずれてる気するが

議論したら朝まで語れる自信あるんで..べ、別にいじめられてなんかねえよ!

 

 

まあそんなやり取りをしつつ

陽乃さんに今回のことを細かく説明した。

 

「ふーん..私が知らないこともあるもんだ」

 

「それが意外だったんですよね..」

 

「私が何でも知ってるように見える?」

 

 

うん。だってどこぞの何でも知っているお姉さんに

キャラ似てるもん。どちらにしても恐怖感はあるけど。

 

「さて...どうしよっか。

ガハマちゃんは自分の夢だから問題なく

出れるけど他人の夢の中だから

私と比企谷君、一色ちゃんはアウトなんだよねー」

 

「え?どういうことですか?」

 

「あー言い忘れたけど

自分の夢の中からじゃないと

現実に戻れないんだよね」

 

どうしてこの人はそういう大事なことを今更言うのか。

もっと早くいえよ、この状況だから言うけど。

声に出せないのがあれだが。

 

 

しっかしまじでどうすんのー

ほんとに帰れないよ俺...

 

 

こんな感じで頭を悩ませていると

あのーと言いながら一色が手をあげた。

 

「別に帰れますよ?」

 

「へ?」

 

「だから自分の夢の中じゃなくても

別に帰れますよ?」

 

「いやだからどうやって..」

 

「これを使えば」

 

と言いながら一色はごぞごぞとスカートのポケットから

薬瓶を取り出した。え、何それ?毒薬?

ドラえもんのポケットから道具出すときの音楽みたいに

テッテレーとした感じの雰囲気とまるで合わない。

 

「まあこれ飲んで寝ればなんか夢との接続が切れて

自動的に目が覚めるらしいです」

 

「ほえー」

 

由比ヶ浜珍しそうに薬瓶を見ている。

陽乃さんも指で顎に触れつつ不思議そうに見ていた。

 

「てか一色ちゃん、これどこで手に入れたの?」

 

「持ってきたというより初期装備ですね、これとかもですけど」

 

と言ってアイフォンをとりだした。

しかも最新型の7じゃないですか。俺アイフォンじゃないけど。

 

「私が使ってる端末は主に現実との干渉を強くするために

夢の中でも現実と電話できるようにしたり

すぐに夢から戻れるように

色々とアイテムがあるらしいです」

ほう…さすがだね。

夢が壊れても問題ないというわけか。

そう、アイフォンならね!

 

「んー信じられないな。

てかその端末どこで手に入れたの?

君がどうやってここまできたのかも

お姉さん気になるなー」

 

うわー出ましたよ女性相手によく使われる

雪ノ下陽乃の特性の作り笑顔。

当然その笑顔の裏の心理を知った一色はひっと

怯え俺の裏に隠れてしまった。

 

「おい俺を盾に使うな」

 

「いやまあだって..」

 

 

「比企谷くーん。わかってるよね?」

 

 

当然俺もこの人に逆らえる状況ではないので

まあここはね..仲介役ということで。

 

「まあ俺もそこは気になるから話してくれないか」

 

「んーまあ先輩なら..えーとですねそもそも私が手に入れたというより

学校に届いたんです」

 

「届いた?」

 

「それも奉仕部の部室にです」

 

部室?今あの部室は新学期始まって以来誰も使ってないはずだ。

最後に使ったのは俺と陽乃さんが二人で話し合いをしたときくらいなはず。

 

「部室の前に小さい小包がおいてあって差出人不明です。

まあ落し物ということで生徒会で回収して気になるんで開けてみたら..

っていうわけです」

 

いや勝手に開けたらまずいでしょ。

落し物は交番に届けろといっただろ。ちなみに最近は

財布を届けても持ち主から「十万入ってたのにない!お前が盗ったな!」

と疑いをかけられ裁判沙汰になるとかならないとか。

怖い。見つけてもそっとわかりやすい位置に移動するだけにしようかな。

まあ多分届けるけど。

しかし陽乃さんは何かわかったらしく

 

「ふむふむ..なるほどなるほど」

と小さく頷いていた。

 

「何かわかったんですか?」

 

「まあ推測だけど。なんとなくはね」

さすがは何でも知ってるお姉さんカテゴリーの一人だ。

正直あげてみてもそのカテゴリー十人も満たないけど。

 

「で?とりあえずどうすればいいですか?」

 

「そうね..一色ちゃん。それ見してくれる?」

 

「あ、はい」

 

と薬瓶を陽乃さんに渡す。

陽乃さんはそれを受け取り珍しそうに眺めた後

「とりあえず今は信じるとしますか。

詳しくは帰ってから色々と調べるとして」

 

「はあ..で雪ノ下は?」

 

「一度帰ってからだよ。

 

ガハマちゃんも連れて行きたいけど..」

チラっと陽乃さんの視線は由比ヶ浜のほうにむけられ

うう..と小さくうなっている彼女を見た後、

 

「比企谷君はどうしたい?」

 

「..俺は連れて行きたいです。さっきもそういうふうに決めたんで」

 

「ヒッキー..」

 

「まあそりゃそっか」

 

ここで由比ヶ浜を連れて行かなければならないのは

俺の中では決定事項だ。

今更引き下がれと言われても簡単には引き下がらないだろうし。

 

 

 

「とりあえずまずはガハマちゃんの夢から出ようか」

 

「そうですね..あ、結衣先輩。電話番号教えてもらっていいですか?

念の為交換しといたほうがいいと思いますし」

 

「あ、そうだね。ちょっと待ってね」

 

と由比ヶ浜も胸ポケットから携帯を取り出して

二人仲良くキャッキャッとはしゃぐ声が聞こえる。

ん、まて。何故俺には携帯がないんだ?

 

「えーともしかして皆さん携帯をお持ちで?」

 

「「「うん」」」

 

と三人同時で返答が帰ってきた。

ええ..何で俺だけないの?いじめ?

夢でもそんな扱い?

 

いや待て。

確か自分の夢の中にはスマホがあったけど

もしかしてあれがそう?

え?わかりづらいよ。普通に夢の中の付属品だと思ってた。

 

「もしかして先輩ないんですか?」

 

「誠に遺憾ながら..」

 

 

全然遺憾と思わないが不公平なのは気に食わない。

 

 

「あー比企谷君のは多分何らかの事故で

元からないんでしょ。普通はついてくるはずなんだけどねぇ..」

 

事故じゃないんだよなぁ...

何かと難しくて気が滅入りそうだ。

 

「まあ先輩は携帯持ってても私ぐらいしか電話する相手いないんで

いいじゃないすか」

 

と由比ヶ浜と番号を交換し終えた一色が俺の目の前に来て

ニコっと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

いや歴史は動いてねえよ。

けど異常事態だった。

いきなり周り一体が黒くなり

由比ヶ浜や陽乃さんが急に消えた。

いるのは目の前にいる一色だけだ。

 

「な、なんだこれ!?」

 

「とにかくやばいですよこれ..」

 

一色は俺の腕をつかみ震えている。

いやまじで何が起こったこれ..

 

「陽乃さーん…由比ヶ浜―」

 

呼んでみるが何の返事もない。

 

もしかして由比ヶ浜の夢が壊れたか?

 

いやそんなはずはない。

だってその危機的状況は回避したはずだ。

じゃあこの状況をなんといえば..

 

 

「あ!先輩!あれ!」

と一色が指差す先に白い光が見える。

 

「行きますよ!ほら!」

 

と一色に手を引かれながら

そのままついていく。

白い光もだんだん小さくなっていくのが見えたため

急ぐ。

もうどうにでもなれ!と

俺達は消える寸前の白い光に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君

 

 

 

 

ヒッキー!

 

 

 

 

先輩!

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある三人の声が聞こえる。

 

そしていつもと変わらない奉仕部の風景も見える。

 

もう一度四人で楽しく笑いたいな..

 

 

 

 

 

 

こうして最後の舞台へ向かうことになるが

 

これが雪ノ下と俺にとって何を意味することになるのか

 

この時何も考えてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回はかなり長い為

ここまで読んでくださりありがとうございます!

結衣編完結です。

さて色々と今回は複雑な点がありますので

説明させて頂きたいと思います。

今回の話ですが当初では7Pで区切り二つに分けての

投稿予定でしたが

あまりにも完成するのが遅いので時間をかけて

大幅な一つの増刊号みたいにしました。

たまにはあってもいいよね…?

そして今回セリフが本当に長いです。

説明的な部分でセリフが長いということもありますが

普通に考えればこういうのはあまりよくないと思ってます。

ですが読んでる方にわかりやすさとそして現状の理解を

少しでもして頂こうと思いこんなふうに書きました。

こういう形になってしまったのはやはり自分の文章力不足だと

考えています。

今後はもう少し考えていきたいと思います。

さて色々ありますがここまでの統括もしつつ今後のお話をすると

そもそもピクシブやハーメルン以外にもなろうとかでオリジナル小説を

投稿していますが
今年中にはこの夢の世界編を完結予定です。
私自身色んな作家さんと最近知り合い色々勉強させて
頂いてもらってる上で色んな作品を書いてます。
特にイベントに向けて作ったりとか
どこかのサークルに入ってるとかではないですが
とにかくやるのが好きな人なので..

俺ガイル自体本当に好きな作品なので今回非日常設定で
どこかとクロスオーバーするわけでもない作品なので
読者の方からみたら?って思う部分もあると思い
大変申し訳ないと思ってます。

一応結末はすでに決めておりそれにどう繋げていくかも
構成はできているのであとは文章力の問題です。
さて長くなりましたがいよいよ後半です。

最後まで素人作者を温かく見守って頂ければと思います。




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