ⅡよりⅣが先なのはⅣの世界が舞台だから。
そしてⅡの登場人物は+からの流用。
少年は、遥かな昔に世界を絶望の底へと堕とした魔王を倒した「勇者」の血を受け継ぐ王子だった。
王子は平和を謳歌していた世界を再び絶望へと堕とそうとする闇を打ち倒す為に冒険の旅へと旅立った。
そして王子は同じく勇者の血を受け継ぐ仲間達と共に旅を続け、遂に悪霊の神々を呼び寄せようとしていた闇の大神官を倒した。
しかし、時は既に遅く、闇の大神官は己自身を生け贄に破壊神をこの世に呼び寄せた。
幾度と無く死に掛けた闘いではあったが、三人は遂に破壊神をも打ち倒し、世界に再び希望をもたらした。…だが…………
―◇◆◇―
ワアアァァァァァァァァーーーーーーッ!!
ローレシア城では邪神官ハーゴン、そしてこの世界を破滅へと導く為に召還された破壊神シドーを倒し、見事世界を救ったローレシアの王子《ロラン》、サマルトリアの王子《サトリ》、そしてハーゴンに滅ぼされてしまったムーンブルクの王女《ルーナ》のロトの血を受け継ぐ者達。
彼等、勇者一行の凱旋を祝うパレードが行われていた。
「ロラン王子様ーー!」
「サトリ王子様ーー!」
「ルーナ王女様ーー!」
『バンザーーーーイ!バンザーーーーイ!ロトの血を受け継ぐ勇者達バンザーーーーイ!世界に、光が戻った我等が世界に栄光と繁栄あれーーーー!』
こうして国民達の完成を背に受けて、ロラン達は凱旋を果たした。
しかし……
―◇◆◇―
「ハーゴンやシドーが倒されて本当に平和になったなぁ」
「ええ、それも全てロラン王子様達のおかげよね」
「しかし、ロラン王子様は凄いよなぁ。サトリ王子様やルーナ王女様とは違い、魔法の力が無いのにシドーを倒しちまうんだからな」
「ロラン様ならきっとこの国の素晴らしい王様になるに違いない」
破壊神シドーが倒され数週間が経っても人々のロラン達を称える言葉は絶える事は無かった。
誰もがロラン達を誇りに思い、その輝かしい未来を疑う者は居なかった。
今、この時までは……
その"声"は何処からとも無く、人々の心の奥底に語り掛けて来た。
【本当にそうか?】
「ん、誰か何か言ったか?」
「いや、俺は何も」
「私も言ってないよ」
【人間が破壊の神に勝つなんて事が出来るのか?】
「…破壊の神に?」
「人間が…」
「勝つ?」
【ソイツは本当に人間なのか?】
「と、当然だろ!」
「勇者ロトの血を引くお方だぞ」
「それにロラン様は私達の為に世界を救ってくださったのよ」
【だが、奴は同時に世界を滅ぼす力も手に入れたんだぞ】
【何しろ、破壊神を破壊した男だからな】
【奴が新たなる破壊神に成らないと誰が言える?】
「ロラン様が破壊神に?」
「な、何を馬鹿な……」
「でも、言われてみれば」
「おいっ!」
「何を納得してんだ!」
「だってそれだけの力があれば世界を滅ぼす事ぐらい…」
「……」
「ま、まさかな…。ロラン様がそんな事を…」
―◇◆◇―
切欠は些細な事。
人は本能的に力を恐れる。
たとえ信じていた相手とはいえ、人知を超えた力を手に入れてしまえばその者を恐れるのは自然の摂理とも言えた。
だからこそ、人々はその声に心を傾けてしまった。
その声に深い闇が潜んでいた事も人々の恐れをより煽った要因でもあった。
それより後、人々は徐々にロランを避けるようになっていた。
話しかけても乾いた笑いで誤魔化し、時にはあからさまに恐怖の感情を露にする者もいた。
その態度にロランは気付いた。
人々は余りにも人知を超えた力を身に付けた自分を恐れていると、自分を拒絶していると、その自分を見つめる瞳にはかつてハーゴンやシドーに向けられた怒りや侮蔑などが込められていると。
そしてそして新月の夜、ロランは人知れずその姿を消した。
父やサトリにルーナ、ロトの兄弟達にすら何も告げずに。
ハーゴン打倒を誓い、城の兵士達や従者達、そして国民達の歓声に見送られたあの時とは違い、王子は人知れず故郷を、仲間達を、世界を、全てを捨てて旅に出る。
行く当ても、目的も、終りすらないであろう虚無の旅へと……。
生まれ育ったローレシア城を二度と振り返る事無く……
故郷を追われる様に旅立つそんな彼を見送るのは淡く瞬く星達だけであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
パトランド地方での幼い子供達の誘拐事件。
サントハイム地方での黄金の腕輪を狙う者達の暗躍や城の住人が一斉に消え去ると言う謎の消失事件。
ボンモール地方での隣国エンドールへの侵攻を企む事件。
キングレオ地方での野心家と王子による城の占拠事件。
世界各地で様々な事件が起こる中、エンドールより遠く離れた山奥にある小さな村。
此処では外界での出来事など知る由も無い一人の少女が今日も剣の修行に明け暮れていた。
閉ざされた小さな世界ではあったが、少女は幸せに暮らしていた。
父、母、師匠、村の人々。
そして唯一の、己の半身と呼んでも差し支えの無い女性と共に。
バシュッバシュッ!
キィンッ!
カキィンッ!
「そこっ!」
「甘い!こんな見え見えの隙に惑わされるな!」
「きゃあっ!」
薄暗い地下室で剣を打ち合っていた一組の男女。
少女が”隙あり”と斬りかかるが男性はその剣をあっさりと切り払い、逆に少女に向かって自分の剣を振り下ろす。
もっとも、真剣では無くただの木剣なのだが。
「どうだ、もう降参か?」
「いいえ、まだやれます!」
「ふっ、その意気だ。しかし、今日はこれまでにしておこう」
「あ、ありがとう…ございました」
そう言うと、少女は息も絶え絶えにしゃがみ込む。
何だかんだと、体力は限界だった様だ。
「はぁ、はぁ、はぁ、今日も勝てなかったよ~」
「はっはっはっ、そんなに簡単に負かされてたまるか」
「うぅ~~、明日こそ!」
「そんなに焦る事は無いぞローリア。私の役目はお前を一人前の戦士に育て上げる事。そしてお前は日々、確実に成長している」
「ほ、本当ですか!」
「ああ、本当だ。このままなら私から一本取れる日もそう遠くないだろう」
「い、一本…ですか。勝てる訳ではないんですね」
「はははははは!さあ、戻るとするか。ローリアも早く帰ると良い」
笑いながら地下室を後にする男性、剣の師匠ギルナスの後を追う様にローリアも階段を上り外に出ると、何時の間にか日は沈みかけて紅色に染まっていた。
家に帰ろうと小川沿いの道を歩いているとふと何処からか声が聞こえて来た。
『勇者様、勇者様…』
「え、誰?私の事?」
『勇者様、どうかお助けください』
そんな声と同時に小川の中から一匹のカエルが飛び出して来た。
「きゃぁっ!」
『驚かして御免なさい。でも怖がらないで』
「う、うん。で、どうしたの?私に何をして欲しいの?」
突然現われたカエルに驚いたローリアだが、別段恐れる事無くカエルと話をする為にしゃがみ込む。
『実は私はとある国の姫なのです。ですがある日、魔界より現われた魔導師によってこんな姿にされてしまいました』
「ええっ!そんな、酷い…」
『この様な姿では城にも居られず旅に出たのです。そして旅の中で一つの噂話を聞いたのです』
「どんな話?もしかして元の姿に戻る方法?」
『はい。その話によると悪意ある者の力によって姿を変えられた者は清らかなる心を持った緑色の髪を持つ少女の口付けを受ける事が出来れば元の姿に戻れると』
「わ、私!?でも確かに私の髪は緑色だけど…。清らかかなぁ、私の心って」
『はい、私の目に狂いはありません。お願いします、私を元の姿に戻してください』
ローリアはその言葉に疑いを向けずに考え込んでいるが、そんな彼女を見上げながらカエルの口元はプルプルと震えていた。
(うふふ、ローリアったら本当に純粋なんだから。少し考えれば嘘だって解るのにすっかり信じ込んでるわ)
このカエル、実は彼女の幼馴染のシンシアが覚えたての変身呪文・モシャスで変化した姿なのである。
だが、作戦成功とシンシアが元の姿に戻ろうとしたその時…
「う~~ん、分かったわ!」
『へぅ?』
「少し恥ずかしいけど困っているお姫様の為だもん!」
そう言うとローリアはカエルを抱きかかえ、目を瞑るとゆっくりと唇を差し出していく。
『ちょ、ちょっと待って!』
「ん~~~ん」
だが、緊張と恥ずかしさで頭に血が上っているローリアにはその言葉は届かず、徐々に二つの唇の距離は縮まって行く。
『ローリア、ローリアってばぁ~~~!』
「え、何で私の名前を?」
『私よ私!シンシアよーーーっ!』
ボウンッ
慌てふためいてモシャスを解いて元の姿に戻ったシンシアだが……
少しばかり遅かった。
チョン
お互いの唇が僅かではあるが触れ合ってしまったのだ。
「あ、あ、あああ…」
「あうう~~~」
「シンシアのバカぁーーーーっ!」
「バカはローリアよ!少し考えれば作り話だって解るじゃない!」
「わかんなかったんだから仕方ないじゃない!」
お互いに責任を擦り付け合う二人だが、実はそんなに気にしている訳ではない。
もっと幼い時にはキスなど日常茶飯事だったのだから。
「まったくもう。シンシア、今日は晩御飯食べて行く?」
「そうね、おジャマしちゃおうかしら。おば様のご飯、美味しいし」
「じゃあ、早く帰りましょ。お腹すいちゃったぁーー」
笑いながらシンシアと共に家へと帰って行くローリア。
その姿を赤く濁った眼で見つめる黒い鳥が居た事に気付くものはただ一人として居なかった。
=冒険の書に記録します=
【悲報】おきのどくですが、ぼうけんのしょはきえてしまいました
( ;ω;)でろでろでろでろでんでん
(`・ω・)と、言うわけで思いついただけの話。
ちなみにロランは放浪の際、修行不足でレベルダウンしている設定。