突発!乱の書き逃げ劇場   作:乱A

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この話は「ドラゴンクエストⅩⅠ~過ぎ去りし時を求めて~」でこんなEDを見たかったなぁという思いから書いてみた話です。
よって、ゲーム本編の重大なネタバレなどが含まれていますのでゲーム未プレイの方及びEDに辿り着いていない方はご注意ください。

後、小説というよりは台本形式に近い形ですので、ゲーム画面を脳内再生しながら読んでくださるとうれしいです。

※主人公の名前はあえて設定せずに勇者としています。「勇者」「勇者のつるぎ」などと勇者が乱立してややこしいけど勘弁してください。



ドラゴンクエストⅩⅠifEND

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神ニズゼルファを倒し、ロトゼタシアには再び平和な日々が戻っていた。

そんなある日、何時もと変わりの無い日常を送っていた勇者の下に共に戦っていた仲間、ベロニカとセーニャの姉妹がやって来た。

 

嘗て賢者セニカがした様に後の世に再び訪れるかもしれぬ闇との戦いの為に勇者のつるぎを命の大樹へと奉納しようと誘いに来たのであった。

 

「まあ、どこかのほほんとしているあんたに大事な勇者のつるぎを預けておくのが不安でもあるからだけどね」

「お姉さまったらまたその様な物言いを…。勇者様、お姉さまの言い方は兎も角、平和になったこの世界に勇者のつるぎは余りにも過ぎたる力です。やはり命の大樹へと委ねておく事が賢明かと」

 

勇者もその事は考えていた様で、エマに暫く旅に出る事を伝えた。

 

「帰って来てからそれ程経っていないのにまた旅に出るの?ふふふ、あなたは本当に旅が好きなのね。まあ、止めても無駄だろうし今度の旅は危険な物でも無い様だから怪我だけには気をつけてね」

 

エマやイシの村の人々に見送られ勇者はベロニカとセーニャと共に命の大樹へと旅立った。

 

 

 

―◇◆◇―

 

命の大樹へと辿り着いた三人は最奥にある大樹の神域を目の前にしていた。

 

「イシの村ではあんな言い方しちゃったけど勇者のつるぎはロトゼタシアの希望の象徴だからね。邪神との戦いが終わった以上、あるべき場所に返すべきだわ」

「そうですね。でも、短い間でしたがまた勇者様と旅が出来て楽しかったですわ。勇者のつるぎを奉納してしまえばお別れですがまた何時か会える日もあるでしょう」

「セーニャ、なに大げさな事を言っているのよ。二度と会えない場所に行くわけじゃないし、会おうと思えば何時だって会えるでしょう」

「そ、そうでしたね。何故でしょう?以前、何かとても悲しいお別れをした様な気がして」

「何よそれ?」

 

そんな話をしながら三人は大樹の魂を見上げる。

 

「未だに信じられないわ。この大樹の魂に無限の力が秘めれれているなんて」

「初めに光りありき……。神話の一説によれば元々この世界は闇に覆われた死の大地だったと言われています。其処に命の大樹の光が降り注いで緑が溢れる大地へと生まれ変わったと言われています」

「何だか懐かしい感じがするのも此処が私達の故郷なのかもね」

「ふふふ、そうかもしれません。さあ勇者様、勇者のつるぎを大樹の魂へ……」

 

勇者が勇者のつるぎを鞘から抜いて振りかざすと大樹の魂を覆っていた根が開き、その中へとつるぎを納めようとする勇者だが、何故か其処には既に勇者のつるぎが納まっていた。

 

「えっ!な、何で?何で勇者のつるぎが二本もあるの?」

「これは一体どういう事でしょう?」

 

慌てふためく三人だがその時、大樹の魂から眩い光が溢れ出した。

 

 

 

《勇者達よ、よくぞ闇を打ち払い世界に光を取り戻してくれました》

 

余りの眩しさに目を覆っていた三人は何処からか聞こえて来たその声に誘われる様に目を開く。

其処に居たのは光を纏った純白の竜だった。

 

「あ、あの、貴方は…いえ、貴方様は一体?」

《私の名は聖竜、命の大樹のもう一つの姿》

「えっ!?そ、それってどういう事?」

《遥かなる昔、私は邪神ニズゼルファと戦い、そして敗れました》

 

聖竜はその言葉を聞き、呆然としている三人に語って聞かせる。

遥か遠き刻の彼方での戦いの事を、ニズゼルファとの戦いに敗れ、闇に覆われたこの世界に倒れ落ちた後、神の民の力によって聖樹となってロトゼタシアを創造した事を。

 

《その後、このロトゼタシアを滅ぼさんとやって来たニズゼルファは先代の勇者ローシュによって倒されはした物の、浄化する寸前に邪に魅入られたウラノスにその命を奪われてしまい、その身体を封印する事しか出来ませんでした》

 

その事は勇者達も知っている。

そして過去に戻ろうとして失敗し、力尽きた嘗ての賢者セニカは時の番人に姿を変えられていたが勇者によってその姿と記憶を取り戻し、勇者のつるぎを使って今度こそ過去の世界へと戻って行った。

 

《私、そして勇者ローシュの成し遂げられなかったニズゼルファ討伐は見事貴方方が成し遂げてくれました。貴方の名は《ロトの勇者》として語り継がれて行くでしょう。そして勇者よ、せめてものお詫びとして貴方の心の中にある本当の望みを叶えて差し上げましょう》

「…せめてものお詫び?どう言う事でしょう」

「それより勇者、本当の望みってどういう事よ!世界が平和になったってだけじゃ物足りないっていうの?」

《それは…》

 

聖竜が身体より眩い光を放つと、その光の中で勇者の身体がぶれて、そして二つに分かたれた。

 

「えっ!?ど、ど、どういう事よコレッ!?」

「勇者様が…二人に?」

 

勇者から分かれたもう一人の勇者の下に宙に浮いていた勇者のつるぎが舞い降りて来てもう一人の勇者はゆっくりとそのつるぎを掴む。

 

《彼はもう一つのロトゼタシア、未来の世界から舞い戻って来た勇者なのです》

「未来の世界から…、もしかして勇者様、貴方は!?」

 

三人と向かい合う未来から来た勇者はバツの悪そうな笑みを浮かべ、彼と一体になっていた現代の勇者はベロニカとセーニャの姉妹に事の真実を語って聞かせる。

 

「それではあちらの勇者様は魔王となったウルノーガとの戦いで命を落としたお姉さまを生き返らす為に未来から来たという事ですか」

「バ、バ、バッッッカじゃないのあんた!私なんかの為にウルノーガもニズゼルファも居なくなった平和な世界からワザワザやって来るなんて!私なんかの…、私なんかの……為に…。ホントに…バカなんだから。……ありがと…」

 

怒りを露に未来勇者を責めていたベルニカだが、徐々にその瞳は緩み始め、最後には未来勇者の胸に顔を埋めて小声でお礼を言う。

 

「しかし何故勇者のつるぎまで此方に?セニカ様が過去に戻った際には勇者のつるぎは残ったままでしたのに」

《未来の勇者のつるぎはウルノーガの手によって魔王の剣へと姿を変えられていました。そして未来での戦いでウルノーガを倒した後に勇者の装備となり、共に此方に来たのです。ホメロスとの戦いで砕けてしまいましたが大樹の魂の力によって元の姿に修復する事が出来ました。本来ならば戻る事の出来ない未来の世界ですが二つの勇者のつるぎ、そして私の力を合わせればそれも可能です。さあ勇者よ、本来在るべき世界へとお帰りなさい》

 

聖竜が放つ光の中で勇者と勇者はお互いに向かい合い勇者のつるぎを掲げると二つのつるぎから放たれた放電がぶつかり合い、まるで時のオーブの様な球体を作り出す。

そして未来勇者がその擬似時のオーブにつるぎを振り下ろすと其処の空間が切り裂かれて未来への道が出来た。

 

勇者のつるぎを鞘に納めた未来勇者がその道を歩き出すとその背に向かって仲間達が語り掛ける。

 

「勇者様、貴方との旅を私は決して忘れません。未来の私にもよろしくお伝え下さい」

「ありがとうね、勇者!向こうに私は居ないけれどセーニャや他の皆と仲良くやりなさいよ!」

「エマを頼む」

 

共に旅をした姉妹、そして自分に向かい笑顔で答える未来勇者。

そして道が閉じると現代の勇者のつるぎが奉納された大樹の魂もまた元通り根によって覆いつくされる。

 

「行ってしまわれましたね」

「な~んか妙な感じよね。勇者は此処にちゃんと居るっていうのに」

 

そう言いながら勇者を肘で小突くベロニカ、俺が悪いのかとうろたえる勇者、二人を見ながら笑うセーニャ。

 

笑みを浮かべながらそんな彼らを見つめる聖竜はゆっくりと姿を消して行く。

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

魔王ウルノーガが倒れた事によって復活した命の大樹に見守られているロトゼタシア。

そして命の大樹から眩い光が放たれ、その光の中からケトスが雄叫びを上げながら飛び立つ。

 

 

=BGM・ドラゴンクエストOP・ⅩⅠバージョン=

 

カミュと妹のマヤは旅の途中でイシの村へと訪れていた。

マヤはデクとアイテムの買取の交渉をしており、カミュは勇者と会えなくなった悲しみは未だ癒えないが漸く笑みを浮かべる様になって来たエマと話している。

突如ケトスの雄叫びが聞こえたかと思うと光に包まれ、気が付くとカミュとエマはケトスの背に乗っていた。

 

 

 

復興していくデルカダールの街の中を父親のデルカダール王と共に歩いているマルティナ。

ふと、空を見上げると其処にケトスが飛んでいる事に気付き、その雄叫びと共にマルティナは消えた事に驚くデルカダール王だが、飛び去って行くケトスを見て笑みを浮かべてその姿を見送る。

王の思った通り、マルティナはケトスの背中に乗っており、其処に居たカミュ達に手を上げて挨拶をする。

 

 

 

滅びた後その地を離れていた国民達も徐々に戻って来て復興の兆しを見せて来たユグノア王国。

勇者の両親のアーウィンとエレノアの墓参りをしながら元の姿を取り戻して行く町並みを眺めていたロウは懐から何やら本の様な物を取り出した瞬間にその姿は光に包まれ、気が付くとロウもまたケトスの背に乗っていた。

驚いたその手からエッチな本が零れ落ち、カミュ達はそれに気付かない振りをして背を向ける。

そんな彼等の優しさが痛かったロウである。

 

 

 

勇者を見送った後、聖地ラムダに戻り修行を続けていたセーニャ。

墓標となっているベロニカの杖の前で今は亡き姉に語りかけているとあたり一面が影になって驚いて上を見上げると其処にはケトスが居り、光に包まれて目を覆い、再び目を開けると其処には嘗ての仲間達が笑顔で立っていた。

 

 

 

グレイグは一人過去に戻らせてしまった勇者の元に何とかして行こうともう一度勇者のつるぎを作る為にその材料となるオリハルコンを求めて世界中を旅をして回っていた。

空に浮かぶ天空の古戦場を見上げているとケトスが飛んで来て驚いた瞬間光に包まれケトスの背に乗っていて、カミュに抜け駆けをするんじゃねぇと責められる。

 

 

 

ソルティコの町に戻っていたシルビアは父親のジエーゴや世助けパレードの仲間達とダンスの練習をしていて、クルクルと回転をしていると光に包まれて姿を消す。

そしてビシッを決めポーズをすると其処には乾いた笑いで自分を見つめる仲間達が居た。

 

 

 

勇者パーティーとエマを乗せたケトスは命の大樹へと進路を取り、仲間達は”もしかして”という期待を”確信”に変えた熱い視線で命の大樹を見つめる。

 

命の大樹に降り立ち、神域へと辿り着いた仲間達の目の前で大樹の魂は根の封印を解き、そしてその中から一人の青年が現われる。

喜びの表情で駆け寄ろうとする仲間達をカミュは押し止め、エマに”早く行け”と目配せをする。

涙を流しながらゆっくりと近づくエマだが、もう我慢出来ないと足早に青年へと駆け寄る。

 

そしてエマの差し出したその手を優しく掴む勇者の手には勇者の紋章が優しく輝いていた。

 

 

~Fin~

 




(`・ω・)という訳で勝手に妄想した勇者帰還ENDでした。
しかし、実際に勇者が居なくなった時間軸はどうなっているんでしょうね?

(・ω・)ノシじゃあ、次の書き逃げまで元気でネー☆

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