アルゴのレクチャーで、俺たちは武器の種類や各種システムといったSAOでの知識を仕入れることができた(代わりにコルはほとんどなくなってしまったが)。
互いにフレンド登録をしてアルゴとは別れた。人と会うらしい。
手持ちが不用意になった俺たちは始まりの街近郊で狩りに勤しんでいた。
「やあぁぁぁッ!」バシッ
「はっ!」シュパパッ
マチ(小町)が振るう大剣(両手剣)がイノシシ型モンスターの《フレンジーボア》を両断し、ルル(留美)の細剣による刺突が、ボアの体に無数の穴を穿った。
見た目の派手さならマチ、華麗さならルルに軍配が上がるだろう。どちらかというと、俺はルルの方が好みだ。芸術的だよね、ああいう剣技。
かくいう俺は片手剣を選択している。斬撃、打撃、刺突のすべてに対応した汎用武器……というのはアルゴの弁。そこに惹かれた。
郊外にいるプレイヤーは見える範囲内では、俺たち以外にいない。これもアルゴ情報だが、ゲーム開始後に各プレイヤーがとった行動は2通り。攻略のために次の村へ旅立った者と、現状が受け入れられずに始まりの街に留まった者。前者を占めるのは元βテスターだという。俺たちのように街近郊でレベリングに勤しむのは稀なケースらしい。
だが、HPがなくなれば死ぬのだから、慎重になってもいいだろう。3人で協議して、街を出る際のレベルは5と決めてある。それまではボアやハチなどのモンスターから手に入るわずかなコルで食いつなぐこととなる。
「ハチ。そっちにボアが行った」
「了解」
ルルの声で思考の海から意識が帰還し、目前に迫るボアを認識する。剣を構えてエフェクトを宿しーー
「すらっ!」スパッ
片手剣ソードスキル《スラント》でボアを叩き斬った。
ーーー数日後ーーー
低レベルのうちは面白いようにレベルが上がる。ゲームが始まってから数日しか経っていないのに、もうレベルは5になっていた。
そして今日は旅立ちの日。始まりの街とのお別れの日だ。
「目的地はとりあえず次の村。そこでアルゴが教えてくれたレアな片手剣……《アニールブレイド》をゲットする。間違いないな?」
「うん」
「そのあとは私の細剣《ウィンドフルーレ》のドロップを狙う」
「ああ。できれば他のプレイヤーと協力したい。安全マージンはとれるだけとりたいからな」
「分かった」
「了解であります」
こくりと頷くルルと、ビシッと敬礼するマチ。方針を確認した俺たちは街を出た。
モンスターを狩りながらの旅だ。コルやアイテムを稼いでいく。得られるものはほんのわずかだが、そこは塵も積もればなんとやらだ。
この世界での戦闘にもある程度慣れ、ボアといった近郊のモンスターなら楽々狩れるまでになっていた。HPが0になる恐れより、慢心して足元をすくわれることを恐れているまである。
慎重に慎重を期して、村に到着するまで半日を要した。村に着いて、それを聞いたアルゴは爆笑。日く、『時間がかかりすぎダ』という。
……慎重に過ぎたと反省している。