邪眼の御子 ~光の御子の親友~   作:プロテインチーズ

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後日談みたいな感じです。
誤字報告いつもありがとうございます。


一つの神話の終わり

 アルスター伝説における「邪眼の御子」クニァスタは、親友であるクーフーリンに討たれてその生涯を終える。しかし主人公たるクーフーリンの物語はまだ終わっていない。

 魔神討伐の功績としてクーフーリンはアルスター中の人々から讃えられた。またそれはかつて敵対していたダーナ神族も同様だった。ダーナの神々は、かつて太陽神ルーが所持しており、クニァスタが受け継いだ天地焼却するは我が太陽(ブリューナク)を与えた。クーフーリンは師匠から与えられた槍を魔神討伐で失っていた為に新しい武具が欲しかったのだ。ルーの血を引くクーフーリンはクニァスタ以上に天地焼却するは我が太陽(ブリューナク)を使いこなした。

 一方、魔神復活の遠因となったコノ―トに対して、アルスター王コンホヴァルは、甥のクーフーリンとその息子のコンラとともに戦いを挑んだ。

 クーフーリンは天地焼却するは我が太陽(ブリューナク)で瞬く間にコノ―ト中を蹂躙した。叔父のフェルグスや従兄のコルマクともコノ―ト側につき敵対したが、師のスカサハと、子のコンラの助けにより勝利した。コノ―トの女王メイヴはコノ―ト軍を一騎当千で討ち倒したクーフーリンの前に現われ、助けを乞うた。しかしクーフーリンはその願いを切り捨て、槍でメイヴの身体を貫いたのだ。これがケルト中を混乱に導いた欲深い女王の呆気ない最期だった。

 

 敵の首魁であるメイヴを討ってもまだ戦いは終わらなかった。そもそもの原因はアルスターの勇士らをアルスター王コンホヴァルが失望させたのが始まりだったのだ。またコンホヴァルの凶行に国中が振り回されては適わないとしてスカサハとウアタハ、コンラらがコンホヴァルに反感を持つ勇士を率いて退位を迫り、クーフーリンを王位に就けようとしたのだ。

クーフーリンは自分を育ててくれた叔父と、師との間で迷うが、子のコンラと、クニァスタの娘であるマーハに説得されて自らがアルスター王となる事を誓い、コンホヴァルを無理矢理、隠居させた。さしものコンホヴァルもケルト最強のクーフーリンに脅されては、抵抗は無駄だと悟ったのか、あっさりと王位を譲った。クーフーリンも自分をここまで育ててくれた叔父に対して、義理を果そうとそれまでの生活と何一つ変わらない待遇を与えた。 

 アルスターの王は王位に就くと代々、リア・ファルと呼ばれる戴冠石を被らなければならず、その石は正当な王が立てば叫び声を上げ予言をするという。しかしイエス・キリスト誕生以降、効力を失ったとされていた。しかしクーフーリンが王位に就くと、再び叫び声を上げた。そして「未来は覆された」と一言呟いた。

 クーフーリンは4つの州に別れていたアイルランドを統一し、大陸から渡って来たローマの侵略にも、自ら戦士を率いて撃退した。後に「戦士王」と呼ばれ、イエス・キリストが磔刑にされた時には、ローマ帝国に対して激怒して、自ら単身で乗り込もうとしたが、妻やスカサハに止められてしまう。その日から若年期の荒々しさがなくなり、穏やかに国を治めるようになる。

 死後はダーナ神族として神々の列席に迎えられる。時が流れた現在でもアイルランドを世界の裏側から見守っているという。彼の死を期にアイルランドの神代の終わりが始まる。神々の一員となりながらも人の世には干渉せず、人々が自立出来る道を選んだ。

 クーフーリンが残したケルトの文化は、キリスト教の信仰の余波を受けても、現在でも継承されている。伝説、神話上の世界三大英雄の名前に真っ先に上がるのが、ギリシャのヘラクレス、ケルトのクーフーリンである。(三人目はギリシャのアキレウス、北欧のシグルド、アーサー王伝説のアーサー王など諸説存在する)

 クーフーリンが所持していたアルスター4つの神器を除いた武具はこの世界のどこかに隠された。アイルランドのあちこちで彼の遺体が眠っているという逸話がある墓があり、そのうちのどこかに残された武具が眠っている。現在でも最上級の聖遺物として魔術師達が探しているが、未だに発見には至っていない。

 

 

 

 

 

 彼は親友と過ごした日々を思い返していた。ケルトの地を駆け回り、様々な冒険をした事は彼にとって何物にも代えられない宝物だった。彼がいるこの場所は、世界の表側からも裏側からも閉ざされた影の国である。 瘴気に満ちたこの世界で彼は人間でもなく、怪物でもなく、英霊でもないあやふやな存在となっていた。彼がこの世界を治める王となるまでは自らの力量を試しに訪れた者も数多くいたが、時が経ち、神秘が薄れた現在の世界にはたどり着ける強者はほとんどいないだろう。彼は死なない。未来永劫、この影の国に一人取り残されながら、さ迷っている亡霊を刈りながら過ごしている。そこに後悔も絶望もない。あの時、彼女をその楔から解き放つ事が出来たのだから。時折、生前の思い出に浸りながら、彼は世界の表側を覗いていた。それを見て彼は自分の選択が間違っていなかったと強く感じた。

 親友の死により、神代の終わりが始まっても、彼はケルトの人々の営みを眺め続けた。彼が親友と敵対したように、そこには怒りや悲しみ、憎しみもあった。それでも彼は悲嘆に暮れる事はなかった。そこは彼が愛した親友や師、家族と過ごした故郷なのだから。

 らしくもない感傷はここで終わりだ。彼は立ち上がり、修行を再開した。死後とはいえ、怠けていると師匠から叱責が飛んできそうとだと感じたのだ。生気がないこの地に一筋の風が吹いた。不意にケルトの詩を彼は呟いた。

 

 

夜の風が髪を乱す

木々もなく、水もなく、空もなく

この地に暗闇しかなくとも

聴こえるのは望郷の音

 

 

 

 




アイルランド語辞典はあったんですけど、ケルト語辞典はなかったんです……すみません。私の史料の捜索不足です……

クニァスタのステータス載せときます。セイバーの場合です。
【CLASS】セイバー
【マスター】
【真名】クニァスタ
【性別】男性
【身長・体重】176cm・68kg
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷C 魔力B+ 幸運D 宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:A
神の血を浴びて得た対魔力がさらに強化された。A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【固有スキル】
魔眼:EX
無機・有機を問わず、対象の『死』を読み取る魔眼。魔眼の中でも最上級のものとされる。『モノの死』を形ある視覚情報として視て、捉える事が出来る。視るための目と、認識するための脳がセット。それ故にどちらかといえば、超能力に類する異能。セイバーはルーを殺す存在としてバロールの力を両眼に受け継いだ。普段は最高レベルの魔眼殺しで抑えている。

魔術:B
ドルイド僧と妖精に育てられたセイバーは自然干渉の魔術を得意としている。その腕はキャスター適正もある程。またルーン魔術にも精通しており原初のルーンにも明るい。半魔半霊のセイバーは人間が使える18文字以外の6文字すら習得している。

気配感知:A
遠く離れた場所の水源やサーヴァントの気配を感じ取ることが可能で、同ランク以下の『気配遮断』スキルをも無効化出来る。

神性:‐
神霊適正を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。魔神バロールの直系であるセイバーは神の血は濃いはずだがバロールは怪物として死んだ為に失われている。

神殺し:A
神霊特攻。神霊、亡霊、神性スキルを有するサーヴァントへの攻撃にプラス補正がかかる。最高神ルーを殺した偉業と死後、影の国の王として数多の、さ迷う神霊を殺してきた生き様の証

『神殺す死の呪い(タスラム)』
ランク:C~B+ 種別:対人宝具 レンジ: 最大捕捉:1人
古代ケルトで使用された敵の脳漿と石灰を混ぜて作られた投擲用の弾丸。それ自体が呪詛を帯びており、着弾と同時に周囲に破壊を撒き散らす。太陽神ルーがバロールを打倒した一撃。バロールの死体から生まれたその弾丸を師匠のアイフェがゲイボルグを模した槍に埋め込んだ。状況に応じて形状が変化する。どれも、また神殺しの逸話から神性適正が高い程、追加ダメージと当たり判定が上昇する。

セイバーの場合は敵を切り裂くという結果が確定以外がなくなる因果消滅の宝具。
アーチャーの場合は本来の投擲用の弾丸になり、速度はマッハ5。炸裂弾のように一撃で一軍を吹き飛ばす対軍宝具。
ランサーの場合はゲイボルグを模した槍に変わる。
アサシンの場合は相手の右眼に必ず命中させ、死の呪いを植え付けるという投擲用の短剣。

『太陽墜ちる呪いの邪剣(フォモール・マラッハック)』
ランク:A++ 種別:対神宝具 レンジ: 最大捕捉:1000人
バロールを殺したタスラムの剣に込められたルーに対する呪いを解放すると、所有者の魔力を呪いにより一時的に上げて、セイバー周辺の生物に、死をまき散らす。恐ろしいのは魔力を持った存在や人間に致命的な一撃を与えるが、非生物、魔力を持たない物質には影響を及ぼさない。また神殺しの逸話から神性適正が高い程、追加ダメージが上昇する。最高レベルの邪剣にしてあらゆる邪剣の原点。

『自己封印・破壊邪眼(ブレイカー・バロール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
『直死の魔眼』を封じるための宝具。所謂、魔眼殺し。普段のセイバーはバイザーとして使用している。元々は精霊により作られたもので精霊の加護がある。
セイバーから放出されるあらゆる気配、魔力を遮断させ存在そのものを薄くする。簡単に言うとランクB相当の気配遮断を習得させる。
また、セイバーに対するランクB以下の総ての攻撃の総数値を半分ほど減らし外部からの物理攻撃、魔術攻撃を緩和させる。常時発動型の宝具でセイバーが攻撃に態勢に移ると気配遮断は解かれ、『直死の渦(バロール)』を発動すると『自己封印・屠殺眼力(ブレイカー・バロール)』は強制的に失われる。

『直死の渦(バロール)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1~999 最大捕捉:1000人
現代の『直死の魔眼』が『劣化』と評される程の、比べ物にならない程の異能が宝具と化したもの。神代の時代に生きた魔神の身体能力を引き継ぐセイバーだからこそ使用できる最悪の邪眼。
死の線や点などの綻びから見た対象の『死』を認識し、そのまま死に至らしめる。ただし、視線のみで殺せるのは生物のみであり、無生物を殺す為には線や点に触れなければならない。
また、この宝具は、自らの体に散らばる全ての死の線や点を、片方の瞳に集合させ、死の渦とする事が出来る。両眼に死の概念を集中させたセイバーの身体は、死の概念がなくなり実質、不死身となる。

《人物》
豪快な性格が多いケルトの戦士にしては珍しく寡黙。ただその性格は真面目にして実直。クーフーリンからも肩肘抜けと言われていた。適正はセイバー以外にキャスター、ランサー、アーチャー、アサシン、バーサーカーがある。
ランサーだとフォモール・マラッハックの代わりにブリューナクを持ってこれる。
バーサーカーの場合、怪物としての側面で召喚され、誓約がないので魔眼使い放題になる。
アサシンの場合は、気配遮断と気配感知がA+のアサシンになる。

強さはバーサーカー>セイバー=ランサー>アーチャー>アサシン>キャスター

願いはクーフーリンと会って、魔眼を使った本当の一騎打ちをする事。






数年前のアンケートを持ち出すのも筋が通らないんですけど、続き書きます。今でも読んでる人がいるならですけど……

集計したらFGO1部5章が人気みたいですね。どういう話を書こうかは決めているので頑張って書いていきます。第4次は既にある程度書けているので多分、期間そこまで空けずに投稿します。(前科あり)

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