マートルの生存戦略   作:ジュースのストロー

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夏休み編突入です!

前回話題にあげた登場する恋愛フラグクラッシャーとは一体誰か?!
読んだら納得するかと思います。




夏休みの工作は分霊箱! 編
甘過ぎて砂糖吐く


 

 

 

過去の私は甘々だったと言わざるを得ない。そりゃあもう、盛大に自身を過信していた。そもそも始めに感じた既視感の時点で何故思い出さなかったのか、何故早急な対応をしなかったのか……我ながら情けなさで泣きたい位である。

 

「それでマートル、申し開きはあるかい?」

 

「いえ、面目次第もございません。」

 

現在位置は我が君の部屋である。即アバダ(息絶えよ)されないだけマシというレベルの機嫌の悪さの我が君に早々に見つかった私は、腕を引っ張られて我が君の自室へと連れこまれていた。ここで注意点だが、決してやましい意味ではなく、女生徒に体育館裏に連れ込まれるのと同じと考えて頂けるとありがたい。

私がすぐに我が君の元へと向かわず、コソコソと隠れていたのが悪かったのか、今までに類を見ない不機嫌さである。マグル界にいるから我が君も魔法が使えないと高をくくっていたが、その無駄に長い手足で拘束されたら手も足も出なかった。当たり前だ、何せ私も魔法が使えないのだから。体育の授業が箒乗りの練習しかない魔法使いの体力の無さを舐めないで頂きたい。ルイスは例外だ。彼は成人君子か何かである。

 

「うーん、謝ったからって直ぐに許したんじゃつまらないよねぇ。」

 

ベットに腰掛け、足を組んでこちらを見下ろしてくる我が君。私は勿論、床に正座待機である。我が君、そこは我が君の器の大きさを見せる所でしょう……寛大なお心で、どうぞ私を許して下さいませんか?

冷や汗ダラッダラで何を言われるのかと震えていると、我が君がこちらにその長い脚を向けて来た。

 

「我が君……?」

 

「舐めて」

 

…………。そ、それは流石に……ねぇ? 素足ならともかく(いや、それも嫌だが)、我が君は今靴を履いている。それを舐めろというのは……いうのは……いうのは…………行けるんじゃないか?

靴に付着しているのはそこらに落ちていたであろう泥や埃だ。そんなもの、程度はあれ口に含んでしまった事は今までにあるじゃないか。後は社会的問題だが、ここには我が君と私しかいない。お互い閉心術には秀でているし情報漏洩の心配もないのだ。

…………いや、いやいや駄目だろう私! いくら我が君と2人きりでもそこは人として失ってはいけない部分だ。(それに読者には絶対に引かれてしまうだろうし)

考えろ! 考えるんだ!! どうやったらこの屈辱を回避出来るのかを! 神経を研ぎ澄ませて我が君を食い入る様に観察する。何か、何かヒントが隠されてないか?!………………ここで、天は私に微笑んだ。何故か我が君の懐がウゾウゾと動き始めたのである。これはもしかして……!

 

『ねぇ、そこの貴女! 貴女の御主人の事を止めてくれない?』

 

『ん? なぁに?? 誰なの???』

 

我が君の服からやっとのこさ顔を出したのは、原作での大きさとは比べ物にならない位小さなナギニだった。

 

『私はマートル。貴方の御主人が私の事を苛めるのよ。だから貴女から何か言ってくれない?』

 

『ええっ?! 主様、苛めは良くないよ!!』

 

ナギニはトム・リドルがヴォルデモート卿となっても唯一愛していたと言える位には気に入っていた存在の筈だ。そして今のの幼くて無垢なナギニならきっと私の事を我が君から守ってくれるに違いない。

 

『何を言ってるんだい? 僕が苛め何てする筈ないだろう。これはちょっとした躾だよ、躾。』

 

『そ、そうなの? それなら仕方ないのかなぁ……。』

 

無垢な心に漬け込んで、凝りもせずに嘘を並べる我が君(人の事は言えないが)。このままじゃ、躾と称して屈辱的な事が許容されてしまう。

 

『そんな筈ないわ! だって彼は自分の靴を舐めろって言ったのよ!!』

 

『えぇーー、靴なんて舐めてもばっちいだけだよ……。』

 

良かった……。ここで 「私はたまに舐めるよ!」 何て言われたら、終わっていた。

 

『舐めるなら……ほっぺただよ!!』

 

すると、ナギニはするすると我が君の服をよじ登り、肩に到達すると宣言通りに我が君のほっぺたをチロチロと舐めた。これが蛇の愛情表現だったりするのだろうか……? 心なしか、我が君も嬉しそうである。

 

『さぁ! マートルも!!』

 

「へっ?」

 

『主様の事、マートルも大好きでしょ? なら、ほっぺたにねっ!!』

 

間抜けな声が出てしまったが、ナギニはお構いなく急かして来る。いや、好きか嫌いか言ったら何だかんだ我が君の事は好きではあるが……ちょっとそういうのは本気で勘弁したい。

 

『いや、ナギニ……人間と蛇では愛情表現が違うんだよ。』

 

ここで我が君がナイスな返しをして来た。流石です、我が君! 蛇の扱いも完璧ですね!!

 

『じゃあ、人間はどうするの?』

 

「ぶふっ!」

 

まさかのカウンターに思わず吹き出してしまった。我が君はどう答える? 答えたやつを実践しないといけないのなら、下手な事は言えない筈だ。

 

『え? えぇっとーーー…………………………頭を撫でるんだよ。』

 

視線を泳がせた後、真っ赤な顔を逸らして絞り出した答えは、何だか可愛らしかった。

我が君はプレイボーイの筈なんだが、この純情さは何なのだろうか。仮面を作っていれば何でも出来るけど、ナギニの前の素ではあまり耐性が無いとか……まさかね。

 

『よしっ! 早速やってみて!!』

 

こちらをじっと見てまた急かし始めたナギニ。うん? もしかして、もしかしなくても、私が我が君の頭を撫でるのだろうか??

これは…………一時的とは言え、主従の逆転が実現出来るかもしれない! 我が君も自分が撫でるつもりでいた様で、この展開に渋い顔をしている。

 

『ナギニ、ナギニ、今日は僕が頭を撫でても良いかい? マートルには今度撫でて貰おう?』

 

『えぇー、別にどっちでも良いけど……。』

 

『 えぇっ?! そん『ありがとう! 今日はこの後ナギニも沢山撫でてあげるね。』

 

我が君は一時的とは言え、主従の逆転を許さなかった。私が反論をしようとしたが我が君の言葉にかき消され、更にナギニに見えない角度で睨まれたのでもう何も言えない。

 

そして私の目の前の我が君は大きな溜息をつくと、やがて覚悟を決めたのか私に向かって手を伸ばしてきた。ここでドキドキしている心臓が、恋愛感情による緊張から来るのではなく、純粋な恐怖と怖いもの見たさの好奇心から来る辺りに私という存在の悲しき(さが)が見え隠れしている。

手がどんどん近付いてくるのがスローに感じられ、あまりもの緊張に思わず目を瞑ってしまう。しばらくすると頭に軽い重みが感じられ、雑に髪をかき混ぜられた。恐る恐る目を開けると、それはもう微妙な表情でこちらを見る我が君と目が合った。

 

『ナギニ、これでもう良いよね。』

 

『うん!私も撫でて撫でて!!』

 

それから我が君は、何か取り憑かれた様に一心不乱にナギニを撫で続けた。私はその間、先程までの私達のぎこちなさが嘘の様なラブラブさを見せつけられる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで君、パーセルタングなんだね……。」

 

「あっ、本当ですね……。」

 

すっとぼけてると思われたのか、怪しげにこちらを観察して来る我が君。それから私は必死に我が君のご機嫌取りをするはめになり、最終的に何故か私の孤児院で出されるご飯の半分以上は全て、ナギニの元に行く事になった。

美味しい、美味しいとご飯を食べて行く、ナギニのその笑顔がプライスレス……・:+°

 

 

 

 







マートルは服従の呪文に掛かっているので魔力を使えば強制出来るのに、それをしない我が君。意地の悪さが出てます。



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