ホグワーツの入学式って9月なんですよね。
マートルが成り代わったのが学年末試験の後の6月なので、成り代わった直後に試験という鬼畜設定にならずに良かったです。
恐らく原作改変で、トム・リドルがクィディッチのシーカー兼キャプテンをやってます。改変が嫌な人は注意してください。
レイブンクローのシンボルの大鷲が描かれた大きな旗が掲げられる。私を含め大勢のレイブンクロー生が青と灰色のボーダーのタオルやフラッグを持ち、初夏の暖かな日射しの中競技場に集まっていた。
そう、今日は寮対抗のクィディッチの試合の日である。
私が生きているお陰で、未だ秘密の部屋が開かれた事は知られていない。クィディッチはそんな日和見なホグワーツ魔法学校において、凄い盛り上がりを見せていた。
「今日は絶対レイブンクローが勝つわよ!」
「応援、頑張りましょうね。」
エイミーと私の女子2人で陣取った応援席は最前列で最も応援がしやすいが、最も危険な席でもある。たまに飛んで来るブラッジャーへの対処は自己責任だからだ。
「それにしてもコナーったら、実験ばっかりじゃなくて少し位応援に来ても良いのに……折角ルイスが活躍するんだから。」
「まぁまぁ、コナーのマッドサイエンスは今更じゃない?」
エイミーを嗜めながらも競技場に視線をやると、既に試運転で飛行している生徒の中にルイスを見つけた。ルイスは3年生だが既にチームでも期待のビーターである。鍛えられた肉体から繰り出す打撃は命中率が高く、とんでもなく速くて重いので、敵はまずルイスに向かってブラッジャーは打たない。次に打ち返されてやられるのは自分だと分かっているからだ。
しばらく眺めていると、こっちに気付いたのか手を振られたので笑って振り返しておいた。今日の試合相手のスリザリンは我が君が所属する寮で、しかも我が君がシーカー兼キャプテンを務めているという鬼畜仕様だが、是非ともルイスには頑張って貰いたい。私は前に女子トイレに置いてかれた事について、まだ我が君を許していないのだ。やり返す気はないが、ここで我が君が試合に負けたら私の余韻も下がる事であろう。
私が密かに闘志を燃やす中、実況席から放送が流れて来た。どうやらやっと試合が始まる様だ。
「さぁ、始まります! クィディッチ第2回戦、レイブンクローvsスリザリン!! 実況を務めさせて頂きます、アレン・バスカヴィルです。本日は特別ゲストの方にお越し頂きました!」
「特別ゲストで解説のコナー・クロスです、宜しく。」
会場が今まで以上に湧いたが、私達は全く展開に付いて行けない。
「は……あれ、コナー?」
エイミーが情けない声でこちらを見てくるが、私は頷く事しか出来ない。何故あそこにコナーが、てっきり実験をしているとばかり思っていたのに……。
「ところでコナーさん、スリザリンは前年度の優勝チームですがレイブンクローは勝てると思いますか?」
「うーん、難しい所だね。何せスリザリンにはあのトム・リドル選手がいるから、彼の戦術に如何にハマらずにやるかが勝利の絶対条件かな。」
「ならほど、やはりトム・リドル選手に注目していると……。レイブンクローのルイス・アーチャー選手も3年生ながら前回のハッフルパフ戦では大活躍でしたが厳しいのでしょうか?」
「いや、彼なら大丈夫だよ。」
「えぇと……それは何故でしょうか?」
「ま、見てて見てて。」
「はぁ……。」
コナーは何やら企んでいるみたいで、先程から競技場を見てずっとニヤニヤしている。選手が定位置に着いて、先生がブラッジャー等が入った箱を地面に置いた。この箱を空けたらゲームスタートだ。
「それでは行きますよ!」
「「 3! 2! 1! start!!」」
全員で行ったカウントダウンの後に箱が開くと、勢い良くブラッジャーが飛び出した。
「さぁ、早速ルイス・アーチャーがブラッジャーを打ち出しました! 女の子達の声援が凄い!!」
「……イケメン爆発しろ。」
ルイスの打ち出したブラッジャーは見事にスリザリンのビーターの1人に当たって相手は吹っ飛んで行った。あまりにも綺麗に吹っ飛び過ぎて、心配するレベルである。
「おおっと、その隙にクアッフルがスリザリンの手に! これは先制点を許してしまうのでしようか?!」
スリザリンのチェイサーがクアッフルを構えてゴールを狙う。ルイスは間にあわないが、もう1人のビーターが攻撃を防ぎにチェイサーに向かった。ところがここでバックパス。スリザリンのビーターに一旦クアッフルを戻す。
「おおっと、素晴らしいクアッフル捌きです!! チェイサーからビーターへと戻しましたが、チェイサーがゴール付近に回り込んでいます! これはチャンス!!」
「さて、それはどうかな?」
不穏な言葉を発したコナーに対応する様に競技場に突然現れた黒い影……いや、これは
「おおっとぉー!! ルイス・アーチャー選手がクアッフルを奪いましたぁ!! 素晴らしい箒さばきです! あまりものスピードに目では追えませんでした。」
「あれは僕が魔改造した箒だからね……これ位の事はしてくれなきゃ困るよ。」
コナーが口の端を上げて笑う。成程、コナーはこの魔改造した箒の性能を確かめるために1番試合が見やすい実況席にいるのか。相変わらずだな。
その後もルイスはその圧倒的な箒のスピードで相手を翻弄していった。ただ、流石我が君と言うところか、レイブンクローに得点を許さず未だどちらも0点のままである。
「おや、ここで試合が動きました。どうやらスリザリンのシーカーがスニッチを見つけた様です。一気に急降下して行きます。遅れてレイブンクローのシーカーも追いかけますが、トム・リドル選手に追いつく事が果たして可能なのでしょうか?!」
「ルイスがブラッジャー当てるから、きっと追いつくよ。」
するとタイムリーにルイスにブラッジャーが行き、それを我が君に向かって打ち出した。……私にはとても真似出来そうにない、恐ろしくて。ブラッジャーはみるみる我が君に近付き、避けなければ当たってしまうと思ったが、我が君は避けようともしない。確かに我が君に痛い目を見て欲しかったが、これは……と思ってると、すっと脇から出て来たのはスリザリンのビーター。
「これはまさか、序盤に退場したと思われていたスリザリンのビーターです! まさか円幕に隠れて機会を伺っていたとは思いませんでした!! スリザリンのシーカーに当たりそうだったブラッジャーを打ち返して、レイブンクローのシーカーは直撃です!!」
「うわぁ……。」
コナーが情けない声を出す気持ちも分かる。そのままレイブンクローのシーカーを置いて、我が君はパシッとスニッチを手に入れてしまった。
「スニッチを取ったのはトム・リドル選手です!! スリザリンの勝利です!!」
「くっそ、もう少し改良すべきか……。」
今は闇の時代真っ盛りではないので原作時程スリザリンアンチはなく、巻き起こる盛大な拍手と喝采。今日の試合は我が君のゲームメイクにやられてしまったわけだ。序盤で退場させられたと思っていたビーターの1人を円幕の裏に隠しておき、絶妙のタイミングで現れる。1回しか使えないが、そのタイミングさえ間違わなければ今回の様に相手は溜まったものではないだろう。
「わぁー、してやられたって感じだね……。」
「そうね、ちょっとリドルの事をなめてたわ。」
やっぱり我が君は凄い……。はぁ、私の命は何時まで持つのだろうか、不安である。
「あ、マートル僕の箒の手入れしておいてね。」
そう言って我が君の箒を渡された私だが、突然の我が君の暴君発言に驚き固まった。何せ、クィディッチの後お手洗いに行った後廊下に出るとそこには我が君がいて先程の発言である。
「わ、分かりました。」
「今日じゅうに僕の所に返しに来てよ。しっかり綺麗にしてね。」
「あの、我が君……怒ってます?」
雰囲気で何となくだが、機嫌が悪い様な……試合には勝った筈なのに……。
「マートル」
「っはいっ!」
「君は僕の下僕だよね? なら御主人様が負ける様に応援するっていうのはおかしいんじゃないかな……」
えぇ、でも私はレイブンクロー生なのですが……。でもこれを言ったら余計に怒られる気がするので辞めておこう。理不尽だけど。
「確かに我が君の言う通りです……私は間違った事をしていました。」
「ふんっ、なら今度からは気を付けてよね。今度やったら
プイッとそっぽを向く我が君は見る人が見れば可愛いと思うかもしれないが、言ってる内容があまりにも理不尽なのでその対象となる自分はたまったものじゃない。
「あのっ、我が君……今日の試合、おめでとうございます。」
「これ位、僕なら当たり前だよ。まぁ、あの箒は中々だったけどね。」
「ふふっ、それでも勝っちゃう我が君は流石ですね。」
「……ありがと。」
おぉ……この我が君なら、私でも可愛いと思うかもしれない。
「っ
「……っ! 何するんですか!?」
恥ずかしいからって
「っじゃあ私はこれで失礼しますっ!」
必死に呪文を避けながらも、挨拶だけはしっかりして逃げた私は偉い。
新キャラ登場!
アレン・バススカヴィル君です。クィディッチの試合の時にしか、基本出ないと思いますが設定としてグリフィンドール生で朝のニュースキャスターばりの爽やかさを持っています。美声なので、実況や司会は大体この人が任される。
マートルが本当に安心して過ごせるのは我が君がやられた後までないのかもしれません(ほぼ確定)…………
不憫設定にしておいて何ですが、私は彼女の幸せを願うばかりです。