霞「何してたんだよ」
作「主に仕事が忙しくて……」
霞「本当は?」
作「中国版艦これにハマってました」
「痛たた……」
ズタボロになるまで弾幕を撃たれた私は、傷ついた身体をなんとか引き摺って門に寄りかかる。単純な肉弾戦ならば、多少の相手ならば負ける気はしないけれど、こと弾幕ごっことなると話は変わってくる。なんせ、私はそう言った妖力の扱いが下手なのだ。
こんな事ならば、師匠にもっと教わっておけば良かったと後悔する。
こう言った弾幕や能力を使った勝負は、どちらかと言えば紫さんの得意分野だ。
先日、この幻想郷に館ごと移動した際に、久しぶりに再会したが、あの頃の面影を残した、素敵な女性になっていた。流石姉弟子と言ったところか。
「さて、侵入を許してしまいましたが。きっと後で咲夜さんにお説教されるんでしょうね……」
そう考えると、自然と涙が出そうです。
こんなになるまで頑張ったんだけどなぁ。
そんな事を考えていると、ふと遠くで小さいながらも懐かしい気配を感じる。
その気配は次第に大きくなり、確実にこちらへと近付いていた。
「え?ちょっ、なんで?!」
ココが紫さんの造った幻想郷と考えれば、
もしかして、この異変に対して怒っているのかな。だとしたら、咲夜さんのお説教どころの騒ぎじゃない。
下手をすれば再起不能になるまでお仕置きされる。
今から逃げようにも、もう既にその気配は近くまで来ていて、私の足では逃げる暇などない。このボロボロの身体ならば尚更だ。
「……あぁ、今日は厄日なんですね」
私は諦めの言葉を呟く。
暫くして、その気配の主は目の前に現れた。懐かしくも、1日たりとて忘れたことのない、私の憧れとも目標とも言える人。
「お久しぶりです」
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弾幕ごっこになった途端、さっきまでの精細な動きを失った門番を、多少の恨みを込めて完膚なきまでに叩きのめした後、私は館の中へと入った。
外観もそうだったが、中身も全面紅一色。この空間に居続けたら、きっと目を悪くすることだろう。そうなる前に異変を解決して帰りたいものだ。
玄関と言うべきなのだろうか、重い扉を開いた先には、2階まで吹き抜けの、広い空間があった。正面には階段があり、突き当たると左右にわかれ、それぞれ廊下へと続いている。
どちらに進むべきか悩んでいると、何処からか声が聞こえてきた。
広い空間にその声は響き渡り、その発生源が何処なのかわからなくなる。
「……まったく、あの門番はまた居眠りでもしているのかしら」
「門番?まぁ、確かに寝てたけど」
聞こえてくる声に返事をする。するといつの間にか階段の先に1人の女性が現れた。私が瞬きをした、その一瞬で現れたように思う。
まるであのスキマ妖怪みたいに、神出鬼没なようだ。
「アンタがこの館の主人かしら?」
「まさか。私はお嬢様にお仕えするメイド」
メイド、と言うのがどんなものか知らないけれど、少なくとも心優しく道案内をしてくれるようには見えない。
私は、今日何度目かのため息を吐く。なんでこうもすんなり異変解決させてくらないのかしら。
「外のアレ、あなた達がやってるんでしょ。迷惑なのよ、今すぐやめなさい」
「それはお嬢様に言ってちょうだい」
ふむ。つまりその『お嬢様』が主犯で間違いないようだ。
「なら案内しなさいよ」
「お嬢様を危険に晒すようなこと、するわけないじゃない」
そう言いながら、メイドは階段をゆっくりと降りてくる。その歩き方は、女の私から見ても上品で優雅だった。白い前掛けなんて着けてなければ、コイツが主人と言われてもなんの疑問も持たなかっただろう。
「しょうがない。無理矢理にでも案内させるか」
「出来るならばどうぞ?」
メイドは何処からか数本のナイフを取り出し、両手で構える。
「でも、あなたはお嬢様には会えない」
その瞬間、メイドは私の視界から姿を消す。なんの気配もなく、予備動作もなく、いきなり消えた。
私の勘が伏せろと告げる。その勘に従い、咄嗟に身体を伏せると、頭の上をナイフが通り過ぎた。一体どこから、いつ投げられたのかわからなかった。
「それこそ、時間を止めてでも時間稼ぎが出来るから」
「アンタ、手品師とか向いてそうね」
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妖精1匹を倒すのに、予想以上に時間をくってしまった。なんせアイツはバカな癖に、執拗いからな。
箒に跨り、湖を抜けると件の館が見えてきた。
「うへぇ。趣味の悪い色だぜ」
何処を見ても紅一色とは、どうやらこの館の人間とは美的感覚が違いすぎるようだ。
館を取り囲む塀。その1箇所には大きな門が作られていた。アソコが入口らしい。ま、バカ正直に門から入る気は無いが、門番なんかが居ないか、スピードを落として警戒する。
「誰も……居ないのか?」
これだけ大きな館で、これだけ大きな門なのに、門番すらいないとは、不用心にも程がある。
今回に限っては好都合だが。
私は塀の上を通り過ぎ、手近な窓から中を覗く。そこはどうやら書庫のようで、窓から見えるだけでもかなりの書物が揃えられていた。パッと見ただけでも、なかなかに珍しい本が並んでいて、魔法使いとしては興味が唆られる。
私は窓をそっと開け、中へと入り込む。外からは考えられないほどの広さを有する書庫は、どちらかと言えば図書館のようだ。天井まで届きそうなほど高い棚には、凡そ1日では読み切れないほどの量が並ぶ。その棚が片手では数え切れないほどあるのだから、驚きだ。
「これだけあるんだから、少し貰って……借りて行ってもバレないよな?」
そう思い、ポケットから1枚の風呂敷を取り出す。
目に入る背表紙を見ながら、気になった本を取り出し、風呂敷で包む。
こんないい場所に出会えるとは、なんとも今日はいい日だぜ。
そんな事を考えていたら、図書館の中心に机を見つけた。上には何冊もの本が高く積まれている。
その時、ふと声がした。
「アンタ誰?」
高く積まれた本の隙間から、紫色が顔を出す。一見するとパジャマのような格好をした、見た目は私とそんなに変わらない少女。
「私は普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ」
「魔法使い?泥棒の間違いじゃないの」
私が担いでいた風呂敷を指さして、この紫は失礼なことを言う。
「泥棒じゃない。借りていくだけだぜ、死ぬまでな」
「それを世間一般では泥棒って言うのよ」
失礼な紫は立ち上がると、1冊の本を取り出す。どうやら魔力によって浮遊させているようで、空中で動きを止め、勝手にページが捲られた。
「どうせ勝手に入ってきたんでしょ。忙しいんだから、さっさと帰ってよね」
「そうは行かないぜ。なんせこの異変を解決して、もっと本を貰って……借りて行きたいからな!」
美「あれ?私の出番、これで終わりですか?」
作「いやいや。流石にこれだけじゃないですよ?」
霞「でも、戦闘シーンとかは無さそうだな」
作「……」
美「……え?ホントに?!」
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