東方古神録   作:しおさば

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作「今回は幾つかの伏線を回収しようかと」

霞「それって自分から言っていいのか?」

作「まぁ、大丈夫でしょう」

霞「それなら良いが」

作「あと、紫ちゃんがキャラ崩壊」

紫「?!」


68話/助力と不死鳥

「帰らない?!」

私はあまりの衝撃発言に、驚いて声を荒らげてしまった。

折角ここまでやって来て、漸く師匠を見つけ出したというのに。

 

私達は今、案内されて師匠の家へと来ている。

まだまだ見慣れない、新しい洋館に師匠は住んでいた。

中心街からは外れている為、ひっそりとした佇まい。

そんな中で、師匠と姫咲さん、夢乃は呑気にお茶を啜っていた。

「何故ですか?!」

「なんでって……、まだ目的を果たしてないし」

師匠が言うには、ある人物を探していると。その男は夢乃の能力を奪い、師匠を瀕死の状況まで追い詰めたらしい。そんな男が存在するとは到底思えないけど。

「それで、貴女はなんでそんなに落ち着いてるのよ!!」

横で我関せずを決め込んでいる夢乃。さっきまで号泣しながら師匠の裾を離さなかったくせに。

「私はお父……霞様に付いていくだけですから」

「貴女、キャラクターがブレブレね」

しかし、その男を見つけない限りは師匠は神社へと帰ることはないのか。

「紫様、ここはその人物の捜索をお手伝いするべきでは?」

私の隣に座っていた藍が言う。確かに、師匠の手助けならば喜んでするのだが。今の私にはまだやるべき事がある。

「幻想郷の管理は誰がするのよ」

「紫様ならば両立する事もできると思いますが?」

この狐は無茶なことを……。そもそもこうやって師匠の元に来ることだって、かなり強引に時間を作ったというのに。

「私も微力ながら手伝わせていただきますし」

「……しょうがないわね」

「あのー。無理して手伝わなくても……」

「師匠は黙ってて!!」

全く。師匠に関係することは、全てが計画通りに行かない。

「師匠、その男の特徴を教えてください」

 

 

 

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全く、嫌になる。

この生活に慣れてしまっている自分自身に。

かつては鬼の母として恐れられ、日本だけでなく大陸までその名を轟かせたというのに。

皆が寝静まった夜。月に照らされながら、私は屋根に登った。

涼しい風が頬を撫でた。ふむ、気持ちがいい。

 

封印され、この身体になってから長い月日が経った。

この身体になった当初は、やはりその違いから普段の生活にすら不便だった。

それが今はどうだ。この身体にも、この生活にも順応してしまっている。

それを人は成長、もしくは適応と言うのだろうけれど。私はそう思わない。

これは『弱く』なったんだ。身体じゃない、心が。

あの日の思いを、あの男に対する純粋なまでの対抗心を、私はいつの間にか忘れてしまったのだろうか。

 

それでも良いと、思ってしまう私自身が、嫌いでありつつも、どこか心地よく感じていた。

俗に言う、丸くなった、と言うやつか。

「ふふ。あの鬼子母神がね……」

「えぇ、がっかりだね」

ふと、声が響いた。辺りには人の気配が無かったはずなのに。

見上げると、月を背に、炎で輝く翼を広げながらコチラを見下ろしている人影があった。

それはどことなく、不死鳥と呼ばれるそれの様に見えた。

「これが妖怪の頂点なんて、笑えないね」

「……誰だ」

感じ取れるのは霊力。つまりは人間なのだろう。しかしながら、知らない霊力だ。

「あの人が言うから様子を見に来たけど、つまんないね」

「どうやら人間のくせに、言葉が理解出来ないようね」

私は妖力を込め、一息に飛び上がる。一気に高度を上げて、相手と同じ目線まで上ると相手を観察する。見た目はまだまだ少女と言えるような歳に、何処か貴族と言われる人間達のような雰囲気を纏う。その言葉遣いは粗暴で、凡そ雅な出だとは思えないけれど。

「アンタさ、あの男と一緒に居て満足なのかい?」

「……何が言いたい」

「あの男と居る目的は何なんだよ。仲良く家族ごっこをすることか?」

そう言うと少女は手を差し伸べる。

「違うだろ?あの男を倒すのが目的だろ?忘れるなよ、見失うなよ。アンタは其処でのうのうと生きている器じゃ無いだろう」

「ふん。知ったような口を」

「あぁ、知っているさ」

煩い奴ね。今日は機嫌が悪いんだから、さっさと寝てしまいたいのだけれど。

私は拳に妖力を込め、息の根を止めようと間合いを詰める。

この程度の人間ならば、この一撃で十分。漸く霞が力を使い、これで私も存分に戦えるのだが。最初がこんな訳の分からない女だとは、興ざめだけど。

私の拳が触れる、その瞬間だった。

 

「その封印、解いてあげるよ」

 

 

 

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久しぶりに気分の良い朝を迎えることが出来た。

きっと久しぶりに力を使った為に、程よい疲労感(疲れなんて全く無かったが)で良く眠れたんだろう。

すると何処からかいい匂いが漂ってきた。

部屋を出て、食堂へと向かうと、途中で紫と藍に出会った。

「……ちっ……おはようございます、師匠」

「おい、何故に舌打ちをした」

「紫様は霞様を起こしに行こうとしていました」

「藍?!なんで言っちゃうの?!」

どうも、成長したのは身体だけのようだ。昨日の感動を返してほしい。

「……紫、後でお仕置きな」

「アレですか?アレなんですか?!」

その発言はあらぬ誤解を生むから控えようか。

「あ、おはようござ……何してるんですか?」

見てわからない?アイアンクローだよ。

紫へのお仕置きといえば、コイツだからな。

「痛い痛い!!久しぶりだから余計に痛い!!」

「なんかいい匂いがするけど、朝飯を用意してくれてたのか?」

「え?あ、はい」

「手伝いもせず、申し訳ない」

「いえいえ、お2人はお客様ですから」

夢乃はすっかりこの家の住人気分のようだな。

この家には無かったはずの割烹着まで着込んで、この屋敷には不似合いな出で立ちでいる。

「あれ?無視ですか?無視なんですか?!」

「それじゃ冷めないうちにいただくとしようか」

「ご飯食べるんですよね?なら離してくれてもいいんじゃ……なんで?!なんで強くなるの?!!」

 

 

そういや姫咲の姿が見えないな。まだ寝てるのか?




霞「アイアンクローなんて久しぶりにしたわ」

紫「まだ顳かみが痛いです」

藍「自業自得と言う言葉をご存知ですか?」

紫「藍がなんか冷たい!!」

作「うちの藍さんはクーデレタイプです」

藍「??」

霞「……褒め言葉だよ」

藍「そうなのですか?ならありがとうございます」


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