霞「それって自分から言っていいのか?」
作「まぁ、大丈夫でしょう」
霞「それなら良いが」
作「あと、紫ちゃんがキャラ崩壊」
紫「?!」
「帰らない?!」
私はあまりの衝撃発言に、驚いて声を荒らげてしまった。
折角ここまでやって来て、漸く師匠を見つけ出したというのに。
私達は今、案内されて師匠の家へと来ている。
まだまだ見慣れない、新しい洋館に師匠は住んでいた。
中心街からは外れている為、ひっそりとした佇まい。
そんな中で、師匠と姫咲さん、夢乃は呑気にお茶を啜っていた。
「何故ですか?!」
「なんでって……、まだ目的を果たしてないし」
師匠が言うには、ある人物を探していると。その男は夢乃の能力を奪い、師匠を瀕死の状況まで追い詰めたらしい。そんな男が存在するとは到底思えないけど。
「それで、貴女はなんでそんなに落ち着いてるのよ!!」
横で我関せずを決め込んでいる夢乃。さっきまで号泣しながら師匠の裾を離さなかったくせに。
「私はお父……霞様に付いていくだけですから」
「貴女、キャラクターがブレブレね」
しかし、その男を見つけない限りは師匠は神社へと帰ることはないのか。
「紫様、ここはその人物の捜索をお手伝いするべきでは?」
私の隣に座っていた藍が言う。確かに、師匠の手助けならば喜んでするのだが。今の私にはまだやるべき事がある。
「幻想郷の管理は誰がするのよ」
「紫様ならば両立する事もできると思いますが?」
この狐は無茶なことを……。そもそもこうやって師匠の元に来ることだって、かなり強引に時間を作ったというのに。
「私も微力ながら手伝わせていただきますし」
「……しょうがないわね」
「あのー。無理して手伝わなくても……」
「師匠は黙ってて!!」
全く。師匠に関係することは、全てが計画通りに行かない。
「師匠、その男の特徴を教えてください」
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全く、嫌になる。
この生活に慣れてしまっている自分自身に。
かつては鬼の母として恐れられ、日本だけでなく大陸までその名を轟かせたというのに。
皆が寝静まった夜。月に照らされながら、私は屋根に登った。
涼しい風が頬を撫でた。ふむ、気持ちがいい。
封印され、この身体になってから長い月日が経った。
この身体になった当初は、やはりその違いから普段の生活にすら不便だった。
それが今はどうだ。この身体にも、この生活にも順応してしまっている。
それを人は成長、もしくは適応と言うのだろうけれど。私はそう思わない。
これは『弱く』なったんだ。身体じゃない、心が。
あの日の思いを、あの男に対する純粋なまでの対抗心を、私はいつの間にか忘れてしまったのだろうか。
それでも良いと、思ってしまう私自身が、嫌いでありつつも、どこか心地よく感じていた。
俗に言う、丸くなった、と言うやつか。
「ふふ。あの鬼子母神がね……」
「えぇ、がっかりだね」
ふと、声が響いた。辺りには人の気配が無かったはずなのに。
見上げると、月を背に、炎で輝く翼を広げながらコチラを見下ろしている人影があった。
それはどことなく、不死鳥と呼ばれるそれの様に見えた。
「これが妖怪の頂点なんて、笑えないね」
「……誰だ」
感じ取れるのは霊力。つまりは人間なのだろう。しかしながら、知らない霊力だ。
「あの人が言うから様子を見に来たけど、つまんないね」
「どうやら人間のくせに、言葉が理解出来ないようね」
私は妖力を込め、一息に飛び上がる。一気に高度を上げて、相手と同じ目線まで上ると相手を観察する。見た目はまだまだ少女と言えるような歳に、何処か貴族と言われる人間達のような雰囲気を纏う。その言葉遣いは粗暴で、凡そ雅な出だとは思えないけれど。
「アンタさ、あの男と一緒に居て満足なのかい?」
「……何が言いたい」
「あの男と居る目的は何なんだよ。仲良く家族ごっこをすることか?」
そう言うと少女は手を差し伸べる。
「違うだろ?あの男を倒すのが目的だろ?忘れるなよ、見失うなよ。アンタは其処でのうのうと生きている器じゃ無いだろう」
「ふん。知ったような口を」
「あぁ、知っているさ」
煩い奴ね。今日は機嫌が悪いんだから、さっさと寝てしまいたいのだけれど。
私は拳に妖力を込め、息の根を止めようと間合いを詰める。
この程度の人間ならば、この一撃で十分。漸く霞が力を使い、これで私も存分に戦えるのだが。最初がこんな訳の分からない女だとは、興ざめだけど。
私の拳が触れる、その瞬間だった。
「その封印、解いてあげるよ」
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久しぶりに気分の良い朝を迎えることが出来た。
きっと久しぶりに力を使った為に、程よい疲労感(疲れなんて全く無かったが)で良く眠れたんだろう。
すると何処からかいい匂いが漂ってきた。
部屋を出て、食堂へと向かうと、途中で紫と藍に出会った。
「……ちっ……おはようございます、師匠」
「おい、何故に舌打ちをした」
「紫様は霞様を起こしに行こうとしていました」
「藍?!なんで言っちゃうの?!」
どうも、成長したのは身体だけのようだ。昨日の感動を返してほしい。
「……紫、後でお仕置きな」
「アレですか?アレなんですか?!」
その発言はあらぬ誤解を生むから控えようか。
「あ、おはようござ……何してるんですか?」
見てわからない?アイアンクローだよ。
紫へのお仕置きといえば、コイツだからな。
「痛い痛い!!久しぶりだから余計に痛い!!」
「なんかいい匂いがするけど、朝飯を用意してくれてたのか?」
「え?あ、はい」
「手伝いもせず、申し訳ない」
「いえいえ、お2人はお客様ですから」
夢乃はすっかりこの家の住人気分のようだな。
この家には無かったはずの割烹着まで着込んで、この屋敷には不似合いな出で立ちでいる。
「あれ?無視ですか?無視なんですか?!」
「それじゃ冷めないうちにいただくとしようか」
「ご飯食べるんですよね?なら離してくれてもいいんじゃ……なんで?!なんで強くなるの?!!」
そういや姫咲の姿が見えないな。まだ寝てるのか?
霞「アイアンクローなんて久しぶりにしたわ」
紫「まだ顳かみが痛いです」
藍「自業自得と言う言葉をご存知ですか?」
紫「藍がなんか冷たい!!」
作「うちの藍さんはクーデレタイプです」
藍「??」
霞「……褒め言葉だよ」
藍「そうなのですか?ならありがとうございます」
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