東方古神録   作:しおさば

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作「どうも!ナマモノ代表しおさばです」

霞「こんな奴がナマモノ代表とか、世も末だな」

作「なにを?!」

霞「いっそのこと焼いちまおうか?」

作「やめて!ただの美味しい焼き魚になっちゃう!!」

霞「定食のおかずめ」

作「定食?!ご飯と味噌汁つきなの?!ご飯おかわり自由なの?!」


66話/師匠と弟子

「おら、次!」

向かってくる妖怪を蹴り飛ばし、次を迎える。光の届かない、暗い路地裏で俺と姫咲は戦っていた。

文明開化以来、少しずつ弱体化しつつある妖怪は、その数を減らしていた。

だが、その代わりに妖怪達は生き残るため、より凶暴に人間を襲うようになった。

俺たちは、各地を巡り、あの男の情報を集めると同時に、こうやって妖怪共を討伐していた。

 

「……ねぇ。霞」

「んぁ?なんだ?」

俺の背後で戦っていた姫咲と背中合わせになる。

「なんか今日、多くない?」

「……あ、やっぱり?」

どうも今日は様子がおかしい。

いつもならば多くて10匹程だと言うのに、今日に限ってその数を増やし、ざっと見た限りは100をゆうに超えているのではないだろうか。

「なんだ?今日は出血大サービスってやつか?」

「なに余裕ぶってんのよ。アンタのおかげでコッチは満足に戦えないってのに」

俺達は今、霊力も妖力も、その一切の能力を使っていない。

俺達が力を使えば、必ずと言っていいほど天照や紫達に探知される。それではアイツらから離れた意味がない。

だから、能力無しの純粋な体力のみで戦わざるを得ない。

姫咲はそれでも十分に強いから、下級妖怪程度ならば問題は無いだろう。

問題は俺だった。霊力も、ましてや神力も使わないとなると、至って普通の人間と変わらない。

なんとかやってこれたのは、これまでの経験と不死の身体故だろう。

「今更文句言うなよ」

「まったく」

 

その時、俺達は油断していたんだと思う。

いつもならば躱すことすらなんの問題もない、ただの妖力弾。

気付けばそれは目の前まで迫っていた。力の弱くなった妖怪とは言え、今の俺は普通の人間なのだから、まともに喰らえば死ぬ事は無いが、大怪我をするのは目に見えていた。だからこそ、油断も慢心もすること無くここまで来ていたのだが、

「くそっ!」

俺は夜月を振り抜き、その刀身で受けるが、体制を崩してしまう。

妖怪がその隙を見逃すわけもなく、一斉に飛び掛る。

世界がスローモーションに見えていた。

それぞれの牙や爪を鋭く光らせ、俺を喰いちぎらんと目を血走らせている。

『間に合わない?!』

刀を弾かれ、大きく崩した体制は容易に戻せなかった。しょうがない、腕の1本位はくれてやるか。

そう覚悟した。

 

 

 

その覚悟は、思いもよらず無駄に終わった。

 

「狐火!!」

無数の火の玉が、襲い来る妖怪達に確実に着弾し、燃え上がる。

「霞!?」

「お、おぅ?」

一瞬。何が起きたのかわからなかった。何処からか放たれた攻撃によって、俺は助かったようだ。

辺りを見回すが、黒く焦げた妖怪の死体の他、暗くて良く見えない。

「……まさか、私が助ける側になるとは思いもよりませんでした」

……そして気付いた。なんでこれだけ近づくまで気が付かなかったのか。明らかに周りの下級妖怪とは異質な雰囲気を纏った人物の接近に。

「……ゆ、かり」

「お久しぶりです。師匠」

ゆっくりとその姿を見せたのは、遥か昔に別れた弟子だった。

傍らには妖獣だろうか、金色に輝く尻尾を優雅に揺らす女性が立っている。

「なんで……」

「今はそれよりも、この場を収めましょう」

見ればまた数を増やした妖怪に、周りを囲まれている。

さっきから討っても討っても一向に数が減っている気がしない。

「へぇ、あの子供だった紫がねぇ」

「姫咲さんは未だにツルペタなんですね」

「殺すわよ!?」

なんとも懐かしいような、そんなやり取りが聞こえてきた。何故か、それだけで俺の気持ちは少し余裕を取り戻した気がした。

「それに、そろそろあの子も来ると思いますし」

「あの子?」

紫は優雅に手に持った扇子を振ると、無数の隙間を展開し、それぞれから妖力弾を放つ。

随分と見ない間に成長したようだ。

「師匠のよく知る子です」

 

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親しげに紫様と話す男を、私は備に観察していた。

どこからどう見ても普通の人間にしか見えない。多少は戦闘の心得があるようだが、それでも霊力すら使えないのはどういう事だ。

紫様が語る『師匠』と呼ぶ人物と、その容姿は一致するが。なんとも納得のいかない、疑惑の念が浮かび上がる。

この人間は、本当に紫様の恩人たる人物なのだろうか。

こうやって見ていても、何度か危うい場面があるくらいだ。

「どこを見ている!!」

珍しく言語を解する下級妖怪が、余所見をしていた私にその爪を立てようと迫っていた。なんとも舐められたものだ。この妖力の差がわからないのか。

「ひれ伏せ。我は九尾の妖狐。八雲紫様の式、八雲藍だ!」

 

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「ふむ。紫と狐さんが来たってのに、なんでこうも数が減らない?」

「どうやら暗闇から次々に生み出されているようですね」

元々いた妖怪の妖気に釣られて、集まってきたのかと思っていたが、どうも違うようだ。『何か』の影響なのか、それとも……。

「なんにしろ、その発生源を叩くしかないか」

俺は夜月を再び構える。まったく、予感的中で面倒臭い事になったもんだ。

 

 

俺は妖怪の群れに向かって駆けようとした。

……そう、駆けようとしたんだ。

あの声を聞くまでは。

 

 

 

 

 

 

『封印!!』

 

 

 

 

 




作「次回、ようやく落ち着くかな?」

霞「俺としては不穏なんだが?」

作「あ、落ち着くってのは作者的になんで、気にしないでください」

霞「……やっぱりコイツ焼いちまうか」



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