作「そうかな?」
霞「…………なるほど、タイトルは毎回適当につけてるからか」
作「バラさないで!!」
まいど!八咫烏ですわ。
守矢神社を出て数日。創造神の霞様に案内せぇ言われて、山を越えている途中。
ワイは初めて会おた創造神様御一行をよう見とったんです。今まで天照様の手伝いで、ぎょうさん神ってもんを見てきたつもりやったけど、こんな神様は初めてですわ。なんせ妖怪と一緒に旅するなんて、普通はありえへんやろ。
この国で、いやこの世界でいっちゃん偉いんちゃいますの?
そんなお方やのに、なんで月夜見様を恐れてはるんや?確かに、あの方も恐ろしいで?1週間正座させられてお説教するっちゅう噂まであるくらいやし。
そんでも、なんぼなんでも創造神様までさせられへんやろ。
「……そう思うだろ?アイツは父と呼ぶ俺ですら、なんの躊躇いもなく説教するからな」
「ホンマでっか?!」
ほんなら月夜見様は、言うたら最強ちゃいます?
「……アイツに1週間説教させられたくらいだしな」
あ、噂の本人目の前にいたわ。
ほんま、神様らしくないわ。でも『自由の神様』ならえぇのか?
お日さんも空の天辺に登った頃に、姫咲言う妖怪のお子様が昼飯にしようって言ってきましたわ。
これでも一応は神として数えられますから、必ずメシ食わなアカンわけやないけど、せっかく用意してくれるんやったら勿体ないしなぁ。
「んじゃ、なに食べたい?」
……え?霞様が作るん?
あれ?ほんまにこの方、最高神様やろか。
「……だってコイツらはマトモに料理ができないんだから、しょうがないだろ」
「あら、私はやらないだけで、やれないなんて言ってないわよ?」
……なんやろ。ワイの本能が、この子には作らしたらアカン言うてますわ。
「……その目は信じてないわね?……いいわ、今日のお昼は私が作ってあげる」
と言うより、こんな山奥で何を作るつもりなんや?
普通に木の実とか持ってきてくれた方がえぇんとちゃいます?
「見てなさい!私が本気を出したら、アンタらなんて卒倒するから!!」
卒倒したらアカンのとちゃいます?
捨て台詞みたいなん残して森ん中に消えて行きましたけど、アレ大丈夫なんですか?
「……知らん」
んで、アッチの少女はいつの間にか寝てはるし。
器用にも木に寄っかかって、立ったまま寝るんは逆に疲れへんのやろか。
「ほら、美鈴起きろ」
「……んぁ?」
いくらちっこい言うても、女の子が涎垂らすんは見てられへんな。
「……あれ?姫咲さんは?」
「姫咲は昼飯の準備をしてるよ」
霞様は師匠言うよりも、父親みたいや。
ここ数日を通してワイが素直に思ったんは、この3人は旅する仲間っちゅうか、何処か家族みたいな繋がりを感じますわ。ただの人間同士ですらそんなんになるんは難しいっちゅうのに、この人達は同じ種族ですらない。神と妖怪なんて、相反する存在なはずやのになんでなんやろ。
「……楽しそうですわ。ほんまに」
「なんだ、急に」
「なんか、霞様を見てると種族とかの枠組みがアホらしなります」
多分、これが『自由を司る神』の力なんちゃうかな。何かを語るわけでもなし、ただ自分が生きたいように生きることで、人も環境も変えてしまうやろな。
流石、創造神様や。
「面白い方やなぁ」
「んで、博麗神社までは後どれくらいなんだ?」
昼飯を済ませると、ちょっとした食休みを挟んで再び歩き出す。既に守矢神社を出てから数日が経ち、かなりの距離を歩いた気がする。八咫烏は空飛んでるけど。
「もうそろそろやとは思います。この山を越えたあたりで神社近くの人里は見えるやないかな」
そんなに近づいていたのか。でもそんな気配が一切しないんだが。神や、それに関係するものに近づくと、多少なりともそこには神力を感じる。少なくとも、神主や巫女の力を察知出来るはずなのだが。
それに、今回向かっているのは曲がりなりにも俺を祀っている神社だ。俺が自分の神力を間違えるわけがない。
「あぁ、そりゃそうですわ。なんせ神主も巫女もまだいやしませんもの」
「……はい?」
今なんて言った?
神主も巫女も、居ない?
普通、神社を建てたらソコを管理する人間が必要なんじゃないの?
「なんでも、建てはった方が霞様が来るのを予想してはったみたいで、霞様に選んでいただくみたいでっせ」
「うわぁ、めんどくせー」
まぁ、あの事件の後処理を放り出して来たからな……。それくらいはしょうがないと諦めるか。
しかし、管理を任せる人間となると……半端な覚悟でやられても困るし、少なからず霊力を操れないお話にならない。
そんな人物の知り合いなんて、いないんだがなぁ。
「慌てて決める必要はあらへん思いますけど、そないに時間もかけられません」
「だよなぁ」
すっかり暗くなっちゃった。
今日は里で何も貰えなかったから、しょうがなく山でキノコでも採ろうと思ってたのに。
山に入ったのは昼もすっかり過ぎて、太陽が沈み始めた頃だった。私の考えではさっさとキノコを籠いっぱいにして、今頃はキノコづくしの夕食にありついていたのに。全く予想が外れちゃった。
「なんでこんなにキノコが生えてないんだろ。動物が食べちゃったのかな?」
この山には狸とか狐とか、そう言えば長老さんが熊もいるって言ってたから、みんなお腹が空いてたんだね。
でも、熊かぁ。熊なんか出てきたら大変だけど、大丈夫だよね。
そんな予想をしながらも木の根元を探していると、何処かで草木を掻き分ける音がした。
「……えぇ〜」
音がした方を振り返ると、そこには狸よりも鋭い牙と、狐よりも長い尻尾。熊よりも大きな体の妖怪がコチラを睨んでた。
「……アナタも、キノコを探しに?」
「んなもんよりも旨そうな食い物を見つけたがな」
まぁ大きな口。でもそんなに涎を垂らしてたら汚いよ?
「……じゃぁ、私は邪魔しないように向こうに行きますね」
そそくさとその場を立ち去ろうとする。だって食事の邪魔はしちゃいけないでしょ?すぐに視界に入らないようにしますから……だからそんなに私を睨まないで貰えます?
「食い物が、何処に行くんだよ」
「……やっぱりそうですよねー」
……私、きっと美味しくないと思いますよ?だってまだまだ背は大きくないし、里のお姉さんみたいに胸も大きくない。多分、骨と皮ばっかりじゃないかな。
「……」
逃げる!!
私は走り出した。だって食べられたくないもの。
どんどん暗い森の中に駆けていくけど、どんなに走っても後ろから着いてくる音は途切れない。むしろドンドン近づいているような気がする。
多分、気を抜けば直ぐに追いつかれちゃう距離なんじゃないかな。必死に走りながら後ろを振り返ると、私の目に映ったのは熊よりも太い腕だけだった。
「きゃぁあああっ!!」
咄嗟に屈むと、頭の上ギリギリを掠める。危なかった!あんな腕で打たれたら、私なんて呆気なく死んじゃうよ!!
それで終われば良かったのに、妖怪は再び腕を振り上げてる。立ち上がって逃げようとするけど、さっきので腰が抜けちゃったのか上手く立てない。
…………あぁ、死んじゃった。
頭の中には私が血だらけになり、この妖怪に食べられている姿が浮かんできた。
……どうせならもうちょっと長く生きていたかったなぁ。
そんな淡い期待もこれでお終い。私は、ここで短い人生が終わるんだ。
「でりゃぁあああっ!!!」
「ぎゃぁあああ!!」
強く目を瞑ってしまうと、大きな声と何かがぶつかる音が近くで聞こえた。二つ目の叫び声は妖怪の声に似てたけど。
恐る恐る目を開けると、そこにはさっきと打って変わって綺麗な青が視界いっぱいに広がってた。それが布で、目の前に立っている人の着物だと気がつくのには時間は掛からなかった。あれ?ならさっきの妖怪は?
辺りを見回すと妖怪は遠くの木にぶつかって、気絶してるのか静かになっている。
……この人が助けてくれたのかな?でも、妖怪を倒すって本当に人間?
もしかして、人間の姿をした妖怪よりも恐ろしい何かなんじゃ。
そんな考えが頭の中をグルグル回っていると、その人はゆっくりと振り返って腰を低く落とす。私の目線と同じになると笑顔を向けてくれた。
「大丈夫か?」
……また予想が外れちゃった。だってこの人はこんなに優しい笑顔ができるんだもん。
作「この章も次で終わりだね」
霞「珍しく大規模な戦闘とかなかったな」
作「戦いたいの?」
霞「御免被る」