東方古神録   作:しおさば

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作「はい、新章!!」

霞「この集団で街中歩くのか?!」

美「師匠!アレってなんですか?!」

紫「あちらに茶店がありましたよ!少し休みましょう!!」

姫「……あなた、何を見ているのよ。殺すわよ?」

作「……後は頼んだっ!!」

霞「あっ、逃げるなバカ作者ぁ!!」


数億年の再開らしい
44話/学習能力がないらしい


百数十年ぶりに日本に戻ってくると、どことなく懐かしい安心感がある。

美鈴にしては初めての日本。姫咲には久しぶりの日本。

 

「師匠!これはなんですか?!」

「……それはただの団子屋だよ。大陸にもあっただろ」

「ならあっちは?!」

「……それは牛車。乗り物だ」

一々に興奮し、指差して俺に尋ねる美鈴は子供のようだ。うん、子供だった。

「霞、疲れたわ。何処か茶屋にでも入りましょ?」

「……嘘つけ、何処に疲れる要素がある」

姫咲の声が俺の頭の上から聞こえる。俺の頭を足で挟むように肩に座る、いわゆる肩車状態。

「あら、私の足に触らるのよ?嬉しいでしょ?」

「お前みたいなチンチクリンの足なんぞ、微塵も嬉しくないわ」

俺はどっかの誰かとは違うんだ。

都に入った瞬間、コイツらのテンションはダダ上がり。まるで夏の祭りに来た子供のようなはしゃぎ様だった。

「まったく。少しは落ち着きなさい、美鈴」

「ほら、紫みたいに落ち着い………………紫、その手の物はなんだ?」

「お団子ですよ?」

いつの間に買ってきたのか、両手に団子を何本も持っている。

「あぁ!!姫咲さん!なんて羨ま……違くて、師匠から降りてください!!迷惑してるじゃないですか!!」

「あら、そうなの?」

「うん。そうなの」

「そうでも無いみたいよ?」

お前、人の話聞いてる?

「ぐぬぬぬぅっ。けしか……羨ましいっ!」

「言い切ったわね」

「……はぁ」

俺は大きなタメ息を吐いてしまった。

もう少し、のんびり旅を続けたいんだけど……。

「師匠!!あれは?あれはなんですか?!」

 

 

 

 

「かぐや?今日も沢山の人がお前を一目見たいと、足を運んでくれたよ」

「そうですか。でも、私は何方ともお会いしたくないのです」

お爺さんが今日も、私に贈られた大量の貢物を見せる。

そんな物、いくら持ってきても私には興味が無い。

ここのところ、毎日の様に足を運ぶ貴族達は、何度来ても姿を見せない私を、そろそろ諦めても良いと思うんだけど。

「私が欲しいのは……なんでも話せる友人が欲しいです」

そう。私の身体を目的にしない。ただ楽しく色んな話をしてくれる友人が。

縁側から庭を眺めるが、変化のないいつもの風景に、見飽きてしまった。こんな小さな世界だけじゃなく、もっと広い、私の知らない世界を見てみたい。

その為にこの地に来たと言うのに。これじゃあの頃と何も変わらないじゃない。

「かぐや?」

「……少し、1人にして頂けますか?」

そう言うと、お爺さんは悲しそうな表情をしながらも、席を外してくれた。

雲のない青空は、何処までも広がっているようで、この塀から先を見る事が出来ない私には、何処までも続こうがこの数歩で届いてしまう距離が、私の世界でしかない。

「師匠!次はあっちに行って見ましょうよ!!」

「こら、美鈴!師匠を引っ張らないの!!」

「団子よりもお酒が欲しいんだけど」

ふと、塀の外側から大きな声が聞こえてきた。どうやら子供たちのようだ。楽しそうにはしゃいでいる声は、少し羨ましい。

「はいはい。あと姫咲、その姿で酒とか言うな」

1人、男の声が聞こえた。保護者だろうか。

「ほら、こんな屋敷街に来てもしょうがないんだから。戻るぞ?」

……確かに、こんな所に子供が喜ぶような物は無いだろうけど。一応ここ、かぐや姫の屋敷よ?

「周りに人もいないから、今のうちだ行くぞ?」

次の瞬間、塀から少女の姿が現れた。え?

その姿は徐々に全体を出してきて、足の間に男の頭が見えた。

肩車をしつつ、両腕で2人の少女を抱えた男の姿が、塀の上に現れた。

「飛んでる?!」

思わず声が漏れてしまった。咄嗟に口を塞ぐが、聞こえてしまったようで4人の目線がコチラに向いていた。

「……あ」

「アチャー」

「……口封じ……する?」

それぞれ少女達が反応をしている。というか、最後の子は余りにも物騒過ぎない?!

「……とりあえず。逃げろ!!」

そう言うと、とてつもない速さで男は飛んでいき、直ぐに姿が見えなくなってしまった。

「……何だったのかしら。今の」

私はとりあえず訪れた安堵に、胸をなでおろした。

 

 

 

 

「いやー。見つかっちゃいましたね!」

なんで楽しそうなんだ、美鈴。

「し、師匠に肩車して貰っているのを……見られた」

今更な事を言うな、紫。

「殺さなくて良かったの?」

物騒過ぎるから、姫咲。

またやってしまった。神子と初めてあった時も同じ様な事になったのに、気が緩んでいたのだろうか。

「とりあえず、一旦都を離れるぞ。外ならテントを貼れるから」

かなりの高度をたもちながら、都の外へと向かった。




美「ところで、師匠の肩車はどうでした?」

姫「なかなか眺めが良かったわよ」

紫「師匠の頭なんて、こういう時しか触れないし」

美「良いですね。こんど私もしてもらいましょう!!」

霞「あれ?俺に拒否権がないぞ?」

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