霞「今回はkan(kai)さんの『幻想郷をふらふらと』とコラボだ」
美「こんな作者で大丈夫ですか?」
作「大丈夫だ。問題………………ない」
霞「なんだよ、今の間は」
神無月も過ぎて、早いもんでもう師走。
初めは巫女の仕事に右往左往していた夢乃も、なんとか慣れてきたようだ。
それでも、未だに能力は上手く扱えないようで、偶にその後処理をしている。こないだも、安易にフラグなんて立てたもんだから人里に大妖怪レベルが襲ってきたけっけ。
まぁ、毎日夢乃は修行をこなしているから、そのうち制御できるようになるだろう。
「霞様の能力って、何が出来るんですか?」
ある日、境内の掃除をしている夢乃を、ボーっと観察していると訊かれた。
「……なんでも出来る」
「そんな漠然と……」
だけど間違いじゃない。今の俺に出来ないならば、出来る能力を『造ればいい』だけだからな。
しかしながら、改めて考えると相変わらず規格外な能力だと思う。他の能力をあんまり知らないが、大体が『程度』と付くのに対して、俺にはそれがない。それだけでもおかしい事は明白だし。
「良く使うのは別の場所とを繋ぐ能力だな。意外と便利なんだ」
「何度か見せてもらいましたけど、凄いですよね」
夢乃が言うのはその利便性ではなくて、穴の中身の見た目だろう。1度人里まで買い物に行く夢乃を、ワームホールで簡単に連れていこうとしたら、幾何学模様が気持ち悪いと言って2度と使わなくなった。
「何処でも繋げられるなら、例えば別の時間にも繋げる事は出来るのですか?」
「やろうと思えばな。でも疲れるからやらない」
「……えぇー。未来が見えるなら、将来の私とか見てみたいのに」
そんな事に俺の能力を使おうと思うなよ。
だけど未来の日本、ってのも気になるな。このまま時代が流れると、将来的に『俺』は生まれるのだろうか。それとも、別の世界なのだから生まれないのか?
「……ちょっとやってみるかな」
「ふぇ?」
俺は立ち上がると、神力を開放する。流石に時までも繋ぐとなると、霊力だけだと足りない。
開放した神力に反応したのか、神社の奥でノンビリしていた姫咲と、修行中だった美鈴が現れた。俺は説明すると、自分達も見てみたいと言う。
「夢乃はどうする?」
「……んー。でも、今回は辞めときます。この後人里に行かないといけませんので」
時間を繋ぐのだから、予定なんて気にしなくてもいいのだが、多分遠まわしにこの穴に入りたくないのだろう。
「それにしても、時を超えるなんて、大丈夫ですかね?」
「初めてやるけど、俺がやるんだ。大丈夫だろ」
よくわからない自信のセリフを吐いて、穴へと足を踏み入れようとする。1歩穴に足が入った瞬間、後ろから予期せぬ言葉が聞こえた。
「大丈夫ですよ!霞様ですから、異世界に迷い込むなんて有り得ません!!」
夢乃の奴、言っちゃったよ。なんであんな場面でフラグを立てるかな。流石に俺でも、夢乃の能力を無効にはできない。アイツのは俺を対象にしているわけじゃなく。事象自体に関与するから、結果が強制的に書き換えられる。行程ならば後からでも俺が細工できるが、どんなに頑張っても夢乃の能力で『予想を超えた結果』が導き出されるのだ。
と、冷静に考えているが、現状はそんな所じゃない。なんでって?
「落ちてるぅうううううううっ?!!」
隣で叫ぶ美鈴と姫咲。あぁ、2人とも飛べないのか。
穴を抜けると、本来ならば地面と平行に開かれる筈の穴が、はるか上空で開けられた。もちろん、俺がやったわけじゃない。
支えのない空中で手足をバタバタさせている姫咲と、既に諦めて涙を流している美鈴。お前ら、一応俺がついているのを忘れてないか?
俺は落下地点に穴を開こうとするが……。
「あ、間に合わないかも」
目の前にはいつの間にか近づいた瓦屋根が。
「……ごめんなさい」
俺は誰にともわからないが、とりあえず謝ることにした。
次の瞬間、3人は屋根に穴を開けながら突っ込み、畳に突き刺さる格好で漸く止まることができた。
俺達の意識が戻ると、その家(?)の住人であるのだろう少女は速攻で庭に引きずり出し、正座させられた。
黒髪を赤いリボンで頭の後ろに結んでいる、不機嫌な表情でなければ所謂美少女と言われるであろう彼女は、腕組みをしながら俺達を睨んでいる。
「んで、アンタ達は何者?この状況をどうしてくれるの?」
「あ、どうも。神条霞です。家は即、直させていただきます」
これでもかってくらいの綺麗な土下座をかましながら、不機嫌にしている姫咲とまだ涙目の美鈴も頭を下げさせる。今回ばかりは2人は完璧に被害者でしかないのだが。
「そう、なら早く直してね」
「あ、はい」
俺は立ち上がり、庭から家(?)の全体を望む。あれ?どっかで見たことあるような建物だな。
「道具とかはアッチの蔵にあるから」
「んぁ?いらないよ」
「……は?」
言うと、両手に霊力を通わせる。幸いにも一階建てなので、屋根と居間の畳と床を直せば事は済む。
両手を合わせれば光が漏れだし、その光が壊れた箇所へと飛んでいく。光に包まれると、一瞬で直っている。
「はい、これでいいかな?」
「……あんた、何者なの」
なんか、久しぶりに訊かれたような気がする。ここの所、俺の事を知っているやつにしか会っていなかったから。
「今使ったのって霊力?でもアンタからは微かに神力を感じるわ。霊力と神力を両方持っているなんて、現人神なの?」
「なかなか鋭いね」
正座をさせられ、足が痺れている姫咲と美鈴に手を貸してやりながら答える。1発で俺の神力を察したのはこの子が初めてだ。
「でも、それを話しても良いんだけど。それには隠れている奴にも出てきてもらわないと」
そう言って庭の反対側に目線をやる。なんか懐かしい気配を感じるが。
「あらあら、驚いたわ。私に気がつくなんて」
突如空間に亀裂が入り、両端には何故かリボンが結ばれる。……やっぱり見たことあるヤツだ。
「「紫!……え?!」」
「…………な、何故私の名前を知っているのかしら」
出されたお茶を飲みながら、俺達はちゃぶ台を囲んでいる。向かいには少女--博麗霊夢と紫、その式だと説明された八雲藍が座っている。藍と名乗った女性は、どうやら九尾の狐なようで、金色に輝く美しい尻尾が揺れている。
「それじゃあ、説明してもらえるかしら。貴方が何者で、どうして私の名前を知っているのか」
口火を切ったのは紫だった。俺の知っている紫とは見違えるほど綺麗に成長した姿を見ると、少し嬉しくもなる。コレが成長した娘を見る父親の気分なのだろうか。
「あー。なんとも説明し辛いのだが。先ずは今の時代とココが何処なのか教えて貰えないか?」
なにせ、夢乃の能力の結果、俺でも予期せぬ場所に飛ばされている可能性もある。先ずは確認をしなければ。
「……ココは夢と現実の入り交じる、『幻想郷』と呼ばれる地よ。時代は……外の世界で言えば平成ね」
「…………平成?!」
どう見てもこの家には平成らしさはないのだが?
「言ったでしょ。ココは幻想郷なの。外では文明が進んでいるかも知れないけど、ここはその流れとは別よ」
ふむ。なんとなくわかった。それで結構強力な結界が張られているのか。
「あー。俺の説明か。俺はさっきも言ったけど神条霞。……所謂創造神ってヤツだ」
「…………はい?」
「んで、紫の名前をなんで知ってるのかって話だけど、俺が名付けたから。でも、その反応だと、君はどうやら違うらしいな」
「え、えぇ。悪いけど、貴方とは初対面よ」
なんとも、面倒臭い事になってきたぞ。
「君は『博麗』と言ったね。つまりココは博麗神社かい?」
「えぇ、そうよ」
やはり見覚えがあるはずだ。所々違うが、面影がある。まぁ、違いは俺が手を加えた部分だけど。
「師匠。どういう事ですか?」
「……そうだな。簡単に言えば、夢乃の能力だ」
そう言うと2人は納得する。なんとも、それで納得されるとは。
「コチラにもちゃんと説明してもらえるかしら」
「……いいけど、その胡散臭いかんじ、なんとかならんのか?」
さっきから扇子で口元を隠し、少しでもリスクを少なく、コチラの情報を得ようとしているのは見え見えだ。
「……つまり、俺は時間だけじゃなく、時空を越えてしまったと言うことだよ」
「……なるほど」
おぉ、それで理解してくれるとは。コッチの紫も頭は良かったが、この紫も回転は速いみたいだ。
「で、戻れるのかしら?」
「うーん。今は難しいかな。なんせ今回は俺の意思でココに来たわけじゃない。不可抗力が働いた結果だから」
簡単に言えば、座標を確定しなけりゃいけない。
今いる時空と、元の時空の場所。しかもそれがどれだけ離れているかもわからないし、俺の神力が足りるかもわからない。
まったく、夢乃も余計な一言をくれたもんだ。
「ま、難しいだけで、戻れないわけじゃない。時間はかかるが。その間はこの幻想郷に厄介になるよ」
「……ま、面倒事を起こさないなら構わないわ」
そう言ったのは霊夢だった。どうやら霊夢はこの幻想郷の面倒事や異変と呼ばれる事件を解決するのが仕事のようだ。夢乃にはとても任せそうにもない仕事だ。
「……なら、ここの神様にも挨拶しないとな」
「あぁ。なら連れてくるわね」
そう言うと、紫はスキマに両手を突っ込む。
……なに?そんなんでいいの?ここの神様は猫か何かなの?
スキマから姿を現したのは、小さな子供だった。……いや、確かに神力は感じるけど……子供?
紫はそのまま少年を膝の上に降ろし抱きかかえている。しかしながら、少年は物凄く不機嫌な表情をしている。……それ、嫌がってない?
「紫、どういう状況か説明しろ。あと、離せ」
「コチラにいるのは別世界の神様、神条霞さんよ。どうやら事故にあってしまってコチラに来てしまったの。あと、もう少し良いじゃなぐふぁっ!!」
紫は下から顎に頭突きを食らって、ノックダウンしてしまった。なんか俺の知っている紫とは違う…………のか?
「まったく。何度言っても止めないなお前は」
よく良く探ってみると、なるほどかなり上位の神のようだ。俺が知らないのはココが別世界だからか。
「あ、どうも。別世界の神です」
「あ、どうも。この世界の神です」
こうして、俺達はユウ達と出会い、少しの間幻想郷に滞在する事になった。
霞「コラボ第1話でした」
姫「まったく、夢乃には困ったものね」
美「姫咲さんが慌てるなんて、珍しいですよね」
姫「……美鈴?今すぐ黙らないと捻るわよ」
美「…………」
霞「ま、まぁ。次回もお楽しみに」
美「姫咲さんはやっぱり怖い……」