東方古神録   作:しおさば

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作「作品中の都は、完全に想像で書いているので、実際の造りとは違うと思います。ってか絶対違うでしょ」

霞「少しくらい調べたのか?」

作「そんなこと、すると思う?」

霞「……あぁ、そうね」


32話/神様はそういうの嫌い……らしい

南側の門は粗方繋がりを斬った妖怪達で溢れていた。いきなり訳の分からない場所にいて、目の前には武器を構えた人間達。数は明らかに妖怪の方が上だが、突然の状況に混乱している為、若干だが人間に歩がある。

これなら後はなんとか妖怪達を追い返すだけで済みそうだ。そう楽観した瞬間。今までとは比べ物にならないほどの妖力を感じた。どうやら大妖怪レベルが現れたようだ。しかし問題はそこじゃない。

「な、なんで……」

『都の中に』妖力を感じたのだ。

それも突然に。

何処かの門が破られた訳ではない。それぞれの門は、一部を除いて俺が渡した札もちゃんと機能している。ってか、布都は何をしているんだ。

「いやいや、んなことより。どうするこの状況」

確かに、この場は既に離れても大丈夫だろう。しかし他の門はそうは言えない。早急に駆けつけなければ、被害が増えるだろう。それも、内部に妖怪が現れるまでの話。

中には戦うことも出来ない女子供、老人が多くいる。そちらを放っておくわけにもいかない。

 

「……もう、しょうがないか」

 

札を貼り付けて数刻。

なんとか持ち堪えていた門も、札に罅が入り出してきた。

「た、太子様。門が持ちそうにありません!」

「……門が破られる瞬間に、一斉に矢を放ちなさい。あと油を持ってきて、門の手前に火を放ち時間を稼ぐのです!!」

流石に焼け石に水でしょうが。やらないよりはマシなはず。

霞様も言っていました。『俺が駆けつけるまで時間を稼げ』と。

「……霞様」

縋るような思いであの方の名前を呼んでしまいます。先日会ったばかり、凡そ想像していた神とは程遠い人間らしい神様。

その時、門から大きな音が響き渡り、札が破れ力尽きたのように塵となって消えていきました。

あぁ、もうこれまでのようです。少しずつ開かれていく門から、覗いてくる絶望。

「……霞様ぁ!!」

 

 

 

 

「呼んだ?」

 

 

 

 

築き上げた妖の骸。その数を、三百まで数えて諦めた。幾ら殺しても湯水のように湧き出てくる妖共は、まるで屍に群がる羽虫のように、何処から飛んでくるのか。

「……まったく。しつこいですね。女性に嫌われますよ?」

軽口を叩いてみるけれど、その言葉とは裏腹に私は肩で息をしているようですね。霊力もほぼ底を着きそうだというのに。

「これまで……ですかね」

どうせならもう少しあの方とお話をしてみたかった。

昔いた大陸でも聞いたことのない、自由な神様。

出来るなら、最後にもう一度。

「……会いたいですわ。霞様」

 

 

 

「諦めるのか?」

 

 

 

 

まずいまずいまずい!

どうやらあの札の使い方を間違えてしまったようだ。

地面に力なく落ちた札は、なんの反応もなく只の紙切れと成り果てている。

霞殿ももうちょっとわかりやすく説明してくれても良いものを……。

門の手前で妖共の猛攻を、辛うじて抑えている我等だが。もはや幾ばくも持ちそうにない。

心残りがあるとすれば、太子様のお側におれぬ事。

太子様ならばよもや妖などに遅れはとられぬだろうが。

「太子様。どうかご無事で……!!」

 

 

 

 

「アホめ。そんなもの自分の目で確かめろ」

 

 

 

 

しょうがない。しょうがないよ。

この状況で俺に出来る事は限られる。

ならばその限られた事を全力ですればいい。

 

たとえ、世界に歪みが生まれようとも。

 

 

「神力開放」

 

 

呟くと、身体から溢れんばかりの神力が漏れ出す。

青い光を纏った俺は、どれくらいぶりになるか分からないが、人間から神へと戻る。

どうやら、周りの人間と妖怪は、俺の神力に当てられて意識を手放しているらしい。

「まずは神子から」

そう言うと、ワームホールを開く。人間の時は両手を合わせなければ開かなかった穴も、この状態ならば意識するだけで良い。

脚に力を込めて大地を蹴ると、爆風を巻き上げながら穴を潜る。

瞬きをする間に、目の前には神子の姿を捉えた。どうやら俺の札がちょうど破られた所のようだ。神子が俺の名を叫ぶ。

「呼んだ?」

できうる限り軽く言葉を投げかける。

振り返った神子の目には薄らと涙が見えた。

全く、何時もは強気なくせに。

俺は神子と周りにいる人間。つまりはこの辺り全ての『人間』を指定して穴へと落とす。

妖怪は後回しだ。

異空間の中にいれば、ひとまず安全だから。

「さて、次は青娥か」

再び穴を開く。

飛び込めば風景は変わり、西側の門。

屋根の上に立つ青娥と、山になった妖怪の屍に驚く。

何故か俺に会いたいと言いながらも、諦めたように呟く青娥。

「諦めるのか?」

神子と同じように異空間へと落とし、安全を確認する。

最後は布都。あのアホは俺の札を使わずに何をしているのやら。

穴を通って東門に現れると、そこには札も使わずに弓矢と剣で戦う兵士達の姿。

布都は額に汗しながらも、なんとか妖怪達を押さえ込んでいた。

しかも、こんな状況でも神子の事を心配しているらしい。

「アホめ。そんなもの自分の目で確かめろ」

異空間に落ちていく布都達は、悲痛な叫びを上げている。いや、そんなに驚くか?……驚くか。

こうして『兵士達』を異空間へ避難させた俺は、次に都の中心地へと向かう。

いくら兵士達を避難させようと、未だに非戦闘民は残っているのだから。

「こればっかりは、少し本気を出さないとな」

両手を強く合わせ、神力の波を起こす。この都に残っている人間を探知するためだ。

俺を中心に波状に広がる神力は、人間を一人残らず探知してその位置を把握する。コレだけの情報が頭の中に入ってくるのだから、脳味噌がパンクしそうだ。

「クソがっ……!!」

少なからず、内部に侵入した大妖怪の犠牲になった者もいるようだ。

しかし、もう少し遅ければ、これ以上の被害が出ていただろう。

「多量転移」

把握した人間を一人残らず異空間へと落とし込む。これでこの都には『人間』は1人もいないことになる。

物音がしなくなった都は、ゴーストタウンの様に静まり返っていた。

「さて、俺としてはこれ以上の犠牲は出したくないんだよ」

無言で睨む妖怪達の前に立ちはだかる。それぞれが大妖怪と言われる妖力を保有し、人間を襲うことのみ考え行動している。

「だから、お前達も『救ってやる』」

抜き放たれた夜月は、神力を込められ、ハッキリと青く染められていた。

こんな茶番劇、もう沢山だ。

「断ち切れ!夜月!!」

 

「」




作「この章ものこり数話ですね。長くなっちゃった」

霞「この状況って、都は大丈夫なのか?」

作「それについても次回わかるよ」

霞「……これ、伏線全部拾えるんだろうな?」

作「………………善処します」





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