東方古神録   作:しおさば

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なんかドラクエっぽいタイトルになっちゃったなぁ……


23話/星降る夜と断ち切る絶望……らしい

右手で握る刀に、神力を注ぎ込む。青白く光りだした刀は、神秘的に見えた。

「……なんなんですか。その刀は」

「この世の理から『断ち切られて』いるからな」

そう。俺は先日、この刀にある能力を付加させた。

『森羅万象を断ち切る程度の能力』

この刀で斬られたモノは、この世の理から『断ち切られる』。

それは物体を形作る原子の結合であり、絆であり、能力であり。

この刀に断ち切れないものはない。

「そろそろコイツにも名前を付けてもいいかな」

俺は刀を夜空に掲げた。月明かりに照らされた刀を振り払う。

「そうだな。『夜月』にしようか」

「この世の理から断ち切られている?何を言ってるんですか!!」

見るからに苛立っている律は、敵意を剥き出しにして俺を睨む。

「……そんな刀……『折れろ』『折れろ』『折れろぉおおおっ!!』」

「無駄だよ」

律がいくら能力を、使って叫ぼうが、刃こぼれ一つしない夜月。

「……その刀で僕を斬るんですか?」

「いや、俺はお前を斬らないよ」

俺は夜月を一度鞘に収める。そして腰を低く落とす。

「俺が斬るのは、お前の繋がりだよ」

 

 

 

居合斬りの構えを取った俺は、律を見据える。勝負は一瞬。律が言葉を発するのが先か、俺が斬るのが先か。

「……僕は……ただ、復讐したかっただけなんだ……」

「んなこと知るか。お前の狭い了見で、お前と同じ人間を作ろうとしてんじゃねぇよ」

「!?」

「お前の過去に何があったかなんて知らねぇし、知ろうとも思わねぇ。たが、お前の望みは次のお前を作るだけだ」

「……なら!どうすれば良かったんですか!!」

夜風が俺達の間を吹き抜ける。それは律の心に吹き続ける、冷たい風のように思えた。

「言ったろ?知るかよ。甘えてんじゃねぇ。……ただ、その苦しみを誰かに打ち明けてれば、まだ違ったかもな」

「……」

「そろそろ、終わりだ」

俺は一息に地面を蹴る。霊力を込めた脚力は、容易に地面を割り、風を置き去りにして駆け抜ける。

「『星よ……!!』」

「断ち切れ!夜月!!」

斜め下から逆袈裟に切り上げる。その刃は律の肉体を傷つけることはなく、振り抜いた。

俺が断ち切ったのは律の心の迷い。過去の記憶の闇の部分。

「…………」

「お前が欲しいものはあげられない。だから、その心は……ココに置いていけ」

「……か、霞……さん」

ふと、律の頬が濡れた。気がつくと空は雨雲で覆われ、雨が降り出した。

「…………ごめんなさい。霞さん『僕に』……」

「?律?!」

律の頬を濡らしたのは雨なのか、それとも……。

「『落ちろっ』」

「?!」

 

 

 

 

溢れ出した神力は、律の言葉に乗り、天へと登っていく。

空へと消えた言霊は、雲を割り、星空へと届いてしまった。

そして、律の望みどおり、星が一つ、落ちてきた。

律をめがけて。

「律っ!!」

「ごめんなさい。霞さん。そして、ありがとう」

大気圏で赤く燃えた星は、その大きさをだいぶ小さくしていた。しかし、その形を失うことなく真っ直ぐ律へと向かう。

「クソが!断ち切れ!夜月!!」

俺は落ちてくる星、小さな隕石目掛けて夜月を振り抜く。

しかし、一度神の力で引き寄せられた隕石は、もはや繋がりではなく、まるで意志があるかのように律へと落ちてきた。

「やめっ……!!」

そして無残に無情に、無慈悲に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

律を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、星が降ったことすら無かったかのように、辺りは静寂に包まれた。

「……律」

既に息絶え、俺の言葉に反応しなくなった律は、何処か満足そうに、安心したように、眠るように横たわっていた。

「別に、死ぬ必要なんか……なかったのにな」

俺は夜月を振り、納刀する。

収めらた夜月の音は、暗い夜の闇の中に響いて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かな丘の大きな桜の樹の下に、小さいが墓を作ってやった。石には小さく『律』と一文字だけ彫り込んだ。

墓の前で屈み、手を合わせる。

「お前は自分で言う程、人間を嫌いじゃなかったんだよ」

誰に聞かせるでもなく、呟くように語る。

「お前が本当に、心の底から人間が憎いなら、あの村に言霊の結界なんて貼らなかっただろ」

律の能力は言葉に神力を乗せて、事象を引き起こす。その為、引き起こされた事象、結果には神力や霊力が感じられなかったのだ。

「……お前ともう少し早く会えていれば。違ったかもな」

そんな今更なことを、心にもなく思い、口にしてしまう。

「……また、時間が出来たら来てやるよ」

そして俺は、立ち上がり振り返ることなくその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「ココはどこなのかー?!」




はい、と言うことでオリジナルストーリーでした。
そんでルーミアと離れ離れになっちゃいましたねー。

計画通りっ……!!( ̄▽ ̄)ニヤリッ

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