東方古神録   作:しおさば

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どーも、しおさばです。

前回は、本当ならもうちょい思い感じになる予定でした。

でも、途中で気がついた!!

「あ、これ以上はアカン!!」と


22話/断ち切る刀らしい

「僕を殺すんですか?」

--いや、殺さない。

「僕を救ってくれるんですか?」

--いや、救えない。

「僕に何をしてくれるんですか?」

 

 

「お前を断ち切ってやるよ」

 

 

いつの間にか異空間から姿を現していたルーミアは、大剣を構え、律を睨む。

「お前は自分で言う程、この世界を、人間を嫌いになっちゃいないんだよ」

「……何を言うかと思えば」

律は嘲笑うかの様に俺を見据える。その目には一瞬だが、確かに苛立ちが見えた。

「僕は人間が嫌いだ。人間である僕自身も大嫌いだ。だから、この地上ごと消えてなくなりたいんですよ」

「それで?その為にお前は何をするんだ?」

 

 

「霞さん。頭上に輝くあの星は、その実体が巨大な岩の塊だって言ったら、信じますか?」

「は?」

いや、それは知ってるが。

「まぁ、僕もある人に教えて貰うまでは信じられなかったんですがね。でも、至って真実なんですよ」

「それが?」

嫌な予感がする。

「もし、その星達がこの地上に降ってきたら、どうなりますかね?」

あぁ、碌でもないこと考えてやがる。

そりゃ隕石が降ってくるだけでも、今の時代なら大惨事になるだろう。ましてや、それが幾つもの星ならばこの地球は、その形を保ってはいないだろう。

「ふーん。なら止めなきゃなぁ」

「どうやってですか?」

律は両手を広げ、余裕の姿を見せている。余程自分の能力に自信があるのだろう。

どんな能力か、知らないが。

「まさか、その連れている妖怪に僕を襲わせるんですか?」

「形振りかまってられないならそうするがね」

「やだなぁ、『そんな小さな子』にそんなことさせないでくださいよ……」

また、あの神力が溢れる。

「な、なんなのかー!?」

振り返るとそこにいたはずのルーミアが姿を消していた。

代わりにそこにいたのは……。

「はい?」

黒白の服を着た、金髪の幼女だった。

「お前、ルーミアか?」

「そうなのかー」

いや、俺が聞いてる側だから、そこで納得されても困るんだが。

「……お前がやったのか?」

「さぁ、どうでしょうね」

まぁ、馬鹿正直に答えるわけがないか。

「それに、そんな小さい子にはこの場は相応しくないですね。『何処か遠くに行って』貰いましょうか」

一瞬だ。それこそ瞬きをした瞬間に、ルーミアは姿を消した。

「……なるほど」

ある程度能力の全容がわかってきた。

アイツは考えていること、若しくは言葉にした事を現実にする能力。言わば言霊遣いってヤツか。

「なんとも、厄介なことこの上ないな」

「そうですか?」

確かに、この能力ならば神を殺すことができる。ただ、相手に『死ね』と言うだけでいいのだから。

「まぁ、それでも俺は殺せないけどな」

「……何を言ってるんですか?貴方だって例外じゃありませんよ」

俺の発言に、少し苛立ったのか、見るからに不機嫌になる。

「僕もあまり時間をかけたくないんですよ。だから……霞さん…………『死ね』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。俺、不老不死だから」

そもそも、『死』の概念が今のところ無い俺には、言霊ですら俺を殺す事はできない。

「……なんなんですか、貴方は」

「何って言われてもねぇ」

ただの旅する創造神様だよ?

「……死なないんですね。貴方も化け物じみてますね」

「一応、褒め言葉として受け取っておくよ」

「でも、痛みは感じるんでしょう?」

「さぁ?どうだろうね」

いや、多分痛いのは痛いと思うが。

「所で霞さん。『折れた右腕』は大丈夫ですか?」

「!?」

律が言葉を発した瞬間、右腕に激痛が走る。見ればありえない方向に曲げられた右腕がぶら下がっている。刀を握る手にも力が入らず、思わず落としてしまった。

「ぐぁああっ!!」

「おやおや、死なないとはいえ痛みは感じるようですね」

「当たり前だろが。俺は死なない、普通の人間だっての!!」

「そうですか。でもそんなに叫んで大丈夫ですか?『肺が潰れている』のに」

「!?」

身体の内部で、唐突に喪失感があった。逆流する血液。口内に広がる鉄の味。

「苦しいですよね?肺も、『胃も無くなって』いるのに」

「ごぱぁっ……!!」

クソ、今度は胃かよ?!

「これだけしても死なないんですね」

突然の激痛に崩れ落ちてしまった俺を、律は見下ろす。

いくら死なないとはいえ、流石にヤバイ。何故って?無くなったものは再生する訳では無いからだ。俺はただ、『死なない』だけで、『傷が再生する』わけじゃない。だからこそ、傷は常に霊力や神力で癒していたんだが。

『ヤベェな。このままは……』

ならば。

 

「……じゃぁ、そのままこの地上が消えていくのを見ていてください」

律はもう、決着がついたと思ったのか、俺に背を向けた。

まったく、面倒臭い。

俺は力の入らない右手に左手を合わせる。

「……おいおい。どこ行くつもりだよ」

「?!」

振り返る律は、目の前に迫る刀の切っ先を辛うじて避ける。

「な、なんで!?」

「……お前の能力じゃ、俺を殺すことも、ましてや俺を倒すこともできねぇよ」

「た、確かに肺と胃を潰した筈なのに!!」

俺は口の中の血を吐き出す。

「お前だけが特別じゃないんだよ」

「……『脚の腱が切れた』状態で言われてもね」

おうっ、またかよ。

今度は脚に激痛が走り、言葉通り崩れ落ちた。

「何度も何度も!!」

手を合わせる。そして、切れた腱の代わりに新しく腱を『創造』する。

「……そろそろ、俺も攻めないとな」

「!!」

明らかに、律の表情が変わる。それは恐怖なのか、焦りなのか。

 

落としたままの刀を拾い、構える。

「そんな刀!『折れろ』!!」

しかし、一向に折れる気配すらない刀に、また律は驚く。

「な、なんで!?」

「……それは、この刀がこの世の理から『断ち切られて』いるからだよ」




さぁ、何時ぞやの霞の能力、その内容を次回明らかに!!

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