前回は、本当ならもうちょい思い感じになる予定でした。
でも、途中で気がついた!!
「あ、これ以上はアカン!!」と
「僕を殺すんですか?」
--いや、殺さない。
「僕を救ってくれるんですか?」
--いや、救えない。
「僕に何をしてくれるんですか?」
「お前を断ち切ってやるよ」
いつの間にか異空間から姿を現していたルーミアは、大剣を構え、律を睨む。
「お前は自分で言う程、この世界を、人間を嫌いになっちゃいないんだよ」
「……何を言うかと思えば」
律は嘲笑うかの様に俺を見据える。その目には一瞬だが、確かに苛立ちが見えた。
「僕は人間が嫌いだ。人間である僕自身も大嫌いだ。だから、この地上ごと消えてなくなりたいんですよ」
「それで?その為にお前は何をするんだ?」
「霞さん。頭上に輝くあの星は、その実体が巨大な岩の塊だって言ったら、信じますか?」
「は?」
いや、それは知ってるが。
「まぁ、僕もある人に教えて貰うまでは信じられなかったんですがね。でも、至って真実なんですよ」
「それが?」
嫌な予感がする。
「もし、その星達がこの地上に降ってきたら、どうなりますかね?」
あぁ、碌でもないこと考えてやがる。
そりゃ隕石が降ってくるだけでも、今の時代なら大惨事になるだろう。ましてや、それが幾つもの星ならばこの地球は、その形を保ってはいないだろう。
「ふーん。なら止めなきゃなぁ」
「どうやってですか?」
律は両手を広げ、余裕の姿を見せている。余程自分の能力に自信があるのだろう。
どんな能力か、知らないが。
「まさか、その連れている妖怪に僕を襲わせるんですか?」
「形振りかまってられないならそうするがね」
「やだなぁ、『そんな小さな子』にそんなことさせないでくださいよ……」
また、あの神力が溢れる。
「な、なんなのかー!?」
振り返るとそこにいたはずのルーミアが姿を消していた。
代わりにそこにいたのは……。
「はい?」
黒白の服を着た、金髪の幼女だった。
「お前、ルーミアか?」
「そうなのかー」
いや、俺が聞いてる側だから、そこで納得されても困るんだが。
「……お前がやったのか?」
「さぁ、どうでしょうね」
まぁ、馬鹿正直に答えるわけがないか。
「それに、そんな小さい子にはこの場は相応しくないですね。『何処か遠くに行って』貰いましょうか」
一瞬だ。それこそ瞬きをした瞬間に、ルーミアは姿を消した。
「……なるほど」
ある程度能力の全容がわかってきた。
アイツは考えていること、若しくは言葉にした事を現実にする能力。言わば言霊遣いってヤツか。
「なんとも、厄介なことこの上ないな」
「そうですか?」
確かに、この能力ならば神を殺すことができる。ただ、相手に『死ね』と言うだけでいいのだから。
「まぁ、それでも俺は殺せないけどな」
「……何を言ってるんですか?貴方だって例外じゃありませんよ」
俺の発言に、少し苛立ったのか、見るからに不機嫌になる。
「僕もあまり時間をかけたくないんですよ。だから……霞さん…………『死ね』」
「うん。俺、不老不死だから」
そもそも、『死』の概念が今のところ無い俺には、言霊ですら俺を殺す事はできない。
「……なんなんですか、貴方は」
「何って言われてもねぇ」
ただの旅する創造神様だよ?
「……死なないんですね。貴方も化け物じみてますね」
「一応、褒め言葉として受け取っておくよ」
「でも、痛みは感じるんでしょう?」
「さぁ?どうだろうね」
いや、多分痛いのは痛いと思うが。
「所で霞さん。『折れた右腕』は大丈夫ですか?」
「!?」
律が言葉を発した瞬間、右腕に激痛が走る。見ればありえない方向に曲げられた右腕がぶら下がっている。刀を握る手にも力が入らず、思わず落としてしまった。
「ぐぁああっ!!」
「おやおや、死なないとはいえ痛みは感じるようですね」
「当たり前だろが。俺は死なない、普通の人間だっての!!」
「そうですか。でもそんなに叫んで大丈夫ですか?『肺が潰れている』のに」
「!?」
身体の内部で、唐突に喪失感があった。逆流する血液。口内に広がる鉄の味。
「苦しいですよね?肺も、『胃も無くなって』いるのに」
「ごぱぁっ……!!」
クソ、今度は胃かよ?!
「これだけしても死なないんですね」
突然の激痛に崩れ落ちてしまった俺を、律は見下ろす。
いくら死なないとはいえ、流石にヤバイ。何故って?無くなったものは再生する訳では無いからだ。俺はただ、『死なない』だけで、『傷が再生する』わけじゃない。だからこそ、傷は常に霊力や神力で癒していたんだが。
『ヤベェな。このままは……』
ならば。
「……じゃぁ、そのままこの地上が消えていくのを見ていてください」
律はもう、決着がついたと思ったのか、俺に背を向けた。
まったく、面倒臭い。
俺は力の入らない右手に左手を合わせる。
「……おいおい。どこ行くつもりだよ」
「?!」
振り返る律は、目の前に迫る刀の切っ先を辛うじて避ける。
「な、なんで!?」
「……お前の能力じゃ、俺を殺すことも、ましてや俺を倒すこともできねぇよ」
「た、確かに肺と胃を潰した筈なのに!!」
俺は口の中の血を吐き出す。
「お前だけが特別じゃないんだよ」
「……『脚の腱が切れた』状態で言われてもね」
おうっ、またかよ。
今度は脚に激痛が走り、言葉通り崩れ落ちた。
「何度も何度も!!」
手を合わせる。そして、切れた腱の代わりに新しく腱を『創造』する。
「……そろそろ、俺も攻めないとな」
「!!」
明らかに、律の表情が変わる。それは恐怖なのか、焦りなのか。
落としたままの刀を拾い、構える。
「そんな刀!『折れろ』!!」
しかし、一向に折れる気配すらない刀に、また律は驚く。
「な、なんで!?」
「……それは、この刀がこの世の理から『断ち切られて』いるからだよ」
さぁ、何時ぞやの霞の能力、その内容を次回明らかに!!