作「その前に姫咲と夢乃のプロフィールを書こうかなって」
姫「あら、わたし?」
夢「私もですか?!」
作「色々と設定を書いとかないと、後々のストーリー的に面倒臭いので」
霞「……いや、だからコラボは?」
「なんか、暇ね」
私は縁側で湯呑みに注がれたものを啜りながら溜息を吐く。昔を思えば、余りにも呑気な生活を送っている。
名のある大妖怪から弱小妖怪、果ては人間の国まで1人で潰して回ったあの頃。遥か昔に出会った霞との戦いを忘れられず、またあの興奮を味わいたくて大陸まで足を伸ばしたってのに、今では長らく血を浴びていない。元より、この身体では満足な戦闘なんて無理なのだけど。霞はまた戦ってくれないかしら。
朝食を済ませた後は、特にやることも無く、ごく稀に美鈴の修行の相手をしてあげる程度。今日は霞が直接相手をしているから、まったくやることも無い。
空になった湯呑みに再び注いで、一気に飲み干す。
「……あの〜。姫咲さん?湯呑みでお酒を飲むのはどうかと思いますよ?」
白と赤の巫女服を着た少女がいつの間にか隣に立っていた。この神社の巫女である彼女は、いつもなら霞に霊力の使い方やら色々と教わっていて忙しい筈だが。
「今日はお休みの日なんです」
「……あ、そ」
まぁ、特に興味もないけど。
「お隣、いいですか?」
「そう言いながら座るあたり、流石博麗神社の巫女ね。霞にソックリだわ」
別に褒めたつもりはないのだけど、巫女--博麗夢乃は照れた表情をしている。
「これでも、一応鬼の頂点なんだけどね」
「……うーん。失礼かも知れませんが、そうは見えないですね」
それは容姿的な意味でかしら。だとしたら、アンタの師であり、神の頂点の霞に文句を言うのだけど。まぁ、いくら言ったところで変化があるわけじゃないけど。
それに、この姿になった原因の封印をしたのは彼の弟子。となれば、それを解くのも彼ではなく弟子の役目でしょう。
あれ?つまりは結局霞の責任じゃない?
「そうだ!姫咲さんの事を聞かせて下さい!!」
「……はぁ?」
私の事ってなによ。
「そうですね。例えば能力の事とか、どれくらい強いのかとか」
「面倒臭いわね」
……最近、霞の口癖がうつったような気がする。
昔の私、と言っても霞にボロボロに負けた後。私は人間が暮らしていた大きな集落--霞が言うには『都市』--がいきなり爆発するのを地下で凌いだ。アレだけの爆発だと、流石の私でも無事では済まなかっただろうし。そもそも、それよりも前から地下で暮らしていたから余り変わらないけど。
ともかく、地上に再び出てきた時には見慣れた風景はどこにも無くて、一面が更地になっていた。
そんな中、私は霞の姿を探したわ。なんせ私が生涯初めて負けた男だもの、再び戦って貰うまで死んでしまっては困る。でも、いくら探しても霞は居なくて、それどころか生き物自体、なにもなかった。
あの爆発で多くの同胞も死んでしまったし、その後の食料がない状況でまた多くの妖怪が死んでいった。
私はその頃から、自分に能力があることに気がついたわ。
『感情を力に変える程度の能力』
負であれ正であれ、私自身の感情を力と呼ばれるものに変換できる。そのお陰であの食料のない状況でも私は生き延びれたし、今の力を得たと思ってる。
数億年かしら、それくらい経った頃の私は再び地上に出たのだけれど、その頃には漸く人間と呼ばれる生物が再び現れて、私はまた霞の姿を探した。まぁ、あの頃はまだ霞を人間だと思ってたから、既に死んでしまったと諦めてはいたけれど。
そんな中、何度か私の力を見誤った妖怪と戦うことがあったの。それがキッカケと言えばそうなるのかしら、昔以上に好戦的になったわね。能力の影響もあるのだろうけど。
そこから数千年。あらかたこの国での妖怪の底が見えた頃、私は大陸に渡った。なんせ大陸には私の知らない妖怪や力を使う人間が多くいたのだもの。
……え?この着物?
ふふ、そうよ。霞を真似て作ったの。最初は霞と同じ青の着物にしようと思ったんだけどね。上手くいかなくて、結局赤にしたのよ。どうせ紅く染まるのだし、いいかなって。
そんなわけで大陸で遊んでいたら、運命かしらね。霞に出会う事が出来たのよ。あの時は自分でもわからないくらいに興奮したわ。もう、あの時に死んでも後悔しないくらいに。わかるかしら?心の底から会いたくて会いたくて、恋焦がれる乙女のような気持ちよ。
……まぁ、結果はこの身体と今の状況でわかるでしょうけど。
でも、まだ諦めたわけじゃないわよ?
いつか必ず、元の姿に戻ってもう一度霞には戦って貰うわ。
それが、私の生涯をかけた願いだもの。
「なんとも、内容はともかく恋する乙女ですね、姫咲さんって」
鬼の頂点と霞さんに教えられた少女の話は、私がまだ幼いからなのか殆ど理解の範疇を超えているけど。それでもわかるのは、霞さんを想っているということだけだった。
「まぁ、そんな風に思われてもしょうがないわ」
まだ十数年しか生きていないけれど、いつか私もこれだけ想えるような相手に巡り会えるのだろうか。
「さぁね。もしかすると貴女が気付いてないだけで、もう既に出会ってるかもしれないわよ?」
そうだろうか?よくわからないけど。
物心ついた、と言うか私の記憶がある頃から今まで、出会った男の人はそんなに多くはない。なんせこの神社と人里とを往復するくらいしかないし、その結果出会うのは里の男の人だけ。そんな数年で大幅に人が入れ替わるわけもなくて、見知った顔しかいない。
そもそも、人里には男の人が少ない気がする。他の所を見たことは無いけど、大体が女の人だった様な。……偶に女の人の様な男の人もいるけど。多分気のせいだろうし。
私には小さい頃の記憶がない。1番古い記憶と言われれば、雨の降る神社で差し伸べられた長老さんの暖かい掌だと思う。
長老さんが言うには、どこから来たのかわからない、小さな私が神社の中で雨宿りをしながら泣いていたそうだ。
私は長老さんに里へと連れてこられたけれど、何故か私には人里が居心地悪かった。まるで妖怪でも見るような目に晒されて、今でもそれを時たま感じる。
親に捨てられた私は、小さな里では奇妙に見られたのかな。
それからは、長老さんに勧められたけど人里には住まずに、この神社で雨風を凌いでいた。
偶に里に下りて、食料を恵んでもらうくらい。
何故かこの神社を離れちゃいけない気がしたんだもん。いつか、私を迎えに誰かが来てくれるような。そんな曖昧な予想がしてた。
まぁ、そのお陰で霞さんと出会えたし。晴れてこの神社に住むことを許されたんだけど。
だからココはもう私の家だし、霞さんと姫咲さんと美鈴さんは、私の家族だと思う。私の勝手かも知れないけど。
優しいお父さんの霞さん。身体は小さいし料理とか出来ないけど、頼りになるお母さんの姫咲さん。いつもどこかしらで居眠りしてるけど、楽しくて明るいお姉さんの美鈴さん。
まだ短い人生しか生きてないけど、多分1番今が楽しくて、そんな家族に囲まれた生活が嬉しい。
「……ふーん。ま、貴女がどう思おうと自由だけどね」
「!そうです、霞さんを祀るこの神社の巫女なんですから!私も自由に思っていいんですよね!!」
そうね、と言った姫咲さんの顔は、少し紅い気がしました。
「なに話してたんだ?」
美鈴との手合わせを終えると、縁側で姫咲と夢乃が並んで座っていた。この2人の組み合わせは珍しいわけじゃないが、それでも多いわけじゃない。なにより、顔を紅くしている姫咲ってが珍しい。
「女の子の秘密です!」
「そ、そうね」
よくわからんが、所謂ガールズトークってやつか?
「女の子の秘密なら私も入れてください!!」
さっきまで疲れ果てていた筈の美鈴が、2人の間に飛び込む。お前はそろそろ精神的にも成長して貰えんかね?
「そ、それより!私、お腹が空いたわ。お昼にしましょ」
「お、おぅ」
「今回は私も手伝うわよ!!」
「ごめんなさい。それだけは勘弁してください」
俺は光よりも速く土下座を決める。
「……姫咲さんは大人しく私と一緒に待ってましょうよ」
とうとうあの美鈴ですら苦笑いしかしなくなったか。引きつった笑顔を向ける美鈴に姫咲が襲いかかるのを見ていると、夢乃が俺の隣にしゃがみこんで。
「さ、あのお2人が遊んでいる間に準備しちゃいましょ?」
「そうだな」
俺は夢乃に手を引かれ、台所へと向かう。
「なんか嬉しそうだな」
「えへへ。そうですか?」
基本的に明るい夢乃だが、どこか今日は何時もよりも機嫌が良い気がする。
「まぁまぁ、気にしないでくださいよ。お父さん」
「……はいはい」
「んぁ?……お父さん?」
作「先生の事をお母さん(お父さん)って言っちゃう子いましたよね」
霞「…………お前、経験あるだろ」
作「ば!ばばば馬鹿な!!そんな事ないし!!」
霞「あー。はいはい」
姫「なんか、凄く疲れた気がする」
夢「そうですか?」