東方古神録   作:しおさば

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ワッショイワッショイ!!


15話/諏訪大戦(前編)

あ、どうも、霞です。

 

あれから2日経ちました。いよいよ神奈子との対決の日です。

諏訪子はどうなったかって?

まぁ、ある程度成長はしましたよ?

 

でもまぁ、付け焼刃もいいとこで。結果は神のみぞ知るってとこかな。ルーミア以外、全員神だけど。

 

ここは洩矢と大和の中間。小高い山に囲まれた、開けた平原。

「とうとうこの日が来たね」

「そうだな。体調はどうだ?」

諏訪子は肩をグルングルン回している。

「絶好調だよ。今ならルーミアにだって勝てそうさ」

「あら、なら今から殺ってもいいのよ?」

「い、いやいや。冗談だよ……」

慌てて首を振る諏訪子。コラコラ、あんまりからかうなよ。あとルーミア、字が違ったろ。

「さて、アチラさんも来たみたいだな」

ふと見ると、神々しい光を纏いながら、大和の神々が平原に降り立った。

「じゃぁ俺達は離れて見るから。悔いのないようにな」

「うん。バッチリアイツを倒すから、見ててよ!」

そう言って諏訪子は歩き出した。俺とルーミアは平原を見下ろす山の一つ、頂上に登った。

すると三貴神がコチラにやってくる。

「父上様、お待たせしました」

「ん」

ちゃっかり俺の隣に座る天照。ドンだけファザコンなんだ、お前は。

「あら、父上様。そちらの方は?」

天照がルーミアに気付き訊いてくる。

「俺の式のルーミアだ」

「どうも」

ルーミアは少し引きつったような笑みを浮かべている。

まぁ、妖怪からしたら神なんて天敵もいいとこだからな。その中でも最高神なんて、一緒にいるだけでも辛いだろう。

「天照。神力を抑えろ」

「あ、はい」

こういう時、天照は素直に言う事を聞くから楽だ。

「ルーミアと言えば妖怪の中でも『大妖怪』に位置する一角じゃないですか。最近噂を聞かないから死んだとばかり思っていたら」

と、月夜見。そういや都市にいた頃、そんな噂を聞いたような気がするな。

「お前、意外と有名だったんだな」

「えぇ、そうみたいね」

そう言いつつも、満更でもないようだ。嬉しそうな顔を隠しきれてないぞ。

「そう言えば月夜見、月に行った連中は元気か?」

「えぇ、1人を除いて」

ん?1人?誰だ?

「永琳ですよ。あの日月に到着したロケットのどれにも貴方が居ないとわかるやいなや、泣き崩れてしまいましてね。慰めるのに骨が折れました」

「なんでだよ」

泣かれるほどの事をした覚えはないんだがな。

「まぁ、親しい友人が死んだと思ったら、そうなるんじゃないですか?」

「あぁ、なるほどね」

……というか、天照、くっつくな。

 

 

 

 

 

 

「お前が洩矢の神か」

「あぁ、洩矢を、治める祭神であり王。洩矢諏訪子だ」

諏訪子はない胸を張って、精一杯偉そうにした。いや、そんなことしても笑われるだけだぞ?

「ぷふっ……わ、私は大和の神が一柱、軍神の八坂神奈子だ」

ほら見ろ、笑うの必死で耐えてるじゃないか。

「今回はこちらの要望を飲んでくれて、ありがとう」

「……なに。コチラも我が部下が勝手にした事とは言え、礼儀を欠いた事をした」

それに、飲まなかったら多分生きてないだろうし。と最後に小さく呟いた。どうやら諏訪子には聞こえなかったようだが。

「だが、それはそれ。ここからは本気でいかけてもらうよ!」

「勿論だ!軍神の名が伊達ではない事、思い知らせてやろう!!」

そう言うと、2人の間に冷たい風が吹いた。

 

 

 

 

「父上様はどちらが勝つと思いますか?」

隣の天照が甘えながら問いかける。どうでもいいが離れてくれないかなぁ……。

「力量の差ってのはそんなにないんだがな。多分、勝つのは神奈子だよ」

 

 

 

神奈子は細かい神力の弾を無数に放つ。細かく空きのない様に放たれた弾は、しかし諏訪子の作り出す土壁によって防がれる。

土壁によって一瞬でも諏訪子から目を離すと、突然地割れが起こる。突如として地面を失った神奈子は咄嗟に御柱を取り出し、その上に飛び乗る。

しかし諏訪子の攻撃はそれでは終わらず、割れた地面の隙間から、吹き出すように幾つもの弾が吹き出してくる。

神奈子は御柱から飛び、自ら飛ぶことにした。

吹き出る弾は、数こそ多いが決して避けられない訳ではない。

「こんなものかい?!洩矢神!!」

煽るように叫ぶ。しかし相手からの返事は聞こえない。

そんな空気に、悪寒がした神奈子は咄嗟に止まり、半歩分下がる。

すると目の前に突然光の柱が現れた。

天まで届くその光は、神奈子がそのまま進んでいれば、その身すべてを覆いつくし、跡形もなく消し飛ばすほどの神力が込められていた。

「アチャー。外しちゃったか」

すると諏訪子は途切れた光の柱の根本。地面の中からヒョッコリ姿を現した。

「今のはなかなか、肝が冷えたよ」

「そのまま当たってくれれば良かったのに」

お互いに軽口を叩いてはいるが、そろそろ体力、神力共に限界が近い。

「そろそろ終わりにするかい?」

「そうだね……次が最後だ」

 

 

 

 

 

「そろそろ終わるぞ」

俺がそう呟く。

先程まではお互いに隙を作らず、隙を作らせる為に動いていたが、どうやらそれも終わったようだ。限界が近いのだろう。

「結果がどうなっても、怨みっこなしだぞ?」

「えぇ、勿論心得ております」

天照は真剣な表情で神奈子を見守る。

「……いい加減離れない?」

「それはお断りします」

 

 

 

 

「はぁぁぁあああっ!!」

「でぇゃぁあああっ!!」

神奈子は幾本もの御柱を、取り出しそれぞれに神力を込める。

諏訪子は手に持つ鉄の輪に神力を込め、一撃に備える。

それぞれがこの一瞬、最後の時に全てを賭ける。

『くらぇええっ!!』

ふたりが叫び、それぞれの一撃が放たれた。

二つの神力は空中で押し合い、激しくぶつかる。

そして、どちらにも届くこともなくその場で弾けてしまった。

「なっ!?」

全ての力を込めた最後の攻撃は、相手に届かなかった。その心理的なショックに、諏訪子は膝から崩れ落ちた。

「……引き分け?」

「ではないよ」

その声に、諏訪子は顔を上げる。そこには未だに立っている神奈子がいた。

「とは言っても、アタシももう殆ど残ってないけどね」

そう言いながら、諏訪子へと手を伸ばす。

殺られるっ。そう覚悟した諏訪子が目をきつく瞑る。

しかし訪れたのは額に感じる微かな痛みだけだった。

「……へ?」

「これくらいしか、もう出来ないさ」

神奈子の最後の攻撃はデコピンという、なんとも小さなものだった。

 

 

 

 

 

 

「終わりましたね」

「あぁ。神奈子の勝ちだよ」

最後の最後。動くことも出来なかった諏訪子に対して、デコピンとは言え、最後まで立っていた神奈子。これがもし、命を奪う武器を持っていたとしたら、諏訪子は今ので死んでいただろう。

「まぁ、これからが面倒臭いんだがな」

俺達、観戦者は立ち上がると倒れている二柱の神へと近づいていった。




ぜんぺんぜんぺ〜ん!!

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