東方古神録   作:しおさば

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いや、寝るよりも書くのが楽しくなってきたぁっ!!



12話/ちっちゃくても神様らしい

はい、どうも。霞です。

 

今、ちょっと困ってます。

何故って?

それは数時間前に遡るんだが……。

 

 

 

 

 

「それにしてもデカイな」

そびえ立つ様に建つ土壁。それはこの国をぐるりと回っている。

当然、外壁に囲まれているんだから門があり、門があるのだから門番がいる。

「そこの者、待て!」

厳つい顔をしたオッサンにいきなり怒鳴られた。

どうでもいいけど、この近距離でデカイ声出すなよ。ちゃんと聞こえてるって。

「ここは土着神が頂点、諏訪子様が治める国、得体の知れぬ者を入れるわけにはいかん!!」

「あー。我々は旅の途中でして、常々耳にしていた諏訪子様の治める国をこの目で見たいと思い、ここまで来た次第です」

俺、意外と芝居の才能あるんじゃないか?

「何も怪しいものなどございませんので、どうか入れてもらうわけには行きませんでしょうか?」

「ふむ……」

そう言うと、オッサンは俺とルーミアをそれぞれ見回した。

「ならばこの場にて不審な物を持っておらぬか検査を行う」

……あ、このオッサン急に鼻の下伸びた。

「まずはそこの女からだ。服を脱ぎ、怪しくないと証明して見せろ」

ふと見ると、ルーミアはイラついている。

こういう男はいつの時代にもいるんだねぇ……。流石に、ルーミアを脱がせるわけにもいかない(この小説のR的な意味でも)ので、俺は少し力を使うことにした。

力と言っても、別にオッサンを傷付けたわけじゃない。ただ、少しの間夢を見てもらっただけだ。

俺の左手で触れた者に、任意の夢を見せることが出来る。その夢の中では、多分だけどルーミアが脱いでるんじゃないか?俺が見せたのはオッサンにとって『都合の良い夢』と指定しただけだし。

この能力、面倒臭いのが細かく指定しない限り、必ずしも良い夢を見るというわけじゃない。偶に悪夢を見せることがあり、その場合は物凄い魘されることになる。そして、俺にはどんな夢を見ているかわからないのも問題だ。

「さて、行くよルーミア」

こうして、俺達は洩矢の国へと足を踏み入れた。

 

 

 

「ここの神様って土着神の頂点なのよね?」

「んー?そうだよ?」

「その割にはこの国は和やかね」

確かに、祟で人を縛る土着神がいる国としては、人々には活気が溢れている。

「まぁ、それらも会ってみればわかるさ」

俺達は参道を歩きながら、この国の様子を眺めていた。

そしてまっすぐ進んだ先、一際目立つ建物があった。道行く人に聞いてみると、アレが洩矢神社らしい。

 

「二拝二拍手一拝だぞ?」

「それ、私もやらなきゃダメ?」

俺は懐から巾着を出し、賽銭を投げ入れる。

一応俺も神だが、他所の神には礼儀を尽くす。

「へぇ、あんた、若いのにちゃんとしてるんだね」

ふと、背後から声がする。

ルーミアが少し驚いている。まぁ、気配がしなかったのだから、当然だろう。

「これでも信心深いんでね」

「それはそれは、良いことだよ」

ゆっくりと振り向くとそこには1人の少女、というか幼女が立っていた。

「なんか失礼な事考えてない?」

まさか、ゼーンゼン。

「まぁ、いいや。あんた、この国の人間じゃないね?」

「おや、わかるかい?」

「わかるさ」

そう言うと、幼女は懐から鉄の輪を取り出した。

チャクラムたかあう武器のように見える。

「アンタみたいな、体から血の匂いをさせてるやつは、この国にはいないからね」

……あちゃー。妖力は隠せても血の匂いまでは気が回らなかった。ってか、そんなにするかな?

「あんた、うまく妖力を隠してるけど、妖怪だろ?この国に何しに来た!」

そう訊く幼女は、しかしどんな答えを出してもその殺気を抑えてはくれなさそうだ。

ルーミアも大剣こそは出していないが、いつでも飛びかかれるように重心を低くしている。

「まぁまぁ、とりあえず話を聞いてくれないかな?」

まずはこの幼女を落ち着かせるのを先にしよう。

「俺達はただの旅人だ。別にこの国になにかしようとしてるわけじゃない」

「嘘だ!妖怪なんかと一緒に居るような奴の言う事を、どうして信じられる!!」

まぁ、確かにそうだな。

「こういう、話を聞かないような子供は一度痛い目にあわせた方がいいんじゃないかしら?」

ルーミアの方も、臨戦態勢をとっている。

まったく。血の気の多い奴らだ。

「ルーミア、やめなさい」

「あら、貴方は私が負けるとでも思ってるのかしら?」

別にそんなこと言ってるわけじゃないんだが……。

はぁ……。

「もう一度言う。ルーミア、やめろ」

俺は千分の一、霊力の制限を開放し言葉に載せる。

それだけで、石畳の参道はめくれ上がり、大気は震えた。

「?!」

「!!……は、はい」

お、ルーミアと一緒に幼女も落ち着いたようだ。

「とりあえず、自己紹介をしよう。俺は神条霞。コイツは俺の式のルーミアだ」

「し、式って?」

やりすぎたかな?今にも漏らさんばかりに震えている。

「簡単に言えば、俺の召使いみたいなもんだ。だから俺の命令がなければコイツは人に危害を加えない」

「ほ、本当かい?」

「あぁ。まぁ、こればっかりは信じてもらうしかないがな」

言葉でなんと言おうとも、それを証明する手立てはない。

「わ、わかった。信じる、よ」

「良かった。ありがとう」

「だから、その……霊力を抑えてくれないかい?」

……どうやらさっきから垂れ流しにしていたようだ。

そりゃ、ビビって漏らす手前までなるわな。

 

 

 

 

「改めて、私はこの国の祭神であり王でもある、洩矢諏訪子だよ」

「……」

「……」

俺とルーミアは同時に言葉を失った。

神社の中に招かれ、茶を出されたのだが。改めての挨拶に俺は驚いた。コイツが土着神の頂点だと?

「な、なにさ」

「いや……なんでも」

あ、少し膨れてる。

「で?アンタらは何しにココに来たのさ」

「ん?だから言ったろ?俺達は旅をしてるんだ。所々でこの国の噂を聞いてね、ちょっと気になったから見に来た」

「え?本気で観光してただけなのかい?!」

最初からそう言ってるのに。あれ?言ってなかったか?

「いや〜。まさか土着神の頂点がこんなチンチクリンだとはね」

「チンチクリンって言うな!これでもアンタより歳上なんだぞ!」

いや、それはありえないだろ。

「そんな事はさておき、聞いていた噂ってのは本当なのか?」

「大和の国の噂だろ?本当さ。どうやらアイツら、次はこの国を狙っているらしくてね」

諏訪子はお茶で口を湿らす。

「恐らく、近々向こうから使者でも来て、宣戦布告でもするんじゃないかな?」

「なるほどね」

どうやら本当だったようだ。しかもまだ使者が来てない、という事は、向こうの神にも会える可能性も出てきた。

「なぁ、諏訪子。少しの間ココに住まわせてもらえないだろうか?」

「ん?ここにかい?別にいいけど」

よし!当分の宿ゲット!!

まぁ、ダメだった場合は異空間で寝るだけだったんだが。

「なら礼と言ってはなんだが、うまい酒を飲ませてやろう」

「お、いいねぇ!なら今夜は宴会だね!」

 

 

 

 

 

 

 

そして、それが今の悲劇のキッカケだった。

 

 

 

 

 

 

 

だって、諏訪子がこんなに酒癖悪いとは思わなかったんだも〜ん。ついでにいうとルーミアも。

おい諏訪子、なんでお前はさっきから俺の脇腹を殴っているんだ。霊力で固めなきゃ、一般人は死んでるぞ?

そんでルーミア、お前は何故に背後から抱きついてくる。当たってるんだよ。いや、何がとは言わないよ?言わないけど。

あぁ、諏訪子には無理だから諦めなさい。……グフっ?!なんだ今の一撃は!?

かなり重たいパンチだったぞ!!

 

 

そんな地獄の様な有様で、夜は更けていくのであった……。




はい、ケロちゃ……諏訪子様登場です!

そして瞼が重くなってきた!!




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