東方古神録   作:しおさば

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さぁ!!泣いても笑っても最後の戦い!!
いっちょやってやれ!!


92話/幻想大異変-博麗神社④

side 霞

 

さて。どうするか。

無明の能力の正体は分かった。

壁を崩すだなんて、応用が効くようで、そうでもない能力だとは思わなかったが。

俺は腕を組みながら、考える。

ルーミアを姫咲へと向かわせた以上、向こうは心配要らないだろう。……アイツが不要なまでに暴れていなければ、だが。

「随分と余裕ですね、創造神」

「そりゃそうだ。常に全力を出していれば少なくとも、お前は俺に勝てないんだからな」

まぁ、それだけのスタミナがある事が前提の話だが。

常に全力など、普通の人間ならば不可能だ。体力にしても、必ず減っていく。

俺?俺は神だし。力の源は信仰。しかもその対象は神だからな。神から信仰を得る神。言葉にしてみれば、なんとも意味不明な事だ。

そもそも、神が他の神を信仰すること自体、有り得ない。特に、それぞれの神話の最高神ともなれば、尚更。大体の神話の最高神は、ほぼ俺と同一視されることがある。やら宇宙を創造したやら、やれこの地を作られたやら。

つまり、俺の存在を知っている者以外からは、俺は信仰を得られない。俺の存在を知っているのは、その殆どが神なのだから、しょうがない話ではある。

そして人間からの信仰よりも、神からの信仰の方が力を得やすいのは当たり前だ。

だってそうだろ?

普通の人間ならば、例えばお賽銭に多くても千円が限度なところ、神は当たり前のように全財産を注ぎ込んでくる。それ位の差が出るのは当たり前である。

つまり、何が言いたいかと言うと。

 

「俺、最大出力って出したことないや」

 

今の「全力」とは、この星や世界に影響を与えない程度の範囲で出せる全力(・・)であって、俺の出せる全てではない。

まぁ、俺が何も考えずに全てをさらけ出したら、下にいる紫や霊夢。ましてやこの世界ごと壊してしまうだろう。

無明が常に俺と同等の力を得続けた場合、いずれはその域まで力を使わなければならなくなる。

 

そこで最初に戻る。

さて、どうするか。

 

飛んでくる黒い弾幕を、夜月で薙ぎ払う。

いくつか斬り漏らしたモノは、ワームホールを開き飲み込ませた。

まったく、ゆっくりと考え事もさせてくれないのか。

「ふざけているんですか」

「ぶっちゃけ、シリアス展開に飽きてきたんだよ」

もうこの章だけで何話使うつもりだよ。

と、メタい事を思いつつも頭を働かせる。

コイツには封印も意味がない。

封印(カベ)を崩して解いてしまうからな。

殺すことも不可能。人間としての限界(カベ)を崩している以上、死という概念が無くなっている。

封印もダメ、殺すのもダメとなると、どうするか。

 

そもそも、俺には何が出来るんだ?

いや、基本何でも出来るし、そう言っているんだけど。

俺自身の能力を再確認。

先ずはありとあらゆるものを創造し操る能力。

俺は両手を合わせる。

その瞬間に無明の周囲を無数の刃が覆う。その全てが一斉に無明へと飛び掛るが、スキマへと逃げ込んだ無明は無傷で再び姿を現す。

次に空間を操る程度の能力。

空間に裂け目を造り、中へと弾幕を打ち込む。

空間は無明の背後へと繋がり、そこから弾幕が流れ出る。しかしそれらも無明は、黒い球体を作り出し吸い込ませた。

後は概念を付加する程度の能力と、夜月の理を断ち切る程度の能力か。

これはさっきからやっているが、無明に傷を付けられないでいる。理というカベも、崩しているのだろう。

 

さて、どうしたものか。

時空を遡り、無明が産まれる前にまで戻ることも出来るが。その隙を与えてはくれないだろう。

これから能力を作り出しても良いのだが……。

 

ふと、一つ思い出す。

もう一つあったじゃないか。

まず使うことのなかった俺の能力。

最後に使ったのはいつの事か、俺自身も覚えていなかったが。

この能力ならば、カベは関係ない。

なんだ。簡単じゃないか。

 

「さて、お前への対処方が決まったところで、タイミングはバッチリだな」

どうやら紅魔館へと向かわせたルーミアは、万事上手くいったようだ。

何にせよ、一瞬でも無明よりも上にならなければ意味が無い。その為には姫咲の封印が邪魔だった。幾らカベを崩されたとは言え、封印自体は残っていた。イメージ的には壁に穴を開けたって感じかな。その穴からは姫咲自身の力が取り出せたが、俺の力は戻ってこない。俺の力を戻すためには封印を完璧に解く必要があった。

「紫!姫咲の封印、解除だ!!」

「えっ!?あ、はい!!」

余計な説明をしている暇はない。

手短に伝えると、紫は術式を発動する。

紫の足元に広がる陣。それが砕けるように消え去ると、途端に俺の身体に神力が漲る。懐かしい俺の一部が帰ってきたような。欠けていたパズルのピースが埋まっていく感覚。

「……さて、無明。これでお前に勝ち目はなくなった」

「……何を言っているんです。いくら貴方が力を取り戻そうとも、私はそれを超える!!」

どうやらコイツは自分の能力を完璧に把握はしていないようだ。俺を超えると言っている時点で、間違いなのだから。

ならばやってみろ。この世界を作り出した神として、世界を壊そうとする奴を放っておけはしない。

俺は右手を広げ伸ばす。掌には青い球体が作られた。

それを握る。砕け散った球体は、霧となり周囲を囲んでいく。

「掌握」

これも気休め程度。無明の能力ならばこの空間にも意味は無い。それでも、少なくとも俺の全力によって世界が壊れることは防げるだろう。

両手を合わせる。まるで全てに祈りを捧げるように。

「神力全解放。創造神モード(・・・・・・)!!」

 

全てを創造し、全てを司る。全ての根源であり、原初。そんな俺の力が掌握した空間に流れ込み、青く輝いていく。

「……これが……創造神」

見れば初めて無明の表情に焦りが見えた。頬を伝う汗を拭うが、体の震えは抑えられないようだ。

「その力を手に入れれば!!」

「お前に出来るわけがないだろう」

空を蹴る。俺の動きが見えなかったのか、視線を彷徨わせた無明。俺に気が付いたのは、背後に周り左手による力いっぱいの拳を食らわせた瞬間だろう。

吹き飛び、周囲の木々を叩き折りながら森へと転がっていく。

「……くそっ!!」

能力なんて使わせない。そんな暇は与えない。

一瞬で目の前に移動し、掌底を腹に叩き込む。

腹の内容物を吐き出しながら苦しみ藻掻く。

「これが創造神の力だ。分かったかコノヤロウ!!」

見れば俺へと右手を伸ばす無明。なるほど、まだ俺の力を奪おうとしているのか。

「その右手が能力を奪う鍵となるなら……」

その右手を落とさせてもらう。

俺は夜月を右手に引き寄せる。

今の夜月ならば、切れないものは無い。理も概念も、現象も思考も、森羅万象を切り裂く。

夜月を振るう。その軌跡は目で追うことすら出来ず、切られたことにすら気が付かない。

「……?!がぁっ!!」

切り口から血が吹き出す。

「これでお前は能力を奪えない」

「……余裕を見せるな……創造神!!」

無明の口調が変わる。もしかするとこれが無明の素なのかもしれない。

「例え力を奪えなくとも!お前との壁を崩せば良いだけだ!!」

醜く歪んだ顔。剥き出しなされた敵意。漸く人間らしさを垣間見た気がした。

「俺とお前に差などない!!」

そう叫ぶと、無明から感じられる力が段違いに上がる。どうやら能力を発動したらしい。

「くくくっ。これで、これで俺はお前と同等となった!!」

「そう、俺と同じだけの力を得たな……」

創造神(・・・)と同じだけの力を手に入れた。

それがどういう意味なのか、分かっていない。

「はははは!!これが創造神の力か!!これだけの力がっ……?!」

普通の人間ですら、余る力は身を滅ぼす。幾ら人間を超えたといえ、創造神の力がその身に収まるはずもない。

 

無明の身体は暴走を始めた。溢れ出る力を抑えられず、膨れ上がり、歪み、捻じれ、壊れていく。

「それがお前の望んだ姿だ」

「そ……んな……馬鹿……な」

俺は夜月を納める。

「…………くそっ!くそぉっ!!こんな……終わり方を認めるか!!全てを破壊してやる!!この力、全てを暴走させてやる!!」

そう言うと無明だったものはより大きく膨らんでいく。

暴走した力は凝縮し、一塊の爆弾となる。もしこれが爆発すれば、幻想郷どころかこの星、宇宙すら存在が危うくなる。

「やれるものならやってみろ」

しかし、俺が何も考えていないわけがないだろう。

 

「いい夢を見ろよ、無明」

そのセリフを最後に、無明は爆発を起こした。

全ては一瞬にして光に包まれ、その後、闇へと消えていった……。

 




霊「あれ?これ私たち死んだ?!」

紫「し、師匠?!」

霞「あ、ちょっと用事あるんで、これで」

魔「逃げたぞ!!追え〜!!」


次回、東方古神録最終回!!

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