そんでお待たせしました、あの子が復活!!
side 霞
何度も力と力がぶつかり合い、その度に嵐のような突風が吹き荒れ、大地が揺れる。
数えるのも面倒な程に、俺は斬りかかり、その全てを無明は避けるか防いだ。
乱れる呼吸を落ち着かせ、頭を働かせる。さっきから感じる、妙な違和感。確かに、無明に傷を負わせる事が今のところ出来ていない。しかし、それはアイツも同じ事だ。俺が対処出来ない様な攻撃をしてこない。余裕を見せているつもりなのだろうか。
俺は最初、無明の能力についてある予想を立てていた。それは「対象を超える」力を得る能力。それならば、俺を追い込んだのも頷けた。しかし、今はどうだ。
夢乃の能力を考慮した戦いをすれば、先の戦い程の苦戦を強いられない。確かに、今の状態で常に全力を出さなければいけないが、それでも俺に優位を取れないことから、この予想は外れていると言うことか。可能性は2つ。予想通りで未だに力の全てを使っていない。もしくは、予想自体が違い、別の能力がある。そのどちらか。
「そろそろ気が付きましたか。私の能力に」
ふと、無明が語り出す。
その姿は尊大で、少なくとも神の前で見せるものではないな。
「私の能力は『壁を崩す程度の能力』。それは物理的な壁に限らず、封印や概念などの壁すらも、私には意味をなさない」
「……」
そう語った無明。そこで俺は気が付く。
壁を
超えるではなく?
そうか。そういう事だったのか。
「だから夢乃の能力が必要だったのか」
「……そうです。壁を崩す能力と、予想を超える能力。その二つがあれば、私に敵はない」
壁を
壁を超えない以上、それは=でしかないのだ。
「……なんだよ……その程度だったのかよ……」
「……?」
俺は肩を落とす。ホント、無駄に考え過ぎて頭が痛いわ。
これでいつかの「言霊使い」の様な能力だったら厄介だったが。その能力が分かればなんてことは無い。俺と同じ力を使う奴が居るだけだ。
「もう少しさぁ、早めに言ってくんね?コッチは無駄にシリアスな感じで疲れるんだわ」
「……何を言っているんです」
俺は懐から1枚の札を取り出す。それを下にいる人物に届くよう投げる。
「あのな?これでも俺は最古の神様。創造神な訳よ」
俺の札から意図を汲み取った人物は、行動を起こす。それを妖力の動きから感知し、後は任せた。
アイツなら、何とかなるだろ。
俺は再び夜月を構える。それは今までの力任せな構えじゃなく、慣れた型。
「どうせ、その能力で紫の封印もこじ開けたんだろ?」
「……勿論。
ンなこったろうと思ったよ。結界で幕が掛けられているにも関わらず、この距離でも感じる圧倒的な妖力。間違いなくあの姫咲が封印を解いている。
今現在、この幻想郷でアイツを対処出来るのは多くない。紫や美鈴でも、1人では難しいだろう。
俺もこの場を離れる事が出来ない。
ならば不本意だけどしょうがない。背に腹は変えられないというやつだ。
「お前が『最強の妖怪』を手駒として使うならば、俺も切り札を出すしかないよな」
そう言って下を見る。俺を不安げに見守る紫と霊夢の顔が見えた。んな顔見せんな。
「……
side 紫
何度目かの衝撃の後、2人は間を開け話し出した。話はココからでは聞こえないけど、途中で師匠が咋に肩を落としていた。あの師匠が諦めたと思えないけど、何が起こっているのか分からないのは口惜しい。
「……ねぇ、紫」
隣に立つ霊夢は、先程からの圧倒的な力の波に、辛うじて立っているような様子だった。
「……霞さんは……大丈夫なの?」
「当たり前でしょ。誰の師匠だと思ってるのよ」
それは自分に言い聞かせるようなセリフだった。こうやって信じて見ているしかない。自分の無力さを改めて思い知る。それは霊夢も同じようで、震えながらも握る拳には力が入っていた。
そんな中、師匠が何かをコチラに投げた。それは一直線に飛び、近づいくと1枚の札だと気が付く。師匠からの何らかのメッセージだと思い手を伸ばすが、それは私でも、ましてや霊夢でもなく、庭を飛んでいた一つの球体に飲み込まれる。
この状況下で私を頼ってくれないのは寂しいが、文句は言えない。あの宴会の際に聞かされた話が本当ならば、この場合頼れるのは彼女だけなのだから。
遠くで感じる妖力に、唯一対抗出来るのは師匠か彼女。ならば私はそれをサポートすればいいんだ。
メッセージを受け取った球体は、暫くなんの反応も示さなかったが、突如としてその形を霧に変えた。
なるほど。これだけの妖力を感じるのは久しぶりだ。恐らくあの姫咲さんと同じかそれ以上。なにせ、この世で最初の式なのだから。
「お初にお目にかかります、常闇さん」
黒い霧の中から現れたのは、元の姿からは想像もできないほど成長した女性。いや、本来の姿がコチラなのか。
とうとう耐えきれなくなったのか、霊夢はストンと尻餅をついてしまった。
「……あー、やっとこの姿に戻れたわ」
不敵に笑みを浮かべると、上空の師匠を一瞥し、何処から取り出したのか大剣を担ぐ。
「悪いけど、アッチは手が離せないみたいだから、道を繋いでくれる?」
「かしこまりました」
今回は味方だからよかった。これで少しでも不始末を起こせば、もはやコチラに勝ち目はない。
「まったく。式使いが荒いわよね、ホント」
そう言って、彼女--ルーミアはスキマへと潜り込んで行った。
どうやら、決着はもう直ぐ着くような気がした。
霞「復活早々、愚痴とは偉くなったなオイ」
ル「アンタが不甲斐ないからいけないんでしょ」
紫「……流石にこんなやり取りは私でも出来ない……」
霊「羨ましいの?」
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