東方古神録   作:しおさば

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残りあと5話!!

そんでお待たせしました、あの子が復活!!


89話/幻想大異変-博麗神社③

side 霞

 

何度も力と力がぶつかり合い、その度に嵐のような突風が吹き荒れ、大地が揺れる。

数えるのも面倒な程に、俺は斬りかかり、その全てを無明は避けるか防いだ。

乱れる呼吸を落ち着かせ、頭を働かせる。さっきから感じる、妙な違和感。確かに、無明に傷を負わせる事が今のところ出来ていない。しかし、それはアイツも同じ事だ。俺が対処出来ない様な攻撃をしてこない。余裕を見せているつもりなのだろうか。

 

俺は最初、無明の能力についてある予想を立てていた。それは「対象を超える」力を得る能力。それならば、俺を追い込んだのも頷けた。しかし、今はどうだ。

夢乃の能力を考慮した戦いをすれば、先の戦い程の苦戦を強いられない。確かに、今の状態で常に全力を出さなければいけないが、それでも俺に優位を取れないことから、この予想は外れていると言うことか。可能性は2つ。予想通りで未だに力の全てを使っていない。もしくは、予想自体が違い、別の能力がある。そのどちらか。

 

「そろそろ気が付きましたか。私の能力に」

 

ふと、無明が語り出す。

その姿は尊大で、少なくとも神の前で見せるものではないな。

「私の能力は『壁を崩す程度の能力』。それは物理的な壁に限らず、封印や概念などの壁すらも、私には意味をなさない」

「……」

そう語った無明。そこで俺は気が付く。

壁を崩す(・・)

超えるではなく?

そうか。そういう事だったのか。

「だから夢乃の能力が必要だったのか」

「……そうです。壁を崩す能力と、予想を超える能力。その二つがあれば、私に敵はない」

壁を崩し(・・)、同等の力を得ただけでは俺には勝てない。俺の予想を超える結果をもたらすために、夢乃の能力を奪ったのだ。

壁を超えない以上、それは=でしかないのだ。

「……なんだよ……その程度だったのかよ……」

「……?」

俺は肩を落とす。ホント、無駄に考え過ぎて頭が痛いわ。

これでいつかの「言霊使い」の様な能力だったら厄介だったが。その能力が分かればなんてことは無い。俺と同じ力を使う奴が居るだけだ。

「もう少しさぁ、早めに言ってくんね?コッチは無駄にシリアスな感じで疲れるんだわ」

「……何を言っているんです」

俺は懐から1枚の札を取り出す。それを下にいる人物に届くよう投げる。

「あのな?これでも俺は最古の神様。創造神な訳よ」

俺の札から意図を汲み取った人物は、行動を起こす。それを妖力の動きから感知し、後は任せた。

アイツなら、何とかなるだろ。

 

俺は再び夜月を構える。それは今までの力任せな構えじゃなく、慣れた型。

「どうせ、その能力で紫の封印もこじ開けたんだろ?」

「……勿論。彼女(・・)には本来の力で暴れてもらわなくては」

ンなこったろうと思ったよ。結界で幕が掛けられているにも関わらず、この距離でも感じる圧倒的な妖力。間違いなくあの姫咲が封印を解いている。

今現在、この幻想郷でアイツを対処出来るのは多くない。紫や美鈴でも、1人では難しいだろう。

俺もこの場を離れる事が出来ない。

ならば不本意だけどしょうがない。背に腹は変えられないというやつだ。

「お前が『最強の妖怪』を手駒として使うならば、俺も切り札を出すしかないよな」

そう言って下を見る。俺を不安げに見守る紫と霊夢の顔が見えた。んな顔見せんな。

「……最強の式神(・・・・・)ってやつを」

 

side 紫

 

何度目かの衝撃の後、2人は間を開け話し出した。話はココからでは聞こえないけど、途中で師匠が咋に肩を落としていた。あの師匠が諦めたと思えないけど、何が起こっているのか分からないのは口惜しい。

「……ねぇ、紫」

隣に立つ霊夢は、先程からの圧倒的な力の波に、辛うじて立っているような様子だった。

「……霞さんは……大丈夫なの?」

「当たり前でしょ。誰の師匠だと思ってるのよ」

それは自分に言い聞かせるようなセリフだった。こうやって信じて見ているしかない。自分の無力さを改めて思い知る。それは霊夢も同じようで、震えながらも握る拳には力が入っていた。

そんな中、師匠が何かをコチラに投げた。それは一直線に飛び、近づいくと1枚の札だと気が付く。師匠からの何らかのメッセージだと思い手を伸ばすが、それは私でも、ましてや霊夢でもなく、庭を飛んでいた一つの球体に飲み込まれる。

この状況下で私を頼ってくれないのは寂しいが、文句は言えない。あの宴会の際に聞かされた話が本当ならば、この場合頼れるのは彼女だけなのだから。

遠くで感じる妖力に、唯一対抗出来るのは師匠か彼女。ならば私はそれをサポートすればいいんだ。

メッセージを受け取った球体は、暫くなんの反応も示さなかったが、突如としてその形を霧に変えた。

なるほど。これだけの妖力を感じるのは久しぶりだ。恐らくあの姫咲さんと同じかそれ以上。なにせ、この世で最初の式なのだから。

「お初にお目にかかります、常闇さん」

黒い霧の中から現れたのは、元の姿からは想像もできないほど成長した女性。いや、本来の姿がコチラなのか。

とうとう耐えきれなくなったのか、霊夢はストンと尻餅をついてしまった。

「……あー、やっとこの姿に戻れたわ」

不敵に笑みを浮かべると、上空の師匠を一瞥し、何処から取り出したのか大剣を担ぐ。

「悪いけど、アッチは手が離せないみたいだから、道を繋いでくれる?」

「かしこまりました」

今回は味方だからよかった。これで少しでも不始末を起こせば、もはやコチラに勝ち目はない。

「まったく。式使いが荒いわよね、ホント」

そう言って、彼女--ルーミアはスキマへと潜り込んで行った。

 

どうやら、決着はもう直ぐ着くような気がした。




霞「復活早々、愚痴とは偉くなったなオイ」

ル「アンタが不甲斐ないからいけないんでしょ」

紫「……流石にこんなやり取りは私でも出来ない……」

霊「羨ましいの?」



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