東方古神録   作:しおさば

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今回はグロ要素があります。ご注意を!!

あと、妹紅ファンの方々。
先に言っときます、ごめんなさい!!


88話/幻想大異変-永遠亭②

 

 

side 永琳

 

火の粉が踊る竹林を走り抜け、私は永遠亭へと辿り着いた。

どうやらここが火元のようで、元の姿を想像出来ない程に崩れ落ちていた。

私は炎を掻き分け、中へと飛び込む。

すると元は中庭だった場所に二つの影が見えた。

一つは膝をつく姫様。もう一つは見知らぬ少女。

一先ず姫様の無事を確認し安堵する。しかしながら、辺りに漂う不穏な空気に、私の神経は再び張り詰めた。

 

想像でしかないが、恐らくこの少女がこの火災の犯人なのだろう。だとすれば、今回の敵襲と無関係とは思えない。

慎重な対応が必要だ。

 

そんな中、姫様の悲痛な叫びが……。

 

「私のピカ〇ュウがぁっ!?」

 

……元い、頭を抱えたくなるような戯言が聞こえた。

この状況下で真っ先に言うのがそのセリフ?

他に言うことは無かったのかしら。

 

「ちょっとアンタ!私のゲーム〇ーイどうしてくれるのよ!!」

そう言いつつ少女に躙り寄る姫様。しかし少女は一向に言葉を発しない。

次の瞬間。炎はより一層燃え上がり、渦を巻いて姫様を襲う。咄嗟に後ろへ飛ぶことで避けることは出来たが、明らかに殺意を持った攻撃に、姫様も態度を改めた。

「……貴女、どなた?そこまで恨まれるような事したかしら?」

すると少女は漸く口を開く。

「私は藤原妹紅。お前を殺すためにここまで来た!!」

再び炎は踊り、形を変えていく。

傍観している場合ではないと、弓矢を構える。真っ直ぐに放たれた矢は、私の狙い通り妹紅の脚を貫いた。

「姫様!無事ですか!」

射抜かれた脚で、まだ動こうとする妹紅に、私は矢を番えながら近寄る。

「……そうか、アンタが八意永琳か」

その言葉に私は寒気がした。何故私の事を知っているのか。地上の人間で、私の存在を知っている人物は少ない。霞の周りの人間くらいだ。そしてそこから情報が漏れるとは思いにくい。

「悪いがアンタは邪魔だ……」

そう言うと掌を向ける。私は妹紅がなにかする前に二の矢を放った。最早この少女が何処の誰で、何が目的かは知らないが、姫様に危害が及ぶのならば排除しなくてわ。

しかし放たれた矢は、今度は妹紅に当たる事もなく、舞い上がった炎に飲まれた。

そのまま炎は私を取り囲み、檻へと姿を変える。

「そこで大人しくしてな」

 

 

side 輝夜

 

永琳が不甲斐なくもアイツの炎に閉じ込められ、身動きが取れなくなった。

こうなると私がやるしかないじゃない。

こういった肉体労働は私には似合わないんだけど。

まぁ、少なくとも永琳の矢で脚は潰したから、後は軽いものでしょうけど。

 

そんな私の考えは、次の瞬間には消え去った。

炎を纏ったアイツ--藤原妹紅だっけ?はそれが払われると、全くの無傷でそこに立っていた。

「……」

そう、まるで不死鳥が炎の中から再び甦るように。

「なるほど、アンタも不死なのね」

「そういう事だ。けどお前はここで殺す」

野蛮な言葉を使うわね。私みたいに上品に喋れないのかしら。

私は蓬莱の珠の枝を取り出す。

つい先日、あのスキマ妖怪が話した『弾幕ごっこ』とかいうルールは、どうせ通用しないんだろうし。不本意だけど久方ぶりに本気で相手をしなきゃいけないわね。

「お互い不死ならば、気兼ねなく殺せ(あそべ)るわね」

 

そこからはお互い被弾を気にすることのない、決してお世辞にも優雅とは言えない戦い。

私の弾幕が妹紅の腕を吹き飛ばせば、妹紅の炎が私の顔を焼き焦がす。次の瞬間には傷など無かったかのように、元に戻っている。

そう言えば、不死の相手との戦闘は初めてね。どうやって決着を着ければいいのかしら。

そんな事を考えていると、迫る拳を避けきれず吹き飛ばされた。

炎の海と化した永遠亭の中を、私は転がる。

「いっっったいわね!私、これでも姫なのよ!?」

聞こえるはずもない外の相手に叫ぶ。自分で「これでも」とか言ってるあたり、虚しくなっちゃうけど。

 

ふと考える。アイツは確か藤原と名乗った。私の記憶にある「藤原」と言えば、不比等くらい。つまりその関係者?

あの事が原因で私を恨んでるなら、これ以上無いくらい面倒臭いわ。

 

そこで思い出す。あの五人に課した難題を。

そしてそれぞれの持ち帰ったものを。

「……そう言えば、アレ(・・)って使えるじゃない」

どうせこの炎の中でも無事なんだろうし、使えるものは使わなきゃ。

都合のいい事に、ここは私の部屋だった場所。ならばこの辺りに……。

 

 

side 永琳

 

姫様が屋敷の中へと吹き飛ばされ、しばらく経った。不死の身体故に、この炎の中でも無事だとは思うのだけど。

行く手を遮る炎に、辛酸を舐めさせられる思いでいる中、瓦礫の山から姫様が姿を現した。

「ちっ、生きてたか」

「お姫様は準備に時間がかかるのよ」

そう言った姫様は、朱色に染められた1枚の衣を羽織っている。

確か、昔に聞いたことがある。あの衣は……。

「いい加減、死ぬまで焼き尽くしてやるよ!!」

再び炎を纏う妹紅。炎は形を変え、妹紅の背中から吹き出す。その姿はまるで不死鳥の様で、こんな状況でなければ、素直に美しいと思ったことだろう。

「まったく。能力が使えないのは厄介ね」

言葉を紡ぐ姫様。当然ながら、生粋の姫であるからこそ、その一つ一つの動きは雅さを感じさせる。

「でもね、私を殺したいのなら『能力』を封じた程度じゃ足りないわ」

姫様を囲むように浮かぶ光の弾。それらは高速で回り、やがて1本の輪となる。

「霞くらいじゃなきゃ私は殺せないわよ」

光の輪はその大きさを大きくしていき、触れたものをまるでチェーンソーの様に切り裂いていく。

しかし妹紅はそれすらも気にせず、姫様へと駆ける。

やがて輪に触れた妹紅。その上半身と下半身は別れ、地面へと崩れ落ちた。

しかし予想通りに炎は舞い上がり、その身体を元に戻そうとしている。

「まだまだ!」

輪となっていた光は途中で途切れ、太い縄の様な、ムチのように撓る形状へと変わる。

それを操り、更に細かく切り刻む。

ムチの動きが止まった頃には、妹紅はその原型を留めていなかった。

「ま、ここまでしても復活するのは分かってるけどね」

そう言いつつ近づく姫様。

羽織っていた衣を、妹紅だった物に放り投げると、光のムチで縛り上げる。

「これは火ネズミの羽衣と言ってね、決して燃えないのよ」

つまり炎の中から復活する妹紅は、衣に包まれた状態で、死ぬことも、元に戻ることも出来ない状況下に陥った。

 

これだけの惨状を生んだ少女との戦闘は、こうして呆気なくも幕を閉じることとなった。

 

 

「またいつでも来なさい。その度に殺して(遊んで)あげるわ」




ホントはもっと時間を掛けてこの2人は戦わせたかった。
でもこれ以上、長引かせるよりは、スパッと終わらせる。
断腸の思い、わかって欲しい!!

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