霞「あれ?作者?どこ行った?」
霞「え?他の奴らもいないの?!この状況俺だけにすんの?!」
閑話/それぞれが望む未来らしい
作「はい、どーも。本文には初登場。創造神の創造神、しおさばさんです」
「「いぇ〜い!!」」
気が付くと辺り一面真っ白な世界。かなり昔だが、俺が転生する際にあの世界の神と出会った空間に似ている場所にいた。
声の方に振り向くと、そこにはバカ作者と愉快な仲間達が盛り上がっている。おい、主人公はほっとくのか。
作「さて、皆様にお集まり頂いたのは他でもない!!あの超絶チート野郎を好き勝手やってやろうぜ!!」
「「うぉぉぉおおおおっ!!」」
何を盛り上がっているのか知らないが、その超絶チート野郎ってのはこれから大変な目に遭うんだろうな。
作「んで、アソコに居るのが、今回自分にどんな事が起きるか全く理解していない、アホな超絶チート野郎でーす!」
……まぁ、あらかた理解はしてたよ?チート野郎ってのが俺だって。
つーか、一々セリフの前に『作』って付けるな、鬱陶しい。
作「だってそうしないと君と区別つかなくなるから」
知るかよ。メタいんだよ。
作「んじゃ、早速作者権限発動!!」
そう言うと、俺の意識はまた暗闇に飲まれていった。
「んで、どういう状況なんだコレは」
俺は今、何処かの街にいる。理解出来ないのは、ココが俺の、転生する前のの元いた世界と同じ時間だと言うこと。
「今回は番外編だそうです」
隣にいつの間にかいた紫が説明してくれた。……うん。紫だよな?
「おかしいですか?」
「うん。おかしいよね。いつの間にか成長した?」
俺の知ってる紫は、まだまだ小学生レベルの大きさだったはずだが、隣のソレは俺よりも少し低い身長と育ちきった身体をしていた。
「だから、番外編なのです」
……なんでもアリか。
「なら俺は何をすればいいんだ?」
「……それなんですが」
なんだ?急にモジモジし始めて。
「今日は、私とデートしてくださいっ!!」
「だが断るっ!!」
--part1・紫の場合
「さ、師匠。この世界の事は私、知らないんですから。案内してくださいよ」
俺の襟首を掴み引きずるように歩く紫。くそぅ。デカくなったから抵抗しにくいし。何故か能力とか使えないし。
これもあれか、作者権限と言うやつか。
「わかった!わかったから離せ!!」
「……師匠は能力使えなくても、私は使えますからね?」
あ、逃げ道塞がれた。
「……たく。なんで俺がこんな目に」
最初に案内されたのは、服の店のよう。
師匠曰く、私の服装はかなり目立つそう。
これ、気に入ってるんだけどなぁ。
「ほら、選んでこい」
「……師匠が選んでくれません?」
「は?」
こんな時じゃなければ、存分に甘えられないのだから、一生分は甘えよう。
「……いいんだな?俺が選んだ服なら着るんだな?」
……なんか凄く嫌な予感がするけど。
「……私が決めますけどね」
師匠が選んだのは白いシャツと薄い紫色のパーカーといった着物。紺色の硬い生地のジーパンという履物だった。
これがこの世界の普通なのかな?
「俺にセンスを求めるなよ?」
「??扇子ならもう持ってますよ?」
「お約束なボケだな」
そんなやり取りをしつつ、店を後にすると師匠のお腹がなった。
師匠からそんな音が聞こえるのは初めてだった。
「何時もなら霊力や神力で補えるし、死なないから腹も減らないんだよ」
「ではこの世界では?」
お腹を押さえている師匠は、少し可愛い。
「まぁ、能力も使えないし霊力もないから、普通に普通な人間だから、簡単に死ぬだろうな」
「……」
つまり、今の師匠はなにか起きたら私を頼るしかない、と。
「……なに考えてるか知らないけど、この世界は基本平和だからな?」
「……で、結局ラーメンなんですね」
「なにか不満でも?」
「普通デートならもうちょっと可愛らしい物を食べるって、作者も言ってましたよ!!」
あの作者のことだから、何処まで信用していいのかわからないけど。
小ぢんまりとした店の暖簾を潜り、手馴れた要領で注文していた。
運ばれてきたラーメンを美味しそうに啜る師匠は、やはり懐かしいのだろうか、見るからに嬉しそうだった。
「やはり、この世界は懐かしいですか」
「んぁ?なに言ってんだ?」
「……何処か嬉しそうな顔をしていますから」
箸を止めて私を見る師匠は、不思議な生き物を見るような目をしていた。やめて、その目は癖になりそう。
「確かに俺の育った世界だから、懐かしいと言えばそうなんだが。あっちでの時間の方が圧倒的に長いからな。20年程と数億年だったら、意味が違うだろ」
「……でも、戻れるならば……戻りたい……ですか?」
「いや、それはない」
意外にもアッサリとした答えだった。
「だって、この世界には紫はいないんだから」
その言葉に、私は驚いた。
「今更お前達がいない生活なんて、考えられんよ」
……胸の奥が熱くなるのを感じた。それはきっと食べたラーメンのせいに違いない。
店を出て、見慣れない懐かしい風景を眺めながら歩いていると、観覧車が見えた。……何処だよココは。
横浜か?横浜なのか?!いくら作者の地元とは言え、安直すぎるぞ!!
観覧車に近づくにつれ、人が多くなる。意識しないと紫を見失いそうになる程だ。
「ほら、逸れるぞ」
手を差し出す。それに驚いたのか、急に紫の顔が赤くなった。あ、子供の時と同じ感覚だったのだが、恥ずかしいのか?
おずおずと、俺の手を握る紫は、とうとう俯いてしまった。まぁ、人混みを抜けるまでの辛抱をしてくれ。
「次はどこに行く?」
「何処でも……良いです」
急に取られた手をしっかりと繋ぐと、師匠は私を引っ張って歩き出す。小さな頃も大きかったが、成長したこの身体でも、師匠の手はやはり大きく感じた。
それからはよく覚えてないのだけれど、色々と見て回った気がする。ふと気づくと海を見ながら長椅子に座っていた。
「ほれ、喉乾いたろ」
ふと、頬に冷たい何かが触れた。
筒状の冷たい何かを受け取る。何だろうコレ。
師匠は黒い色をした似たような物を口にしている。飲み物なのかな。
「んで、どうだった?」
「どうとは?」
要領を得ない質問。まだ頭が働いてないのだろうか。
「紫が望んだんだろ?今回のデートは」
「……えぇ」
思い出せば、今日1日はまるで夢のようだった。師匠を独り占めして、見知らぬ街を歩く。これがデートと言うものならば、何度でも味わいたい。
「……楽しかった、です」
「そっか。そりゃ良かった」
師匠は笑顔で言ってくれた。はじめは無理やりだったかもしれないけれど、この笑顔が見れたのならば、師匠も楽しんでくれたのだろう。
「その……師匠?」
夕日の沈む海。辺りには人影はなく、この空間に私と師匠の2人だけのようだ。ならば、言うのは今だろう。今ならば勇気を出せる気がする。今ならば言える気がする。
「ん?」
「私……私……師匠の事が……」
いつもの自分じゃないのはわかっている。言葉を紡ぐのに、こんなにも苦労するのは初めてのことだ。
唇が乾く。脚が震える。命を奪われるかもしれない恐怖とは違う、心臓がその鼓動を速くしているのがわかる。両手を握り締めないと、直ぐにでも勇気が消え去ってしまいそうになる。でも言うんだ。この気持ちを、この想いを。
「私!師匠の事がっ!!」
作「はいどーもー!!お楽しみいただけましたかー?」
頭の中に不快な音声が流れる。
「お?なんだ?」
作「名残惜しいかも知れませんが、お時間で〜す!!」
その言葉と共に、私の司会は黒い靄に包まれたように奪われていった。
いつか、あの作者、殺す……。
そう決意を固めながら。
作「はい、番外編第1弾!」
霞「なにこれ。需要あんの?」
作「何を言ってるんだい?……これは息抜きだよ?主に僕の」
霞「お前のかよ。…………ちょっと待て、第1弾って言ったか?!」
作「さぁ!次は誰だろうねぇ!!」
霞「おいコラ、バカ作者!!」
感想お待ちしております