I/S ( IS×アルドノア・ゼロ)   作:嫌いじゃない人

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 十七話に続いて襲撃事件の後の話です。
 前回の保健室がギャグ多め(のつもり)だったので、今回はシリアス(?)がメインです。


第十八話 襲撃の後に残るもの

 クラス代表対抗戦襲撃事件からしばらく経ったある日の放課後。一夏は千冬に呼び出され普段は近付くことのない部屋に来ていた。

 窓には暗幕が掛かっていて室内には机が無く椅子だけが並ぶ。簡易視聴覚室のような部屋だ。

 

 そして一夏と同じように呼び出されたメンバーが三人。伊奈帆と簪、それと箒。

 これで呼び出されたのが一夏と伊奈帆と簪の三人ならば用件は先日の襲撃事件のことだと分かるのだが、そうすると箒という人選が不可解だ。

 

 何が起こるのか分からないので大人しく一夏が座って待っていると、部屋の扉が開いて真耶が入って来た。

 

 箒が手を挙げ質問をする。

 

「あの、山田先生。私たちはどうしてここに来るよう言われたのですか? 理由をまだ教えてもらっていませんが……」

 

「ええと詳しいことはこれから来る二人に説明してもらいますが……。その前に皆さんにはこの書類にサインをしてもらいます」

 

 そう言って真耶は持ってきた書類の束から複数枚セットの紙を四人に渡していく。

 

「……なんだこれ?」

 

「契約の同意書。内容は……見た限り、IS学園が統制対象に指定した情報を外部に漏らさないようにするためのものか」

 

 IS学園は日本でいうところの高等学校に相当する教育機関であると同時に、世界各国から最先端の技術が集まる研究施設でもある。そのため機密保持のための同意、契約は珍しくない。

 四人は促されるままに契約書を読みながら複数個所にサインをした。

 

「……なあ。この文章ややこしくてイマイチよく分からないんだけど、サインして大丈夫なのか?」

 

「細則まで細かく定められてるのは罰則に関する事項ばかりだから、人に吹聴してまわらない限り大丈夫だよ」

 

 サインを終えた人から順に真耶が同意書を回収していると、部屋の扉が開きさらに人が入って来る。千冬と楯無だ。

 

「あら? ちょうど書き終わったところかしら」

 

「お姉ちゃん? 今日は生徒会のお仕事のはずじゃあ?」

 

「今日は特別。こっちの方がちょっと重要な用件なのよ」

 

 そう言って楯無が開いた扇子には達筆な字で『優先順位』と書かれている。

 その後ろで千冬は真耶から四人分の同意書を受け取っていた。

 

「山田先生。ありがとう」

 

「いえいえ。四人全員、サインに不備ナシです!」

 

「ふむ―― それでは諸君、本題に入ろう」

 

 千冬の宣言と共に真耶がリモコンを操作すると部屋の明りが暗くなり、千冬の後ろに巨大なモニターが浮かび上がる。

 そしてその画面に、昨日アリーナを襲撃した正体不明のISの映像が表れた。

 

 必然的に四人の表情が強張る―― 若干名、表情の変化が乏しい者もいるが。

 

「知っての通り、こいつは先日アリーナを襲撃しクラス代表対抗戦に乱入したISだ。姿形はこれまで各国が発表したどのISにも似ておらず、共通する特徴も見受けられない。学園外の専門家に聞いてもそれはほとんど同じ意見だった」

 

「戦闘の映像から分かるのは、類い稀な機動性とパワー、そして高火力の熱線。識者の意見でも、このISは最新の第三世代型ISのスペックを上回っている可能性が高いとのことです」

 

 映像が切り替わり今度は破壊された襲撃者のISが映る。画像を撮った場所はISが倒された現場のアリーナではない。何処かきちんとした場所で部品ごとに整理され並べられている画がモニターに映されている。

 その頭部の装甲はひび割れ、胴体にはぽっかりと孔が開いていた。

 

「さて。そしてそのISの操縦者だが―― 諸君のうち何名かが想像している通りこいつは無人機だ。操縦席に当たる場所が存在せず全てのパーツが一体化している。血液や毛髪など人の痕跡も見当たらなかった。……なんだ? 界塚」

 

「無人機に使われていた技術は遠隔操作とAIによる独立稼働、どちらか判るでしょうか?」

 

「残念ながら無人操作の中枢部位はどこぞのバカに破壊されたせいで解析不能だ」

 

「てへっ♪」

 

 楯無は『ドジっ娘』と書かれた扇子を広げながら舌を出す。

 

「……まあいい。機体の解析可能な箇所を調べた結果だが驚くべきことにコードの切れ端からネジの一本まで、生産工場を示すようなものは見つからなかった。襲撃の首謀者は依然、不明のままだ」

 

 そこまで話が進んだとき、おずおずと一本の手が上がった。簪だ。

 

「あの、ISのコアは無事だったんですよね?」

 

「……ああ」

 

「だったらコアの登録番号を調べれば、どこの国の所属なのか判るんじゃないですか?」

 

「コアは未登録のものだ。私からはこれ以上言えん……。いや、もう一つ言わなければならないことがあったな。IS学園はこのコアを破壊したとIS委員会に報告した」

 

「えっ!! 千冬姉ウソを()くのかよ!」

 

 壇上から降りた千冬はつかつかと歩み寄り、一夏に鉄拳制裁を喰らわせる。

 

「がはっ!」

 

「織斑先生と呼べ、人聞きの悪い。もし国際社会に向けこのコアの存在を明らかにすれば必ずコアの奪い合いとそれに絡めた襲撃の犯人探しが始まるだろう。そして生憎だが、私には国際協調の和を乱し争いの火種を放り込む趣味はない。諸君らもこのことは他言無用だ。解ったな」

 

「……は、はい!」

 

 

 

 

 

「失礼しましたー」

 

 説明を受け部屋から退出した四人は、人気のない廊下を歩き一年生の寮に向かう。

 しばらく沈黙が支配した後、一夏が歩きながら口を開いた。

 

「……結局、何の話だったんだ?」

 

「話の要点は、今回の襲撃騒動について一切他言無用。そういうことだよ」

 

「まあそれは分かるんだが……。無人機とか未登録コアとか、そんな深刻なことなのか?」

 

「……一夏、ISは人が乗らなければ動かないことや、コアの登録番号については知っているな?」

 

「なんだよ箒、改まって。えっと両方とも教科書で読んだぞ。コアにはそれぞれコアナンバーがあって、アラスカ条約によるコアの国家間配分のときにどの国がどのナンバーのコアを持っているのか登録している……だったか? 確か」

 

「そうだ。今まで不可能とされてきた無人操縦技術の開発、それに存在しないはずの未登録コア。ここまで証拠が揃えば誰が犯人かなんて簡単に想像がつく」

 

「……まさか!?」

 

「ああ、そうだ。今回の襲撃事件の首謀者は……おそらく私の姉だろう」

 

 篠ノ之箒の姉、篠ノ之束。

 ISの生みの親であり、現在世界から姿を眩ませている彼女なら、無人操縦システムの開発も新しいコアの作製も出来るだろう。むしろ彼女でなければ未登録コアなど手に入るはずがない。直接的な証拠こそないが、彼女が今回の襲撃事件の犯人であることはほぼ間違いない。

 

 箒は廊下の真ん中で立ち止まり、勢いよく簪に頭を下げた。

 

「すまない! 私の姉が、多大な迷惑を掛けた!」

 

 突然90°頭を下げられた簪はパニックになりながらも、それでも頑張って思うことを言葉にする。

 

「え、えっと篠ノ之箒さんが謝ることじゃないです! 頭を上げて下さい!」

 

「しかし――!」

 

「もし……もしもお姉ちゃんが他所様に迷惑を掛けたなら、私は謝る前に何でそんなことをしたのか理由を聞きます! それからお姉ちゃんにも文句を言います! どっちもできない篠ノ之さんが謝るのはおかしいです!」

 

「僕も箒が謝ることじゃないと思う。この場合に謝罪行為が必要だとしても、篠ノ之束が頭を下げるのが先だ。僕もユキ姉が失敗したらしっかりと意見するよ」

 

「う~ん。千冬姉が人に迷惑を掛けたこと、あったか? 想像も出来ん」

 

 三者三様の意見。箒は可笑しくなって、つい吹き出してしまう。

 

「はははっ……。なんだ? ここにいる全員、姉がいるのか!」

 

「え? あ、本当だ」

 

「四人全員は中々珍しい確率かもしれない」

 

「確率とか言うなよ。人と人との繋がりは"縁"ってやつだ」

 

「……姉の縁? それはちょっと……」

 

「ははっ……はぁ。全く、一夏は何下らないことを話しているのやら」

 

「俺!? まあ、箒が元気になったようで良かったよ」

 

「お陰様でな。更識さんも、ありがとう。それと最後に一度だけ言わせてくれ。すまなかった」

 

「えっと、『簪』でいい……」

 

「なら私のことも箒と呼んでくれ……っと。そろそろ夕食の時間だな。このまま皆で食堂に向かうか?」

 

「賛成」

 

 部屋を出たときよりも幾分明るい雰囲気で、四人は寮の食堂に向かった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 襲撃者と交戦した三名と関係者の肉親と推定される一名の生徒への説明を終えた後、更識楯無は別の部屋の前に来ていた。

 重厚な扉の上のプレートには『学園長室』と記されている。

 

 ノック三回。そして中から返事が返ってから、楯無は扉を開けた。

 

「失礼します」

 

「やあ更識くん。いらっしゃい」

 

 楯無を迎えたのは穏やかな雰囲気を持つ初老の男性だった。IS学園の理事長を妻に持つこの男性は、普段は用務員として働いている。しかしその正体はIS学園の実務を担い組織として運営する実質的な学園トップでありブレイン。

 

 まるで孫を出迎えるかのように表情を綻ばせた『轡木 十蔵』は、茶葉の筒と急須が乗ったお盆を棚から取り出し楯無に椅子に座るよう促す。

 楯無が応接室のようなソファに座ると、その向かいに十蔵が座った。二人の間の机の上にお茶とお菓子が乗ったお盆を置く。

 

「ささ、遠慮なくどうぞ」

 

「もうすぐ夕食でしょう? 奥さんに怒られるのでは?」

 

「なぁに。ちょっと遅いおやつですよ」

 

「それじゃあ、頂きます……。うん、美味しい!」

 

「そう言ってもらえてよかったですよ……。それで、今日は如何なるご用件で?」

 

 最後にお茶を一啜り。湯呑から顔を上げた楯無は真剣な表情になっていた。

 IS学園の一生徒ではなく、対暗部用暗部『更識家』当主として楯無は口を開く。

 

「やはり、彼は危険です」

 

「……彼、とは?」

 

 十蔵は楯無の言及する人物が誰なのか、もちろん理解している。

 とぼけたような言動は穏やかな否定の表意だ。それを十分に理解しつつ、彼女は自分の主張を続けた。

 

「無論、『界塚伊奈帆』のことです。先日、肩を並べて戦ったことで、よりはっきりと理解しました。彼の実力は、"才能のある素人"と呼べる枠を大きく逸脱しています」

 

「その話ですか……。彼の氏素性に疑惑無し。入学以前の身辺調査でそのように結論が出たはずですが?」

 

「わかっています。界塚伊奈帆の両親はともに軍人。彼が産まれたすぐ後に、災害派遣の先で人為的事故に巻き込まれ死亡。その後、姉の界塚ユキと孤児院で暮らす……。現在では界塚ユキは織斑千冬と友人関係にあります」

 

「織斑先生の人を見る目は確かです。それとも、更識さんは疑うつもりですか?」

 

「それが学園を護る為になるのなら、幾らでも。界塚伊奈帆のIS学園入学が決定する際にIS委員会の中で不可解な動きがあったのは紛れもない事実です」

 

「……話を伺いましょう」

 

「これを」

 

 楯無が取り出したのは、IS委員会のとあるメンバーの動向に関する資料だった。

 

「『ギルゼリア・V・レイヴァース』。IS委員会保守派の筆頭ですか」

 

 いかに国際協調を目的に設立されたIS委員会とはいえ、そこは巨大組織の常。その内部ではいくつもの主張が衝突し合い権謀術数が渦巻いている。

 そしてその委員会を構成、運営する委員たちは、その出自や主張によって大きく二つのグループに分類される。

 

『ISという脅威から既存の利権や秩序を守ろうとする保守派』

 と

『ISのあらゆる分野における更なる活躍を支持する革新派』、である。

 

 保守派のメンバーにはISの出現以前から高い社会的地位を有する者が多く、元国連職員や政府関係者、貴族や企業の重役から出身した者も在籍している。国家行政やIS登場以前から巨大資本を有する企業とのパイプが太いのが特徴。以前は今よりも勢力があり、IS委員会設立当初は幹部の八割が保守系統のメンバーで占められていた。

 対する革新派のメンバーには、出自や経歴よりもその才覚で登り詰めたものが多い。彼らのバックにいるのは爆発的に力を伸ばしているIS関連企業やISの進展を是とする国家や政権。単純な財力や権力では保守派に与する勢力には劣るものの、近年は国際世論を味方につけ影響力を増しつつある。

 

 ギルゼリアは保守系統の中で二番目に大きな派閥を率いる委員会メンバーであり、彼を知る者からは『類い稀な野心家』として認識されている。その野心故に更識家からは監視の対象とされていた人物だ。

 

「界塚伊奈帆くんの学園入学、専用機の譲与がこれほどスムーズに進んだのは、この男が根回しをしたおかげです。そしてその根回しのタイミングがあまりに出来過ぎている」

 

「なるほど、それは確かに怪しいですね。界塚くんと直接接触した記録はないのですか?」

 

「物的証拠はありません」

 

「ふむ。しかし入学以前、界塚くんが日本の学校に通っていたことは裏が取れていますから、例えレイヴァース氏と彼に繋がりがあったとしても精々連絡を取り合う程度しか出来なかったでしょう。界塚くんが委員会メンバーの間諜だという線は薄いように感じますねぇ」

 

「……たとえ限られた時間、条件下の接触であっても相手の心理に揺さぶりをかけ、自分たちの勢力下に取り込む。訓練を積んだエージェントであれば決して不可能ではありません。事実、更識家にはその類いの技術を修めたものが数名程ですが存在します」

 

「貴女の実家を基準にされると、ちょっと困ってしまいます」

 

「実はそうとも言い切れません。ギルゼリアは北欧貴族の家柄であり、そういった古い貴族家には代々黒子のように使える家臣がいるもの……。そうした影の一族から生まれた小規模な暗部組織が欧州には複数潜在すると考えらえています」

 

「いやはや。そこまでいってしまうと些か勘繰り過ぎでしょう。それに、その方法では貴女が言っていた彼の異様な強さが説明付きません」

 

 暫しの沈黙。

 楯無は冷めた湯呑を手に取り、その中身を空ける。

 

「……正直、その点は私にも皆目見当が付きません。危機的な状況に瀕してあの冷静さ、判断力。アレがほんの数ヶ月前まで普通の中学生だったなんて信じられないですよ」

 

「私はISに乗れませんから映像で見るしかありませんが……。彼の強さ、"天才"という言葉では片付けられないのですか?」

 

「私から見れば『天才』はむしろ織斑一夏くんの方です。極めて短期間の練習で技術を習得し、実戦で自分の戦い方に取り込む。流石は織斑千冬の弟と、納得できるだけの才能を持っています。ですが伊奈帆くんの強さはそれとは違う。もっと漠然とした、得体の知れない強さ。気味の悪さすら感じる」

 

「……更識くん。私はきみの思慮や言葉、経験に基づいた直感を高く評価しています」

 

「痛み入ります」

 

「ですが物的証拠もないまま、個人への詮索を推し進めるべきでないのもまた事実。()()()()()()()を動かすことはできません。今回のことは私も念頭に置いておきますので、貴女は学園の生徒会長として、これからも生徒たちを守ってあげてください」

 

「……わかりました」

 

 

 楯無は胸中の不安を拭えぬまま、学園長室を後にした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「一夏。空いた」

 

 シャワーを浴び終えた伊奈帆が脱衣所から出ると、一夏が椅子に座りながら何か考え込んでいた。机の上には教科書も参考書も広げられていない。

 

「一夏」

 

「なあ、伊奈帆。なんで束さんは無人機でIS学園を攻撃したんだ?」

 

「分からない。普通なら無人操縦技術の露呈、ISコアの喪失、手配措置の強化などのリスク以上のリターンがあり、それを目的に行動したと考えるべきだけど、おそらく彼女はその全てを度外視して行動している。理屈でしか捉えることの出来ない僕よりも、実際の篠ノ之束を知っている篠ノ之箒や君たち姉弟の方が彼女の行動を理解できると思う」

 

「……確かに無茶苦茶なんだよあの人。それでも俺の憶えてる限り妹の箒だけは大切に思ってた。だからIS学園を襲撃して箒の立場が悪くなるようなことをするとは、俺には思えない」

 

 伊奈帆は濡れた髪を拭きながら一夏の話を聞く。

 篠ノ之束の情報を得る良い機会だ。同時に混乱している友人を慰めるべき場面でもある。

 

「一夏自身は今回の襲撃事件で何か変化はあった?」

 

「変化? ……変化か。言われてみれば、少しだけ認識が変わったかもしれない。なんというか、今までISってそんな怖いものだとか考えてなかったんだよ。確かに初めて銃を向けられたときは結構ビビったけど、それでもISというスポーツの中の危険性みたいに考えてた。でも昨日初めて競技の外から敵に襲われたとき、それが間違いだって気付いたんだ。ISの競技の中に危険があるんじゃない、ISという大きな力をスポーツの枠の中に無理やり収めているってことに、俺は気が付いた……。でも、それがどうしたってんだ?」

 

「これは僕の推測だけど、篠ノ之束の価値観は異常だ。世界的な事件や発見を些末事として捉えているきらいがある。彼女にとってはそんなことよりも織斑千冬や篠ノ之箒の、ちょっとした感情の機微の方が重要なんだ。昨日の襲撃事件で心境に変化があったのは一夏だけじゃない。むしろ襲撃される一夏を見てることしか出来なかった織斑先生や箒の方が、心境に大きな変化があったかもしれない」

 

 一夏は目を見開く。

 

「そんな、そんなことのために簪は襲われたのか!?」

 

「一夏、落ち着いて。全ては僕の推測に過ぎない。それに篠ノ之束は稀代の天才だ。何処まで先のことを見通しているか、例え今は小さなことでも将来的には大きな変化に繋がるかもしれない」

 

「だからって関係ない人を傷付けるのは間違ってる!!」

 

「確かに重大な国際協定違反だ。でもそれを糾弾し断罪するのは一夏の役割じゃない」

 

「伊奈帆、断罪とかじゃないんだ。あの人はちょっとやって良いことと悪いことが分からなくなる時がある。俺は、それを教えられれば十分だ」

 

「やっぱりそれは、やりたいことであって背負うべきことじゃない。僕たちは昨日、生徒としての責務を逸脱し人道的に為すべきと思ったことを為した。その時点で十分だ。さっきも言ったけどシャワーが空いた。とりあえず一度、頭を冷やしてくるといい」

 

「ああ……。そうするよ」

 

 立ち上がった一夏は着替え一式を取り脱衣所へ向かう。

 

 

 

 

 

 シャワーの水音が聞こえてから、伊奈帆は自身のブック型の端末を起ち上げた。そして昨日途中まで書いたレポートの仕上げに着手する。

 タイトルは『IS学園襲撃者について:学園の声明に対する補足情報』。提出先はIS委員会の公安を名乗る男。

 伊奈帆は従順且つ反抗的な子供を演じながら、既にその男の背後にいる人物に目星をつけていた。

 

 




 なんかきな臭い話になっていますが、ぶっちゃけ大層な世界観や設定とかは用意してないです。不穏な雰囲気を出したかったという、ただそれだけ。
 ギルゼリアさん。名前だけ登場です。アルドノア本編でも名前だけの登場でしたが、本当に名前しか分かりません。ググっても容姿の情報も苗字も出てこないのでお手上げです。

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