超能力者は勝ち組じゃない   作:サイコ0%

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第二話 入学式

 

「ご入学おめでとうございます」

 

この身体には少し大きいパイプ椅子に座りながら、欠伸をする。ここの校長は例にも漏れず話が長いようだ。最初の祝福から始まってもう五分は経っているだろうか。オレの様に欠伸をしている者は少ないが、皆飽きてきたようだな。最初はワクワクドキドキしていた小学生達もウンザリとした顔で校長の話を聞いている。

今日からオレは小学一年生だ。友達100人できるかな?ってヤツだよ。できないけどな。せいぜい、二、三人が限界である。オレのコミュ力の無さを嘗めない方がいいぞ?無表情すぎて、話しかけられても相手の子に泣かれるのがセオリーだ。そんな時は念動力で無理矢理笑ってはいる。やはり、子供が泣くのは気分がいいモノでもないからな。

入学式が終わり、教室へと向かう。今日からこのクラスの担任になりました〜などと言う台本通りの言葉を目の前の担任は言う。若いお姉さんだ。子供の年齢が低い分、お姉さんの方が好かれやすいのは最早社会の常識。母性というモノだろうか?何かと子供は女性の方が安心するモノだ。

 

「さて、自己紹介して貰いましょうか!」

 

元気よく笑顔でそういうお姉さん。うむ、敵であったらしい。まさか、笑顔で爆弾を投げ入れてくるとは思わなんだ。

出席番号順に座っているこの席。小学校にあるあるな席をくっつけるタイプであった。隣がよろしく、と言ってきたから此方もよろしくと返したら、たのしくないの?と返されたのはちょっとトラウマである。現に隣にいる小学生の事だ。おのれ、許さん。

オレの名前は、日向湊なので、大分後ろの方である。佐藤という日本でクラスに人生で必ず一人以上は出会う苗字を聞きながら、遂に自分の番が回ってきた。因みにオレ、コミュ障過ぎてこういう場でも少し固まるぐらいだ。

 

「……日向湊、よろしく」

 

なので、これが精一杯。

うん、先生の笑顔が固まったよ?大丈夫かい?

 

「え、えーと湊くん?好きな物とかはないの?」

 

あ、なるほど。自己紹介では好きなモノはセオリーだもんな。失敬、失敬。

 

「好きなモノは……ゲーム。特にやり込みゲーが好きで、この前ディスガ◯アで千レベ達成した」

 

おぉ!好きなモノとなるとスラスラ出てくるな。先生に感謝感謝だ。

やり込みゲーが好きだと言ったが、別にそこまでしているわけでもない。先ほどのゲームはレベルを9999まで上げれることができるし、転生してスキルなどを全部覚える事が出来たりするが、そこまで考えてしようとは思ってない。あ、いや考えてないだけでしようとはしてるけど……うん?矛盾しているな。

 

「あ、ありがとう。一年間、よろしくね」

 

おっと、先生に引かれてしまった。先生は知らないのかディ◯ガイア。面白いのに。

その後は皆元気に自己紹介していった。いやはや、若いって良いねぇ。オレぁ、そんな元気残ってないよ。家帰って寝たい。ふわぁと欠伸をしながら暇潰しに寝た後、ホームルームが終わり帰宅時間になった。小学生特有の、先生、さようならを皆で言い、玄関外で待っている家族達と合流する。オレも少ない荷物を新品のランドセルへ入れ、背負う。黄色い帽子を被れば完璧だ。トントコと小走りに玄関へと向かう。真っ新な上靴から小さな運動靴へと履き替えて、今世の家族を見つける。お?父と母に加え、姉も居るようだ。確かに入学式というのは子供の大事な行事の一つである。

 

「やっと出てきたな、雑種。待ちくたびれたぞ」

「姉よ、それ以上キャラ設定増やさない方がいい。というか今度はフェ◯トにハマったな?」

「何故ばれたし」

「雑種の時点でわかるわ」

 

オレが駆け寄ってからのお出迎えがそれかよ。弟は悲しいぞ。

 

「じゃ、帰りましょうか。母さんこれから仕事あるから」

「母さんや。息子の入学式にそれはないと思うよ」

「そう思うならば父さんも働いて」

「主夫バンザイ!母さんバンザイ!」

 

相変わらずの父と母である。

オレの家庭は、世間の家庭とは反対で、母が働き、父が専業主夫をしている。なので、父は母の尻に敷かれているのだ。おお、なんと悲しい人種よ。大黒柱とは程遠い存在だな。

さぁ帰ろうかという雰囲気になる中、一人の人物が此方へと駆け寄ってきた。背はオレより高く姉と同じぐらいの男児。所謂パッツン前髪をしているその子は見知った友達であった。

そう、モブこと影山茂夫である。

 

「あ、モブ」

「あ、影山くん」

 

姉と言葉が重なる。

影山くんとはここ半年で、姉伝でよく会うようになった。小学二年生になった彼は、彼の弟である影山律の晴れ姿を見る為に家族と来ていたんだろう。その後方に姿が覗えた。同時に兄を追いかける弟も。

姉が言うには影山くんは友達が少ない。その性格などから友達ができにくいと判断できるが、なんでも遊び相手がいないというわけではないようだ。帰りに公園で、複数の男子と女子の中に混じる影山くんを見かけたそうで。姉から見ると少し楽しそうにしていたらしいが、周りがそう思わなかったらしい。わらえよ、などと言ってたようだが、まぁオレは見てないんで知らない事だ。

影山くんはあぁ見えて表情豊かだ。多分だが、髪の毛で眉毛が隠れているから、とか表情筋がちょっと死んでるからとか。理由があると思うんだがな。オレみたいに完璧な無表情じゃない分、まだマシなんだと思うんだけどな。

 

「日向さん、日向くん。こんにちわ」

「こんにちわ」

「おう、こんちわ」

 

オレ達に挨拶した後、影山くんはオレ達の両親にも挨拶をする。うむ、両親からは好評のようだ。確かに礼儀正しく挨拶する子供なんて、あんまりいないからな。子供は元気が一番だ。オレ以外。

 

「ちょっとまって、にいさんっ」

「あ、律」

 

おい、忘れてあげんなよ。

影山くんの斜め後ろに立ち止まった律と呼ばれた男の子はジッと此方を見ていた。どうやら影山くんよりは体力があるらしく、走っても息は荒くなっていない。強いな、律くん。

 

「二人とも、ぼくのおとうとの律」

「「初めまして」」

「は、はじめまして」

 

前髪パッツンの影山くんに対して、律くんはごく自然な前髪であった。なんていうんだろうか、影山くんはストレートだが、律くんは少し癖っ毛があるようだ。所々髪が跳ねている。オレの場合、影山くんのようにストレートではなくちょっと癖っ毛なのだが、別に律くん程ではない。あそこまで行くと、ワックスで固めているかのようだ。まだ短いのでマシなのだが。

 

「ワタシが日向美久」

「オレが日向湊だ」

 

「「よろしく」」

「影山律です、よろしく」

 

影山くんにしたように挨拶をすれば、律くんは最初程吃らずに、へらりと笑って返してくれた。世間的に第一印象がめちゃくちゃいい奴である。

 

オレが言うのも何だが、影山兄弟、面白い兄弟だ。

 

 




黄色い帽子を被るかどうかは地域によって違う、らしい。

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