超能力者は勝ち組じゃない   作:サイコ0%

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第八話① 新入生代表

 

 

今世、二度目の入学式。

新品の明らかに丈があってない学ランを着た彼等や、これぞ女子中学生と言えるセーラー服を着た彼女達。皆が皆、新しい学生生活に現を抜かし、そわそわしていた。

登校してるだけでそれがわかるんだから、もう少し大人しくしていても良いと思う。浮かれ立って、足下をすくわれたって知らないぞ。ほら、オレの数メートル先を歩くツンツン頭の様に、楽にそれでいて規則正しく歩けば良いのに。

 

……まぁ、アイツはちょっと肩苦しいけどな。

 

トテトテと少し早足にソイツの所へ行く。トンと肩を叩き、ゆるりと振り向いた顔に付いた目がオレを捉えて、少し嫌そうな顔をされた。

オレはコイツに少し嫌われている。大好きな兄さんといつも一緒に下校していたからか、それともその兄さんと同じ超能力者だからか。後者は教えていないのでカウントされないと思うが、その兄さんに憧れや尊敬という名の恐怖を抱いているから、オレがフランクに接しているのを理解できないからか、よくわからない。まぁ、心を読めば分かるだろうが、そんな無粋な事は信頼する相手にはしない事にしている。彼は影山くんの弟だ。大切な家族の一人である彼にそんな事をしたと影山くんに知られれば、オレの命はない。うん、マジで。

 

「お一人か?」

「そう言う君こそ、一人?」

「はっはっは、オレに一緒に登校する友達がいると思うのか」

「思わない」

 

だろ?と返せば、鬱陶しそうな顔になる。ホントお前、オレが嫌いだな。霊幻さんほど胡散臭くないつもりなんだが、律くんに嫌われる理由がわからない。いや、ホント何で?

アレだろうか。小学生の時は入学式以来、たまに遊んだりするけど、影山くんぐらいに会ったことがないからなのだろうか。小学生と中学生では性格が違うという人もいる。昔は明るかったのに、何で今は暗いんだろう、など。オレは変わっていないつもりだが、律くんはそうでもなさそう。前は明るく結構はしゃいでたりしていたが、今はこうして話していても騒がしくない。というか大人しい部類だ。

彼の性格からすれば、積極的であるが大人しく、規律正しく、なんて有り得そうだ。完全に偏見だが、生徒の模範である生徒会に入りそうな顔をしているし、実際優等生だ。小学生の時、学年一位は彼だった。

模範的な優等生。そんな彼の持つ、色々な枷を外せばどうなるのだろう。少し興味が湧く。

オレ?オレは、あれだ、その……名前書かないパターンとか、居眠りとか、居眠りとか……。小学生のテストは簡単過ぎてつまらなく、授業もつまらないので姉の教材を持ってきて独自に勉強していた気がする。あと、本屋などに行って、簡単な高校の教材、大学で習うであろうモノとか。小学生の頭は物覚えが良いと言われてるので、オレはそれに賭けたんだが。今では、全課程の予習を終えた感じにある。でもまぁ、オレは天才でも秀才でもないので、少しズルをした様な思いもある。

せっかく転生したのだ。学問ぐらい人生イージーモードで行きたい。どうせ就職以外で役に立たないのだから、これぐらいのズルは許してくれるだろう。……大人になった事がないので、役に立つ、立たないは知らないが。

 

「律くんさ。アレやるのだろう?」

「……アレ?」

「新入生代表の挨拶」

 

そう言うと、あぁという様な顔で納得する律くん。彼は新入生代表であり、小学校でのテストや成績は学年でトップ。だから選ばれたのだろう。やはり、優等生だ。

 

「するよ。原稿もちゃんと持ってきてる」

「流石学年一位。偉いねぇ」

 

オレがはぁーと感心していると、律くんはサッと前を向いて歩き出す。オレよりちょっと背の高い律くんは、足が速くなくても歩くスピードは速い。つまり、オレは少し駆け足で歩かないといけなくなる。

因みにオレの身長は153ぐらい。これから伸びる事を期待するが、この隣を歩くヤツには一生追いつけない気がしてきた。影山くんでさえ、156ぐらいだ。なんだこの差。この差はなんだ。ちくせう!!

影山くんの身長の事を知っているのは、彼に聞いたからである。明らかにクラスの中で低身長だと落ち込んでいた彼に、身長を聞いたら返ってきたのがそれだ。オレより上。オレより上なのに、クラスの中で低い。なら、オレは背の順になった瞬間、一番前になるんではなかろうか。なんだろう、この屈辱。勝負事に負ける事より悔しい気がした。

 

「そういや、影山くん元気か?」

「何で急に」

「いや、最近会ってないからな」

「相談所で会ってるんじゃないのか」

「いや、最近行ってないからな」

「…………」

 

同じ様な事を繰り返し言うオレの癖にイラっときたのか、律くんの目元が引きつった気がした。

暫く、黙り込んだ後、律くんは口を開いた。相変わらず、正面を向いたままだ。

 

「普通に元気だよ」

「普通ね……」

 

ま、元気だったら良かった。影山くんは何をしても元気そうなのだが、まぁ話題が見つからなかったし、仕方がないと思える。コミュ障なくせに黙ったままというのは少し堪えるので、こうして必死に話題探しをしている。

前を向いて歩く律くんのスピードに必死について行く事数分後、オレ達は今日から通う学校に着き、クラスの表が張ってある場所に着いた。

ココ、塩中学校は良くも悪くも普通の学校である。普通の校舎に普通の学生。不良の溜まり場でもなければ、秀才だらけの場所でもない。平均的な学校だ。そんな学校だからか、クラスは五組まで。ズラリと並んだ名前の中、中央右の方に自分の名前を見つける。

どうやら、一年三組らしい。五組でも一組でもない、中間。まぁ、別にそこはこだわりはないから、どうで良いとして……クラスメイトは知ってる人いるだろうか……って。

 

「「あ」」

 

声が重なった。発生源はオレと隣の律くんから。多分、呟いた理由はオレと同じだろう。律くんの方を向いて、相手は嫌そうにしていたが念動力で苦笑いを作る。

 

「同じクラスだな」

 

ふいっとそっぽを向かれ、スタスタと歩いていく律くん。ちょっと泣きそうである、オレが。

因みにオレの表情筋は何年経っても回復しそうになかった。念動力で笑顔を作る事には慣れたが、物事をハッキリと言うある人には、オマエの笑顔は胡散臭い、と言われたモノだ。霊幻さん程じゃないと信じたいのだが、毎日オレの顔を見ている彼女の意見なので、まぁ合っているのだろう。姉よ、許さんからな。

もう一度クラス表を見て、自分の番号を確認する。そのまま教室へと向かい、出席番号だけ書かれた名札がついた机を探して、座る。指定カバンを机の上に置くと、ドサリと音を立てた。

斜め前には律くんの姿が。ちょこんと座り、先生が来るのを待っているようだ。入学式は、練習もせずぶっつけ本番なのがセオリーであり、始業のチャイムが鳴れば先生が引導して体育館などに向かう。まぁ、小学校の時や前世の時と同じだ。名前を呼ばれてハイ、と返事する事以外それほど緊張していない。

ブーとバイブモードの携帯が鳴る。オレの携帯はガラケーではなく、最新のスマホだ。親に土下座までして頼み込んだ品である。影山くんと霊幻さんはガラケーだが、オレはスマホの方が何かと便利なので此方にしている。

通知の内容は、霊幻さんからのメールと、幹部達からのリネンだった。リネンとは、スマホアプリの事であり、オレの前世の某SNS、漢字に直すと線と言う名のアプリと同じモノである。というか、あの名前にnを加えてローマ字読みにしたモノがリネンだ。

 

「(今日の午後六時ぐらいから、会議か。アイツら、無駄に律儀だからなー)」

 

グループ名[第八支部の愉快な幹部達]

誰だよこの名前つけたのってぐらいの寒い名前だ。はっはっは、つけたの、オレだよ。

支部長のオレを含めて、七人の幹部達が入っているグループだ。連絡するときに電話というのは正直面倒くさい質なオレなので、こうして提案した。丁度みんなスマホ持っているからな、助かった。そもそも、みんな年上だし、近くても二歳は離れている。小さな女の子だと称していた子は、オレより年上で当時小学五年生であり、現在中三だ。背が同じぐらい低いので、驚いたのはいい思い出だ。

察しの良いヤツはわかると思うが、オレの支部の者達はあの日、支部長達に連れてこられた子供達や大人である。筋肉隆々な人は、意外にも繊細であり、第八支部の経理係。双子は支部団員達の纏め役。委員長的な人は副支部長。小さな女の子だった人は執務長。青年はオレの世話係というか、身の回りの事を手伝ってくれる。なんやかんやで、良いヤツらなのはココ数年間で分かった事だ。

リネンの画面をスライドして、オレ宛のメッセージを読む。皆が皆、遅れない様にと送っていてオレに念押ししていた。言われなくても遅れないつもりだが、時間にルーズなオレにぴったり来るなんて事を求めないて頂きたい。ハッキリ言って、無理だ。

 

「(できるだけ努力する、と。さて、霊幻さんは何の用かね)」

 

任せろ!的なスタンプを送り、リネンを閉じる。上に、不安だ……という通知が六人分ぐらい来るのだが、みんな暇なのだろうか?

メールを開いて、内容を確認する。件名は除霊依頼と書いていて、嫌な予感をしながらもそれをタップした。

 

「(げっ!今日の午後かよ。二時……ね。ギリギリかなー)」

 

予定が被りそうになる事に顔を内心顰めながらも、了解しましたと返信する。

内容は、近所の公園に出る幽霊らしきモノを除霊して欲しいというモノ。今の所、被害は出ていないが、念の為オレも呼ばれたらしい。そもそも、影山くんさえいれば万事解決なのだろうが、まぁ霊幻さんの事だ。何か考えがあって……というかオレを利用するつもりだろう。口で乗り切ってきた凄い人ではあるが、偶にテンパって意味不明な事を口走る癖があるからな。オレが偶にフォローしている事が多々ある。霊幻さんに霊力がない事を知っているオレがいた方が安心というか……そこまで自惚れているつもりもないが、利用されてやってるのが現状だ。天然で偶に確信を突く影山くんの相手を一人だけというのは不安なのかもしれない。

ま、偶には影山くん側について霊幻さんを責めるってのも面白そうだが。

ハードスケジュールになりそうな今日を思い浮かべて、ため息を吐きながら、オレはスマホの電源を落とすのだった。

 

「はーい、席に着いて」

 

ジャストタイミングである。

 

 




中学の新入生代表ってどう選ばれるのだろう。

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