超能力者は勝ち組じゃない   作:サイコ0%

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第一話① 超能力者

 

 

超能力って信じるか?

 

 

物を動かしたり、瞬間移動したり、そんなヤツだ。

世界には動物の言葉を聞き取ったり、霊の言葉を聞いて事件解決したりする凄い人達が居るが、それも超能力の一種だとオレは思う。

超能力とは、昔からあるヒトの潜在能力。卑弥呼だって予言をしていたし、占い師だっている。中には巧みに言葉を操っているニセモノもいるかもしれないが、やはり超能力というのは信じる人が少ないだけで、世の中に溢れているのかも知れない。

そんな話をしたのかっていうと、オレも超能力を使えるからだ。最初に言った通りの、物を動かしたり瞬間移動したりするヤツ。

 

オレができることは主に三つある。

 

一つ目は念動力。物を動かすアレだ。有名なスプーン曲げとかもそれに当てはまる。

 

二つ目は瞬間移動。テレポーテーションとも言われるモノで、瞬時に場所と場所を移動するモノ。線ではなく、点と点を繋ぐモノだ。

 

三つ目は精神感応。テレパシーだ。人の思考を読み取ったり、自分の言葉を口に出さず相手に送ることができる。

 

オレは最初、念動力しかできなかったが、二つ目と三つ目はなんとなくで思いつきでできた代物である。

ヒトでいう物心つく前からできた事だが、それができたのはオレが所謂転生者で記憶ありだからだろう。前世の記憶は五年経った今でもまだ衰える事はない。漢字は普通に読めるし、一応習った高校までも問題ならば容易く解ける。と言っても、それはちょっと不安なので小学生の内に復習しようかと思う。あれだよ、小学生ならばすんなりと記憶できるらしいので、せっかく生まれ変わったのだから、先に勉強して頭良くなっておこう。

生まれた家は、どうやら小さな子供にも部屋を与えるようで、姉と一緒の部屋になったのはちょっと癪だが仕方がない。プライベートスペースがないと思うが、二段ベットの上がオレのプライベートスペースである。ふふん、上をじゃんけんで勝ってぶん捕ってやったんだ。姉は半泣きしながらオレを殴って、譲ってくれたけど。

幼稚園から帰ってきたオレはベットの上でゴロゴロしながら、超能力を鍛えていた。と言ってもしょぼいもので、まだ鉛筆を数十本ぐらいしか持ち上げる事ができない。どうやら、鍛えなければ重い物は持てないようだ。だが、まぁ威力は追々として、新聞を引きその上で意識せずとも鉛筆とカッターを動かして、鉛筆をピンピンに削る事ができるようになったので、良い成果であろう。

因みに、瞬間移動は半径十メートル。精神感応は相手の思考をぼんやりとしかわかる事ができない。まぁ、人生長いんだし、この超能力を鍛えてダラダラと人生を歩めたらなぁと思う。

そんな事をぼんやりと考えていたら、階段を駆け上がる音がした。オレは寝転んだ姿勢から起き上がり、数十本の尖った鉛筆を新聞紙の脇に念動力で起き、一本の鉛筆とカッターを持って鉛筆を削るふりをする。これ、一回だけ自力で試してみたんだが、超能力で削るより難しい。力加減ができないというか、なんというか。たまに力入れすぎて芯を折ってしまう事があるからなぁ。

 

「弟よ!」

 

ダァン!という盛大な音を立てて入ってきた姉は仁王立ちして、オレを固有名詞ではなく名詞で読んだ。おい、名前呼べよ。まぁ、いつもの事だけどさ。

 

「なんだ、姉よ。オレは今忙しい」

「また鉛筆を削っているのだろう?それを世間では忙しいに当てはまらないぞ」

 

ウルセェ!オレが忙しいと思ったら忙しいの!

ハァ、とため息を吐いてオレは鉛筆を削る手を止める。先程削るふりをすると言っていたが、自分の手ごと超能力で動かせば綺麗に削れる事を思いついたため、試していた。結果?綺麗にできたよ。

 

「それよりもだ!今日は弟にニュースがある。良いニュースか悪いニュース、どちらから聞きたいか?」

「良いニュース」

「そうか!良いニュースは、悪いニュースが良いニュースだったことだ。じゃ次だ」

 

おい、結局それって良いニュースしかねぇじゃん。このバカ姉。

 

「良いニュースだが、ワタシの学年に超能力者がいる」

 

ピクリと耳を傾ける。デカくなっているのは気のせいであろう。

オレの反応を見た姉はふふんと得意げに笑った。

 

「名前は影山茂夫。通称モブと呼ばれる、モブ顔の男子だ。食事中にスプーンを曲げたり、筆記用具を浮かせたりできることから念動力者だな」

 

出たよ。姉のストーカー癖。

手に手帳と思わしきモノがあり、それを読んでいる。たまにペラリとページをめくることから、内容は薄いが文字がデカイと思われる。姉は色んなところで杜撰なので、結構デカイ文字を書く。まぁ小学一年生だと思えば普通か。

因みに姉の喋り方がこんな風なのには、オレの影響でもある。両親に対しては子供のように接しながらも、姉に対してだけは普段のオレで接していたため、同学年よりも大人びた口調であり男っぽい。髪は長いが、多分軍服でも着せたら女長官っぽくなるのであろう。うん、似合いそうだ。

そんな姉だが、今ハマってるのが探偵ごっこである。気になった人物を付け回し、情報を収集する。無自覚と言え、単なるストーカーだ。いつか捕まらないことを願う。

 

「超能力者か。ホントにいたんだな」

「ふふぅん!驚いたか?驚いただろう!まさか超能力者がいるなんてな!」

 

オレと口調は似ているが、テンションが高くてバカなのが姉の特徴だ。まぁ、小学生ってみんなこんな感じだろうけど。

 

「で、だ。そんな超能力者、影山茂夫と遊ぶ約束をしたので……弟よ。一緒に来い!」

 

なん、だと……?

 

「姉よ。話が飛躍しすぎだ」

「ふっ。これはすまなかった。説明すると、ワタシのストーカー行為が暴露たので、自暴自棄になりその超能力を見せて貰えるように今日遊ぶ約束をした……それだけだ」

 

自分でストーカー行為だと言ったのは無視して、なるほど。実はアナタと遊びたかったけど、声をかけられずに困ってた女子な雰囲気を醸し出して、約束を取り付けたと。全く恐ろしい姉だ。その世間でいう、容姿端麗を利用するとは。影山茂夫、哀れ。会ったらまず、謝ろう。

 

「なるほど、わかった。良いだろう」

「良し!では、その削った粉を捨てて準備しておけ!」

 

私は彼に連絡を入れてくる!と言いながら一階へ降りていった姉。どうやら、連絡番号まで教えて貰ったらしい。小一なので携帯は持っていないだろうが、家ならそうでもないだろう。ふむ、ますます謝らなければならないな。姉は暴走する癖がある。相手の事をあまり考えないあまり、孤立したりするからな。幼稚園じゃそうだった。オレが唯一の話し相手だったりしていたが、影山には感謝だな。基本的に良い奴なのだろう。それか、押しに弱いだけか。

 

「さて、準備か」

 

ま、着替えるだけなんだけどな。

新聞紙に溜まったゴミを、超能力でゴミ箱に捨てながら、オレは姉弟共同のクローゼットを開け自分の服を取り出し着替え始める。

 

 

さてはて、影山茂夫という奴はどういう奴なんだろうか。

 

 

この今世での初めて会うオレ以外の超能力者。仲良くできたら、儲けものだ。

 

 

 

 




小学生()と幼稚園生()

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