私立グリモワール魔法学園~if~   作:くらっぷ

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破壊された街で

出発は1時間後。それまで俺達は出撃の準備に入っていた。準備の間にメアリーから銃弾が入ったマガジンを数個貰い、ついでに弾の説明もしてもらった。

どうやらこの弾は魔法弾と呼ばれるものらしく、

銃弾に魔力を流し込むことによって銃弾自体が魔法を持つという代物らしい。要は弾が魔法と物理の両方の属性を持つため、普通の銃弾よりは魔物に効果があるとのことらしい。9mmパラベラム弾だから貫通性能もあるだろうが果たして役に立つのだろうか。

 

「無駄弾撃っても無駄だからな。確実に相手を潰せる場

所を狙って撃てよ?」

 

メアリーはそう言った。

 

確か魔物にも感覚器官があると座学で習った。

一番わかりやすいのは、目だ。霧の魔物と言えど、目を潰せば一時的にではあるが目が見えなくなるらしいのだ。つまりメアリーが言っているのはそこなのだろう。

しかし、俺は魔法はからっきしだ。しかもどうやって立ち回るかなんて全くわからない。魔物と戦うということや、メアリーが言った言葉、座学で習ったことは俺の頭を圧迫していた。

 

ー俺に出来るのかー

 

そんな不安が押し寄せるが、やるしかない。

俺はもう一般市民ではない。『魔法使い』なんだ。

 

そうこうしているうちに1時間という時間なんてあっという間に過ぎていた。

俺は不安を抱く自分に鞭を打ちつつ制服を戦闘服に変形させ、夏海との待ち合わせ場所へと向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「来たわね金紅。改めて、今日はよろしくね!」

 

相変わらず元気な口調の夏海。これから戦地に向かうんだぞ…。

 

「夏海。お前がどれだけ戦い慣れてるかは知らんが油断はするな。俺もお前も死ぬぞ。」

 

「もう!縁起でもないこと言わないでよね!そんじゃちゃっちゃとやってちゃっちゃと記事にして、部長にいい所見せるわよ!」

 

やっぱりそうかよ。

とりあえず俺に出来そうなことは後方からサポートすることだろう。あと、夏海が暴走したら止めないと冗談抜きに大変なことになりかねない。

まぁとにかくやるしかないみたいだ。

俺達はクエスト専用車両に乗り、戦地へ向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「うわぁ…話は聞いてたけどひどいやられようね…」

 

「同感だ。ただ、なんでこんなになるんだよ。普通はすぐ発見されて被害が広まる前に駆除されるんだろ?」

 

「多分人の目につかないところ…下水道とかでゆっくり力を付けたのね…」

 

「魔物には知識らしい知識は無いはずだ。そんな戦略的行動をとれるのか?」

 

「わからない…でもとにかく!この街の住人の避難は完了してる。ならやることはこいつらを殴って殴って殴りまくることよ!」

 

「まあそうだな………ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアァァァ!!!!!

 

 

 

 

 

 

突然爆発音にも似た爆音が響き渡った。魔物の攻撃か!?

しかし、爆発音の中心から出てきたのは…やけに露出度の高い、野性的な服を纏った…デカい。身長180はあろうかという大女だった。

 

「つまらん。街に出てくる魔物などこんなものか。」

 

その女はそう吐き捨てると、どこかへ歩いていってしまった。驚きのあまり声をかけることすら忘れてしまっていたよ。

 

「ひ…ひぃ。金紅。今の、生天目つかさよ。

戦うことにしか興味なくていつも授業サボっては魔物退治に行っているの。」

 

「授業サボって…か。というかクエスト受注してないのに魔物退治するのって校則違反じゃないのか?」

 

「そう。だから学園でも問題児扱いされてるの。でも学園有数の実力者だから…ね?」

 

なるほどそのつかさという生徒についてはよく分かった。夏海の話を聞く限り、あまり関わりたくないと言った印象だ。

 

「とりあえず気を取り直して!いくわよ!」

 

「あぁ、丁度そこにちっさいのの群れがいるな。」

 

「じゃあサポートたのんだわよ!」

 

そう言うや夏海は魔物の群れに駆けて行った。

俺も後に続く。

 

「いくわよ!ジャーナリスト魂ッッ!!!」

 

そう叫ぶと夏海はカメラのシャッターを切る。

すると、魔物は霧散した。どうなってるんだ。

 

「どんどん行くわよ!たぁっ!!」

 

夏海はどんどんカメラのシャッターを切り、1発で倒しきれなかった獲物に、蹴りを叩き込んでいる。

 

俺も負けてはいられない。

夏海が捌ききれなかった魔物や、夏海の死角から襲ってくる魔物に対して銃弾を叩き込む。

魔法弾は魔法が込められているため、雑魚程度なら1発2発で仕留めることが出来る。

 

「でりゃあ!」

「そこか!」

「危ない!」

 

俺は夏海を援護し、夏海に魔力補給が必要なら魔力を渡し、夏海が攻撃する。

これを繰り返し、『霧の本体』を目指した。

そして、夏海の攻撃についてもなんとなく分かってきた。

彼女の攻撃は恐らく『光』と『熱』だろう。

カメラから発せられる光は恐らく魔法。

そして今回の魔物はスライムのような形をしているが、それがカメラの光に当たるや、煙を上げたり、明らかに泡だったりしている事から、その光にかなりの温度があることが推測できる。

夏海…お前意外とやり手なのか?

 

「金紅!魔力頂戴!!」

 

「あぁ!」

 

魔力はハンドボールをパスするような感覚でも渡せる。これにより魔物を捌きながら片手で周りにいる魔物に銃弾を浴びせることが出来る。

そして魔力の譲渡が終われば…

 

「ありがと…でやぁ!!!」

 

 

夏海が一斉に魔物を掃討する。

ここまでは順調だった。

しかし、霧の本体がいるであろう場所が分からない。

そして店やビルが立ち並ぶ街は、見通しが悪すぎる。

奥に進めば進むほど危険だ。

 

しかも俺の「カン」だが、数分前から魔物の挙動が変わっている気がする。先程までは単体で突進してくるだけだったが、数分前からは自分の体の一部を飛ばしてきたり、集団で襲いかかって来ることが増えている。

 

「このっ!なんで?数が…くっ!!」

 

「夏海!!!!」

 

夏海が苦戦している。

俺は夏海に駆け寄り、銃のマガジンを入れ替え、

フルオートでその集団に弾丸を浴びせる。

少なくとも怯んではくれているな。

 

「ナイスよ金紅!」

 

夏海はまたしてもシャッターを切ると、

そこに居た魔物はほとんどが霧散した。

 

「さぁ次よ次!」

 

「夏海、待て。」

 

突っ込もうとする夏海を制止する。

 

「何よ!?1秒でも早く魔物を倒さなきゃ…」

 

「待て。魔物が強くなっている。策もなく突っ込めば命が危うい可能性がある。」

 

「そんなこと関係ないわ!私、結構慣れてるから……!」

 

夏海はそう言うと走り出そうとする…が、俺はその足を払う。夏海は面白いようにコケてくれた。

 

「ってて…何するのよ!!」

 

「冷静になれ。まず敵勢が分からんのに突っ込むのは無謀すぎる。」

 

夏海は興奮しているようなので俺は諭すように言った。戦闘経験は皆無に等しい俺でも分かることだ。

 

「…っ!それはそうだけど…じゃあ策はあるの?」

 

「…無くはない。だがそれもリスクがある。」

 

「…話してみなさいよ。リスクがあっても策でしょ?なら賭けてみようじゃないの。」

 

「なら聞いてくれ。『今考え付いた』話すのは簡単な策だ。」

 




前話投稿から1月以上開けてしまい申し訳ありませんでした。以後気をつけます。

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