私立グリモワール魔法学園~if~   作:くらっぷ

10 / 11
You're good sense

翌日の放課後、俺はまたもや訓練所に来ていた。

メアリーという奴にこの拳銃、グロック18を突っ返しに来たのである。

そもそも俺は魔法使いだ。軍隊ではない。だから『こんなもの』に頼らなくてもいい。もっとも、俺は全く魔法使えないんだが努力で何とかするつもりだ。

訓練所に入ると、待ってたかのようにメアリーがいた。

 

「借りちまってた『コレ』を返しに来た。」

 

俺は要点だけ伝える。だが、次に帰ってきたのは驚くべき言葉だった。

 

「借りてただ?あぁ。ならもうそれはやるよ。別にアタイはそんな拳銃は使わねェからな。」

 

俺はそれを聞いて少々動揺したが、

 

「俺は魔法使いだ。軍隊ではない。だからこんなものは必要ない。」

 

そう言った。すると突然メアリーは、

 

「銃を使うのが軍隊だけだとでも思ってるのかァ!?

事実『アタイら』は銃は使うし、しかもお前、聞いてる話だと魔法が全く使えないそうじゃねェかよ。身を守る物が無い状態で戦場に出向くつもりか?Fuck!!ふざけるのもいい加減にしろ!!」

 

怒鳴り声を上げた。

…一応、俺のことを思っての発言らしいし、

それに言われてみれば、身を守るものが必要だ。

俺は現時点で魔法がからっきしだ。

俺にはあの『魔力譲渡』の能力しか強みがないし、

なによりそれは自分にメリットがない。

なら銃を…扱ったことなど無い…が、持っていて損はなさそうだった。

 

「わかった悪かったよ。それならこれは持っておく。武器の携帯許諾はどうやって取ればいい?」

 

「そんなんならコッチがやっといてやるよ。精鋭部隊の権限でな。それにお前は…good senseだ。昨日の射撃。perfectだった。使ったことがないならアタイらが教えこんでやる。また来いよ。アマボーイ。」

 

権限乱用かよ。しかもなんだアマボーイって。たしかにアマチュアだが地味に傷ついたぞ。

しかしなんだかんだ言って俺を思ってくれてるのか。

それはうれしい事だな。

 

 

そんなこんなで訓練所を出たら、今度はエレンがいた。

 

「転校生か。どうだ?メアリーの奴は。

あいつは言い方はキツイが…まぁ、良い奴だ。

…『それ』を貰ったのか。また都合のいいときにここに来い。お前に戦術やそれの使い方を教えてやる。」

 

それだけ言うと、彼女は訓練所に消えて行った。

 

「『それ』の使い方を教えてやる」

 

 

何だかやけにそれが懐かしい響きに思えた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日、事件は起こった。

俺はお騒がせツインテ(夏海)にほぼ無理矢理報道部室に連れ込まれていた。

 

「あんた報道部に来なさい!あんたには素質があるんだから!!!」

 

とかなんとか言って背中をグイグイ押されて、今この部室にいる。

 

「夏海に連れられてきたのか。君も勧誘熱心だなぁ。」

 

呆れながら笑う彼女は遊佐 鳴子。

報道部室の部長である。

 

「折角来てもらったところ悪いんだけど…」

 

鳴子さんがそういった瞬間に、デバイスからクエスト発令のアラームが鳴る。

どうやら街中で魔物が出た…街中だと!?

 

バカな。有り得ない。まず街中には勿論人目がある。人目があれば魔物は増えない筈だ。普通そうなる前に軍の少数班で駆除される。なのに街中で…?どういうことだ?

 

「街中で魔物が?これはスクープよ!!!」

 

夏海はこの状況の重さを知ってか知らずか、謎に興奮している。訳分からねぇ。

「桃瀬君からこの情報は聞いていたんだ。だから君たちが来たのはある意味ラッキーだ。夏海。今回のクエストは君と、金紅君だけで行け。そろそろ僕も卒業だ。君も独り立ちしないといけない。」

 

「私と金紅だけで…?わかりました。必ずクエストを成功させてきます!」

 

そう言う夏海の顔には不安の色が見える。

部長の前ではいい顔したいのか、それを無理に隠してる感はあるな。しかし俺も一緒にクエストに行くとなると、しっかり彼女をサポートしなければいけない。からっきしの魔法で。ちっぽけな拳銃で。ただ一つの強みは魔力譲渡などという能力。自分の無力さがのしかかって来る。しかし、こうなった以上は、『やるしかない』

 

「了解した。魔力譲渡がどれほど役に立つか分からんが、サポートはできる限りやる。」

 

「良い心意気だ。君はどこか自分を後ろ向きに考えているが、君のその『魔力を譲渡する』能力は、君が考えているよりも素晴らしい能力だ。簡単に言うとね。」

 

「金紅。よろしくね!さぁ、突撃取材の準備よ!あんたも準備しなさい!」

 

なんだかかなり期待されてしまっているようだ。

しかしやるしかないんだ。

 

 

「こんな所でへこたれてちゃ、『立派な魔法使い』になれないからな。」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。