白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~   作:星の屑鉄

6 / 25
ショタコン万歳!

どうも、昨日「親知らず」を抜いて絶賛顔がちょっと腫れている上にまともにものを噛むことの出来ない私です。

さて、いつも感謝ばかりして長ったらしいのは良くないと思うので、ここは一つ省略という形で。

あ、R-17の方のご指摘の方はありがとうございました! まさにその通りだと思ったので、修正させていただきました。

何気ない伏線っていうのは、実は一番読み取るのが難しいですよね。私ですら書き進めて、後に気づいた伏線があったという(それが伏線というかどうかは考えたら負けです)

それでは、本編をどうぞ。



第六話 意外な一面

 

「はむっ」

 

 白は一人で都の中を歩いていた。大通りに出店が並ぶ祭りの日、人混みの中を流れる様に進みながら、彼は先ほど女性店主から貰ったリンゴ飴を舐めている。尻尾があれば嬉しさのあまり振り回していたことは容易に想像できる光景だが、今の彼は人間の都に居るということもあり、前から着ている白と藍色の着物を与えてくれた持ち主の言に従って、狐の耳と尻尾を隠していた。思い出したのがつい先ほどで、ここ数ヶ月の間すっかり忘れていたことはご愛敬というものか。

 

「あっ!」

 

 ふと、白は人混みの中でも一際、人が集まっている中心部に、見たことのある黒髪と自分と同じデザインの着物の男性を見つけた。奇跡的に人だかりに出来た隙間から見知った顔を見つけた彼は、リンゴ飴を大切そうに持って駆け出した。人混みと人だかりの中をものともせず、白はその小さい体と軽い身のこなしであっさりと中央に辿り着いた。そして、その男性の背中に声を掛けた。

 

「つくみー!」

 

 元気いっぱいの声だ。よく通る大きな声はその男性にも届き、振り向いた。そして白を見つけると、一瞬目を見開いて、しかしすぐに嬉しそうに聖母のような笑みを浮かべて、ゆっくりと白に近づいた。

 

「白、貴方でしたか。元気にしていましたか?」

 

 つくみーと呼ばれた男性は中腰になって白と目線を同じ高さに合わせて言った。白はそれに元気よく「うん!」と返して、見るだけで腹の底から力が湧き上がる様ないっぱいの笑顔を咲かせた。

 

「おや、リンゴ飴ですか。美味しそうですね。私も一口貰っても?」

 

「いいよ! はいっ!」

 

「ありがとうございます」

 

 男性は白からリンゴ飴を受け取ると、小さな歯型のついている飴細工の部分を歯で砕き、中にあるリンゴをほんの少し齧りとった。

 

「……ふむ、やはり祭りの味はこうでなくては。サグメさんに見つかる前に食べることが出来て良かったです。あ、飴の部分は砕いておいたので、これで白も簡単に食べられますよ。はい、どうぞ。ごちそうさまでした」

 

「うん!」

 

 はむっ、と小さな口で白はリンゴ飴に齧りついた。その顔はとにかく楽しそうで、嬉しそうで、見ている方が元気になるほど綺麗だった。男性も、この笑顔に何度元気をもらったことか、と笑みを深くしてリンゴ飴を食べる白を見守った。

 

「…………」

 

 ちょんちょん、と男性の肩を遠慮半分に叩く者が居た。男性が振り向くと、そこには予想した通り、右だけ生えた翼とセミショートの銀髪が特徴的な、男性御付の少女が居た。

 

「あぁ、見つかってしまいましたか。あと二分ほどは白の顔を見られると思ったのですが……」

 

「んにゅ?」

 

 男性から視線を向けられ、リンゴ飴を頬張っていた白は突然見つめられたことに首を傾げて、つぶらな瞳で「なに?」と訴えた。声に出さず、リンゴ飴を頬張ったまま視線だけで会話を試みる姿は実に微笑ましかった。子どもらしい優先順位が眩しく見える。

 

「そうだ。白、今から私の家に遊びに来ませんか?」

 

 ふと、男性は思いついたままに提案してみた。本音も建前も無くしていってしまえば、白とすぐに別れることになって名残惜しかっただけだ。

 

「っ!」

 

 大きく勢いよく二回も首を縦に振る白の姿を見て、男性は微笑みを返した。

 

 しかし、すぐに肩を叩かれた。見てみると、先ほどの御付の少女が首を横に振った。どうやら、彼女は男性の提案に反対しているみたいだ。

 

「サグメさん。白は見た通り、無害ですよ。それに、私の友達です。私の顔を立てると思って、ここは見逃してください」

 

 ふるふる、と少女、稀神サグメは頑なに首を横に振った。どうやら、単純に怪しい人物だから、というわけではないらしい。ならば、考えられる理由は1つだけだった。

 

「私はツクヨミです。上に立つ者として、人を……妖怪だって、見る目は確かです。それに、白は我々の側ですから」

 

 男性、ツクヨミは言い切った。しかし、それでもサグメは首を縦に振らない。ツクヨミが信用できないというわけではないが、職務上それに納得して折れるわけにもいかない、といったジレンマに挟まれているのだろう。

 

「なら、サグメさんが見極めてください。貴方は私の護衛ですから、いざとなれば、守り切ってくださるでしょう?」

 

 力強く、サグメは首を縦に振った。それを見て、ツクヨミはニヤリとその顔に悪戯に成功した子どものような笑みを浮かべた。

 

「なら、決まりですね」

 

 しまった、とサグメは自分の失敗に気が付いたが、既に遅い。ツクヨミは左手で白の右手を握って、帰宅する準備を終えていた。

 

「さぁ、我が家に帰りましょう」

 

 後の祭りとはまさにこのことだと、サグメは軽々しく頷いた過去の自分を恨めしく思った。

 

 

 

 

 

 

 家に遊びに来ないか、などと言ったものの、ツクヨミの家にはボードゲームは充実していても、肉体を動かして遊ぶスポーツ用品などは殆ど揃っていない。そういうものは弟の担当だ。自分から遊びに来いと誘ったものの、ツクヨミは白と楽しく遊べる媒体が無いことに道中、頭を悩ませた。

 

 菓子折りなどを持って世間話も良いが、それでは白が存分に楽しむことが出来ない。スポーツをしようにも、道具もなければ、身体能力がそもそも違い過ぎて勝負にならない。懐古して缶蹴りなども面白そうだが、三人ではどうにも盛り上がりに欠ける。少人数かつ出来るだけ対等に弱者と強者が遊べる遊びを見つけるのは、思いの外難しい。

 

「……あぁ、その手がありました」

 

 ふと、ツクヨミは中つ国で流行している神と人間が戯れる遊び、「神遊び」を思い出した。高天原から追放された弟がよく子ども相手にやっていたものだから、今でも覚えている。ルールもばっちりだ。

 

「白、サグメさん、神遊びをしましょう」

 

 ツクヨミはすぐに提案した。それを聞いて、白とサグメがお互いに首を傾げると、ツクヨミはすぐにルールの説明を始めた。

 

 一つ、弾札の所持数をお互いに決めること。また、上限被弾回数を決めること。被弾回数の上限を越えて被弾した場合、その者は敗北する。

 二つ、弾札の製作は神が行うこと。また、弾札の神力の補充は神が行うこと。(弾札とは神力弾をどのようにばら撒くかという記憶媒体である。弾に被弾すると、三秒間だけ弾が消え、また初めから弾がばら撒かれる)。

 三つ、弾札は最低限の逃げ道を作ること。絶対に当たる様なものは許されない。また、出来るだけ怪我を減らすために、弾札から出現する弾は全て威力を押さえたものであること。もしくは、そうした属性を付与させること。

 四つ、弾札をお互いに消費し終えた場合、どちらがより美しかったかによって、神側が嘘偽りなく判定しなければならない。

 

 以上だ。何とも神に有利に見える様な遊びだが、むしろここで公平に判断しなければ神の品格が疑われることになり、また、嘘を吐きすぎれば遊び相手が居なくなるということもあるので、神側も嘘を吐けない。遊びにそこまでのリスクを負う神も居ない、ということだ。

 

「さて、それでは、まず弾札の製作の方を――」

 

「はいっ!」

 

 ツクヨミがそう言い掛けたところで、白が少しだけ神力の余っている御札らしきものを差し出した。一瞬、それが何なのか分からなかったツクヨミだが、しかしそれが弾札であることを認識すると、得意げに話していた顔が僅かに強張った。

 

「……白、神遊びをやったことがあったのですか?」

 

「うん! すさのーとやったよ。えっと、たまふだは……これでぜんぶ!」

 

 ツクヨミは束になっている弾札を強張った顔のまま受け取り、その数を確認すると、総数なんと八十一枚。それも、難易度別にされているものまである。

 

「……弟と、ですか。ちなみに、十回やればどれくらい勝てますか?」

 

「えっとね、はじめはかてなかったけど、いまはね、みっつめのむずかしさで、すさのーがちょうせんちゅう!」

 

 ツクヨミは思わず天を仰いだ。あの武闘派のスサノオが、遊びとはいえども手加減をされる現実に、八岐大蛇でも引いた気分になった。もう、大人ぶっている余裕などない。全力でやってもおそらく勝てないだろう。ツクヨミは出来る限りの策を練りながら、神力を弾札に補充して、終わればそれを白に返した。

 

「……それでは、私たちは弾札を持っていないので、作るところから始めますね」

 

「うん!」

 

 白の元気な声が、今はただただ言いようのない凄みを含んでいるように感じるツクヨミであった。

 

 

 

 

 

 

 結果だけ言えば、ツクヨミは単騎で二番目の難易度まで無事勝つことが出来た。しかし、三番目の難易度となるとサグメと組んでようやく、といったところで、一番の難易度を誇る四番目に至っては反則しているのではないでしょうか、などと勘繰ったほどに難しく勝つことが出来なかった。

 

 勝者である白本人は何をしているのかと言えば、単純に遊び疲れたのか眠っていた。あどけない寝顔に思わず心が和むが、それと同時に先ほどの狂気を含んでいるとしか思えない密度の弾幕には一片の可愛らしさも無かったことを思い出すと、何か薄ら寒いものを感じざるを得ない。

 

「……寝顔くらいは、嘘でないと信じたいものですが」

 

 口にして、いや違う、とすぐに首を振って自分の言葉を否定する。白は純粋過ぎたのかもしれない、と考えを改めた。純粋な勝利への渇望から、ただひたむきに努力をしたからこそ、神遊びであれほど強くなったのかもしれない、とはツクヨミの一予想である。

 

「それに、白に嘘は無理でしょう」

 

 そもそも、嘘という概念さえ知らないかもしれない。そんな白が嘘を吐くことなど、どうやっても出来る筈も無い。嘘の意味を教えても、結局自分が嘘を吐く意味を見いだせず嘘など吐きそうにない。

 

「……白とももうすぐ、お別れですか」

 

 夜空に浮かぶ半月を見て、ツクヨミは小さく呟いた。

 

 この先、考えなければならないことは多々ある。しかし、何よりも問題なのは、やはり思い入れの強い白についてだ。

 

 この都に自由に出入りする白は、今や彼の天真爛漫な行動のせいか、この都の民にも好印象を与え、白にとってはこれ以上ないほど心地の良い場所となっている筈だ。だからこそ、白は結構な頻度でこの都に訪れる。しかし、今回はそれが仇になりそうだ。

 

「……文明破壊のための爆弾」

 

 移住の時、今の中つ国にとってのオーバーテクノロジーを残すわけにはいかない。だから、ロケットが全て飛び立った半日後、この都を中心に文明を消滅させるための爆弾が爆発する。

 その時、もしも此処に白が訪れたならば、という想像をするとゾッとしない。やはり、何か理由を付けて、その時期には白が此処に訪れないようにしなければならない。そうとなれば、弟に手紙を送りつけて、話の辻褄でも合わせてもらうとしよう。

 

 思いつきのまま、ツクヨミは筆を手に取り、手紙をしたためた。完成すれば、すぐに神力で生み出した遣いにその手紙を運送させる。これで、あとは自分が白に話を切り出すだけだ、とツクヨミは深い溜息を吐いた。

 

 




ツクヨミ様は苦労人。絶対そうだと思います。

ちなみに、サグメさん出した意味ですが……正直、キャラ的に絡みを書くのが非常に難しくなり、このポジションに落ち着いたという裏話が……(苦笑)

子どもはとっても可愛いです。純粋無垢なのもそうですが、子ども故の聡い面を私は可愛らしく思います。手の掛からない子どもとか居ますが、それは本能的に親の感情や周囲の状況を読み取っているのでしょう。
子どもだからこそ、という面は多々ありますが、私はその中でも、聡い子どもも好きだったり。当然、元気な子も大好きです。

さて、次回予告です。
次回のタイトルは「お別れの花冠」です。

期待に胸を躍らせて、お待ちいただければと思います。
感想、コメント、評価、ご指摘、などなどお待ちしております。

……評価6ってつまり、大学でいう「可」と同じなのでしょうか……(´・ω・`)?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。