白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~   作:星の屑鉄

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少し遅くなってしまい申し訳ありません。
そして、お気に入り210件突破ありがとうございます!

今回の本編、矛盾点ごっそり引き抜いたらかなり短くなりました。
ボリューム的には足りないかもしれませんが、それはご勘弁の方を。

それでは、本編をどうぞ。


第十九話 贈り物

 食事が終わり、あとは寝るだけとなった頃合い。

 物部布都は白を誘って庭を散歩していた。庭はよく整備されており、白い石を敷き詰めた地面のおかげか、力強い緑色を主張する松がよく映える。

 

「白殿」

 

 頃合いか、と物部布都は白に声を掛ける。彼は目を輝かせながら彼女の方を見た。

 

「先ほど、丸い物が嫌いとのことであったのだが……そのこころは?」

 

 その質問は何となく、という非常に曖昧な気持ちから出て来たものだった。ただ、彼の好き嫌いが分かればいいな、程度のもの。

 白は予想外の質問だったのか、目を見開いて、しかしすぐに笑顔になって答えた。

 

「まるいみち。いくらあるいても、おわらないから。だから、きらい」

「むっ、確かに……」

 

 言われてみればその通りだ、と彼女は頷いた。

 

「我も今、嫌いになった!」

 

 同調して、彼女は堂々と言った。屈託のない純粋な発言に、彼はますます機嫌を良くして、鼻歌まじりに月を見た。

 

「あ、でもね。まるくても、つきはすき」

 

 彼女も月を見上げた。月は綺麗だ。好き嫌いなど、言うまでもない。

 

「――白殿」

 

 頃合いだろう、と彼女は懐から檜の小箱を取り出した。そして、それをこちらに向いた彼に差し出した。

 

「これ、なに?」

「そ、その。贈り物、というものなのだ」

「おくりもの? くれるの?」

「当然、そのつもり――」

「ありがとう!

 

 彼女の言葉を途中で遮って、彼は贈り物に飛びつき、今まで以上に輝いた瞳で「開けていい?」と聞いてくる。彼女がこれに頷いて返すと、彼は檜の小箱の蓋を開けて、中身を取り出した。

 

「あっ」

 

 一瞬、ほんの一瞬だけだが、その笑顔が消えた。蝶を模ったデザインを見た瞬間だった。しかし、彼女が気づく前に彼はすぐに元の輝いた笑顔で彼女と中身の簪を交互に見た。

 

「……うん、だいじょーぶ」

 

 彼は彼女の手をギュっと握った。彼女は急な出来事に顔を赤らめてしまう。そんなことに構わず、彼は言葉をつづけた。

 

「ふとは、ふと。だから、だいじょーぶ。これは、げんじつ。つぎのまえ、まえのつぎ、じゃない」

 

 彼は伸びていた後ろ髪を纏めて、簪を挿す。銀色の髪は後ろでまとまり、漆と黒色の蝶が月光の下でよく映える。髪は光を反射し、簪は光を吸い込む。

 

「きっと、もう、だいじょーぶ。だから、もういくね」

 

 背を向けて、出口に向かって彼は歩き始めた。

 

「行く、とは何処へ?」

「ともだちのところ。おそいから、きっとしんぱいしているから」

「また、会えるのであろうか?」

「うん」

 

 彼は後ろ手を組んで、くるっと振り返って笑顔を浮かべた。

 

「またね、ふと!」

 

 月の光に照らされた彼の笑顔は綺麗だった。屈託なく、白百合のように柔らかい。空に浮かぶ月のように儚く、魅力に溢れる。

 

 彼女はその笑みに見惚れて、気づけば彼を見失っていた。周囲を見回しても居ない。それは彼の旅立ちを意味していた。

 

「う、うぅむ……」

 

 真っ赤になった顔を月から隠すようにその場で蹲り、彼女は悶々と唸った。その網膜には何度も、彼の月に照らされた笑みがフラッシュバックして、ますます顔の朱が増していく。

 

「変な輩を、引っ掛けねば良いのだが……」

 

 苦し紛れに文句のようなことを言ってみても、彼女の熱を冷ますことはない。本心ではないせいで、恥ずかしさからむしろ熱が増すばかりだ。

 

「う、うぅ」

 

 朝日が光を差した頃。それまでずっと、彼女は庭先で蹲っているのであった。

 

 

 




PCの持ち運び用の方がネットにずっと未接続の状態になる不具合が発生。
家用のPCの方はかろうじてネットにつながるのでいいのですが、本当に二台持っていなければ危ないところでした。投稿できない事態とか普通にあってもおかしくなかったです。

さて、今回遅れたのは、そっちのネットにつながらなくなったPCの方からUSBにデータを移して、古くて重い家用のPCにデータを移して、こちらで投稿しているからですね。

などと言い訳をしながら、今回はここまでということで。


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