ビルドにてついに始まってしまった戦争。
そして登場した強敵ハードスマッシュこと北都三羽烏(さん【バカ】ラス)と新ライダーグリスとどんどん面白くなって行きますね。
沈黙を守っている西都も気になりますしますます目が離せません。
ルパンの事件が解決してから数日後、E組生徒たちは島での暗殺に向け連日訓練に明け暮れていた。磯貝を中心に考えた計画に合わせそれぞれの役割をこなせるよう各自が自らのスキルを磨いていく。
「あらあらガキどもは頑張るわね~」
その様子を少し離れた所でパラソルの下でデッキチェアに寝そべり日光浴しながらイリーナは眺めていた。
「ビッチ先生もさぁ~訓練したらどうなの?ナイフや銃の腕は俺たちと対して変わらんないだろ・・・」
「大人って言うのはズルいモノなのよ。訓練なんて暑苦しいことはしないであんた達が取りこぼした蜜をしっかりといただくわ」
余裕の笑みを浮かべるイリーナであったがその背後から近づいてくる人物に気付かないでいた。その人物はイリーナのすぐ後ろに立ちパラソルを投げ飛ばした。突然降り掛かった日差しに忌々しく舌打ちし振り向いた。
「誰よ!大人の優雅な時間を邪魔すんのは!?」
たが、後ろに立つ人物の顔を見た瞬間イリーナの額に大量の汗が流れた。
「せ、師匠(せんせい)・・・・」
「ずいぶんと偉くなったなイリーナ」
その人物こそ、イリーナの殺し屋としての師匠であり世界的な殺し屋たちの元締め的存在のロヴロであった。
今回の計画に基づき烏間が特別コーチを依頼し急遽来日してきたのだった。
「1日の怠りが技を鈍らせる!落第点を貰いたくなかったらキサマもさっさと訓練に入らぬか!!」
「ヘイ!ただいま!!」
ロヴロの一喝にイリーナは即座にパラソルとチェアを片付けダッシュした。
弟子の腑抜けぶりにタメ息を吐くロヴロだったがすぐに視線を訓練に没頭するE組に向けた。
暗殺者としての訓練を始め4ヶ月程がたち、生徒たちの能力は確実に上達してきていた。
品定めをするかのようなロヴロに先程まで生徒たちの指導にあたっていた烏間が近付く。
「どうだ、プロの眼から見て生徒たちの実力は?」
烏間が聞くとロヴロは暗殺の計画書を見ながら周囲を見渡し射撃場で目を止めた。
「どの生徒も中々優秀だな。特に射撃に関してはあの2人が優秀だ」
ロヴロは速水と千葉を指差す。2人は他の生徒よりも離れた距離から的確に的を撃ちぬいている。
「プロの中に入れてもあれほどの腕前の物は中々いないな。ぜひとも私の部下に欲しい位だ」
そんな会話が聞こえ速水は密かに微笑んだ。どんなことであれその道のプロに認められるのはうれしかった。
自分には才能がある。人に認められている。落ちこぼれと罵られてきたE組だからこそより一層うれしく感じた。
「ところで、クリムと仮面ライダーの少年はどうした?」
「あの2人ならあそこだ」
烏間が指さした先、グラウンドの端には以前にはなかった大きなガレージがあった。
「クリムの要望で仮面ライダーの基地を新たに造ったのだがなそれ以降2人とのあそこに籠りっきりだ」
「そうか・・・せっかくだから挨拶ぐらいはと思ったのだがな・・・クリムは一度籠ると中々出てこないからな」
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ガレージの中では現在、クリムと郷によりルパンとの戦いにおいて使用した赤いシフトカーの調整が行われていた。以前使用した時に感じた自身へのダメージを押さえるためこの数日の間試行錯誤が続いているが今のところ成果は得られていなかった。
『やはりここはシフトカーの出力を押さえるしかないのかもしれないな』
「いやでもよ、それだとコイツの持ち味が無くなっちまうしよぉ~・・・」
郷の手元のタブレットにはシフトカーのデータが事細かに映し出されていた。
「じゃぁ・・・こいつでどうだ!」
郷がいくつものケーブルにつながれたシフトカーにデータを打ち込み結果を見ようと近づいた。だが、郷がシフトカーを掴もうとした直前シフトカーから深紅のイナズマが発せられた。
『ッ!いかん離れるんだ郷!!』
シフトカーはイカズチを纏ったまま郷に向かっていった
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ドゴォン!!とまるで落雷のような轟音が響いた。
全員が訓練の手を止め音の出所を見た。グラウンドの隅に新しくできたばかりのガレージのシャッターが大きく歪んでいる。
『みんな!急いで離れるんだ!!』
何人かの生徒が近付こうとしたがそこにシフトスピードがやって来た。
シフトスピードを通してクリムが叫ぶと再び轟音と共にシャッターが歪みだした。
ドオォン!!ドオォン!!と何度も轟音が響きガレージのシャッターは最早、限界寸前だった。
「みんな!クリムの言う通りに下がるんだ!!」
烏間が銃を取り出すのを見てガレージに近付いていた生徒たちは後ろに下がった。
「クリム、いったい何があったんだ?」
『ロヴロか!?すまい来ていることに気付かずに・・・』
一際大きな音と共にシャッターを突き破り郷が飛び出してきた。その身体には無数の傷が出来ており手にはゼンリンシューターが握られていた。
「郷ぉ!?」
「おい、大丈夫か!?」
「来るな!!」
明らかに何かと戦っている様子に速水や千葉が駆け寄ろうとしたが郷の叫びでその足は止まった。
ガレージの中から小さな影が飛び出し郷に向かっていく。
郷は横に転がり避けるとすぐさまゼンリンシューターを撃つが影は素早く回避していき接近する。
「クッソ!」
払い落とそうとした郷だったが予想以上の速度の影は郷の攻撃を抜け腹部に体当たりした。
その衝撃に吹き飛ばされ地面を転がるが影は更に追撃しようとした。
『マズイ!GOシフトカー!!』
クリムの命令にフレアやスパイク、シャドーたちが影の行く手を塞いだ。
「あのシフトカーは確か!?」
千葉を始め速水以外はその影の正体に見覚えがあった。
ルパンとの戦いの時、シグナルマッハを奪われた郷が新たな変身用として見せた赤いシフトカーだった。
「何でシフトカーが郷を襲ってるんだよ!?」
あり得ない光景に寺坂が叫ぶ。シフトカーの力を借りて戦ってきた郷がそのシフトカーと戦って傷付いているのだから。
『・・・・あのシフトカー、【シフトデッドヒート】はそのあまりの出力の為、今まで使用を禁じてきたんだ。たが、これからの戦いでアレンやルパンの様な強敵と戦うにあってデッドヒートの力が必要不可欠だと感じ調整を行っていたのだが・・・』
「暴走した訳か・・・」(だが丁度良い、彼の力を見させてもらうとするか)
ロヴロは密かに郷の実力を見る良い機会と考え郷の動きの一つ一つを観察した。
シフトカーたちの妨害を抜けたデッドヒートは再び郷に襲い掛かる。
だが、シフトカーたちの足止めの間に息を整えた郷は冷静に対処しデッドヒートを躱していく。その合間に合間にゼンリンシューターで攻撃するがイカズチを纏ったボディに対したダメージを当たえられない。
「チィッ!ならこれで・・・」《トマーレ!》
このままでは埒が明かないと思った郷はゼンリンシューターにシグナルトマーレを装填しデッドヒートの狙う。
『郷!急がなくてはデッドヒートは自らのエネルギーで自爆する!一発で決めるんだ!!』
「ガレット!任せなって・・」
高速で不規則な動きをするデッドヒートに対し郷はシフトカーたちに囲う様に指示を出すと指示を受けたシフトカーたちはデッドヒートの逃げ場を無くすように周囲を走りだした。
郷はシフトカーのわずかな隙間から見えるデッドヒートに標準を合わせる。
「まさかあの隙間を狙うのか!?」
走り回るシフトカーの間からデッドヒートが見えるのは一瞬、しかも弾一発分の隙まであり烏間から見ても無謀と思えた。
「・・・・・・フー・・・」
集中力を高めるように目を閉じ深呼吸をし静かに引き金を引いた。
光弾はシフトカーたちの一瞬の隙間を通り抜けデッドヒートのボディに直撃した。光弾はエネルギーフィールドとなりデッドヒートの動きを止めた。
抜け出そうとするデッドヒートであったがやがてエネルギーを使い切り糸が切れたようにその場に落ちた。
「・・・フィ〜・・・」
緊張の糸が解けたように息を吐きデッドヒートを回収した。
「たぁっく、ま〜た駄目だったかぁ〜また徹夜しないとか〜〜・・・」
「素晴らしい腕前だな」
「んあっ?」
これからまた行わなければならない作業に頭を悩ませていた郷にロヴロが拍手をしながら近づいた。
「直接話すのは始めてだったかな。クリムの友人のロヴロだ」
「えっと、どうも・・・」
いきなり話し掛けられた事に驚きながらも差し出された手と握手をした。
「どうかね。卒業したら私の下に来ないか?」
「・・・・は?」
『なっ!ロヴロ!!いきなり何を言っているんだ!?』
郷以上に驚いたクリムが声を荒げる。当の郷もいきなりのスカウトに思考が追い付かなかった。
確かに普通とは言えないが中学生の自分が殺し屋のスカウトを受けるとは思っても見なかったからだ。
「君の先程の動きは見せてもらった。あの身のこなし、瞬時に最善の策を見付ける思考能力、そして射撃の腕どれをとっても一流の物だ。それに聞くところによると君は電子関係にも精通しているらしいな。私の下で磨き上げればやがてあの世界一の暗殺者、死神を越えることも出来るはずだ」
ロヴロはこの逸材を逃すまいと肩を掴む。
「遠慮しときます」
郷は肩を掴む手を剥がしながら一言そう言った。
「まだロイミュードどもを撲滅出来てないし何より、この時代に残るかも決めてないッスから」
「そうか・・・それは残念だな。だが、気が変わったら何時でも言ってくれ歓迎する」
その場から下がるロヴロに続くように生徒たちも訓練に戻っていくが速水だけはその場に佇み郷を見ていた。【この時代に残りかは決めていない】郷のその言葉が何故か胸に刺さった。
(やっぱり帰るかもしれないのね。元の時代に・・・・)
「あ〜あ、こりゃもうしばらく徹夜だな〜」
『仕方あるまい』
そんな速水の視線に気付くことなく郷はクリムと共にガレージへと戻っていった。
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