まだ見ていない人もいますから多くは当たりませんが、ラストのバトルが最高でした!
あんなバトルが小説内で描きたいですねぇ~~・・・そんな文才は無いですが・・・
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椚ヶ丘中学は勉強だけでなくスポーツにおいても名門である。
野球部は理事長の人脈により集めた優秀な指導者の下、恵まれた環境で日々練習をし東京都の大会で常に上位の成績を収めている。
そんな強敵と今、E組は相対する。
「あっれ・・?渚ぁ〜殺せんせーはどしたんだ?」
「殺せんせー?それなら少し離れた所で目立たない様に見守るって・・・・」
郷と渚が周囲を見渡すと先程ウォーミングアップのキャッチボールを行っていたグラウンド端に転がるボールの中に一球、明らかに不自然なボールがあった。
遠近法で分かりにくいが良く見ると他のボールと比べ大きかった。
更に良く見てみると小さく目の様な物が見える。
「・・・あれ・・かな・・・?」
「・・・だな・・」
他の生徒も気付きボールに視線が集まる。
するとボールは次々と色を変えて地面に潜っていった。
「・・・渚、なんだって?」
「えっとね・・・・殺す気で勝てって」
それを聞いて生徒たちはニヤリと笑いグラウンドに出た。
「「「「了解!」」」」「ガレット!」
「プレイボール!!」
主審の先生の合図とともにE組対野球部の火蓋が切って落とされた。
「さってと・・・景気よくトップバッターを飾るか!」
バットを手に持ち郷はバッターボックスに立った。
『おっと!E組のトップバッターは全校集会の時にトイレに駆け込んだ転校生だぁ!ピッチャーの速球にビビってまた漏らさないでくれよ!?』
実況の放送部の言葉に本校生たちの笑い声が響く。
完全アウェイの状況でもE組は落ち着いていた。敵陣なのは百も承知、今更この程度の事では取り乱さない。
「誰が漏らすかーー!!てかっあの時も漏らしてねーよ!!待ってろよ!すぐにそんなこと言えない様に黙らせてやるからなーー!!」
・・・郷を除いて・・・
頭に青筋を浮かべながらバットを構える郷に対し野球部のエース進藤は第一球を投げた。
「ストラーイク!」
ボールは真っ直ぐにキャッチャーミットに吸い込まれた。
「どうした?振らないと当てることは出来ないぞ。最も、いくら振っても落ちこぼれのE組では俺の球は打てないがな」
進藤はニヤリと笑い二球目を投げた。
「そうかなっと」—コン―
郷がバントの構えを取るとボールはバットの中心に当たり一塁側に転がった。
「なにぃっ!?」
予想外の事に一瞬動揺したキャッチャーだったがそこは強豪校、すぐに対応しボールを拾うと一塁を見た。
「セ、セーフ!」
キャッチャーがボールを拾った時にはもう郷は一塁の上で欠伸をしていた。
「ふぁ~~~あぁ、遅せ~よ」
『なっなんだ今のスピードわ!?』
あまりのスピードに実況だけでなくヤジを飛ばしていた本校生徒たち全員が静かになった。
続いてバッターボックスに立った木村も進藤の投球に対しバントを取った。
郷には劣る物の元々E組最速であった木村も悠々と塁に出た。
次の磯貝も出て四番の杉野に回った。
「くっ!さっきからせこくバントを繰り返しやがって・・!」
次もバントが来ると思っていた進藤だったが杉野はバントの構えを取らない。
(勝負するつもりか?お前が一度でも俺の球を打てたかよ!)
進藤は自分のストレートに自信を持っていた。まともな勝負なら絶対に撃たれることは無いと、昔の杉野なら確かに打てないだろう
だが、今の杉野はあの時とは違う、あの時の自分の才能に自信が持てず一人で悩んでいたあの時とは・・・
(進藤・・確かに俺たちは落ちこぼれかもしれない、10回やったら9回俺が負けるかもしれないでも、この1回は俺たちが勝たせてもらうぜ!)−キーーン!―
杉野が振ったバットはボールを真芯に捉えた。
打球はライト深くまで飛んでいった。ライトが追い掛けるが追いつかない。その間に郷、木村、磯貝がホームに帰りE組は一気に3点を先取した。
「いや〜惜しかったね〜〜」
「もう少しで勝てたのにね〜」
バスケ部との試合を終えた女子達は男子が試合を行っているグラウンドへと向かっていた。
前半、油断していたバスケ部の隙をつき岡野がドリブルで翻弄し速水が正確なシュートを決め、ディフェンスでは片岡が手足の長さを生かし相手のパスを妨害しリードしていたのだが、後半に入りきを引き締めたバスケ部に反撃を許してしまい結果3点差で負けてしまった。
「う〜・・・ごめんね。私が何度もミスしたから・・・・」
「茅野ちゃんのせいじゃないよ」
「そうそう、気にすることないって」
落ち込む茅野を励ます倉橋と岡野であったが、茅野は落ち込んだままだった。
「バスケ部のキャプテンの揺れる胸が眼には入ると目の前が真っ赤になってボールをぶつけたくなっちゃって・・・」
「茅野っちのその巨乳への敵意はドコから来るの!?」
そんな会話をしているとグラウンドが見えてきた。
「さて、男子はどうなってるかしら?」
速水がスコアボードを確認すると現在、1回の裏、野球部の攻撃中得点は3対0でE組がリードしていた。
あの後、なんとか持ち直した進藤によって、追加点は取れなかったが杉野も野球部時代には持っていなかった変化球で野球部打線を翻弄していた。
「スゴイじゃん!野球部に勝ってるなんて!」
「おお!このまま行けば勝利間違い無したぜ!」
ベンチに来た中村に控えの岡島が答えていると打球が外野深くに飛んでいく。
「あっ!不味い!!」
「大丈夫、大丈夫、心配ねえよ」
焦る女子と比べてベンチに控えている岡島は落ち着いていた。
『行った〜〜!野球部、反撃の狼煙がとうとう上がったぞ〜!!』
実況も興奮し声をあげる。
本校生たちも先程まで沈んでいたテンションが一気に上がった。
やっとE組の無様な姿が見えると期待した。
ところが・・・
「ワリィけど、この距離は余裕で俺の守備範囲なんだよ」
地面に落ちようとするボールの間にグローブが入り込んだ。
「ア、アウト!」
審判の声が響くとグラウンド周辺が静まった。
確実にヒットとなると思われた打球は凄まじい速さで追い付いた郷がキャッチした。
これによりスリーアウトとなり唖然とするバッターや審判、観客を置いてきぼりにE組はベンチに戻った。
「郷、スゲーじゃねーか!」「良くあの球取れたなー!」
「よゆうーよゆうー大したことね〜よ」
盛り上がるE組ベンチだったが、ふと野球部側を見るとそこには何故か理事長の姿があった。
『えーたった今は言った情報によりますと、野球部顧問の先生が前日からの体調不良でたった今病院に運ばれた模様です。それに伴い理事長が自ら野球部の指示するとのことです』
そのアナウンスに周囲が沸くなか、E組は冷や汗を掻いている。
「いきなり来たな・・・ラスボスが・・」
理事長を中心に円陣を組む野球部は先程までとはまるで別人に見えた。
E組の攻撃に移りバッターの前原がバッターボックスに立つが野球部の守備を見てギョッとした。
内野手が全員異様な程前に出ているのである。
「おい!良いのかよ。あんなに前に出てよ!?」
「ルール上では野手がどこで守ろうと自由だよ。審判が違反と認めたら別だけどね・・・あの様子じゃあ審判は当てに出来ないね」
竹林の言う通り主審の教師はニヤニヤと笑っている。
そんな状態で落ち着いてプレーできるはずも無く、前原はバントを失敗、真上に打ち上げてしまいアウトとなる。流石の殺せんせーも打つ手なしでその回の攻撃は三者凡退で終わった。
そして野球部の攻撃、ここから野球部のそして理事長の反撃が始まることになる。
「んっ?おいおいリアリ~マジで・・?」
センターからバッターボックスを見た郷は唖然とするとした。
バッターボックスに立つ野球部がバントの構えを取っているのである。
数日練習しただけの初心者と経験者では技術の差は歴然である。
E組は殆どが野球初心者のため、バントの処理が出来ず守備のミスが連発する。
3点差はあっという間に同点まで追い付かれた。
何とかチェンジにするもこのペースでは次の攻撃で逆転されるのは目に見えている。
「カルマ君」
ベンチに戻ろうとするカルマに周りに気付かれない様に地面から顔を出した殺せんせーが話し掛けてくる。
「どうしたの、殺せんせー?」
「次の攻撃、君からでしたね。一つやって貰いたい事があるのですが」
E組の最後の攻撃、やはり野球部は前進守備を続行している。
「君!速くバッターボックスに立ちなさい!」
いつまでもバッターボックスに立たないカルマに審判が注意する。
「理事長さぁ~いくらなんでもこれは卑怯じゃないの~お前らもそう思うだろ?」
前半は野球部側のベンチに座る理事長に後半は観客の本校生対して言う。
「あっ!そっか〜お前らバカだからルールとか分かんないのか〜〜」
カルマの虫を見下すような視線は本校生たちの怒りを買うには充分な物だった。
「うるさいぞ!E組ぃ!」「たかがエキシビションでクレームつけてんじゃねーよ!」「文句があるんならバットで語って見ろ!!」
周囲からのバッシングが響く中、カルマはバッターボックスに立った。
「はは、スゲー野次・・・」
ネクストサークルで待機していた郷の足元に殺せんせーがやって来た。
「郷君、カルマ君が勝利のための布石を打ちました。次は君がお願いしますよ」
「ガレット!任せてくれよ」
カルマがアウトになり郷の番になる。
「ふ、次はお前か・・・いくら速くても塁に出さなければどうという事はない」
「安心しろよ。もうそんな小細工はしねーからよ」
そう言うと郷はバットを構える。
「ふ、その余裕が・・・どこまで続くかなぁ!!」
「何時迄もに決まってるだろ?」キーーン!!
郷の振ったバットは進藤の投げたボールの真芯を正確に捉えた。
ボールは一直線に飛んでいきフェンスを越えた。
「い・・・」「「「「「いよっしゃぁーーーー!!!」」」」
勝ち越しのソロホームランにE組ベンチは沸いた。
一方、観客の本校生や野球部、特に進藤は今起こったことが信じられなかった。
140キロを叩きだす自分のストレートを真芯で捉える事が出来る者など中学生で居るはずがない。
ついさっきまで心からそう思っていた。だが、たった今その自信は見事に叩き壊された。
理事長による教育によって作られた強者としてのプライドもまた音を立てて崩れて行った。
「では皆さん、最後の仕上げと行きましょうか?」
野球部最後の攻撃、E組はベンチ前で円陣を組んでいた。周囲には見えないがその中心では殺せんせーが顔を出している。
「守備を交代します。郷君がセカンドにカルマ君がシャーとに移ってください。そして・・・・」
「よーし皆!この攻撃をしのげば俺たちの勝ちだ!行くぞ!!」
「「「「おーーーーー!!!」」」」
バッターボックスには進藤が立っていた。まだ先程のホームランの動揺は残っているがそれでも、杉野の球を打つことには問題は無い。しかし・・・
「んじゃ、行こうか郷?」「ああ、やられた分は返さないとな・・」
郷とカルマはゆっくりとホームベースに向かい歩いていく。
『こっこれはぁ!E組も前進守備だーー!!』
「さっきそっちがやった時に反則にならなかったんだから文句はないよね?」
審判は何も言えずに黙るしか出来ない。
(ふん!コケ脅しを・・・一発フルスイングすればビビるに決まっている)
2人は野球部の前進守備と同じ位置まで来た。が・・・まだ歩き続ける。
(なっ!?正気か?こんなに近づいて・・・)
2人は進藤の目の前で止まった。一メートルも無いこの距離はバットを振れば間違いなく当たる距離だった。
「しっかり避けるんで遠慮なく振って構わねーよ」
郷はそう言うが、進藤は動揺したままだ。金属バットのフルスイングが当たればどれだけの怪我をするか分からない。
普段見下している相手でも怪我を負わせられる程の神経を進藤は持ち合わせていない。
咄嗟にベンチの理事長を見るがその目は〔構わず振りなさい〕と告げていた。
(しょっ・・・・正気かよ・・・?理事長もコイツらも・・・・)
理事長の教育に進藤は着いていけなくなった。そして同時に思った。
(今自分がやっているのは本当に野球なのか?)と
「う・・・・うああああぁぁぁぁ〜!!」
迫り来る投球に叫びならもバットを振る。
やけくそで振ったバットはボールのはるか上を通り過ぎ郷とカルマに迫る。
が・・・2人はバットが当たるギリギリでわずかに後ろに身を引き躱した。しかし進藤にはまるでバットが2人をすり抜けたように見えた。
「ほら、どうしたの?もっと腰入れて振りなよ・・・・殺す気でね」
「あ・・・ああ・・・」
カルマの言葉が止めとなり進藤の闘志は殺された。
「ゲッ・・・ゲームセット!!」
審判の戸惑いの声と共にE組の勝利が決まった。
なんだか最近クリムやマッハの出番が皆無な気がします・・・
次回は久しぶりに変身しますので宜しければ待っていてください。