自分も中学の時の修学旅行はとても楽しかったです。
でも、自分の班は映画村に行かなかったことが今でも心残りですね。
修学旅行当日、椚ヶ丘駅には既に多くの生徒が集まっていた。
その中には当然E組の生徒もいるがやはり周りからは見下されたような視線が向けられている。
「俺たちは自由車なのに・・・」
「他はグリーン車か〜」
菅野と中村が愚痴る中、E組以外の生徒たちはまるで見せ付けるように乗車していく。
「うちは学費は成績優秀者に優先されるからな〜」「おやおや〜君たちは貧乏臭いね〜」
何時かの2人の生徒が渚に絡んでいるとまるでセレブのような恰好をしたイリーナがやって来た。
「ごきげんよう。坊やたち」
そのセレブオーラにE組だけでなく本校舎の生徒たちも圧倒されているなか、烏間がこめかみに青筋を浮かべていた。
「何だその格好は?とても引率の教師の格好ではないだろう」
「フフ、プロの殺し屋にとってはファッションセンスも大事なスキルの一つよ。ターゲットに近づく際、ダサい恰好じゃ近づけないもの。それをガキどもに教えてやるのよ」
得意げに語るイリーナであるがとても教師と思えないその姿その容姿と相成って明らかに浮いていた。
「今のお前は殺し屋としてじゃない。あくまでも教師として行くんだぞ。さっさと着替えろ」
「固いこと言わないでよ。この服何百万もするのよ~」
だが、烏間の青筋はさらに増えていく
「着替えろ。いいな」
烏間から放たれる威圧感に流石にイリーナもやばいと感じた。
「は・・はい」
車内でジャージに着替えさせられたイリーナを生徒たちが苦笑していると、発車を告げるアナウンスが鳴った。
だがそこにはまだ、3名の姿が無かった。
「やっべ~~!!クリム!あと何分だ!?」
『あと2分・・いや!1分だ!』
数分前、郷はライドマッハーで駅に向かっていた。背中のバックに入っているクリムから告げられた残り時間に焦りながらも流石に法定速度を超える訳にはいかずもたついていた。
『だから昨日は早く眠る様に言ったんだ!』
「しゃーねーだろ!楽しみで眠れなかったんだから!」
言い争いながらも駅に着きホームに走る。しかし、ホームに飛び込んだ郷を待っていたのは誰も居ない静かなホームだった。
「あ・・ああ・・あ~~~~」
『・・・どうやらもう行ってしまったようだね・・』
崩れ落ち膝を付いた郷はそれでも何とか追いつけないか考えた。
「い・・今からライドマッハーで追い掛ければ名古屋あたりで追いつくよな・・・」
『ばっ馬鹿を言うな!そんなことで全速力で走ることは許さんぞ!大人しく次の車両で行くべきだ』
「ふざけんなよ!俺はな~車内でみんなでやる為に徹夜でUNOの練習したんだぞ!」
『そんなことで寝坊したのか君は!?』
するとそこに大きな影が現れた。
「おや?郷君じゃありませんか」
振り向くとそこには何故か殺せんせーが居た。
「殺せんせー!?何でここに?」
「いえ、駅中スイーツを買っていたら乗り遅れてしまいましてね~~」
見ると殺せんせーの背後には以前教室で見た大きな荷物の他に、大量の紙袋があった。
「これから追い掛けようとしていたのですが・・・一緒に行きますか?」
「『え?・・』」
ニヤリと笑う殺せんせーに2人は何か也な予感がした。
「はぁ・・・」
一方、車内では速水が1人ため息を吐いていた。その髪型は以前までとは違い郷に貰ったヘアゴムで二つ結びになっていた。本当はゴムをくれた郷に感想を聞きたかったのだが当の本人が乗っておらず落ち込んでいた。
「うわぁ!?」
すると後ろの席から渚の驚いた声が聞こえ他の生徒と一緒に振り返ると渚の席の窓から・・・
「にゅあぁぁぁ~~~!!」「だあああぁぁぁ~~~!!」『うおおおおぉぉぉ~~~!!』
車体にしがみついている殺せんせーと車体と殺せんせーの間に挟まるようにしがみついている郷、更に郷にたすき駈けのように巻き付いているクリムが居た。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
次の駅で乗車した3人であったが流石に時速200キロ以上に長時間掴まっていて郷はほぼ虫の息だった。
「馬鹿じゃないの?」
呆れた速水が言い放つがそこに中村がニヤニヤしながら近づいた。
「そんな事言って~本当は郷が来て嬉しいんでしょ?はやみ~ん」
「///そっ!そんな事無いわよ!どうせ向こうで合流できたんだし・・・」
「まあ~はやみんが誰を好きになるかははやみん次第だけど「だからそんなんじゃない!」しっかり釘指しておかないといけないよ。あれ」
速水は中村が指さす先を見ると・・・
「ところで岡島、下調べは万全か?」
「ああ抜かりなねぇよ。これを見てくれ」
回復した郷が岡島と何か図面を広げていた。
「?暗殺の計画でも立ててるんじゃないの?」
「どうかね~良く見なよ」
「AルートとBルートから行けば比較的安全だな・・」
「でもよ~Cルートの方がターゲットに近づけるだろ?」
「いや、岡島の能力じゃこのルートは無理だ」
「くっ!俺はこの桃源郷に行けないのか・・・」
「心配するな。俺がお前の分まで桃源郷を堪能してきてやるよ」
「・・・何やってるんだ2人とも?」
隣で見ていた千葉が図面を手に取るとそれは今回泊まる旅館のしかも風呂場付近の図面だった。
「何って決まってるだろ。今回の旅行のメインイベント・・・」
「桃源郷(女子の風呂)を見る計画だろ!」
郷と岡島は拳を握り力強く宣言した。その時2人は気付いていなかった。背後からいや、四方から向けられる殺意の視線に。
「安心しろ千葉、何ならお前も連れてってやるよ」
「は?」
郷は察した様に千葉の肩に手を置くが千葉は何言ってるんだコイツといった顔をした。
「見たいんだろ?お前も、同志になるんならお前にも俺がCルートから見た桃源郷の景色の写真を見せてやる「死ね!」じょうがっ!?」
突然後頭部に衝撃を受け郷は珍妙な声を上げ倒れた。
「ご・・ごーーう!?」
岡島が駆け寄ろうとするがその首に対殺せんせーナイフが当てられ動けなかった。
気付くと周囲には銃を構えている速水を筆頭に女子たちに完全に囲まれていた。どうやら先程郷を襲ったのは速水の撃ったBB弾だったらしい。
「・・・何か言い残すことは?」
速水の冷たい言葉に頭を押さえながら起き上がった郷は清々しい笑顔で言った。
「フッ・・・欲望に生きてこその人生だ」
次の瞬間女子たちは一斉に2人に襲い掛かり車両には2人の悲鳴が響いた。
「はぁ・・何をやってるんだ・・」
烏間が呆れているがその向かいの席に置かれたクリムは笑っていた。
『ははは、良いじゃないかせっかくの旅行だ。多少羽目を外すぐらい。まぁ流石に覗きはさせんがね』
「・・多忙な旅行になりそうだ」
烏間がチラリと横を見れば買ってきたスイーツをものすごい勢いで食べている殺せんせーとビールを飲んでいるイリーナが居た。
「教師も教師でだ・・・はぁ」
だらしない同僚の姿に烏間はまた溜息を吐いた。
「なぁ、これ見ろよ。」
杉野がいじっていたスマホを渚に見せた。それは数日前から京都で謎の崩落事故が数件起こっているとのニュースだった。
「せっかく今から行くのになんか不安になるな~」
「うん、原因は一切不明らしいね」
「・・・・」
その会話を死体と化した岡島の下敷きになりながら郷は聞いていたが・・・
パンッ
「ギャッ!」
速水の撃った弾で止めを刺された。
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京都に着いたE組はそのまま今回泊まる旅館に来た。
A~D組までは市内の高級ホテルであるがE組は市内中央から離れた古い旅館に泊まることになっていた。
「にゅあ~~・・・」
ロビーでは殺せんせーが青い顔でソファーに座っていた。どうやら新幹線に酔ったらしい。
「大丈夫?殺せんせー」
岡野が心配するように声を掛けながらナイフを振り下ろすが最小限の動きで躱される。
「心配ありません。先生はこれから忘れ物を取りに一旦戻ります。枕が変わると眠れないので」
「「「「あれだけ持ってきて忘れ物かよ!?」」」」
郷は1人外で旅館の周囲を撮っているとそこに1台のシフトカーがやって来た。
「お、来たな。待ってたぞキャブ」
シフトカー【ディメンションキャブ】は郷の掌に乗った。
郷はゼンリンシューターにキャブを装填し、自身に銃口を当て引き金を引いた。すると脳内にキャブの記憶データが流れ込む。その中にはここ数日起きている崩落事故の記憶もあった。
「・・・な~る。やっぱりな・・」
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