Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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とりあえずは聖杯問答の所までいくで候。

後、今回は会話が少ないで候。

てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



見解

 

 

 

ヒュウゥ~と木枯らしが吹く冬木の寒空の下、一人の男がビルの屋上に立っている。

男は全身を真っ黒な衣服に身を包み、煙草を咥えている。

それに加えて男は不気味な雰囲気を漂わせている。その大きな特徴が男の『眼』であった。

男の眼は夜空のように淀みなく、泥のように澱んでいた。とても常人がしている眼ではない。

 

男の名は『衛宮 切嗣』。

今回の聖杯戦争において、御三家の一つであるアインツベルンから雇われた『魔術師』である。

彼はその道では名の知れた者であり、『魔術師殺し』なんて言う物騒な二つ名まで持っている『殺し屋』だ。

切嗣がそう呼ばれる所以は、彼の固有魔術が関係するのだが・・・・・今回は話しておくまい・・・

彼は吸って短くなった煙草を携帯灰皿に押し込めると新しい煙草に火を灯し、煙状になったニコチンとタールを飲み込んだ。そして、先日あった衝撃的な光景を顧みる。

 

 

 

 

 

自身のサーヴァントである金髪の騎士王と黒髪の一番槍との激しい斬り合い。そこに突如として現れた緋色の征服王。そして全てを見下し、底知れぬ力を持つ黄金の英雄王。

 

・・・だが、そんな逸脱した力を持つサーヴァントの中で切嗣が最も警戒しているサーヴァントがいる。

 

 

「カカカカカ♪」

 

突然現れた征服王の同盟の話に乗り、最初は正体も分からなかった英雄王の真名をいとも容易く明らかにするだけでなく、自らの最低限の力で撃退した正体不明(アンノウン)のサーヴァント『狂戦士(バーサーカー)』。

 

最初、切嗣は英雄王を撃退させた力と得物である『紅い槍』から槍のサーヴァントと同郷の『あの』英雄かと推測した。しかし・・・その推測はまんまと外れた。

聖杯戦争に参加し、サーヴァントのマスターとなった魔術師は他のサーヴァントの『保有スキル』を確認できる。・・・まぁ、個人差や魔術師としての熟練度の度合いはあるが・・・・・

 

そんな能力を使い切嗣は彼をスナイパーライフルのスコープ越しに見た。するとどうだろう・・・黒い靄が覆ったスキル欄の中に『吸血』という言葉がハッキリと確認できたのだ。

彼は驚いた。それもその筈だ、この『吸血』というスキルを持つ者は全てにおいて例外なく『死徒』と呼ばれる『吸血鬼』なのだから・・・・・

 

切嗣はすぐさまこのバーサーカーのマスターを探した。

この世界でも吸血鬼という存在は人に害を為す災厄にして最強の存在。まさに人類種の天敵中の天敵。

そんなサーヴァントを野放しにすると後々厄介な事になると切嗣は考え、手っ取り早く倒してしまう為にマスターを探す。

 

・・・・・案外早く見つかった。

バーサーカーのいる地点から300m離れたクレーンの物陰でマスターを見つけた。

そのマスターは見るからに重病人で、血反吐を吐きながら何かを叫んでいる。だが、切嗣はお構いなしにそのマスターの側頭部に十字を合わせる。そして、手慣れたように安全装置を外し、引き金に指をかける。

後は簡単。いつもの様に引き金を引き、雷管を発火させ、弾丸を銃口から発射し、標的の頭を腐った果実の様に吹き飛ばすだけ・・・・・・・・『だった』。

 

 

「ッ・・・!?」

 

そんな簡単で慣れた動作が、その時の切嗣には出来なかった。体が硬直し、息が乱れたのだ。こんな事は彼の殺し屋人生の中で『あの日』を除いて、初めてであった。まるで何者かに睨まれて、体を鎖でつながれた感覚である。

 

戸惑いを感じながら切嗣はゆっくりとスコープを横にずらした。

 

 

「・・・・・」

 

そこには無言のまま此方をギロリと見つめる赤毛の女がいたのだ。

 

ゴクリッ・・・と切嗣は息を飲んだ。

バーサーカーのマスターと切嗣がいる位置では800m近くも離れている。しかも夜である為に視界が悪い。にも関わらず、赤毛の女は此方を確実に目視している。認識している。

そして、驚くべき事にこの人物を彼の眼は『サーヴァント』と認識したのだ。

今まで数々の標的を沈黙させてきた切嗣の能面のような面にも少々焦りの色が出て来た。・・・・・が、そんな両者の緊張状態も英雄王の撤退で幕を閉じる。

 

英雄王が撤退した後、切嗣はその場を早々に離脱した。

離脱した切嗣はまず、自身の部下兼愛人である『久宇 舞弥』に通信をいれる。

 

 

「・・・舞弥・・・少し調べ直さないといけないことが出てきた」

 

『・・・どうかしたのですか?』

 

通信機から聞こえてくる冷淡な口調。しかし、どことなく焦燥感を漂わせる切嗣の声に舞弥は驚きつつも答える。

 

 

「あのバーサーカーとそのマスター・・・『間桐 雁夜』についてだ。付け焼刃の魔術師だと甘く見ていたが、どうやら違うらしい・・・」

 

「はい。了解しました」

 

切嗣は今後の方針を伝えるとインカムの電源を落とす。

 

バーサーカーのマスターが間桐雁夜であろうことは予想がついていた。即席のインスタント魔術師ならば、クラス別スキル『狂化』でステータスアップが出来るバーサーカーのクラスを選ぶであろうことも予想の内だ。

しかし、予想外だったのは召喚されたサーヴァントとその数だ。

 

『吸血鬼』の伝承を持つ英雄はいるにはいるが、その英雄とは全く違う能力を隠し持つバーサーカー。そもそも狂化のステータスを持つバーサーカーに会話が成り立つ事と二体ものサーヴァントを召喚できる魔術師なんて有り得ない。

 

あのサーヴァント達は一体何者なのか、そしてそのサーヴァント達を従えるマスター『間桐 雁夜』とは一体どんな人物なのだろうか?

 

 

「おっと・・・僕とした事が・・・・・」

 

切嗣はそんな思いを潰すように吸い終わった煙草をまた携帯灰皿に押し込め、今はまず目の前の仕事に従事しようと彼は鞄から重そうな電子基盤を取り出す。

基盤には沢山のスイッチがあり、それを次々と押していく。

最後に他のとは違う色をしたスイッチの蓋を開け、カチリと何の躊躇いもなくスイッチを押した。

 

 

 

・・・数秒後・・・

ランサーのマスター『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト』の宿泊するホテル『冬木ハイアットホテル』が轟音と共に爆発し、倒壊した。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





Fateを見ると武器の知識が何故か身に付く!

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