Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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某動画でFateの戦闘シーン見てますが・・・

アキト「俺・・・戦えるのか?」

・・・・・そこは心配いらない・・・?



開戦・下

 

 

 

ここで時間はライダーの勧誘の所まで巻き戻る。

 

その日、『アサシン』のマスターである『言峰 綺礼』はアーチャーとの戦闘で死んだはずのアサシン『達』を使い、マスターやサーヴァント達を監視していた。

そして、それを自らの『師』にして『アーチャー』のマスターである『遠坂 時臣』に報告していた。

しかし、事態の急変と監視結果にどう報告したものかと悩んでいた。

 

 

『師よ。ご報告したい事があります』

 

90年代製の通信兵が持つような通信機からノイズ混じりの綺礼の冷淡な声が聞こえてくる。

 

 

「どうしたんだい綺礼? セイバーとランサーが相打ちにでもなったかい?」

 

それに遠坂 時臣はワイングラスを傾けながら会話を始めた。

 

 

『いえ・・・ライダーが現れた後にバーサーカーも現れました。それとバーサーカーのマスターである『間桐 雁夜』も確認できました・・・・・それに関しては、なんと報告をすればよいのか図りかねる所なのですが・・・』

 

「?。綺礼・・・・・キミにしてはなんとも歯切れの悪い話し方だね?」

 

綺礼の迷い声に時臣はワイングラスを回しながら疑問符を浮かべる。

 

 

『バーサーカーは意思疎通できる程の理性を持っております。それにライダーからの同盟の勧誘を受けました』

 

「ほう・・・それは面妖な。ランサーやセイバー、キャスターと同盟を結ぶのはわかるが、よりによってバーサーカーとは・・・・・間桐家も面白いサーヴァントを召喚したものだな」

 

クツクツと時臣は笑うと空になったグラスにワインを注ぐ。

 

 

『それで師よ、聞きたい事があるのですが』

 

「なんだい綺礼?」

 

『師はバーサーカーのマスター、間桐 雁夜と面識がおありなのですか?』

 

綺礼の質問に時臣は考え込むと一口ワインを飲んで口を開く。

 

 

「いや、妻の幼なじみだという話は聞いている。実際に目にしたことは数度だけで、会話もない。魔術を嫌って逃げ出した凡愚螺だと、間桐のご老人から聞いていたのだがね」

 

『・・・そうですか』

 

時臣からの返答を聞いて、綺礼は納得いかないような声を漏らす。。

 

 

「君にしては珍しい、他人に興味を持つなんて。その間桐家の者がどうかしたのかね?」

 

『はい。そのバーサーカーのマスター、間桐 雁夜の傍らにもう一体の『サーヴァント』がいます』

 

「・・・・・・・・なんだと?」

 

綺礼からの思わぬ報告に時臣は耳を疑う。本来なら急造の程度の低い魔術師など気にも止めないが、その魔術師が『二体』のサーヴァントを有しているなら話は別だ。

 

 

「そのサーヴァントは『キャスター』なのか?」

 

動揺を隠しながら時臣は綺礼に疑問を投げかける。

 

 

『遠目からではなんとも・・・』

 

「そうか・・・・・綺礼、間桐雁夜の監視を続けてくれ」

 

『了解しました。我が師よ』

 

綺礼に監視の続行を命じると通信機の電源を切る。

 

 

「凡愚螺だと聞いていたが・・・・・油断ならんのかもしれないな」

 

時臣の呟きに誰も答える事はなかったが、通信を切られた綺礼もまた雁夜に興味を抱き始めていた。

この後、時臣はバーサーカーに驚かされるはめとなる。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「この方はまさにゲスプロの中のゲスプロ、王の中の王! 世界最古のジャイアニズムを持つ我が侭暴君。古代国家ウルクが国家元首『英雄王 ギルガメッシュ』で在らせられるぞ!」

 

『『『ッ!?』』』

 

時間軸と場面は戻り。バーサーカー、アキトは黄金のサーヴァントに変わって他己紹介をしていた。

 

 

「う、ウソ・・・」

 

「英雄王・・・だと・・・!?」

 

「ガッははは! それはスゴイな!」

 

黄金のサーヴァント『ギルガメッシュ』。その正体に驚く者、動揺する者、手を叩いて称賛する者とに分かれた。

 

 

「・・・アイツ・・・褒めてんのか、貶してるのか?」

 

しかし、ウェイバーだけは驚きも動揺もせず、ましてや喜びもせずにバーサーカーの言葉を疑問に思っていた。

 

 

「ワァ―ッハッハッハ! 良い、良いぞ。褒めて遣わすぞ雑種」

 

「ハイ。カンシャノキワミー(棒)」

 

ウェイバーの思いとは裏腹にアーチャーは不機嫌から一転、上機嫌でアキトを褒めていた。何故だがアキトは棒読みでアーチャーに答える。

 

 

「良い。こんなに気分が良いのは久方ぶりだ。おい雑種、名乗る事を許す。名を名のれい」

 

「申訳ありませぬ英雄王。私は自身のマスターに令呪を使われており、名乗りを上げる事が出来ませぬ。どうぞお許しを」

 

『やってないよ!!』と遠くの方から死にかけマスターの声が聞こえるが、気にせずに彼は深々と頭を下げる。

 

 

「フン、ならば仕方あるまい。おい狂犬、貴様先程そこの王を語る不遜な輩につくと言っていたな」

 

「はい、確かに」

 

「どうだ狂犬、我の臣下になる事を許そう」

 

『『『!』』』

 

「おん!」

 

なんとアーチャーはアキトに誘いをかけて来たのだ。これにはこの場にいた全員だけでなく、アキト本人までもが驚いた。彼はニヤリと口を歪める。

 

 

「それは良いお話しだ。かの英雄王に仕えたとあらば、末代までの功となりましょう」

 

「ちょ、ちょっと待てよお前!」

 

「おん?」

 

「小僧?」

 

アキトとアーチャーの会話に入って来たのはウェイバーであった。彼は青筋を浮かべ、アキトを睨む。

 

 

「お前、さっきライダーにつくって言ったよな! なんだよそれ! ふざけ―――「小僧!」―――わっぷ!?」

 

喚くウェイバーの口ををライダーの大きな手が塞ぐ。ウェイバーは苦しそうにジタバタともがく。

 

 

「ぷ、プハ―ッ! なにするんだよライダー! このままじゃあアイツが取られちまうぞ! いいのかよ!」

 

「別に構わん」

 

「な、なにぃい―――ッ!?」

 

ライダーの意外な返答にウェイバーはひどく驚愕する。

 

 

「あやつが我らの勧誘を破棄し英雄王の陣営につくと言うのなら、余もそれだけの男と言う訳だ」

 

「で、でも・・・!」

 

「心配するな小僧」

 

ライダーはウェイバーの頭に大きな自身の手をのせて、撫でる。アキトはそんな光景を見て、またニヤリとほくそ笑む。

 

 

「・・・いらぬ邪魔が入ったな。それで狂犬よ、どうするつもりか?」

 

会話の邪魔をされたアーチャーは少し不機嫌そうに話す。アキトはそんなアーチャーの方に向き直り、口を開く。

 

 

「先程も言ったように貴方様に仕えたとあれば、子々孫々まで自慢出来ましょう」

 

「そうだな」とアーチャーは気分よく答える。が、アキトは垂れていた頭を起こし、アーチャーを睨んだのだ。

 

 

「だからこそ、あえて・・・・・英雄王、アンタの敵になろう」

 

「なにぃ・・・?!」

 

アキトは紅い槍を構え、街灯の上に立つアーチャーに矛先を向けた。アーチャーはまさか断られるとは思わなかったのか、呆気にとられる。

 

 

「確かにアンタの下につけば、この聖杯戦争、楽に勝ち抜けるだろうさ。でもなぁ、かの名高き『征服王 アレキサンダー大王』と共に英雄王を打倒したとあれば、俺は子々孫々、末代の末代まで自慢できる。それにライダーの方がアンタよりも早かったしね」

 

「バーサーカー!」

 

「やはりうぬは面白い男よのぉ!」

 

「イエェ~♪」

 

笑うライダーと叫ぶウェイバーにアキトはピースサインを送る。

一方、誘いを断られたアーチャーはビキビキと顔に青筋を立てていた。

 

 

「貴様ァ・・・我、自らの誘いを無にするとは・・・!」

 

怒気の声と共にアーチャーの背後が揺らぎ、黄金の波紋が広がるとそこから幾つもの宝剣、宝槍、宝斧が現れた。

 

 

「来たな・・・『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』・・・!」

 

「ほう、我が宝具の名を知っておるか・・・」

 

「もちろんだとも・・・それは世界一有名な宝具だからな」

 

アキトは楽しそうに笑って槍を握る力を強める。

 

 

「ウソだろ・・・!」

 

「どうした小僧?」

 

「あれ、一つ一つが宝具だ!」

 

「らしいな・・・」

 

剣や槍の正体を知ってウェイバーは驚き、ライダーは身構える。

 

 

「せめてもの手向けだ。一思いに散れ狂犬」

 

ドシュシュ! と幾本もの剣、槍、斧がアキトに向けて発射された。

アキトはそれを恐怖を帯びた訳でも無く笑みを浮かべると『自らの血で造形した』紅い槍を前に突き出す。その瞬間にアーチャーの宝具である剣と槍が迫り直撃し、倉庫街に爆音を鳴り響かせる。

爆風と共に砂塵が辺りに舞う。

 

 

「・・・やはり信じられん。奴は、本当にバーサーカーか?」

 

「ガっはっはっは! 見事なり、さすがは我が盟友だ。しかし、えらく面白い事ができる奴よのぅ」

 

「なんて・・・奴だ」

 

サーヴァント達は今のアキトの行為が見えたらしく。セイバー、ライダー、ランサーの順にコメントを零す。

 

 

「な、何が起きたんだ・・・」

 

「見えなかったか? バーサーカーは構えた槍で宝剣と宝槍を打ち払ったのだ」

 

ウェイバーの呟きにライダーが解説をする。

ライダーの言葉通り、アキトは自らの保有スキル『血液造形魔法』で作り出した槍で放たれた剣と槍を打ち払い、地面に叩きつけたのだ。

 

 

「カカカ♪ あっブネ~! しっかし、カッピョ良い剣だな、おい」

 

「ッちイ! 狂犬風情が我の攻撃を防ぐだとッ!?」

 

舌打ちをするアーチャーに構う事なく、アキトは地面に突き刺さった宝剣を引き抜くと品定めをしながらアーチャーに語り掛ける。ニヤニヤと笑うアキトにアーチャーは頭に青筋を走らせながら舌打ちをした。

 

 

「その手で、我が宝物に触れるとは・・・・・そこまで死に急ぐか、狂犬ッ!」

 

怒り狂ったは自身の背後に、一斉に輝く大量の宝具を出現させる。その剣、刀、槍、斧、矢、様々な宝具が出し惜しみなく晒され、その全てが掛け地なしの世界の至宝、最高級の宝具である。

 

 

「その小癪な手癖の悪さでもって、どこまで凌ぎきれるか・・・・・この我に見せてみよ!」

 

空気を震わせる怒声をと共に宝具の群れがアキトに向かって放たれる。

 

 

「WRYYYYYYYYYYYッ!!」

 

本来なら有り得ないアーチャーの連続宝具攻撃に晒されたアキトも襲い来る宝具を紅い槍で笑みと奇声を発しながら、いとも簡単に切り払い、弾き落とす。

それにより弾かれた宝具が周囲のコンクリートやコンテナを破壊し続け、それを見ていたマスター達やサーヴァント達を驚愕させた。

 

 

「・・・あれでは駄目だ・・・あの男に傷一つ付けられんのでは、数を撃つだけでは意味が無い」

 

アキトとアーチャーの戦いにライダーは呟く。そのライダーにウェイバーが意見を溢す。

 

 

「いやだけど、撃ち続ければ一発位弾き損ねることだってあるんじゃないか?」

 

「・・・仮にバーサーカーは迎撃するのが精一杯であり、この状況が長引くとしたらその可能性もあるだろうが・・・・・おそらくそうはなるまい」

 

「え?」

 

「奴の笑みだ。あれは死力を尽くしている者がする笑みではない・・・むしろ逆、いまだ余裕を持っている者がする笑みだ」

 

「ッ!?」

 

アキトの現在の状況を『余裕』と判断したライダー。それを聞いたウェイバーは両目を見開いて驚愕する。

 

 

「ま、まだアイツ何か隠し持てるっていうのか!?」

 

「さあのぅ・・・さすがにそこまでは分からんが、奴も大人しく今の状況を続ける気はなかろう。そろそろ動くぞ」

 

この戦いをふむふむと冷静に分析しているライダーの台詞にその場に居た者達が耳を傾けていると、アキトが自らに向けて発射された宝具を小脇に挟んだ状態で叫ぶ。

 

 

「どうした英雄王?! もっとくれ!」

 

「んなッ!?」

 

『『『えぇ―――!?』』』

 

アキトは両手でジェスチャーをして、アーチャーを挑発する。

 

 

「き、貴様!」

 

「おいバーサーカー?!」

 

ウェイバーはたまらずツッコミを入れる。

 

 

「お前、反撃しないのかよ?!!」

 

「んなもんするか!」

 

「えぇッ!?」

 

「向こうが勝手にプレゼントしてくれるんだ。受け取らない義理はない!」

 

決め顔をしながら答えるアキトに呆れ顔をするウェイバー。これにはライダーも苦笑する。

 

 

「痴れ者が・・・・・天に仰ぎ見るべきこの我の宝具を強奪するとは・・・・・その不敬は万死に値する! そこな狂犬よ、もはや肉片一つ残さぬぞ!!」

 

「奪っていません。飛んで来たから拾いました」

 

「それを奪うというのだ! 痴れ者がぁあ!!」

 

アーチャーの怒号と共にその場にいる全員が息を呑む。アーチャーの背後に50を軽く超える大量の宝具が出現したからである。

先程から余裕を持ち、戦いを眺めていたライダーですら目を見張るほどの有り得ない光景だ。しかし、アキトは笑いながら、手をワキワキさせている。

ところが・・・

 

 

「・・・・・貴様ごときの諌言で、王たる我の怒りを鎮めろと? 大きく出たな、時臣・・・」

 

「おん?」

 

アーチャーは空を仰ぐと一人言を呟く、それにアキトが疑問符を浮かべる。

ギリリッとアーチャーは納得いかないと歯を鳴らすがパチンと指を鳴らし、宝具の解放を止めた。怒り冷めらやぬアーチャーは忌々しそうにフンと鼻を鳴らして踵を返す。

 

 

「なんだよ英雄王、もう終わりかよ~? もっとくれよ宝具~!」

 

「やかましい!!!・・・・・雑種ども、次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い」

 

心底偉そうに言い放つと、アーチャーは一度言葉を区切るとアキトをキッと睨みつける

 

 

「命拾いしたな狂犬・・・・・次こそはその首捻じ切ってくれる」

 

「おん。期待しないで待ってるよAUO」

 

「こ、この・・・・・! フンッ!」

 

まだ言いたそうな意識を殺して、アーチャーは霊体化してこの場を後にした。

 

「ふむぅ・・・どうやらあれのマスターはアーチャー自身ほど豪気な質では無かったようだな」

 

終わったとばかりにニヤニヤしながら顎を撫でるライダー。この場において余裕を保っているのは彼のみで、他のマスターやサーヴァント達は目の前で繰り広げられた激闘に息をする事すら忘れており、辺りは先程とは一転、静まり返っている。

 

 

「WRrry。大量大量♪」

 

アキトだけはホクホク顔でアーチャーからの贈り物? を纏めていた。

 

アーチャーが去った後は微妙な空気が漂う。

セイバー、ランサー、バーサーカー&ライダーの三竦みになっている状況で迂闊に動けば集中的に狙われるかもしれない。

そんな思いの中、セイバーとランサーは動けずに居たが、真っ先に動いたのはやはりこの男だった。

 

 

「ところで英雄王がいなくなった訳だけれども・・・アンタらはどうするつもりだい?」

 

アキトはセイバーとランサーの二人に問いかける。元々はこの二人の一騎打ちのはずだったのだが、場が荒らされまくってそんな空気は霧散していた。二人は気まずそうに顔を向かい合わせる。

 

 

「一応口合わせ程度ではあるけど、俺と大王は仲間ってことになってるし・・・・・もしアンタらが大王を攻撃するなら、俺は即座に大王に加勢するぜ?」

 

「「ッ!・・・・・」」

 

この時、アキトはさりげなく選択肢を狭めていた。明確にライダーと共闘することを宣言しておけば、セイバーたちはどちらと戦うことを選んでも、少なくとも二人が敵に回ると捉えてしまう。

ライダーは真名から分かるように超有名な英霊であり、正体不明のバーサーカーは宝具も使わずにアーチャーを嘲笑い、追い返した。そんな二人を同時に相手にしたくはないと考えるのが普通だ。

・・・かといって、それで元のように互いに勝負をすれば、二人が傍で見ている中で行わなければいけない。こちらからみすみす情報を渡すばかりか、ヘマをすれば漁夫の利を取られるかもしれない。つまり、二人は誰と戦うことを選んでも損しかしないのである。

 

 

「それで提案なんだがよ~・・・・・ここは一旦全員引くってことにしないかい? 俺としてはそこの騎士王と刃を交えたいが、そんな気分じゃあなくなったしよ」

 

セイバーやランサーにとってそれは願ってもないことだった。確かに目の前の騎士とは決着をつけたい。だが、そこに横から茶々は入れられたくはない。

それに、ここで見逃してくれるというなら、この正体不明のバーサーカーの情報を得られるかもしれないのだから。

 

 

「・・・・・俺の主も引けと言っている。その提案に乗らせてもらおう」

 

「私も同じ意見だ。ランサー、ここは一旦勝負を預けるぞ」

 

「ああ、次に会った時に決着をつけよう」

 

どうやら二人ともこの場は引くようだ。

ランサーは霊体化し、セイバーはアイリスフィールを連れてどこかへ消えてしまった。激闘の爪痕のこる倉庫街にはライダー達とアキトが残される。

 

 

「・・・おうバーサーカー、あの二人は退散したようだぞ? お前さんはどうするつもりだ?」

 

「おん? ああ、それなんだが―――」

 

「な、なあバーサーカー?」

 

「おん?」

 

ライダーが声をかけてきたので、アキトが本題に入ろうとした。しかし、ウェイバーが横から口を突っ込んできた。出鼻をくじかれた形になるが、これくらいで頭に来るほどアキトは狭量ではないので、なんとも思わずウェイバーの方に顔を向ける。

 

 

「どうしたんだい・・・ライダーのマスターさんや?」

 

「『ウェイバー・ベルベット』だ。お前って・・・その・・・本当に僕達と組むつもりなのか?」

 

ウェイバーからアキトへの質問に目を丸くしたあと、ケラケラと笑った。

 

 

「な、なにがおかしいんだよ?!」

 

「いやいや、随分と上手く話が運ぶなぁと思ったんだよ」

 

「はぁ?」

 

その質問はアキトが今まさに聞こうとしたことだ。あの二人を撤退させた最も大きな理由は、ライダーとの同盟関係を盤石にするためだ。だからこそ、あのまま全員で殴り合って、有耶無耶のままに全員撤退という流れにはしたくなかった。そのまま相手に引いてもらう必要があった。

あの場でどちらか一騎を『落とす』よりも、強力な味方を『作る』方が勝ち残る確率が高くなる。というのも、アキトはこの戦いに『楽に勝ちたい』。

何故なら、変に自分が動いて一騎のまま敵と戦う事になれば自分のマスターである雁夜と助けると約束した桜を危険な目に合わせるかもしれないからだ。

その点を考慮して、彼らと同格以上の味方がほしい。だからアキトはライダーの誘いに乗ったのだ。

 

 

「ああ・・・別に俺は冗談で言ったつもりはねぇよ。こっちは色々と特殊な案件を背負っているんでね。こっちにマイナスが無ければ、ライダーへの協力を惜しむつもりはない」

 

「それで・・・なんで僕たちの仲間になろうと?」

 

「大王が呼びかけてたからだよ。正直、味方になってくれんなら誰でも良かったっていうのが本音だ」

 

「な、お前っ!?」

 

「ほう・・・余の目の前でそれを堂々と言うか?」

 

「かの征服王、アレキサンダー大王だったらそれくらいお見通しだろ? そして、アンタはそれがお見通しだったとしても、俺達と同盟を結んでくれるほど懐が広いはずだ」

 

ライダーは色々とあれではあるが、間違いなく人を見る目と才はある。そんなライダー相手に自分の腹の中を隠していたところで意味がない。だったらさっさと正直に話してしまった方が、アキトとしても気が楽だ。

 

 

「ガっはっはっは! 言うのうお主! まさか、余の器を試すような物言いをする者がいるとは思わなんだわ!!」

 

そのアキトの言動はライダーのお気に召したようだ。アキトはライダーを信用しているのだ。『征服王イスカンダルなら、腹に何か抱えているものでも受け入れる度量がある』。

そんな評価されているのだから、ライダーの機嫌が悪くなるはずがない。

 

 

「そう言われると前言を覆すわけにはいかんな。その胆力、先ほどの芸当と言い、我が盟友として申し分ない!」

 

「俺はお眼鏡にかなった・・・そう受け取ってもいいんだよな?」

 

「おう! この聖杯戦争を勝ち抜いた暁には、余と世界を制する快悦を共に分かち合おうではないか!!」

 

「あ、それはいいよ。終わったらさっさと帰りたいし」

 

「ぬ! そう連れない亊をいうな!」

 

快活に笑うライダーにアキトは征服王たる所以をライダーに感じた。

 

 

「そんじゃあ今後は同盟を組んで行動しようぜ? それについて、俺のマスターとも色々と互いに話しておきたいんだけど・・・今日はもう遅いし、明日の朝にでもどこかで集合しねぇか?」

 

「そうだのう・・・・・そうだ! せっかくの新しい盟友なのだから、我らがそちらの拠点に向かおうではないか! 何、気遣いは無用、歓迎の用意はせんでもいいぞ!!」

 

「おい待てよライダー!? 相手の陣地に入るだなんて自殺行為だぞ!!」

 

「坊主、何を抜かすか!我が盟友を侮辱するでないわッ!!」

 

「カカカカカ♪」

 

すっかり主従が逆転しているライダー陣営にアキトは面白可笑しく笑う。

 

 

「構わんさ。こっちの家は広いし魔術的と近代的な防衛システムもあるから他の陣営から干渉されることもない。住所を書いて渡すから、これを見てきてくれ」

 

「・・・本当に罠とかじゃないよな?」

 

「ウェイバー少年、時に人間は疑わない亊がいい事もある」

 

「・・・ん、ん~・・・」

 

アキトの何だかよくわからない言葉に納得してしまうのは、彼の持つ保有スキルの影響なのだろうか。そんな事は今、この場ではわからなかった。

 

 

「俺は敵には容赦するつもりはないがマスターの身が危なければ、その時は助けるのは難しいかもしれない。だが俺は仲間になったら裏切りはしない」

 

「・・・分かったよ。でもっ、裏切ったら本当に怖いからな! ライダーだけじゃなくて僕だって怒るからなッ!」

 

「カカカ♪ そうかそうか」

 

精一杯の虚勢を張るウェイバーにアキトは何だか親しみを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「おいバーサーカー・・・ホントにやるつもりか?」

 

ライダー達と別れたアキトは隠れていた雁夜達と近くの深夜営業の喫茶店で合流していた。

 

 

「マグマグ・・・ぉん? わうぃが?」

 

「アキト、口の中なくしてから喋りなさい。お行儀悪い。」

 

「おうぇんおうぇん・・・ゴクリ・・・で、何が?」

 

カツサンドを口一杯ほうばって喋るアキトに隣でコーヒーを飲むシェルスが注意する。アキトは頼んでいたモカで流し込むと正面に座る雁夜の方を向いた。

 

 

「『同盟』だ。いくらライダーがあのアレキサンダー大王でもマスターが幼すぎやあしないか? 同盟を組むのなら三騎士の中のと」

 

「そりゃ無理だ」

 

「どうして?」

 

「セイバーは最優のサーヴァントだが、清すぎる。ランサーもこれに当てはまる。清すぎるってのは後々友好な関係を気づいていくのに邪魔になる。アーチャーは論外、あんな傍若無人と同盟なんてまず無理だ」

 

「傍若無人なのはライダーだって一緒のはずだろう?」

 

「ッチッチッチ。ちょっと違う。いや、かなり違う」

 

「え?」

 

疑問符を浮かべる雁夜にアキトは次のカツサンドに手を伸ばしながら答える。

 

 

「ライダーは一見傍若無人に見えるが、仲間と認めた者の意見に耳を傾ける。するのとしないのとでは大きく同盟関係に影響が出る。それに・・・」

 

「それに?」

 

「あのアーチャーのマスターは『遠坂 時臣』だろう」

 

「な・・・なに・・・!」

 

その名前を聞いて、雁夜の顔が痛々しく大きく歪む。

 

 

「オイオイオイ、あんまし変に表情を大きく崩すなよマスター。ノアの形成外科手術は一流だが、皮膚がまだ安定してないんだから」

 

「ご、ごめん・・・気をつけるよバーサーカー・・・」

 

雁夜は手術で直してもらった顔を触る。アキトは話を元に戻す。

 

 

「それにしても流れるように上手く行ったな。こんなに早く味方ができるなんてよ」

 

「ええ、見た感じのマスターも表裏のなさそうな子だったわね」

 

「心配するなってマスター、必ず上手くいく。それよりカツサンド食わないかマスター?」

 

「ありがとうバーサーカー、心配してくれて・・・・・あと、カツサンドはいいよ。俺、まだ固形物は食べれないから・・・」

 

雁夜は体調の影響でアキトの勧めを断る。すると、アキトは少しムキになったようで彼の頭をスゴイ力で固定する。

 

 

「うっせい! イイから食えコノヤロウ!」

 

「え、ちょっ、待ッ!?」

 

そして、無理矢理に雁夜の口にカツサンドをねじ込もうとした。

 

 

「マスターお前、今朝、桜が作った大豆粥を残したそうだな?!」

 

「へぇ・・・それは聞き捨てならないわね、カリヤ?」

 

「え、ちょ、シェルスさんまで!?」

 

「いいから食えマスターッッ!」

 

「ギャ―――ッ!!!」

 

この数分後、店の店員に怒られ、雁夜がある期間カツサンド恐怖症を患うのは、また別の話・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





長い・・・6連続は長い。

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