どーも、またインフルエンザになってしまった疑いのある作者です。
B型ではなく、A型かC型です。
皆さんも体調管理にはお気をつけて・・・
今回は雁夜おじさんが登場しますが、最後らへんにしか出ません。
あと、具合が悪いからなのか。酷い台詞がありますが、悪しからず。
という訳で、どうぞ・・・・・
膨大な魔力を含んだ斬撃が幾度となくぶつかり合い、静観だった中央ホールを戦場へと変えていく。
「ハァアアアアアッ!!」
セイバー『アルトリア・ペンドラゴン』は騎士道の己が誇りを込め、聖剣を振う。
「WRYYYyyyyyッ!」
バーサーカー『暁 アキト』は吸血鬼の戦闘本能を剥き出しにし、突撃槍を突く。
―――――――
そんな激戦が行われている中央ホール下の白に統一された空間で、二人の男が睨み合っていた。
「・・・・・」
一人は軍用ブラックコートに身を包み、打ち揚げられた魚のような澱んだ目をした男。
魔術師殺しの異名を持つ、上で戦うセイバーのマスターにして魔術使い『衛宮 切嗣』。
「・・・ッフ・・・」
もう一人は、黒いカソックに身を包んだドブ川のように淀んだ眼をし、薄ら笑みを浮かべる男。
自らの師を裏切った上で刺し殺し、アーチャーのマスターとなった『言峰 綺礼』。
「!」ダンッ
言峰は、自らの魔術礼装である投擲剣『黒鍵』を顕現させると勢いに任せて切嗣へと迫る。
その途中に得物を魔力で強化させ、刃を大剣のように厚く広げた。
「ッ・・・!」チャキリ
ズダンッ!
対する切嗣は落ち着いた様子で懐から愛銃のコンテンダーを引き抜き、一直線上に迫りくる言峰に向けて籠められた銃弾を発射。
勢い良く銃口から飛び出した弾丸は、バギィッン!という金属同士の衝突音を白い空間に響かせる。
「(『起源弾』・・・被弾者の魔力を暴走させ、自らの肉体を瞬時に死滅させる・・・)」
発射された弾丸は、切嗣が『魔術師殺し』と呼ばれる由縁其の物と言える初撃必殺の魔術起源。
この弾丸でこれまで数多くの魔術師達をあの世に送り、聖杯戦争ではケイネスを再起不能まで追い込んだ代物だ。
パキィイイッン
「なッ!?」
着弾した瞬間、魔術礼装である筈の黒鍵の刀身は飴細工の様にバラバラになる。
だが、起源弾のダメージは言峰自身へ何故か行かなかったのだ。
「ッ!!」
「っく!(『
起源弾が効かなかった事への動揺で、岩をも砕く一撃を頂いてしまうその瞬間。
衛宮の家伝である『時間操作』の魔術を戦闘用に応用した『
「ッ!」
ババババババババッ!
そのまま彼は言峰からの二撃目の蹴りを避けつつ、もう一つの愛銃であるキャリコで正確な応戦する。
毎分最大で750発の弾丸を発射できるこの銃ならば、仕留められるとの算段であった。
「フンッ!」
キキィキャアアアン!
しかし、言峰は発射されたキャリコの無数の銃弾を新たに顕現した黒鍵でいとも簡単に弾いてしまう。
流石は代行者か。近接戦闘では、明らかに切嗣以上の戦闘能力を持っている。
「(起源弾が効かない・・・いや、なるほど・・・)」
冷静さを取り戻した切嗣は、瞬時に言峰を観察し、起源弾無効化の真意を導き出す。
「(ヤツは『令呪』を魔力源としているのか・・・起源弾が効果を発揮した時には、既に魔力源たる令呪は喪失している。ヤツが自身の魔力回路を使用しない限り、起源弾の魔力は効かない・・・だが、命中さえすれば、屠るだけの威力はある!)」
言峰の右腕に宿った令呪から、そう考察する切嗣。
だが、起源弾を撃つ為に使用しているトンプソン・コンテンダーは、中折れ機構のシングルアクション単発式。ライフル並の攻撃力を持ってはいるが、その点次弾装填に時間がかかるのが欠点である。
その次弾装填を待ってくれる程、言峰 綺礼という人物は悠長だろうか?
「(次は逃げられると思うな。倍速で動くと解ったならば、それを弁えた上で間合いを見計るだけの事)」
いや、ない。ある筈がなかった。
彼は今度こそ確実に切嗣を仕留める為に黒鍵を捨て、得意の八極拳の構えをとったのだ。
「・・・・・」
「・・・・・」
再び、二人の間に沈黙が訪れる。
その一瞬の刹那が、何秒にも何分にも何時間にも感じられる程に空気は硬直していた。
「・・・ッ!」
ジャキッ
先に動いたのは切嗣だ。
彼はコンテンダーに起源弾を装填しようとカートリッジに手をかけた。
「!」ダンッ
それを合図に言峰が切嗣目掛けて駆けだしていく。
いや、駆け出すというよりは超低空でジャンプしたと言う方が正しいだろう。
「ッ!!?(早い!!)」
切嗣にはそれが、瞬間移動でもしたかのように感じられただろう。防御態勢をとろうにも、言峰は既に右拳を後ろに踏み込んでいたのだから。
「!!」
バゴォッン!
「がッあ”!!?」
ドォオオッン!!
振り貫かれた拳は切嗣の胸部に衝突し、メキメキと骨をくだいて吹き飛ばす。そうして吹き飛ばされた切嗣の身体は、壁に大きなクレーターを残して止まる。
正確無比で圧倒的な一撃必殺の破壊力。胸骨を砕くどころか、その先にある心臓を熟れたトマトを金槌で叩くように潰した。
バタリッ・・・
「・・・」
血を吹き出し、虚空の彼方を見つめて倒れる肉塊と化したものに言峰は興味が無くなったのか。クルリと方向転換し、その場を後にしようとする。
「・・・ッ・・・!」
しかしこの時、そんな彼の後ろ姿に向けて銃を構える者が一人。切嗣である。
彼は自らの心臓が破裂した瞬間、アイリスフィールから受け取った『
「・・・ッ・・・ッ・・・!」
気づかれない様にキャリコを構える切嗣。
ダメージを回復したと言うよりは破壊された心臓を元に復元させ、意識を保つのが精一杯。気づかれれば、今度こそ確実に殺されるだろう。
コツ・・・コツ・・・コツ・・・
「・・・?」
「!」
狙い定める標的が不意に立ち止まった。
切嗣は気づかれたのかと焦り、引き金にかけた指が力む。
「ッ!(な・・・なんだ・・・アレは・・・ッ?)」
ところが言峰が立ち止まった理由は、別にあった。
彼は視線の先にある『赤黒いシミ』に目を奪われたのである。
そのシミは言うならば、真っ新なシーツの上に新鮮な醤油でもぶちまけたかのようなシミ。やがてそれは、ゴポゴポという音を発てて水溜まりへと変化していった。
・・・・・・・・―――ッ・・・
「?」
・・・―――ッ・・・―――ぇええッ!」
何かが聞こえる。聞こえて来た。
その音は酷く低音で、怨嗟に塗れた絶叫のような男の声。
言峰は赤黒い水溜まりの中から泥水を被って現れ出でた男に見覚えがあった。教会に誘き出し、彼に彼自身が最も愛した女からの侮蔑で心を壊し損ねた男。
「間桐・・・雁夜・・・ッ!!」
「オオオォォォ―――ッ!」
雁夜は怨嗟の絶叫を轟かせながら、言峰の心の臓腑目掛けて腕を突き出す。そんな突き出した彼の掌に握られていたのは『釘』だ。
勿論、ただの釘ではない。呪殺などの呪い事に使われる『五寸釘』。しかも・・・
ドクン・・・ドクンッ・・・
その釘は脈打っていた。
まるで全身に血液を送る恒温動物のように脈打っていたのだ。
「ッ!!」
ガシィッ!
動物的危機察知能力でその釘がとんでもなくヤバい物だと勘付いた言峰は、咄嗟に突き出される雁夜の腕を掴んだ。
メキメキァャッ・・・!
「うギャあああああ!!」
そして、その腕をへし折らんと力を籠める。
ひ弱で脆弱な雁夜の腕は言峰からすれば、茹で上げる前のパスタ麺一本に等しいだろう。
「ぐぁあアアッッ!! やれェエ、ニコぉおお!」
「!?」
だがこの時、言峰はある小さなミスをしてしまった。
それはあまりにも咄嗟の行動であったので、両手で雁夜の腕を掴んだ事だ。
『GaaAッ!!』
ガブリッ!!
「ッッッ!!?」
だから、ここまで彼を運び、背後に潜んでいた大猟狗ニコの攻撃を防ぐ手立てはなかった。
ニコは大きな口で言峰の右腕に齧り付くと右腕諸共口を外へと振る。
肉を引き千切る動作で行われたそれは、防弾防刃態様のカソックであっても関節をバラバラに引き離す事は容易であった。
「うおおおおお―――ッオオオ!!」
グスゥウウッ!
「ぐァあアア―――ァア!!」
右腕の痛みに堪え兼ね左手の力が緩んだ瞬間、雁夜はカソックの生地を突き破り、言峰の心の臓腑へと黒き五寸釘を突き立てた!
これには流石の言峰もいつもの無表情を苦悶の表情に変える他ない。
だが、ここで予期せぬ事態が起こった。
言峰の心臓を刺し潰した事で噴き出したのは、目が覚める様な鮮血の赤ではない。酷く腐ったドブ川のよりもドス黒いヘドロが噴水のように噴き出したのだ!
「ぐぐァ・・・ガッ・・・ぷギャッッ・・・!」
どザバァアアアアア―――ッン!!
「うわぁあああああッ!!?」
「くゥッ!!」
やがて心臓を刺し潰された言峰は水風船のように限界まで膨らみ、大爆発。酷く生臭いヘドロが津波のように雁夜と切嗣を飲み込んでしまう。
白く美しい空間は汚物のような泥に染められた。
←続く
・・・ところで皆さん、『ゲゲゲの鬼太郎:六期』見ました?
最近・・・この作品に集中しているせいでFate/作品を見る機会が多いので、鬼太郎さんとモーさんが中の人ネタを含んで被ります。
これって、自分だけですかねぇ?
次回も構想上、彼が出るのは最後らヘンかもです。
はてさてどうなることやら。