も~う幾つすると~、最終話ァ~♪
・・・なんですけど、サブタイが中々思いつきません。
あと今回、アキトがめっちゃヒールやってます。ヴィランやってます。
おじさんは次話で出そうと思っています。
という訳で、どうぞ・・・・・
「ハァ・・・ハァ・・・ッ」
中央ホールへと続いていく廊下に鎧の絣音が木霊する。
音を鳴らす主は、先程の戦いで上がった呼吸を一歩づつ歩むたびに整えていく。
『・・・~~♪』
「これは・・・?」
そんな時だ、通路の奥から何かが聞こえて来たのは。
それは中央ホールへ近づくたびに大きく、そしてハッキリと聞こえて来た『歌』であった。
ガチャ・・・ギィイッ・・・
「Come out ye Black and Tans, come out and fight me like a man♪」
中央ホールへ入る重々しいドアを開けば、ライトに照らされた舞台と座席から高らかに歌を唄いあげる男の後ろ姿を確認する。
「Show your wife how you won medals down in Flanders♪」
その男はまるで酒にでも酔っているかのように上機嫌で、肩に羽織った紅いジャケットが妖しく揺らめている。
「~♪・・・おん? おおッ、やっと来たか『セイバー』」
待ち人が漸く来た事に気づき、ギョロリと赤い三白眼と三日月に歪んだギザ歯を覗かせるバーサーカー、『暁 アキト』。
その手には、彼の身の丈を超える銀の突撃槍とボトルが握られていた。
「『バーサーカー』ッ・・・アイリスフィールは・・・・・『聖杯』はどこだッ!!」
そんな彼を忌々しそうに呼ぶセイバーこと『アルトリア・ペンドラゴン』は、風に隠された聖剣を構えて向ける。
「オイオイオイオイオイ・・・まぁ、そう殺気立つなよ。傍から見れば、餓えた獣とそう大差ないぜ? ホレッ、これでも飲んで落ち着けや」
「ッ!」
大いに殺気立つセイバーにアキトは持っていたボトルをヒョイと放ると、持ち前の反射神経で咄嗟にそのボトルを受け取ったセイバー。
ボトルの中は琥珀色の液体で半分まで満たされており、とても強いアルコールの匂いが漂った。
「・・・これは?」
「イギリスの・・・まぁ、君が生きていた時代から後に出来た酒だ。名をウィシュケ・ベァハ。今じゃあ訛って、ウィスキーって呼ばれている酒さ」
「ウィシュケ・ベァハ・・・『命の水』・・・随分と御大層な名だ」
「んだと? 俺の大好物にケチつけようってのか?」
先程まで、アイルランドの反英歌を唄っていたヤツが英国最高の王とも呼ばれるアーサー王に好物のスコッチウイスキーを勧めている。
・・・結構この男、無茶苦茶な事言ってる。
「・・・ッフン。ゴクリッ・・・グふッ!!?」
「あッ・・・あ~ぁ、もったいね・・・」
セイバーはウィスキーボトルを一気に呷ってしまい、吐いて咳き込む。
彼女が生前、そして聖杯問答の時に飲んだワインのアルコール度数は15度以下。だが、このウィスキーは蒸留酒である為、そのアルコール度数は40度以上。
それを一気に呷ってしまったものだから、喉の粘膜が焼ける焼ける。
「お~い、大丈夫か~?」
「ごッフ、ゴほッ! な、なんのこれしき・・・!」
「ほ~ん。あ、そおそう・・・そう言えば、テメェさっき・・・『聖杯がどーとか』言ってたなぁッ?」
「ッ!?」
ズドゴォオッン!
咽るセイバーに気を遣うアキトであったが、急に態度が豹変し、血の大槍を何発も撃ち込んだ。
「ッく!!」シュタッ
それを寸での所でなんとか躱すセイバー。
先程まで自分がいた場所は、まるで大砲でも撃ち込まれたかのように木端微塵の粉煙が発ち込めるていた。
「バーサーカー、貴様ッ!!」
「オイオイオイオイオイ、セイバー。テメェ、まさか・・・『この卑怯者!』とか言わねぇえだろうな?」
アキトは人差し指をさしながら、ギロリと赤い眼で睨みつける。
表情はニタニタとどこか嫌な笑みを浮かべるが、その目は激情に駆られている獣の眼其の物であった。
「オメェだって・・・俺が留守してる時、俺達の陣営を奇襲の強襲したんだろうが。しかもぉ、その理由が・・・『アイリスフィールちゃんを俺達が誘拐した』・・・って、オイオイオイオイオイ・・・」
「そ・・・それは・・・」
彼の言葉にセイバーは申し訳ない気持ちが湧いた。
アーチャーの新しきマスターとなった言峰にまんまと騙され、マフィア陣営本営の間桐家邸宅に二度も聖剣ビームを放ってしまったセイバー。
「セイバーよ、そんな申し訳なさそうな顔しなくてもいいって。だって・・・・・本当の事だからな」
ピキリッと主にセイバーの周りの空気が凍った様な気がした。
「・・・なんだと・・・?」
「聞こえなかったかな~? えぇ、アルトリアちゃん? なら、もう一度・・・アイリスフィールは、聖杯の器は俺達の手中だ。今もな」
眼を見開き、アキトは得意げに語る。まるで子供のような無邪気其の物で。
「いや~、こんな事になるとは思わなかったぜ。オメェとそのマスターが離れている隙にアイリちゃんをかどわかすまでは巧くいってたんだが・・・まさか、すぐにそれを突き止めて、エクスカリバーを家にぶち込むなんてよ~。流石はスキル『直感:A』ってヤツ? ホント、携帯で口裏合わせるの大変だったんだからなぁ。カハハハッ♪」
「・・・」
愉快に笑いながら事情を話すアキトにセイバーは俯き、肩を震わせる。
「・・・貴様は・・・聖杯に託す願いなどない・・・と言っていたが・・・」
「ああッ、それに関しては勿論ないさ。でもよぉ、どんな願いでも叶えちまう願望器なんだろう?
牙を晒して彼はゲラゲラと笑う。
その表情は、見るに堪えない程に醜悪なものであった。
「・・・最後に、最後に一つ聞きたい・・・」
「ああ・・・構わんぜ、どうせ最後だ。イスカンダルもギルガメッシュも来ないようだし・・・ツーか、俺達が最後のサーヴァントみたいだしよぉ~。ああ、あぁ、まさかのシード権をもらっちまうとは・・・ツいてるね、俺も」
「黙れ、バーサーカー・・・私が聞きたいのは、たった一つだ。・・・・・雁夜は・・・雁夜はその事を知っているのか?」
「!」
最後の質問にアキトはポカンとした表情になる。
セイバーは『間桐 雁夜』という男が、どんな人間であるのかという事を自らの保有スキルで少しながらも理解していた。
彼はまさに騎士という存在に相応しい人間だと彼女は思っていた。
傷ついた少女を守る為、救う為に自らの命も顧みずにこの聖杯戦争に参加した高潔な人間だと。
「・・・カカカッ、カハハハッハッハッハ!!」
「・・・何がおかしいッ?」
アキトは笑う。笑い転げる勢いで笑う。
それは聖杯問答で、セイバーの在り方を尊厳など踏みにじるかのように何の遠慮もなく笑っていたアーチャーのようだ。
「カヒヒッ、なにを聞くかと思えば・・・・・あぁ、答えてやるよ。雁夜の野郎は知らねぇ、知りもしねぇッ! あんな甘ちゃんの御人好しが知る訳ねぇだろうがよぉッ!!」
「『
ブオォオオオッッン!!
セイバーはほぼ無意識の中、その聖剣を振った。
聖剣に溜まっていた風の魔力が、ハリケーンの暴風のように前方へと吐き出され、座席列をバターのように抉った。
「・・・ん~♪」
その爆風の斬撃を突撃槍を盾にする事で防いだアキト。しかし、防御態勢が一瞬遅れた為か、右頬に一筋の裂傷を負ってしまった。
彼は、傷から垂れる自らの血を手で拭うとそれを何とも美味そうに舐める。飴でも舐めるかのように。
「いいねぇ、そう来なくちゃあッ!! さぁ、騎士王! バケモノはここだぞ、来いよ来なよッ!WRYYYyyyyyッ!!」
「貴様は・・・貴様だけはッ! 肉片すら残さず殺し尽くしてやるッ、このバケモノめッ!!」
そうして両者は、自らの敵に飛び込んでいく。
一方は、依頼人の為に。
もう一方は、自らの願いの為に。
第四次聖杯戦争最後となるサーヴァント同士の死闘が今、幕を挙げた。
←続く
皆さんはご存知かもしれませんが、一応。
本当は心根の優しいキャラなんです!
次回は、はてさてどうなることやら。