Fate/Diplomat   作:rainバレルーk

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最近、某チューブで歴史や伝承を見る機会が多いのですが・・・
やっぱり・・・型月時空ってハチャメチャだなぁ・・・

今回は彼は出ずに、サブタイ通りの登場人物が出ます。
もう終わりに近づいて行っています。
という訳で、どうぞ・・・・・



騎士と王

 

 

 

ブロンッブロロンッ

 

王と王の決戦が行われている同時刻。

狼煙が打ち上げられた冬木市市民会館に一台のバイクがやって来た。

 

 

「(敵は・・・中か・・・?)」

 

その夜の闇にも似た真っ黒な塗装が施されたバイクに跨っていたのは、砂金のように美しい金髪をもった少女、サーヴァント『セイバー』。

彼女は警戒しながら、地下駐車場へと駒を進めていく。

 

 

「・・・・・」

 

この場所は夜中という事もあってか、薄暗い蛍光灯しか点いておらず、辺りからは不気味な雰囲気が漂う。

セイバーはその中をバイクのライトと己がスキルを頼りに進む。

 

 

「ッ・・・!」

キィ・・・ッ

 

何かの気配に勘付いた彼女はバイクを止め、所持宝具である聖剣を取り出す。すると、ライトの灯りの注さない壁際の向こう側から足音が聞こえて来た。

 

 

「遅かったな・・・騎士王」

 

「あなたは・・・!」

 

壁際から出て来た人影にセイバーは見覚えがあった。

異性の誰もが出会えば、振り返るような眉目秀麗な顔立ち。何度も打ち鍛えられた鋼のように逞しい身体。

 

 

「『ランサー』・・・私が一番乗りかと思っていたが、其れよりも先にあなたが来ていたのか。流石はフィオナ騎士団の一番槍」

 

それはまごう事なき我が宿敵の姿。倉庫街で初めて刃を打ち付け合った時が、ついさっきのように感じる。

このところ、セイバーにとって良くない事が多く起きていたので、同じ騎士道を判つ者との再会に彼女は少し口をほころばせ、バイクを降りる。

 

 

「・・・・・」

 

「ラン、サー・・・?」

 

だと言うのに、ランサーの表情は優れない。なんだか彼からは、青い哀愁が漂うように感じられた。

そんな彼の雰囲気にセイバーは疑問符を浮かべるが、すぐに勘付く。何故なら、彼の手には既に真紅の槍が握られていたのだから。

 

 

「・・・ッ!」シャキンッ

 

「・・・」チャキリ

 

セイバーはすぐさま青銀の戦装束に身を変え、聖剣を上段に構える。対するランサーも赤槍を静かに構え、戦闘態勢を整えた。

 

 

「・・・ハァアアッ!!」ダンッ

 

「!」

 

シャキンッ

 

先に仕掛けたのは、ランサーだ。

槍兵(ランサー)というクラス属性に違わぬ跳躍力と俊敏さで、セイバーとの距離を瞬時に詰めると赤き刃の切先を前へ押し出す。

 

 

「タァアアッ!!」

 

キィイッン!

「テァアアッ!」

 

カキィイッン!

 

そこから始まったのは、とても常人には認識できない速度で繰り広げられる剣戟。

薄暗い地下駐車場にポツポツと火花の点滅が点いては消えるの連続だ。

 

カァアッン!

カキンッ!

キキャァアンッ!!

 

「・・・フフフ・・・」

 

キィイッン!

カキャァアンッ!!

ガギイッン!

 

「・・・ハハハ・・・ッ!」

 

鉄と鉄が、鋼と鋼が、力と技が、技と力がぶつかり合う心地の良い金属音と共に笑い声が木霊する。

 

 

「流石だ・・・流石は最優のサーヴァント、セイバー。いや・・・ブリテンの王、騎士王アーサー・ペンドラゴンよ!!」

 

ガキィッイン!

 

「其れは此方とて同じ事。その槍使い誠に見事だ。フィオナ騎士団が一番槍、輝く貌のディルムッド・オディナよ!!」

 

「ッ・・・!」

 

二人はお互いの力と技を称賛し合い、何度か壮絶とも言える鍔迫り合いを繰り返すと二人は距離をとる。

其の時、ランサーはセイバーの物言いが勘に触ったのか。再び、悲しそうな表情を晒した。

 

 

「セイバー・・・俺はもう騎士ではない」

 

「な、なにを言って・・・ッ!?」

 

突然の告白に狼狽えるセイバー。

だが、その告白が此方の動揺を誘う為や妄言でない事を男の眼は語る。

 

 

「俺はここに来る前・・・自らのマスターを見限り、こうしてここに参上した次第だ」

 

「な・・・なぜですッ、貴方程の勇者が何故?!」

 

セイバーは狼狽えた。

普段ならば、相対した敵の言葉に惑わされる事はない彼女であっても、ランサーの言葉には素直に驚いたのである。

 

 

「聖杯戦争が始まって以来、俺は主の為にと槍を振って来た」

 

「そうだ。貴方はその武勇を持って、私やキャスターと戦って来たではないか!」

 

「・・・ああ・・・お前はそう言ってくれるのだな・・・」

 

「え・・・?」

 

セイバーの言葉にランサーは切なく寂しそうな笑顔を浮かべる。

 

 

「だが・・・結局のところ俺は、主を主として見てはいなかった。ケイネス殿を人間としてではなく、ただ『仕えるべき主君』とだけしか見てはいなかったのだ」

 

ランサーは尚も続ける。

自らの未熟さを、落ち度をつらつらと述べていく。

 

 

「だから、俺はケイネス殿から離れた。こんな男がサーヴァントではケイネス殿もさぞや、迷惑であっただろう」

 

「・・・ならば・・・ランサーよ。何故に・・・何故に私の前に立ったのだ?!」

 

そうだ。

自らの有り方に絶望したのならば、とっととその槍で自らの心臓を穿てば良い。

そして、さっさと聖杯の供物となれば良いのだ。

 

 

「・・・お前がいたからだ、セイバー」

 

「・・・ッ!」

 

「騎士の矜持を捨てようと・・・あの夜の続きがしたいと思っていたのだ。純粋に俺が俺である事が出来た、あの夜の続きを!」ダンッ

 

ランサーはそう言って再び槍を構え、飛び出していく。

 

そう。いくら騎士としての矜持を捨てようとも、彼のセイバーに対する闘争本能は衰えてはいなかった。

彼は騎士としてではなく、ただ一人の戦士としてセイバーに挑みたいとここに参った次第なのだ。

 

 

ガギィイン!

「くッ!!」

 

「この胸の高鳴りッ! お前との戦いが、やはり俺を熱くする! この機会を用意した『アキト』殿には、感謝せねばなぁ!!」

 

ギィイイッン!

「ッ?! 待て、ランサー! どうしてそこでバーサーカーの名が出て来るのだ?!!」

 

火花散る鍔迫り合いの中、熱くなったランサーの口から不意に出た言葉にセイバーは疑問符を投げる。

 

 

ガァアッン!

 

「そう言えば、言っていなかったな。ここへ一番乗りでやって来たのは俺ではなく、バーサーカーだ」

 

「な、なんだと・・・!?」

 

実はランサーよりも先にアキトがこの冬木市市民会館に乗り込んでいたのだ。

そこで彼はランサーとある取引をし、どのサーヴァントよりも先に聖杯の器が置かれているであろうホールへと駒を進めていたのだ。

 

 

「おのれ、よくもバーサーカーッ!!」

 

「おっと、戦いの最中に他の男に気を逸らすとは・・・頂けぬな!!」

 

ブシュッ!

「うッ!!?」

 

破魔の紅薔薇の刃が彼女の肩を切り裂く。

鎧で覆っていた筈の部分から鮮血が噴き出し、鈍い痛みが襲ってくる。

 

 

「ウオォオオ―――ッ!!」

 

ズドドドドドッ!

「ぐゥッ・・・!!」

 

この隙を逃すまいとランサーは刺突の猛攻撃を仕掛ける。

その刺突一つ一つに途方もない殺気が込められ、セイバーの柔肌を確実に抉り切り裂いていく。

 

・・・ランサーは強敵である。

いくらクラス相性でセイバーの方に利があろうと、それを撥ね退ける強さが彼にはあった。

其れは騎士の矜持を捨てたからか、自らの在り方について開き直ったかどうかなのかは、彼にしか理解できない事だ。

 

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』!!

 

ズシャァアアン!

「ぐあぁアッ!!」

 

けれど・・・理解できる者が居れば、ランサーの強さの秘訣は彼の戦士としての『純粋な思い』であろう。

 

『強い者に勝ちたい』。

『自らの力を示したい』。

ただその純粋な気持ちだけが彼を突き動かしているのだ。

 

 

「グぐッ・・・! うわァアアアア!!」

 

ガキァアアッンッ!

「ぅおオッ!!?」

 

だが、セイバーとてそんな彼の戦士としての思い以上なものを持っていた。

その思いがセイバーに力を与える。

 

 

「テヤァアアア―――ッ!!」

 

カキィイイッ!!

「ぬオオオッ!」

 

それは『聖杯を必ず手にする事』。自らの国を再興する事。

そして・・・

 

 

「『風王鉄鎚(ストライク・エア)』ッ!!」

 

ザァシュゥウウッ!!

「ガッ、あア・・・っフ・・・!」

 

風の魔力を纏った聖剣の刃が、ランサーの槍ごと身体を斜めに切り裂く。

正に鉄鎚の名に恥じぬ必殺の一撃だ。

 

 

「あぁ・・・み・・・み、見事なり・・・セイバーッ・・・! あ”ぁ”・・・」

 

「・・・」

 

身体を斜め一線に斬られ、槍を真っ二つにされながらも、ランサーの息はまだあった。

そんな息も絶え絶えな彼の身体をセイバーは優しく抱き留める。

 

 

「クククッ・・・強い・・・やはり、強いなぁ・・・セイバー・・・・・ハハハッ、ゴふッ!」

 

「もういい・・・喋るなランサー・・・ッ・・・」

 

肺に血がたまり、徐々に徐々に男は意識をなくしていく。

彼が宿敵である彼女に抱き留められながら思った事は一体なんだったであろう。

 

 

「先に・・・座にて、待っているぞ・・・セイバー・・・」

 

そうしてランサーは、金の粒子へとその身を変える。

小さいが、確かに彼の望みは一つだけ叶った。

 

 

「・・・・・ランサー・・・私は次へ進む・・・聖杯を必ずや、この手に・・・!」

 

彼を抱き留めていたセイバーは、顔を上げる。そして、聖杯が待っているであろう場所へと歩んでいく。

ランサーの血がベットリと付いた聖剣を携えて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





・・・なんか、湿っぽくなっちまいやした。
もうこの物語もあと指折りぐらいになりました。
さぁさぁクライマックスが見えて来た!

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